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就任パーティーでキバナさんにマスボぶつけられた

「あれ、こんなところにいたんですか」
「!ユウリ……」

まさか今まで考えていた相手が来るとは思わなかった。
けど、顔が見られてうれしい。
オレ様が本当にワンパチならば、ハートのお尻に生えた短い尻尾が千切れ飛ぶほど振られていることだろう。

「どうした、風に当たりに来たのか?」
「会場熱気で暑いしそれもありますが、酔いもさめてる頃だと思って、キバナさん探しに来たんですよ。
もしかしてまだ酔いはさめてませんか?」
「ぼちぼちってところだな。コレ飲み終わったら行く」

まじかー。探しに来てくれたのかー。
嬉しくてにやけそうになるじゃねぇか。
今ならキョダイマックスキバナになれそうだ。いや、変な意味じゃなくて!
オレ様のオレ様がキョダイマックスとか思った奴手をあげろ!言っとくけど、まだそこまでの事は指先一本分くらいしか考えてないからな。

「大人は付き合いでも飲みますからね……大変だ。
でも私、はやくお酒のんでみたいなぁ」
「飲めるようになったら、一緒に飲も……」

ユウリがオレ様のすぐ隣に腰を下ろす。
するりと流れるドレスの衣擦れの音が、いやに艶めかしく響いて、ついおいしいみずのボトルを落としかけた。

「ユウリは戻らなくていいのか?」
「いえ、キバナさんが飲み終わるまで私もちょっとここで休憩しまーす」
「主役がいなくていいのかよ」
「インタビューとかはやっと終わって、ちょうど普通のパーティーになったところだし大丈夫だと思います」

それでも主役はユウリ。まあ、少しくらい席を外していても誰も何も言わないだろうけどな。
チャンピオン業務というのは、自由がないようでいて、そのくせ本人たちの性格は自由奔放気味である。
歴代のガラルチャンピオンにはその気質が多い。……気がする。

寒空の下、バルコニーから見える夜空の星はそのひとつひとつがチョンチーの光のようにキラキラとまたたいている。
ユウリとともに見上げるそれは、ロマンチックすぎてがらにもなくどぎまぎしそうだ。

「あの……」
「お、おう!」

声をかけられて心臓が跳ねた気がする。おいオレ様の胸のコイキングはねるのやめろ。
どんな質問でも、今は出血大サービスで答えてしまうだろう。次のトーナメントで出すポケモンとか戦略さえも。たのむ聞かないでくれ。
だが、ユウリの言葉は想像とはまったく違うものだった。

「キバナさん、私のこと恨んでます?……恨んでますよね」
「え?…………ハァ!?」

ハイパーボイスも吃驚の大きな声が出てしまい、ユウリがビクッと体をこわばらせる。
悪い、怖がらせたいわけじゃなかったんだ。

「なんでそうなった!?」
「だって……万年二位で、打倒ダンデさんを掲げてずーっとバトルしてきてたじゃないですか」
「万年二位っておいおい」

本当の事だから言い返せないが、その言葉はグサッと刺さった。
オレ様のコイキングがはねるのをやめた。ひんしかな?

「一番ダンデさんに勝ちたかったのは、キバナさんじゃないですか。
なのに私がその目標を横から掻っ攫っちゃった。玉座からダンデさんを引きずり下ろしちゃった……」

しょんぼりとうつむくユウリ。
ナイフばりのユウリの発言で落ち込みたいのはこっちだわ。コマタナに抱き着かれたのかと思った。

「あのなあ~……。
一番にダンデに勝ちたかったのは否定しないけど、だからってオレ様がユウリを恨んでるわけないだろ?」

ましてや相手は今や愛しの女の子。
目標を失ったからって好きな子を恨む?そんなわけない。
それに新たな目標ならすぐ目の前にいる。ユウリのことだ。

「ユウリという倒す相手が増えた。ただそれだけ。
それともお前は次にバトルしたら、オレ様に簡単に負けちまう弱~いチャンピオンなのか?」
「!!
負けたくないっ!」

軽くちょうはつしてやれば容易くノッて、予想通りバークアウトしかけてきた。うん、攻撃技だ。やはりユウリはオレ様が捕まえるべきポケモンだ。

「……けど、次も勝てるかっていうと正直、自信はないです。ダンデさんもキバナさんも強いし。
私が勝てたのなんて、まぐれに決まってる」
「おいおい、今期のチャンピオン様は随分気弱だな。さっきの威勢はどこ行った」

ユウリのことは好きだが、バトルに自信のないユウリはあまり好きじゃない。
ユウリは、自信過剰なくらいがちょうどいい。

「ダンデとユウリ、どっちが勝ってもおかしくなかった。
オレ様をあれだけ叩きのめしといて、勝ったのはまぐれだなんてオレ様が言わせないぜ。
オレ様達だけじゃない。頑張ってくれたポケモンたちにも失礼だ」

強めに言ってやれば、ユウリは顔は上げぬまま小さく言葉を紡いだ。

「そうですよね。ありがとう、ございます……」

オレ様が無理やり言わせたみたいなお礼の言葉だ。
別に説教してるわけじゃないんだけどなー……。
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