ユウリ、ナックルシティジムトレーナー体験、の巻
「ポケルスエンザかぁ……かかったことないかも。
とおーい昔にホップがかかったのを見たことありますが、確か高熱が出る風邪ですよね?」
「うわ、かかったことないのかよ。
ユウリって風邪ひかなさそうだもんな……」
「私だって風邪ひきますけど!?馬鹿は風邪ひかないって言ってるんですね!ひどい!」
「誰も馬鹿なんて言ってないだろ」
風邪もふきとばしで戦線離脱してしまうほど元気がいいって言いたかったのに。
ユウリに伝われ、この気持ちと愛。
「キバナさんだって風邪ひいてないじゃないですかぁ!」
「リーダーまで風邪ひいたらまずいだろ。オレ様はひかないように普段から徹底してんの」
「てっていこうせん?」
「どこまでバトル馬鹿なんだよ……。早めに予防接種打ったり、規則正しい生活してるだけだな!」
本格的な冬が来て流行してくるその前に、毎年予防接種を受けに行く。
ドラゴン使いは寒さにも弱いとでもいうのか、オレ様は一度風邪をひいたら治りが遅い。冬にも弱い。なら徹底するにこしたことはない。
「ユウリもチャンピオンなら、健康管理はきちんとしておいたほうがいいぞ。体調不良でチャレンジャーとバトルがうまくできませんでしたー、じゃ済まないんだから」
オレ様との子どもを産むためにも、今から身体は大事にしておいてもらわないと困るしな?
「なんなら今から予防接種打ちに行くか?時間あってここに来たなら、病院行く時間もあるだろ」
「ひい!予防接種痛いじゃないですかやだー!」
「ポケモンのミサイル針より痛くない。安心しろって」
「うそだあ〜!」
注射と聞いて、特性にげごしに変わったユウリが自分の元から逃げようとするのを、腰を抱いてそこへ留め置く。
近すぎる距離にも、腰に置かれた手にも赤くならないのは、注射への恐怖ゆえか。
それにしても細い腰だ。体も小さいな。大人になるまでいろいろなことは我慢しなくては、と再認識できた。
ナックルシティの病院を調べようと、逃げようとするのをユウリを押さえて、スマホロトムを手に取る。
まだ受付時間は終了していないはずだが、一応確認しておこう。こういうのは大事だ。
スマホロトムの画面をスライドした瞬間、電話が鳴った。
表示を見れば、ネズ。ということは。
「おー、ネズ。チャレンジャーか」
『はい、そちらに向かいましたからよろしくお願いしますよ?』
「よろしくしたいが、今日はジムトレーナーが、……って、言うだけ言って切りやがった」
チャレンジャーがネズを突破した。
なかなかやるな。と思うなかれ。ネズまでもたどり着くチャレンジャーは強いトレーナーということは確かだが、チャレンジャーの多さとトーナメントまで進むチャレンジャーの数は比例しない。極端に少ないのだ。
だからジムリーダー達は、ユウリがチャンピオンになってからというものの、新たなるチャレンジャー達に甘い。絶妙なさじ加減で手を抜いて突破させている。
なので、時折こうしてネズを突破してオレ様のところまでたどり着くトレーナーがいる。
ただし、オレ様を突破する『特に男の』トレーナーはほぼゼロであるが。手加減?しない。
「……チャレンジャー、来るんですね」
「そのようだ」
「じゃあ病院は無しですね!やったー!!」
やったー、じゃない。
ジムトレーナーいないし、いきなりオレ様とバトルは、さすがにかわいそうすぎるよな。チャレンジャーの性別聞いてないから、男だったら完膚なきまでに叩きのめすけど。
というか、ジムトレーナーとのバトルをさせずにボス戦させたらオレ様が怒られる未来が見えてしまった。こちら側がダメージ受けるみらいよちとかなんだそれ。
「あ、でもジムトレーナーさんいないのに、どうするんですか?」
「今それでオレ様も悩んでる」
スタジアムを休みにしてしまうわけにはいかない。先ほどまではわりと本気でオフの日にしてしまおうかとも考えていたが、チャレンジャーが来るという時にいきなりスタジアムの休みを申請するのはダメだ。
ここは始末書覚悟でいきなりのボス戦とさせていただこう。
「あ、私がジムトレーナーやりますよ」
「は?なんだって?」
今とんでもない言葉聞こえたぞ。
「だから、お休みしたジムトレーナーさんのかわりに私がジムトレーナーやるんです。私が相手の力量を見て、キバナさんに繋げればいいんですよね?」
ちょっと待て。
オレ様ジムリーダー。お前チャンピオン。そう、腹立たしいがお前オレ様より強い存在。OK?
いくら自由奔放なチャンピオンといえど、ジムトレーナーなんてやれる立場じゃない。
ジムリーダーに繋げるという、ジムトレーナーの定義は間違ってないが。
気持ちは嬉しいが、でも。
「それは、……かなりまずいんじゃないか?」
強さ的にも、社会ルール的にも。
チャレンジャーも、ジムトレーナーだと思ったらチャンピオンだったとか、実力発揮できないだろ。
「私が私だとバレないようにすればいいんですよね?ドラゴンセットのユニフォームは持ってますし、サングラスもかけますよ」
ごそごそとフリルのついた黒いリュックを漁り、ドラゴンタイプのスポーツサングラスをかけるユウリ。
んー、そのサングラスちょっとぶかぶかだな。今度つるを調整しに眼鏡屋に連れて行こう。ぶかぶか可愛いけど。
「ポケモンはどうするんだよ。
ポケモンでバレるし、だいたいここはドラゴンタイプ専門だぜ。
ユウリはオンバーン以外のドラゴンタイプ連れていたか?」
「他のドラゴンさんならボックスに待機中です!
聡い子たちなので、今頃私の気持ちを感じ取ってアップを始めているかもしれませんよ〜?」
オレ様やダンデに勝った時の最強ポケモン軍団以外にもたくさんのポケモンを育てているのは知っていたが……え、感じ取るとか、エスパーなドラゴンでもいるの?なにそれ怖い。
「ポケモンがいるならいいが問題はもうひとつある。オレ様のジムの特性。ジム内にしかけがないかわりに、天候を駆使した戦略するアレ覚えてるか。
ユウリに天気パ構成作れるのか〜?」
「もちろん!砂パができますよ」
砂パ。
すなあらしや、すなおこしを使い、相手を苦しめるバトルスタイルを得意とするポケモンのパーティー構成だ。
いわ、じめん、はがねのタイプを持つポケモンはダメージがないが、それ以外のポケモンはじわじわとダメージを負う。
ついでに指示するトレーナーや、観客の服や顔にも被害が出る。
防塵ゴーグル着用をお勧めする。
口の中がジャリジャリになることだけは、勘弁しろよ?オレ様もなるのだから。
因みにナックルスタジアムが汚れる原因のほとんどがこれ。
つまりはすなあらしを多用するオレ様が一番汚していることになるわけで、自分で掃除するのは当たり前なんだよなぁー。
とおーい昔にホップがかかったのを見たことありますが、確か高熱が出る風邪ですよね?」
「うわ、かかったことないのかよ。
ユウリって風邪ひかなさそうだもんな……」
「私だって風邪ひきますけど!?馬鹿は風邪ひかないって言ってるんですね!ひどい!」
「誰も馬鹿なんて言ってないだろ」
風邪もふきとばしで戦線離脱してしまうほど元気がいいって言いたかったのに。
ユウリに伝われ、この気持ちと愛。
「キバナさんだって風邪ひいてないじゃないですかぁ!」
「リーダーまで風邪ひいたらまずいだろ。オレ様はひかないように普段から徹底してんの」
「てっていこうせん?」
「どこまでバトル馬鹿なんだよ……。早めに予防接種打ったり、規則正しい生活してるだけだな!」
本格的な冬が来て流行してくるその前に、毎年予防接種を受けに行く。
ドラゴン使いは寒さにも弱いとでもいうのか、オレ様は一度風邪をひいたら治りが遅い。冬にも弱い。なら徹底するにこしたことはない。
「ユウリもチャンピオンなら、健康管理はきちんとしておいたほうがいいぞ。体調不良でチャレンジャーとバトルがうまくできませんでしたー、じゃ済まないんだから」
オレ様との子どもを産むためにも、今から身体は大事にしておいてもらわないと困るしな?
「なんなら今から予防接種打ちに行くか?時間あってここに来たなら、病院行く時間もあるだろ」
「ひい!予防接種痛いじゃないですかやだー!」
「ポケモンのミサイル針より痛くない。安心しろって」
「うそだあ〜!」
注射と聞いて、特性にげごしに変わったユウリが自分の元から逃げようとするのを、腰を抱いてそこへ留め置く。
近すぎる距離にも、腰に置かれた手にも赤くならないのは、注射への恐怖ゆえか。
それにしても細い腰だ。体も小さいな。大人になるまでいろいろなことは我慢しなくては、と再認識できた。
ナックルシティの病院を調べようと、逃げようとするのをユウリを押さえて、スマホロトムを手に取る。
まだ受付時間は終了していないはずだが、一応確認しておこう。こういうのは大事だ。
スマホロトムの画面をスライドした瞬間、電話が鳴った。
表示を見れば、ネズ。ということは。
「おー、ネズ。チャレンジャーか」
『はい、そちらに向かいましたからよろしくお願いしますよ?』
「よろしくしたいが、今日はジムトレーナーが、……って、言うだけ言って切りやがった」
チャレンジャーがネズを突破した。
なかなかやるな。と思うなかれ。ネズまでもたどり着くチャレンジャーは強いトレーナーということは確かだが、チャレンジャーの多さとトーナメントまで進むチャレンジャーの数は比例しない。極端に少ないのだ。
だからジムリーダー達は、ユウリがチャンピオンになってからというものの、新たなるチャレンジャー達に甘い。絶妙なさじ加減で手を抜いて突破させている。
なので、時折こうしてネズを突破してオレ様のところまでたどり着くトレーナーがいる。
ただし、オレ様を突破する『特に男の』トレーナーはほぼゼロであるが。手加減?しない。
「……チャレンジャー、来るんですね」
「そのようだ」
「じゃあ病院は無しですね!やったー!!」
やったー、じゃない。
ジムトレーナーいないし、いきなりオレ様とバトルは、さすがにかわいそうすぎるよな。チャレンジャーの性別聞いてないから、男だったら完膚なきまでに叩きのめすけど。
というか、ジムトレーナーとのバトルをさせずにボス戦させたらオレ様が怒られる未来が見えてしまった。こちら側がダメージ受けるみらいよちとかなんだそれ。
「あ、でもジムトレーナーさんいないのに、どうするんですか?」
「今それでオレ様も悩んでる」
スタジアムを休みにしてしまうわけにはいかない。先ほどまではわりと本気でオフの日にしてしまおうかとも考えていたが、チャレンジャーが来るという時にいきなりスタジアムの休みを申請するのはダメだ。
ここは始末書覚悟でいきなりのボス戦とさせていただこう。
「あ、私がジムトレーナーやりますよ」
「は?なんだって?」
今とんでもない言葉聞こえたぞ。
「だから、お休みしたジムトレーナーさんのかわりに私がジムトレーナーやるんです。私が相手の力量を見て、キバナさんに繋げればいいんですよね?」
ちょっと待て。
オレ様ジムリーダー。お前チャンピオン。そう、腹立たしいがお前オレ様より強い存在。OK?
いくら自由奔放なチャンピオンといえど、ジムトレーナーなんてやれる立場じゃない。
ジムリーダーに繋げるという、ジムトレーナーの定義は間違ってないが。
気持ちは嬉しいが、でも。
「それは、……かなりまずいんじゃないか?」
強さ的にも、社会ルール的にも。
チャレンジャーも、ジムトレーナーだと思ったらチャンピオンだったとか、実力発揮できないだろ。
「私が私だとバレないようにすればいいんですよね?ドラゴンセットのユニフォームは持ってますし、サングラスもかけますよ」
ごそごそとフリルのついた黒いリュックを漁り、ドラゴンタイプのスポーツサングラスをかけるユウリ。
んー、そのサングラスちょっとぶかぶかだな。今度つるを調整しに眼鏡屋に連れて行こう。ぶかぶか可愛いけど。
「ポケモンはどうするんだよ。
ポケモンでバレるし、だいたいここはドラゴンタイプ専門だぜ。
ユウリはオンバーン以外のドラゴンタイプ連れていたか?」
「他のドラゴンさんならボックスに待機中です!
聡い子たちなので、今頃私の気持ちを感じ取ってアップを始めているかもしれませんよ〜?」
オレ様やダンデに勝った時の最強ポケモン軍団以外にもたくさんのポケモンを育てているのは知っていたが……え、感じ取るとか、エスパーなドラゴンでもいるの?なにそれ怖い。
「ポケモンがいるならいいが問題はもうひとつある。オレ様のジムの特性。ジム内にしかけがないかわりに、天候を駆使した戦略するアレ覚えてるか。
ユウリに天気パ構成作れるのか〜?」
「もちろん!砂パができますよ」
砂パ。
すなあらしや、すなおこしを使い、相手を苦しめるバトルスタイルを得意とするポケモンのパーティー構成だ。
いわ、じめん、はがねのタイプを持つポケモンはダメージがないが、それ以外のポケモンはじわじわとダメージを負う。
ついでに指示するトレーナーや、観客の服や顔にも被害が出る。
防塵ゴーグル着用をお勧めする。
口の中がジャリジャリになることだけは、勘弁しろよ?オレ様もなるのだから。
因みにナックルスタジアムが汚れる原因のほとんどがこれ。
つまりはすなあらしを多用するオレ様が一番汚していることになるわけで、自分で掃除するのは当たり前なんだよなぁー。