ユウリとキャンプするキバナさん
「はあ……ここだと、たまにバトルの強いトレーナーさんとかバトルの強いパパラッチが来ちゃうかもだし、私もそのシロガネヤマに行っちゃおうかなー」
ユウリの吐き出したため息は寒さで白く、キバナはユウリの吐いた言葉で頭が真っ白になりそうだった。
「チャンピオンの座を譲って、か?」
「そーそー。なんなら、キバナさんにお譲りしたいくらいです。
もちろん、バトルはしますよ。負けるのはほんとはすごーく嫌ですけど、キバナさんになら……」
「……………」
ふざけるな。
わざと得た勝利なんか真っ平ごめんだし、その結果得たチャンピオンの座?ダンデにすら勝ってないオレ様がか?
それにユウリがガラルから出てオレ様の知らない土地に行く?
ふざけるな。
「シロガネやまは、どこの国のどの地方だろ。ちょっと調べてみよ、ひゃ!?」
スマホロトムを手にしてネットを開くその手を、掴んで引き寄せる。
「あ゛?ふざけたこと言うんじゃねぇよ。
チャンピオンの座は本気のぶつかり合いでお前からもぎ取ってやる。
手加減されて得た勝利なんて嬉しくもなんともないの、ユウリはわかってんだろ?
なにより他のところになんか」
ユウリの目に映る自分の目は、人好きのするいつもの垂れ目がちのものではなく、バトルする際に見せている鋭いそれに酷似していた。
獲物を捕らえるための蒼い瞳。
「……行かせねぇよ」
「え、ぁ、…んっ」
我慢できなかった。
ユウリの小さな唇に、噛み付くように自らの唇を重ねる。
驚愕に固まるユウリ。
彼女が抱えていたユキハミが、足元に積もるまっさらな雪の上にぽてっと落ちた。
それでもやめない。
ユウリの小さな体を逃さないとばかりに抱きしめ、唇を貪る。
その唇は柔らかく、そしてほんのりと甘い。
「ン、甘……。
さっきユウリが飲んだエネココアの味がする」
ぺろ、と舌を出して唇を舐める。
キスの味は酸っぱくて少し甘いウタン味、なんて思ってたけどそうでもなかったな。
顔を真っ赤にして困惑の表情をただただ浮かべるユウリがかわいくてたまらない。
「なんでこんなことって顔してるな。
くらいついただけだろ?オレ様のコータスに、ユウリのカジリガメがしたのと同じだよ」
一度離された唇。
ユウリの小さな唇は、にっこりと笑ったキバナの厚い唇に、再びいとも簡単に覆い尽くされた。まさにくらいつく。だ。
「んんっ……は、ふぅっ……」
「気になってるコがオレ様の前から消えちまうかもしれないってなったら、こうして食らいついてでも引き止めると思うぜ」
「気になってる、子……?」
食らいついたなら、もう逃げ出す事はできない。ポケモンバトルと同じにな。
唇を離し、酸欠ではふはふ休憩するユウリの頬に手を置く。
無骨な手がユウリの頬をするするとすべる。
大人と子供ほどの差がある大きな掌で彼女を抱える。
羽のように軽い。よし、このままオレ様のテントの中に行こう。
ユキハミこそ外に出しているが、ユウリの他のポケモンはすべてボールの中である。それも満腹という幸福に包まれ寝ている事だろう。
よく食べよくバトルしよく眠る。彼女に似てしまった手持ちポケモンたちは、日々規則正しい生活を送っている。夜に強いオンバットすら、ぐっすり夢の中。
つまり、邪魔が入る心配はない訳だ。
「え、……ひゃっ、……キバナ、さん??」
「ダイジョーブ、怖いことはしないぜ。
ただ、ほかに取られないようマーキングくらいはしておこうと思ってな?」
今のユウリの歳で手を出せば、警察に捕まる。ガーディに追われるのはごめんだ。
あ。ガーディよりもっとこわいユウリの保護者役であるダンデに殺されるかもしれない。彼のリザードンにも。
我がライバルは、独身のはずだと言うにユウリの父親みたいな顔をする。リザードンもだ。
おいそのスキルは弟のポップに発揮してやれ。
キバナの八重歯がキラリと光る。
瞳に宿る獣の気配も、ギラギラしていた。
抱えられて更に真っ赤になり、目をギュッと閉じるユウリかわいい。
これでも我慢してるし、これからも我慢し続けるんだ。だから最後までしないというに、かわいい反応だ。
その心臓の鼓動までこっちに届いてきそうである。
おっと、テントに入る前にユウリのユキハミをボールに戻しておいてやろう。
そう思い、振り返った瞬間だった。
「おわ!?」
真っ白な羽根がキバナに向かって大きく羽ばたき、大量の雪がキバナを雪崩に巻き込み雪の中に沈めた。
キバナが抱えていたはずのユウリが、羽根の持ち主に抱えられた状態で。
傍らの気配が変わったからか、それともキバナの声に気が付いたからか、そっと目を開けたユウリはギョッとする。
キバナだったはずの抱え主はユキハミ……ではなく、進化したモスノウに。
キバナは雪という衣に包まれたクルマユになっていたのだから。
「え!?ええ!??ユキハミちゃ、進化……?今進化したの!?
って、キバナさんんん!?ちょ、大丈夫ですか!!?」
「ユウリ〜……オレ様氷タイプはやっぱ苦手だわ。
こいつどうやってゆきなだれ覚えたの……」
「え、えーと?私に向かってキバナさんがしたかじりつくを先攻として、その間にカバンから見つけたゆきなだれの技マシンを覚えた?ってところですかね?
後攻扱いになったから、この威力なんだと思います……」
「詳しい解説ドーモ」
ユキハミ、もといモスノウはもう進化するほど懐いていたのだろう、夜になったから進化したようだ。
それと同時にトレーナーの貞操の危機を感じたのか、こうして進化してゆきなだれで攻撃、というわけか。
やれやれ。
ユウリのポケモン、という守りの壁はまだまだ厚いようだ。それは最近捕まえばかりのポケモンにも該当する。
てっぺきかよ。防御どころか、特防までめちゃくちゃ硬い気がする。
これで、ゆきなだれで倒れたオレ様というポケモンの、くらいつくの効果はなくなっちまった。
だが。ユウリにオレ様という『雄』の個体を意識させることには成功したからよしとしよう。
次は逃げられないうちに、マスターボール投げちまえばいいだけだ。
ユウリの吐き出したため息は寒さで白く、キバナはユウリの吐いた言葉で頭が真っ白になりそうだった。
「チャンピオンの座を譲って、か?」
「そーそー。なんなら、キバナさんにお譲りしたいくらいです。
もちろん、バトルはしますよ。負けるのはほんとはすごーく嫌ですけど、キバナさんになら……」
「……………」
ふざけるな。
わざと得た勝利なんか真っ平ごめんだし、その結果得たチャンピオンの座?ダンデにすら勝ってないオレ様がか?
それにユウリがガラルから出てオレ様の知らない土地に行く?
ふざけるな。
「シロガネやまは、どこの国のどの地方だろ。ちょっと調べてみよ、ひゃ!?」
スマホロトムを手にしてネットを開くその手を、掴んで引き寄せる。
「あ゛?ふざけたこと言うんじゃねぇよ。
チャンピオンの座は本気のぶつかり合いでお前からもぎ取ってやる。
手加減されて得た勝利なんて嬉しくもなんともないの、ユウリはわかってんだろ?
なにより他のところになんか」
ユウリの目に映る自分の目は、人好きのするいつもの垂れ目がちのものではなく、バトルする際に見せている鋭いそれに酷似していた。
獲物を捕らえるための蒼い瞳。
「……行かせねぇよ」
「え、ぁ、…んっ」
我慢できなかった。
ユウリの小さな唇に、噛み付くように自らの唇を重ねる。
驚愕に固まるユウリ。
彼女が抱えていたユキハミが、足元に積もるまっさらな雪の上にぽてっと落ちた。
それでもやめない。
ユウリの小さな体を逃さないとばかりに抱きしめ、唇を貪る。
その唇は柔らかく、そしてほんのりと甘い。
「ン、甘……。
さっきユウリが飲んだエネココアの味がする」
ぺろ、と舌を出して唇を舐める。
キスの味は酸っぱくて少し甘いウタン味、なんて思ってたけどそうでもなかったな。
顔を真っ赤にして困惑の表情をただただ浮かべるユウリがかわいくてたまらない。
「なんでこんなことって顔してるな。
くらいついただけだろ?オレ様のコータスに、ユウリのカジリガメがしたのと同じだよ」
一度離された唇。
ユウリの小さな唇は、にっこりと笑ったキバナの厚い唇に、再びいとも簡単に覆い尽くされた。まさにくらいつく。だ。
「んんっ……は、ふぅっ……」
「気になってるコがオレ様の前から消えちまうかもしれないってなったら、こうして食らいついてでも引き止めると思うぜ」
「気になってる、子……?」
食らいついたなら、もう逃げ出す事はできない。ポケモンバトルと同じにな。
唇を離し、酸欠ではふはふ休憩するユウリの頬に手を置く。
無骨な手がユウリの頬をするするとすべる。
大人と子供ほどの差がある大きな掌で彼女を抱える。
羽のように軽い。よし、このままオレ様のテントの中に行こう。
ユキハミこそ外に出しているが、ユウリの他のポケモンはすべてボールの中である。それも満腹という幸福に包まれ寝ている事だろう。
よく食べよくバトルしよく眠る。彼女に似てしまった手持ちポケモンたちは、日々規則正しい生活を送っている。夜に強いオンバットすら、ぐっすり夢の中。
つまり、邪魔が入る心配はない訳だ。
「え、……ひゃっ、……キバナ、さん??」
「ダイジョーブ、怖いことはしないぜ。
ただ、ほかに取られないようマーキングくらいはしておこうと思ってな?」
今のユウリの歳で手を出せば、警察に捕まる。ガーディに追われるのはごめんだ。
あ。ガーディよりもっとこわいユウリの保護者役であるダンデに殺されるかもしれない。彼のリザードンにも。
我がライバルは、独身のはずだと言うにユウリの父親みたいな顔をする。リザードンもだ。
おいそのスキルは弟のポップに発揮してやれ。
キバナの八重歯がキラリと光る。
瞳に宿る獣の気配も、ギラギラしていた。
抱えられて更に真っ赤になり、目をギュッと閉じるユウリかわいい。
これでも我慢してるし、これからも我慢し続けるんだ。だから最後までしないというに、かわいい反応だ。
その心臓の鼓動までこっちに届いてきそうである。
おっと、テントに入る前にユウリのユキハミをボールに戻しておいてやろう。
そう思い、振り返った瞬間だった。
「おわ!?」
真っ白な羽根がキバナに向かって大きく羽ばたき、大量の雪がキバナを雪崩に巻き込み雪の中に沈めた。
キバナが抱えていたはずのユウリが、羽根の持ち主に抱えられた状態で。
傍らの気配が変わったからか、それともキバナの声に気が付いたからか、そっと目を開けたユウリはギョッとする。
キバナだったはずの抱え主はユキハミ……ではなく、進化したモスノウに。
キバナは雪という衣に包まれたクルマユになっていたのだから。
「え!?ええ!??ユキハミちゃ、進化……?今進化したの!?
って、キバナさんんん!?ちょ、大丈夫ですか!!?」
「ユウリ〜……オレ様氷タイプはやっぱ苦手だわ。
こいつどうやってゆきなだれ覚えたの……」
「え、えーと?私に向かってキバナさんがしたかじりつくを先攻として、その間にカバンから見つけたゆきなだれの技マシンを覚えた?ってところですかね?
後攻扱いになったから、この威力なんだと思います……」
「詳しい解説ドーモ」
ユキハミ、もといモスノウはもう進化するほど懐いていたのだろう、夜になったから進化したようだ。
それと同時にトレーナーの貞操の危機を感じたのか、こうして進化してゆきなだれで攻撃、というわけか。
やれやれ。
ユウリのポケモン、という守りの壁はまだまだ厚いようだ。それは最近捕まえばかりのポケモンにも該当する。
てっぺきかよ。防御どころか、特防までめちゃくちゃ硬い気がする。
これで、ゆきなだれで倒れたオレ様というポケモンの、くらいつくの効果はなくなっちまった。
だが。ユウリにオレ様という『雄』の個体を意識させることには成功したからよしとしよう。
次は逃げられないうちに、マスターボール投げちまえばいいだけだ。