ユウリ、キバナさんと鎧島行く、の巻
「木が一本だけ生えている島見えますか?あそこがウルガモスの生息している島です」
件の島へはみずの塔の裏から行くのが一番近いそうなので、オレ様達はみずの塔で自転車を二台借りることにした。
その際、塔の門下生が水着姿のユウリを見て赤くなったのをオレ様は見逃さなかった。
てめー見せもんじゃねぇぞ。水着のユウリを見ていいのはオレ様だけだ。
その後自転車を調整しながら島までの距離を目視した。
普通に漕いでいけば5分かかるかからないか、というところか。
「んー、いうほど遠くないな。
どうせならどっちのほうが早く着くか競争しようぜ。ポケモンに引っ張ってもらうのは禁止でな」
「競争!」
おーおー、目をこんなに輝かせちゃって。
勝負好きなユウリらしいや。
「んで、勝った方は負けた方に何かひとつ命令できるってのどうだ?」
「ノッた!」
そんな簡単にノッちゃっていいのかよ?これはバトルじゃねぇんだぞ。
オレ様とユウリどっちの方が足が長い?そこ見ただけで、オレ様が勝つに決まってるだろ。
「んじゃ、オレ様の漕ぐスピードの速さ見せつけてやるぜ。ヨーイドン!」
「ええええ!?スタート早!キバナさんその前にちょっと待ってくださ……!あーあ行っちゃった。
…………大丈夫かな?」
直前にユウリが何か言っていたが先手必勝。
こんなのはまっすぐ一直線に島に漕げばいいだけだ。
ユウリより速く漕げる自信もあるし、オレ様の勝ちは決まったも同然。
ユウリが少々焦って漕ぎ出す姿がチラリと見える。だが、そのユウリは一直線にオレ様の後を追って来るのではなく、遠回りして島を目指していた。ん?なんで??
その時、すでに勝った気分でユウリへの命令を思い浮かべていたオレ様の前に大きく波が立った。
「タマンタかー。のどかでいいな」
いや、タマンタ達特有のしぶきとは違う。
前からだけではない、横方向からも波が立って一直線に向かってきた。
特徴的なヒレが波の隙間から見えているのは気のせい、と思いたいが気のせいじゃない。
海上を走るオレ様の目に、赤く光る目玉がギラリと映る。
血の気がひいたとはこの事。
「げぇ!?」
サメハダー出たんだけど!!
海に出没する超凶暴なポケモンの中でも最たるもの。それがサメハダーだ。
大型船すら強靭な大顎でバラバラにする上、歯は折れてもすぐに生える。
大昔は何人もの人間がサメハダーの餌食に……これはサメハダーが主役の映画の話だが、映画の中には真実が含まれるものも多い。
その最高速度はなんと120キロ!オレ様終わった。
かつてないほどの速度を出したと思う。
勝負にポケモン使うの禁止、と言ってしまった事が頭の中にまだあったのだろうか。オレ様はポケモンを出すという選択肢が全く頭に浮かばなかった。
そもそもハンドル握ってるし、オレ様のポケモンの誰を出せばいい!?
というかこの様子じゃ、ポケモン達もボールの中で恐怖に固まっているだろう。
オレ様のポケモンは強いが、テンパったトレーナーに合わせて、彼らも判断が鈍っているはず。
「うおおお食われる……!!」
サメハダーのずらりと生えた牙がすぐ背後に迫り、さすがのオレ様も恐怖で涙目を浮かべる。
目の前が真っ白になり、サメハダーが起こした波か他の波か、大量の水がオレ様をずぶ濡れにしたところで意識が急速に遠のいた。
おかげで、サメハダーに向かってユウリがミロカロスにハイドロポンプを指示したことも、当然知らない。
「キバナさん!大丈夫ですか!キバナさん!?どうしよう、人工呼吸すべき!?」
気がついたら慌てたユウリがオレ様の顔を覗き込み、ゆさゆさと体を揺すっていた。
この分だと、勝負はオレ様の負けか。
ま、オロオロしてるユウリが見れたからよしとするか。
それにこのまま目を閉じてればキスしてくれそうだ。もうちょっと目を閉じておこう。
「ん……」
おとなしくしていれば、ふにゅ、とユウリのやわらかくあったけぇ唇が当てられる。うわ気持ちいい。
よく考えたらユウリからのキスなんて初めてだ。(キスした経験なんてそれこそ少ないけど)
それが人工呼吸をしようとしてのものだとしても、キスはキス。嬉しいのに変わりない。
高揚感が抑えきれそうにない。精神を落ち着かせようと鼻で静かに息を吸った。
……逆効果だった。
ユウリの髪も海水で濡れたのだろう、潮水の香りに混じりユウリの甘い匂いが漂ってきた。
超至近距離で嗅いだその香りに、頭がクラクラしてくる。
「あれ?呼吸は戻ってる……ぽい?
じゃあなんでキバナさん起きないの?もしかしてどこかぶつけたり怪我してる……?」
ギク!!
鼻呼吸でバレたようだ。
だが、ユウリはオレ様の焦りに気がつかず、まだ心配してくれている。
「べあー」
「ダクマは治療手伝ってくれるの?ありがとうね。なら、バッグから人間用のお薬とおいしい水持ってきてくれる?」
「べあま」
ダクマすらオレ様の心配を……!
いや、この場合はユウリの手伝いをして少しでもラクさせたいだけだろう。
「!!?」
そこまで考えたところで、ユウリの手がオレ様の肌に触れた。
▼キバナはこんらんした。
「怪我はしてなさそう、よかった。
……っていうか、キバナさん腹筋ばきばきだぁ」
そう、腹筋を上から下へなぞるように下腹部方面にススス、と。
それ以上はヤバいー!!
「あっ!キバナさん起きた!!」
しまった、おかげで目を開けちまった。
ちょっともったいなかったかもな。
「大丈夫ですか?体痛いとこありますか?」
「ああ、全然大丈夫だぜ」
「ならよかった!
サメハダーに囲まれてるキバナさん見たら、頭プッツンしてドロポン撃ってました」
笑顔で言ってるけど、頭プッツンするユウリこわい……。
うん、知ってた。
チャンピオンだもんな、バトル時の顔みればわかる。プッツンしてる時あるよな。
「サンキューな。助かった」
「でも、ポケモン出しちゃったんで私の負けですかね」
「トラブルあったしポケモン出しちまっても仕方ねーよ。勝負はこの次に持ち越しだ」
またやろう、と続けたらユウリは嬉しそうに笑った。
よし、これで次の約束も取り付けたもの同然!
件の島へはみずの塔の裏から行くのが一番近いそうなので、オレ様達はみずの塔で自転車を二台借りることにした。
その際、塔の門下生が水着姿のユウリを見て赤くなったのをオレ様は見逃さなかった。
てめー見せもんじゃねぇぞ。水着のユウリを見ていいのはオレ様だけだ。
その後自転車を調整しながら島までの距離を目視した。
普通に漕いでいけば5分かかるかからないか、というところか。
「んー、いうほど遠くないな。
どうせならどっちのほうが早く着くか競争しようぜ。ポケモンに引っ張ってもらうのは禁止でな」
「競争!」
おーおー、目をこんなに輝かせちゃって。
勝負好きなユウリらしいや。
「んで、勝った方は負けた方に何かひとつ命令できるってのどうだ?」
「ノッた!」
そんな簡単にノッちゃっていいのかよ?これはバトルじゃねぇんだぞ。
オレ様とユウリどっちの方が足が長い?そこ見ただけで、オレ様が勝つに決まってるだろ。
「んじゃ、オレ様の漕ぐスピードの速さ見せつけてやるぜ。ヨーイドン!」
「ええええ!?スタート早!キバナさんその前にちょっと待ってくださ……!あーあ行っちゃった。
…………大丈夫かな?」
直前にユウリが何か言っていたが先手必勝。
こんなのはまっすぐ一直線に島に漕げばいいだけだ。
ユウリより速く漕げる自信もあるし、オレ様の勝ちは決まったも同然。
ユウリが少々焦って漕ぎ出す姿がチラリと見える。だが、そのユウリは一直線にオレ様の後を追って来るのではなく、遠回りして島を目指していた。ん?なんで??
その時、すでに勝った気分でユウリへの命令を思い浮かべていたオレ様の前に大きく波が立った。
「タマンタかー。のどかでいいな」
いや、タマンタ達特有のしぶきとは違う。
前からだけではない、横方向からも波が立って一直線に向かってきた。
特徴的なヒレが波の隙間から見えているのは気のせい、と思いたいが気のせいじゃない。
海上を走るオレ様の目に、赤く光る目玉がギラリと映る。
血の気がひいたとはこの事。
「げぇ!?」
サメハダー出たんだけど!!
海に出没する超凶暴なポケモンの中でも最たるもの。それがサメハダーだ。
大型船すら強靭な大顎でバラバラにする上、歯は折れてもすぐに生える。
大昔は何人もの人間がサメハダーの餌食に……これはサメハダーが主役の映画の話だが、映画の中には真実が含まれるものも多い。
その最高速度はなんと120キロ!オレ様終わった。
かつてないほどの速度を出したと思う。
勝負にポケモン使うの禁止、と言ってしまった事が頭の中にまだあったのだろうか。オレ様はポケモンを出すという選択肢が全く頭に浮かばなかった。
そもそもハンドル握ってるし、オレ様のポケモンの誰を出せばいい!?
というかこの様子じゃ、ポケモン達もボールの中で恐怖に固まっているだろう。
オレ様のポケモンは強いが、テンパったトレーナーに合わせて、彼らも判断が鈍っているはず。
「うおおお食われる……!!」
サメハダーのずらりと生えた牙がすぐ背後に迫り、さすがのオレ様も恐怖で涙目を浮かべる。
目の前が真っ白になり、サメハダーが起こした波か他の波か、大量の水がオレ様をずぶ濡れにしたところで意識が急速に遠のいた。
おかげで、サメハダーに向かってユウリがミロカロスにハイドロポンプを指示したことも、当然知らない。
「キバナさん!大丈夫ですか!キバナさん!?どうしよう、人工呼吸すべき!?」
気がついたら慌てたユウリがオレ様の顔を覗き込み、ゆさゆさと体を揺すっていた。
この分だと、勝負はオレ様の負けか。
ま、オロオロしてるユウリが見れたからよしとするか。
それにこのまま目を閉じてればキスしてくれそうだ。もうちょっと目を閉じておこう。
「ん……」
おとなしくしていれば、ふにゅ、とユウリのやわらかくあったけぇ唇が当てられる。うわ気持ちいい。
よく考えたらユウリからのキスなんて初めてだ。(キスした経験なんてそれこそ少ないけど)
それが人工呼吸をしようとしてのものだとしても、キスはキス。嬉しいのに変わりない。
高揚感が抑えきれそうにない。精神を落ち着かせようと鼻で静かに息を吸った。
……逆効果だった。
ユウリの髪も海水で濡れたのだろう、潮水の香りに混じりユウリの甘い匂いが漂ってきた。
超至近距離で嗅いだその香りに、頭がクラクラしてくる。
「あれ?呼吸は戻ってる……ぽい?
じゃあなんでキバナさん起きないの?もしかしてどこかぶつけたり怪我してる……?」
ギク!!
鼻呼吸でバレたようだ。
だが、ユウリはオレ様の焦りに気がつかず、まだ心配してくれている。
「べあー」
「ダクマは治療手伝ってくれるの?ありがとうね。なら、バッグから人間用のお薬とおいしい水持ってきてくれる?」
「べあま」
ダクマすらオレ様の心配を……!
いや、この場合はユウリの手伝いをして少しでもラクさせたいだけだろう。
「!!?」
そこまで考えたところで、ユウリの手がオレ様の肌に触れた。
▼キバナはこんらんした。
「怪我はしてなさそう、よかった。
……っていうか、キバナさん腹筋ばきばきだぁ」
そう、腹筋を上から下へなぞるように下腹部方面にススス、と。
それ以上はヤバいー!!
「あっ!キバナさん起きた!!」
しまった、おかげで目を開けちまった。
ちょっともったいなかったかもな。
「大丈夫ですか?体痛いとこありますか?」
「ああ、全然大丈夫だぜ」
「ならよかった!
サメハダーに囲まれてるキバナさん見たら、頭プッツンしてドロポン撃ってました」
笑顔で言ってるけど、頭プッツンするユウリこわい……。
うん、知ってた。
チャンピオンだもんな、バトル時の顔みればわかる。プッツンしてる時あるよな。
「サンキューな。助かった」
「でも、ポケモン出しちゃったんで私の負けですかね」
「トラブルあったしポケモン出しちまっても仕方ねーよ。勝負はこの次に持ち越しだ」
またやろう、と続けたらユウリは嬉しそうに笑った。
よし、これで次の約束も取り付けたもの同然!