ユウリ、キバナさんと鎧島行く、の巻
ジムトレーナーとの練習試合を終えたオレ様は、たまごをあたためながらひとり休憩をとっていた。
冷たいミックスオレが五臓六腑に染み渡るぜ。
「キバナさーん!」
この声は愛しのユウリ!!
オレ様はコータスと共にたまごをあたためる手を休め、声がした方へと視線を向けた。
「ぶほっ!」
見た瞬間、ミックスオレ吹いた。
オレ様はもちろん、腕の中のたまごがベタベタのベトベターになった。
このたまごの中身はベトベターじゃないけどな。
「うわー。ふつう、人が挨拶した瞬間吹き出します?」
「仕方ないだろ?口の中にのみこむ寸前のミックスオレがいたんだよ!」
「『ためこん』で『はきだす』仕草はポケモンだけにしてください」
「すまんすまん。
それより、なんだその……昔に見覚えあるようなないような格好」
これまでの統計上、ユウリはかわいい格好や少し背伸びしたこっちがどきっとするような格好をすることが多い。
が、今回は違った。
黄色に黒が特徴的な、まるでカラテオウたちの道着に似た衣装に身を包んでいたのだ。
昔、この格好をしていた奴がいたが……すぐに思い出せない。
いや、ユウリが着ればなんでもかわいいけどな!?
黄色と黒だと、ピカチュウ配色にも思えるが、それとは違う。
同じ配色の膝当てにリュックも背負い、そして極め付けに『マスター道場』の文字が光っている。
マスター道場……。
「ああ、はいはいはい……!もうわかった。そのまま書いてあった!」
タオルでたまごと自分自身をごしごし拭きながらそう返す。
うげー、ベタベタ度が半端ない。これではベトベター通り越してベトベトンだ。
ミックスオレじゃなくておいしい水にしておけばよかった。
「もしかしなくても鎧島行ってた……よな?」
「はいっ!よくわかりましたね!」
有名な観光地ではないため知らない奴も多いが、知ってる奴は知っている、ワイルドエリアの奥地並みに凶暴なポケモンの生息域。
それが鎧島だ。
誰だよ、かわいいかわいいユウリに鎧島に行く許可与えたのは!
女の子に鎧島なんて危険だっつーの。
というのは建前で、今だって強いのにさらに誰も太刀打ちできないチャンピオンになっちまうだろうが。
「えへへー、ダンデさんからお勧めの場所だぞ!って『ヨロイパス』なるものもらったんですよー」
「……やっぱあいつか」
この子にしてあの男あり。
ダンデはユウリの父親ではないが、似たもの同士なのか、どちらもポケモン一筋のバトルマニアだ。
まだ見ぬポケモンをユウリに見せるため、鎧島の存在を教えるなんて予想できた事ではないか。
それにユウリがチャンピオンという重責に耐えられず、どこか違う地方、国に行ってしまうのを防ぐにも、世俗から離れた鎧島はうってつけだったろう。
それに関して未遂とはいえ前科がある。
「最初は新しいポケモン探しに観光がてら行く事になっていたんですけど、到着したら先にいるはずのダンデさんがいなくて。
かわりに迎えてくれたのは毒タイプ使いのトレーナーさんで、あれよあれよでマスター道場にて修行することになったんです」
「理由はどうあれ、ユウリみたいな強いコが行けば道場に連行されるだろうなぁ」
あそこは、強い子を放っておかない場所だしダンデも修行した場所でもある。
というか、ダンデ貴様ァ!
おまえが方向音痴で迷うから、オレ様の大事なユウリが鎧島で修行なんぞやる羽目になっただろうが!!
「けどあの島は獰猛なポケモンの巣窟だろ。
観光に修行?危険すぎる……!」
だってユウリはいくらチャンピオンといえども、まだ年端もいかない子供だぞ。
かわいい子には旅させろ?
カエンジシは我が子であるシシコを千尋の谷に落とすから大丈夫だ??そんなわけあるか。
ダンデが許そうと、他の誰が許そうともオレ様が許さん。
「えー、とっても綺麗な景色がいっぱいで、かわいいポケモンまみれでしたよ?危険なんてどこにもなかったような……。
それに道場のみなさんもよくしてくれましたし!」
が、ユウリ本人が自分自身を許可し、島に身を置いているのだった……。本人があの島を気に入ったのなら、オレ様には何もいう権利がない。
そのあとは、ユウリが毒タイプ使いのトレーナーから受けた数々の意地悪を聞かされた。
なんでも、最後の修行でのバトルでは、足元にどくびしを撒いて挑んでくるという所謂『不正』をやらかしてきたようだ。
なんだそいつ許さん。
だがユウリが言うには、強くなりたいって思いが大きいちょっとツンデレな先輩らしい。
どう考えてもひどい嫌がらせだと思うが、これをツンデレで片付けるとは……。
やっぱりユウリは器がデカい!
けどそのトレーナー……会うことがあれば、オレ様のジュラルドンが伸してやる。鋼は毒を跳ね返すんだぜ。
「それで、そんな修行中な格好のユウリはどうしてここに?まさかオレ様に会いたくなったとかか?
わかるー、オレ様もポケモンバトルに明け暮れてると、癒しが欲しくなるからよ」
オレ様の癒し、ユウリ……。
目の前にあった小さなユウリの頭を思わず撫でると、頬が緩んで止まらない。
「え?なんですかそれ、違いますよ〜。
用があるのはこの子にです」
するりとオレ様の腕から抜けたユウリが、ズバット言い切る。
ちなみにガラル本島にズバットはいないが、似たポケモンならコロモリとオンバットがいる。
オンバットかわいい。でもユウリの♀のオンバーンこわい。
目に見えて落ち込んだオレ様を放っておいたユウリが差した『この子』。
それは、オレ様が抱えていたポケモンのたまごだった。
冷たいミックスオレが五臓六腑に染み渡るぜ。
「キバナさーん!」
この声は愛しのユウリ!!
オレ様はコータスと共にたまごをあたためる手を休め、声がした方へと視線を向けた。
「ぶほっ!」
見た瞬間、ミックスオレ吹いた。
オレ様はもちろん、腕の中のたまごがベタベタのベトベターになった。
このたまごの中身はベトベターじゃないけどな。
「うわー。ふつう、人が挨拶した瞬間吹き出します?」
「仕方ないだろ?口の中にのみこむ寸前のミックスオレがいたんだよ!」
「『ためこん』で『はきだす』仕草はポケモンだけにしてください」
「すまんすまん。
それより、なんだその……昔に見覚えあるようなないような格好」
これまでの統計上、ユウリはかわいい格好や少し背伸びしたこっちがどきっとするような格好をすることが多い。
が、今回は違った。
黄色に黒が特徴的な、まるでカラテオウたちの道着に似た衣装に身を包んでいたのだ。
昔、この格好をしていた奴がいたが……すぐに思い出せない。
いや、ユウリが着ればなんでもかわいいけどな!?
黄色と黒だと、ピカチュウ配色にも思えるが、それとは違う。
同じ配色の膝当てにリュックも背負い、そして極め付けに『マスター道場』の文字が光っている。
マスター道場……。
「ああ、はいはいはい……!もうわかった。そのまま書いてあった!」
タオルでたまごと自分自身をごしごし拭きながらそう返す。
うげー、ベタベタ度が半端ない。これではベトベター通り越してベトベトンだ。
ミックスオレじゃなくておいしい水にしておけばよかった。
「もしかしなくても鎧島行ってた……よな?」
「はいっ!よくわかりましたね!」
有名な観光地ではないため知らない奴も多いが、知ってる奴は知っている、ワイルドエリアの奥地並みに凶暴なポケモンの生息域。
それが鎧島だ。
誰だよ、かわいいかわいいユウリに鎧島に行く許可与えたのは!
女の子に鎧島なんて危険だっつーの。
というのは建前で、今だって強いのにさらに誰も太刀打ちできないチャンピオンになっちまうだろうが。
「えへへー、ダンデさんからお勧めの場所だぞ!って『ヨロイパス』なるものもらったんですよー」
「……やっぱあいつか」
この子にしてあの男あり。
ダンデはユウリの父親ではないが、似たもの同士なのか、どちらもポケモン一筋のバトルマニアだ。
まだ見ぬポケモンをユウリに見せるため、鎧島の存在を教えるなんて予想できた事ではないか。
それにユウリがチャンピオンという重責に耐えられず、どこか違う地方、国に行ってしまうのを防ぐにも、世俗から離れた鎧島はうってつけだったろう。
それに関して未遂とはいえ前科がある。
「最初は新しいポケモン探しに観光がてら行く事になっていたんですけど、到着したら先にいるはずのダンデさんがいなくて。
かわりに迎えてくれたのは毒タイプ使いのトレーナーさんで、あれよあれよでマスター道場にて修行することになったんです」
「理由はどうあれ、ユウリみたいな強いコが行けば道場に連行されるだろうなぁ」
あそこは、強い子を放っておかない場所だしダンデも修行した場所でもある。
というか、ダンデ貴様ァ!
おまえが方向音痴で迷うから、オレ様の大事なユウリが鎧島で修行なんぞやる羽目になっただろうが!!
「けどあの島は獰猛なポケモンの巣窟だろ。
観光に修行?危険すぎる……!」
だってユウリはいくらチャンピオンといえども、まだ年端もいかない子供だぞ。
かわいい子には旅させろ?
カエンジシは我が子であるシシコを千尋の谷に落とすから大丈夫だ??そんなわけあるか。
ダンデが許そうと、他の誰が許そうともオレ様が許さん。
「えー、とっても綺麗な景色がいっぱいで、かわいいポケモンまみれでしたよ?危険なんてどこにもなかったような……。
それに道場のみなさんもよくしてくれましたし!」
が、ユウリ本人が自分自身を許可し、島に身を置いているのだった……。本人があの島を気に入ったのなら、オレ様には何もいう権利がない。
そのあとは、ユウリが毒タイプ使いのトレーナーから受けた数々の意地悪を聞かされた。
なんでも、最後の修行でのバトルでは、足元にどくびしを撒いて挑んでくるという所謂『不正』をやらかしてきたようだ。
なんだそいつ許さん。
だがユウリが言うには、強くなりたいって思いが大きいちょっとツンデレな先輩らしい。
どう考えてもひどい嫌がらせだと思うが、これをツンデレで片付けるとは……。
やっぱりユウリは器がデカい!
けどそのトレーナー……会うことがあれば、オレ様のジュラルドンが伸してやる。鋼は毒を跳ね返すんだぜ。
「それで、そんな修行中な格好のユウリはどうしてここに?まさかオレ様に会いたくなったとかか?
わかるー、オレ様もポケモンバトルに明け暮れてると、癒しが欲しくなるからよ」
オレ様の癒し、ユウリ……。
目の前にあった小さなユウリの頭を思わず撫でると、頬が緩んで止まらない。
「え?なんですかそれ、違いますよ〜。
用があるのはこの子にです」
するりとオレ様の腕から抜けたユウリが、ズバット言い切る。
ちなみにガラル本島にズバットはいないが、似たポケモンならコロモリとオンバットがいる。
オンバットかわいい。でもユウリの♀のオンバーンこわい。
目に見えて落ち込んだオレ様を放っておいたユウリが差した『この子』。
それは、オレ様が抱えていたポケモンのたまごだった。