ユウリとキャンプするキバナさん
まるで新婚のように材料を手分けして切り、後ろからその後頭部を見つめる。
ああ、何度その小さな体を後ろから抱きしめたいと思ったことか。そんなことをすれば、調理中は危ないし、カレー作りをワクワクして見学しているユウリのポケモンたちから攻撃を受けそうだ。
特にあのブリムオン……あいつがオレ様を見る目は敵に向けるものだ。
オレ様のジュラルドンに一度敗北したことがあるせいかもしれないが、それ以外の理由もあるのはなんとなくわかる。
「ふふー、キバナさんのカレー楽しみだなあ」
「ユウリは食いしん坊だもんな」
「美味しいもの食べてる時ってすっごく幸せじゃないですか」
煮込まれていく具材を眺め、コイキングウチワで火力を調整しながら、ユウリは嬉しそうに笑う。
はなびらのまいでも繰り出したキレイハナのように、その笑顔の周りには花が舞って見えた。
その幸せ笑顔をする理由の中に、オレ様との時間も入ってたらいいんだけどなあ。
カレールウを加えて味を整え、違うフライパンに入れたドデカいヴルストをジュウジュウと焼いていると。
煮込み終えて仕上げにと、カレーの鍋の前に居座ったユウリが両手でハートの形を作った。
「おいしくなぁれ」
「ぶっ!?」
惚れているからというのも大きいだろう。
めちゃくちゃときめいた。
「なんだそのしぐさ?」
「いつも仕上げにしてるんですけど、こうしたほうが美味しくなるんですよ!ポケモン達も喜んでくれますし!」
いつもこの仕草をか!しかも美味しくなるって信じきってる!?
かわいいなオイ!!?
好きな子がかわいいポーズとると、効果は抜群なんだな。頭をドッコラーの鉄骨で殴られたかと思ったぜ。
あと、咄嗟に写真を撮ったロトムグッジョブ。これでまたひとつ写真が増えた。
カレーを器に盛り、その上にヴルストをドン!と乗せる。
パリパリに焼いたヴルストとスパイシーなカレーの匂いが食欲をそそり、ポケモン達もユウリも、キラキラした目で次々に口に運んでいる。
スプーンで口いっぱいに頬張っているので、頬がパンパンだ。
「ぷっ…!ホシガリスみたいな顔になってるぞ」
「とってもおいしいんですもん!
ちょっと辛いですけど、そこがまたいい〜」
「そーかそーか。喉につまらせないようにな!」
お口にあったなら何より。ピリ辛具合がユウリの口にちょうどいいようだ。
実はいつもオレ様が作るカレーは、本当はもっと辛いのだ。
まだまだおこちゃまなユウリのために、マゴを一個彼女の皿のカレーに加えたのが功を成したなぁ。
夕食のカレーを食べ終える頃には、日はとっぷりと暮れてきて、辺りは薄暗くなっている。
ワイルドエリア全体に聞こえていたアーマーガアの声は何処へやら、今はコロボーシやコロトックの歌声が夜の到来を歓迎していた。
カレーを作る際に焚いた火を囲み、食後の一杯を銀のマグカップで楽しむ。
これぞキャンプの醍醐味。
オレ様は遠いアローラ地方のポケリゾートというところで採れるポケマメ。それをローストして淹れたキレのあるブラックコーヒー。
ユウリのマグカップからはエネココアの甘い香りが漂う。
ふわふわした甘みがあるそれを、熱すぎるのか、フーフーと冷ます姿は、まるでニャスパーである。かわいい。
ポケじゃらしはユウリに使うべきなのではないだろうか?じゃれてきたらぜったいかわいい。
「うわぁ、キバナさんってコーヒーをブラックで飲んでるんですか?苦そう……」
「んー、そんなに苦く感じないけどな。飲んでみるか?」
「いやいやいや!モーモーミルクとお砂糖とミツハニーのあまいみつたっぷり入れて、お茶請けに甘いものないと無理です!」
「どんだけ甘いんだそれ」
想像しただけで胸焼けがしそうだ。
だが、ユウリはそれだけ甘いものが好きだということはだ。ユウリ自身も甘いということだろう。
人の好みはそう変わらないものだ。ユウリが食べごろになったらそれは甘い甘いスイーツに進化しているのだろう。
そういう甘さなら大歓迎だ。
「甘いもので思い出したんですけど、この間すっぱいりんごを手に入れたんですよ」
「カジッチュに食わせるとアップリューに進化するりんごか」
甘い香りのするドラゴン……ユウリによく似合うことだろう。ゆくゆくはドラゴン夫妻、なんて呼ばれたりしてな。
「でも、そのすっぱいりんご、アップルパイに使っちゃったんですよ〜」
ずるっ。椅子から転げ落ちるかと思った。
「は!?なんでまた……」
「すっぱい味わいのりんごって甘いものよりアップルパイに向いてるんですよ。これで作ったら美味しいかなって、作っちゃいました」
「もったいねぇなー」
まあ、ユウリはまだカジッチュを捕まえていないだろうし、すっぱいりんごもあまいりんごも上手くいけばその辺の木になっている。
次の機会があるだろう。
「ですねぇ……。ちょっともったいない事しちゃったかも?
でも美味しかったですよ」
「んじゃ、次は普通のりんごででいいからオレ様にも作ってくれよ?」
「はい!あ、でもあんまり期待しないでくださいね!」
好きな子の作ったものならなんでも食べるに決まってるじゃねぇか。楽しみに待ってるぜ。
そんな意味を込めて、距離を詰め、ユウリの頭を撫でた。
互いのポケモンはお腹いっぱいになったのか、すでにボールに入って休んでいる。
ここにいるのは、レベル上げをしてそこそこ強くなったユキハミと、ユキハミを抱えるユウリ、そしてオレ様だけだ。
ユキハミめ……その場所はオレ様のものだからどけと何度思わせれば気が済むんだ!
小さなポケモンにすら妬いてしまう、この子供じみた考えを振り払うべく、ユウリに目を向ける。
ああ、何度その小さな体を後ろから抱きしめたいと思ったことか。そんなことをすれば、調理中は危ないし、カレー作りをワクワクして見学しているユウリのポケモンたちから攻撃を受けそうだ。
特にあのブリムオン……あいつがオレ様を見る目は敵に向けるものだ。
オレ様のジュラルドンに一度敗北したことがあるせいかもしれないが、それ以外の理由もあるのはなんとなくわかる。
「ふふー、キバナさんのカレー楽しみだなあ」
「ユウリは食いしん坊だもんな」
「美味しいもの食べてる時ってすっごく幸せじゃないですか」
煮込まれていく具材を眺め、コイキングウチワで火力を調整しながら、ユウリは嬉しそうに笑う。
はなびらのまいでも繰り出したキレイハナのように、その笑顔の周りには花が舞って見えた。
その幸せ笑顔をする理由の中に、オレ様との時間も入ってたらいいんだけどなあ。
カレールウを加えて味を整え、違うフライパンに入れたドデカいヴルストをジュウジュウと焼いていると。
煮込み終えて仕上げにと、カレーの鍋の前に居座ったユウリが両手でハートの形を作った。
「おいしくなぁれ」
「ぶっ!?」
惚れているからというのも大きいだろう。
めちゃくちゃときめいた。
「なんだそのしぐさ?」
「いつも仕上げにしてるんですけど、こうしたほうが美味しくなるんですよ!ポケモン達も喜んでくれますし!」
いつもこの仕草をか!しかも美味しくなるって信じきってる!?
かわいいなオイ!!?
好きな子がかわいいポーズとると、効果は抜群なんだな。頭をドッコラーの鉄骨で殴られたかと思ったぜ。
あと、咄嗟に写真を撮ったロトムグッジョブ。これでまたひとつ写真が増えた。
カレーを器に盛り、その上にヴルストをドン!と乗せる。
パリパリに焼いたヴルストとスパイシーなカレーの匂いが食欲をそそり、ポケモン達もユウリも、キラキラした目で次々に口に運んでいる。
スプーンで口いっぱいに頬張っているので、頬がパンパンだ。
「ぷっ…!ホシガリスみたいな顔になってるぞ」
「とってもおいしいんですもん!
ちょっと辛いですけど、そこがまたいい〜」
「そーかそーか。喉につまらせないようにな!」
お口にあったなら何より。ピリ辛具合がユウリの口にちょうどいいようだ。
実はいつもオレ様が作るカレーは、本当はもっと辛いのだ。
まだまだおこちゃまなユウリのために、マゴを一個彼女の皿のカレーに加えたのが功を成したなぁ。
夕食のカレーを食べ終える頃には、日はとっぷりと暮れてきて、辺りは薄暗くなっている。
ワイルドエリア全体に聞こえていたアーマーガアの声は何処へやら、今はコロボーシやコロトックの歌声が夜の到来を歓迎していた。
カレーを作る際に焚いた火を囲み、食後の一杯を銀のマグカップで楽しむ。
これぞキャンプの醍醐味。
オレ様は遠いアローラ地方のポケリゾートというところで採れるポケマメ。それをローストして淹れたキレのあるブラックコーヒー。
ユウリのマグカップからはエネココアの甘い香りが漂う。
ふわふわした甘みがあるそれを、熱すぎるのか、フーフーと冷ます姿は、まるでニャスパーである。かわいい。
ポケじゃらしはユウリに使うべきなのではないだろうか?じゃれてきたらぜったいかわいい。
「うわぁ、キバナさんってコーヒーをブラックで飲んでるんですか?苦そう……」
「んー、そんなに苦く感じないけどな。飲んでみるか?」
「いやいやいや!モーモーミルクとお砂糖とミツハニーのあまいみつたっぷり入れて、お茶請けに甘いものないと無理です!」
「どんだけ甘いんだそれ」
想像しただけで胸焼けがしそうだ。
だが、ユウリはそれだけ甘いものが好きだということはだ。ユウリ自身も甘いということだろう。
人の好みはそう変わらないものだ。ユウリが食べごろになったらそれは甘い甘いスイーツに進化しているのだろう。
そういう甘さなら大歓迎だ。
「甘いもので思い出したんですけど、この間すっぱいりんごを手に入れたんですよ」
「カジッチュに食わせるとアップリューに進化するりんごか」
甘い香りのするドラゴン……ユウリによく似合うことだろう。ゆくゆくはドラゴン夫妻、なんて呼ばれたりしてな。
「でも、そのすっぱいりんご、アップルパイに使っちゃったんですよ〜」
ずるっ。椅子から転げ落ちるかと思った。
「は!?なんでまた……」
「すっぱい味わいのりんごって甘いものよりアップルパイに向いてるんですよ。これで作ったら美味しいかなって、作っちゃいました」
「もったいねぇなー」
まあ、ユウリはまだカジッチュを捕まえていないだろうし、すっぱいりんごもあまいりんごも上手くいけばその辺の木になっている。
次の機会があるだろう。
「ですねぇ……。ちょっともったいない事しちゃったかも?
でも美味しかったですよ」
「んじゃ、次は普通のりんごででいいからオレ様にも作ってくれよ?」
「はい!あ、でもあんまり期待しないでくださいね!」
好きな子の作ったものならなんでも食べるに決まってるじゃねぇか。楽しみに待ってるぜ。
そんな意味を込めて、距離を詰め、ユウリの頭を撫でた。
互いのポケモンはお腹いっぱいになったのか、すでにボールに入って休んでいる。
ここにいるのは、レベル上げをしてそこそこ強くなったユキハミと、ユキハミを抱えるユウリ、そしてオレ様だけだ。
ユキハミめ……その場所はオレ様のものだからどけと何度思わせれば気が済むんだ!
小さなポケモンにすら妬いてしまう、この子供じみた考えを振り払うべく、ユウリに目を向ける。