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就任パーティーでキバナさんにマスボぶつけられた

「でもユウリのどこを好きになったの?」
「ハァ!?どこをだって?何だよユウリのどこを見てんだ好きにならない要素なんてひとつもないだろどこみてもかわいいだろルリナの目どこついてんのお前のペリッパーの口の中か?」
「うわこいつめんどくさ」
「はあ〜〜〜。じゃあひとつだけ教えてやる。あの目だよ」
「目?あのくりくりした大きな目?
たしかにかわいいけれど……。
うーん??」

大きくてくりくりした目のかわいい人間なら、どこにでもいるだろう。そう言いたいのはわかる。
だが詳しくは教えない。
教えたら、ルリナやネズまでもがユウリを好きになってしまうかもしれない。
女同士のそれにすら、オレ様は嫉妬する。
好きになる要素しかないからひとつひとつ詳しく教えたいが、同時に教えたくない。
なんという葛藤!

いかん、ユウリの目のことを思い出したら、背中がゾクゾクと粟立ってきた。
……せめてバトルがしたい。アルコールの入った状況でそれは危険すぎて無茶だが。

「はー。心に恋の風と愛の嵐吹いたわー。
吹けよ恋の風、呼べよ愛の嵐ってやつー?」
「なにそれ……」

うん、なんだろうな。自分で言っててもよくわからなかったぜ。
きっと酒のせい。

酒のせいついでに、足が勝手にユウリの元へ向かっていく。
ダンデのバリコオルの『ちどりあし』みたいなもんだ。

「ちょっとキバナどこいくの!
今日はユウリのチャンピオン就任パーティーなんだから、ぶち壊すような真似はしないでよね!?」

酒でかるく混乱状態だからか、ちどりあしは役に立った。
止めようとしたルリナの手をするりとかわし、心の赴くまま気の向くままユウリの元へとふーらふら。
混乱で回避率アップ。天候いじりの特性ばかり使ってるが、こういう特性もいいな。

そもそもオレ様が行くだけでぶち壊れるわけないだろが。どこの破壊神だよ。
自分のジムは砂塗れにしたりポケモンの技で破壊するけど、オレ様はムゲンダイナじゃないぜ。

今の頭の中がお花畑なオレ様を、ユウリに近づけたくない。それにユウリはまだ挨拶回りの最中。
そういった理由もあり、ルリナは止めようとしていたらしいが、ちょうどその時、ルリナ自身もインタビュアーに呼ばれてしまった。
ここでインタビューを受けるのは、何もチャンピオンだけじゃないのだ。

ネズが無理やり止めなかったのは、オレ様が意外とTPOを弁えた男であることを知っているからだろう。
少なくとも今まではそうだったもんな。
でも今は酒が入ってるし、本気で好きなユウリが相手であることをお忘れなく。
自分で覚えておけ?酔ったら記憶飛ぶことにしといてくれ。

「ユウリー♪」

へらへらと人好きのするいつもの笑顔。
周りの人間がワンパチスマイルと呼んでくるそれが自然と顔全体に浮かぶ。
酒のせいだけじゃない、そこにユウリがいるからだ。

ユウリは軽くインタビューを受けていた。
明るい笑顔で受け応えをしていたが、よく見たらその隣に紫色のゴリランダーの姿がない。
近くまで寄って行っても、でかい図体はやはり見当たらない。
ダンデが!いない!!

少しだけ揺れる視界の端で、そのでかい図体を探してみると、少し離れたところでインタビューを受けているのが見えた。
ユウリをひとりにして、危ないじゃないか。
あんなにかわいいんだぞ。体目当てのスポンサーにでも目をつけられたらどうする!
オレ様がスポンサーなら絶対お願いする。職権乱用?するに決まってる。
欲しい物は手に入れて懐のナカで大事にするのがドラゴンなんだぜ。

でも待てよ。

ダンデがいないということは、慣れない場でユウリが頼れるのはオレ様ひとり。
これはラッキー。見つけたらスーパーラッキーのアレじゃないぞ。
産んでくれる卵は精力つけるのには最高だが。あとモーモーミルクと合わせると美味いカスタードプティングが作れる。
たいていの女子は甘いものが好きだ。ユウリも甘いものが好きだから、オレ様が作ったら家に誘うのに最適な餌だよな。いつかやろ。

「どうした、まだインタビュー受けてんのかー?」
「えっ」

改めてユウリに声をかければ、すごく驚いている。
誰?という顔をされたぞおいおい。
え、オレ様はキバナ様だぞ。わからないのか?めっちゃショックなんだけど……。
オレ様の精神に効果は抜群だ!!

まあでもそうか。ユウリはオレ様がバンダナ外してるところを、生で見た事ないもんな。
ましてや今日は正装だ。いつもとギャップがありすぎる。
へこむ精神を奮い立たせ、掌を額に当ててバンダナがある状態を作る。
いつもの笑顔を浮かべて片手でがおーとポーズを取ると、ユウリはやっとオレ様=キバナだとわかったようだった。

「あっ!キバナさんだ!」
「そ、オレ様キバナ様〜。
ユウリのオレ様への判断材料ってバンダナなワケ?」
「否定はできないので多分そうです、ごめんなさ〜い」

バンダナが本体ってこと?ひでぇやユウリ。

「あのー、キバナさん。まだチャンピオンのインタビューの途中でして……」

ユウリと話す横。おずおずとそう言ってくるインタビュアーが目に入る。
舌打ちしたくなる気持ちを抑え、『おいこら、いつまでかかってんだ。早く終わらせろよ。』そんな意味を込めてユウリに見えない位置から、ガンを飛ばしておいた。

ワンパチとは思えない顔してるって?
当たり前だ。ユウリとの時間がインタビューのせいで削られるんだからな。
あとから来たのはオレ様?だからなんだ。
ユウリはインタビューされすぎて疲れてるだろ!?
ここから先は、オレ様という癒しのドラゴンポケモンのターンだ。
ドラゴンポケモンは癒されないという話は聞かん。

それに、オレ様は二面性が売り。
オレ様のバトル時の姿知ってるだろ?獰猛なドラゴンとしか思えないあの表情。
今はアレと同じ、こわいかおをインタビュアーに向けてるだけだ。
怖気付いて言動のスピードが下がる?それはインタビュアーとしてのプロ根性でなんとかしてくれ。
アンタはポケモンじゃないんだから、こわいかおされても素早ささがらないはず。

んで、こわいかお向けられたくなかったら、インタビューをさっさと終わらせちまえばいい。
そうだろ?
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