mission 8:drinking blood down ~月下の悪魔~
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ダンテが自分の血を口にしたところで、ディーヴァの世界は暗転した。
「えっ……何が起こったの?」
気がつくと自分は真っ暗な闇の中に独り立ち尽くしていた。
前も後ろもどこを見回しても漆黒の闇しかない。
ダンテや自分は一体どうなったのたろうか。
血を吸われただけで死んだとは考えにくい。
ならば他の何かが起こった、としか考えられない。
「ダンテー!……誰かいないのー!?」
試しに叫んでみても誰も何も答えてくれない。
ここには誰もいないようだった。
仕方なしに適当に歩くディーヴァ。
その遥か前方に、オーロラのような光のベールが揺らめくのが見えた。
「ここ、どこなんだろ……」
ディーヴァは独りが嫌いだ。
もちろん真っ暗な場所も大嫌い。
だから真っ暗闇にいるよりはマシだろう。
ディーヴァはため息をこぼすと、光の方へと駆けた。
光のベールを潜ると、目の前に巨大なスクリーンが映し出された。
困惑し立ち止まっていると、すぐにフィルムが回りだす。
セピア色と黒に包まれたネガフィルムのような、その映像。
そこには小さな子どもが映っていて、もう一人の子どもとチャンバラごっこをして遊んでいた。
母親だろうか、時おり女性の姿も見受けられる。
小さな子どもはダンテと呼ばれていた。
「これはダンテの幼い頃の記憶……?」
それにしてはダンテ以外の登場人物が詳しく見れないのが少し気になる。
すべて黒で塗りつぶされている。
わかるのは体の大きさと、声で性別くらいだった。
ダンテにとってこれは大切な記憶であると同時に、あまり詳しく思い出したくない記憶なのかもしれない。
だから登場人物の顔が塗りつぶされているのかも、なんて憶測ではあるが考えてしまう。
ディーヴァは食い入るように映像の中のダンテを見つめた。
見守っていると、目まぐるしくダンテの今までの思い出や出来事が再生されていく。
そこへ現れる悪魔の軍勢。
女性が悪魔から幼いダンテを庇い、決して軽くはない怪我を負うのが見えた。
そこへ追い討ちのように女性に悪魔が群がり、危害を加えている。
目を背けたくなるような光景がそこにはあった。
辺りが静寂に包まれるのを待ち、どこかへ隠れていたダンテが戻ると、既に女性には息はなかった。
「母さん!母さんッ目を開けてよ!」
ダンテが泣き叫ぶのが見えたのを皮切りに、映像も音声もフェードアウトしていく。
そして完全なる無音になったと同時に、忽然とスクリーンすら消え失せた。
ディーヴァは見ていることしか出来なく、何も出来ない自分に悔しそうに唇を強く噛んだ。
唇の皮膚を破りそうなほど強く噛むが、血がまったく出ない。
そこでようやく気がついた。
ここはダンテの意識下の世界で、自分もまた意識だけが飛ばされてやって来ただけに過ぎないのだと。
そしてまた場面が変わる。
今度は暗闇から森の中だった。
森の中でちらほらと赤いコートが翻り、金属音、そして銃声が響く。
あの音は自分の屋敷で聞いたものと同じ。
ダンテが悪魔と戦っているようだった。
「ダンテッ!」
普段なら近寄らないディーヴァだが、その場へ急ぐと驚くべき光景が目に飛び込んできた。
悪魔と対峙するダンテの全身が、身体中から吹き出した血に染まっているのだ。
現実でも手当てはしたが、そんなの比じゃない程に血に濡れている。
最早赤いコートではなく、血で赤いコート。
これではいつ倒れてもおかしくないだろう。
ディーヴァはここまで漂う血の香りに、卒倒してしまいそうな思いをぐっと堪えて物陰から見守った。
しかしそうなるまでして戦うダンテが、いくら剣を振るい続けても悪魔にはまったく効いていないようだ。
それどころか、悪魔に体を貫かれ、傷を受け続けている。
ダンテにはあり得ないことだった。
だが、ダンテは笑っている。
その目は諦めていない者の目だった。
実際の今回の戦闘も、こんなものだったのかもしれないと思うと見ていられない。
悔しさと悲しみ、様々な思いで感情がぐちゃぐちゃになり、涙がこぼれ落ちる。
「もうやめてよ!」
耐えられずにディーヴァはその場に飛び出したが、悪魔もダンテもこちらを見ようともしない。
天使という獲物よりも、反逆者の息子を優先する悪魔がいないとも限らないから、そちらはいいとして。
ダンテがディーヴァの登場を無視するとは考えにくい。
そこでダンテにも悪魔にも、こちらの姿は見えないのに気がついた。
「……もしかしたら」
少し怖いが、戦闘を続ける悪魔とダンテの間に立ち、試しに攻撃を受けてみる。
迫るダンテの剣、迫る悪魔の爪と恐ろしい形相。その風すら感じられて、思わず目を瞑るほどだというのに、ディーヴァには傷ひとつついていない。
「やっぱり」
ここも先ほどの映像と同じ、ダンテの記憶の中。
ディーヴァが傷つくことはない。
ディーヴァは少々思うところがあり、今度は消えて欲しいと強く願いながら悪魔に触れてみた。
すると悪魔は、元からいなかったかのように消えていった。
自分がここで何をすればいいのかなんとなくわかった。
今、ディーヴァはダンテの中において白血球の役割を担う位置にいる。
白血球というのは、細菌やウイルス、異物を排除する働きがある細胞だ。
つまり、ディーヴァはダンテの中に巣食う『悪魔の呪い』という病巣をなんとかしなければならない。
戦いを終わらせればいいのだ。
「ダンテ……今助けるね」
ディーヴァはダンテの握るリベリオンに手を重ね、悪魔を見据えた。
そしてダンテが振るうその一振りに、思いを乗せて、悪魔へと叩きつけた。
ダンテのリベリオンがディーヴァの中に眠る天使の強大な力を纏い、悪魔に向かう。
真っ暗な闇が晴れていく。
血塗れのダンテも、悪魔も、何もかもが真っ白い光に包まれた。
「えっ……何が起こったの?」
気がつくと自分は真っ暗な闇の中に独り立ち尽くしていた。
前も後ろもどこを見回しても漆黒の闇しかない。
ダンテや自分は一体どうなったのたろうか。
血を吸われただけで死んだとは考えにくい。
ならば他の何かが起こった、としか考えられない。
「ダンテー!……誰かいないのー!?」
試しに叫んでみても誰も何も答えてくれない。
ここには誰もいないようだった。
仕方なしに適当に歩くディーヴァ。
その遥か前方に、オーロラのような光のベールが揺らめくのが見えた。
「ここ、どこなんだろ……」
ディーヴァは独りが嫌いだ。
もちろん真っ暗な場所も大嫌い。
だから真っ暗闇にいるよりはマシだろう。
ディーヴァはため息をこぼすと、光の方へと駆けた。
光のベールを潜ると、目の前に巨大なスクリーンが映し出された。
困惑し立ち止まっていると、すぐにフィルムが回りだす。
セピア色と黒に包まれたネガフィルムのような、その映像。
そこには小さな子どもが映っていて、もう一人の子どもとチャンバラごっこをして遊んでいた。
母親だろうか、時おり女性の姿も見受けられる。
小さな子どもはダンテと呼ばれていた。
「これはダンテの幼い頃の記憶……?」
それにしてはダンテ以外の登場人物が詳しく見れないのが少し気になる。
すべて黒で塗りつぶされている。
わかるのは体の大きさと、声で性別くらいだった。
ダンテにとってこれは大切な記憶であると同時に、あまり詳しく思い出したくない記憶なのかもしれない。
だから登場人物の顔が塗りつぶされているのかも、なんて憶測ではあるが考えてしまう。
ディーヴァは食い入るように映像の中のダンテを見つめた。
見守っていると、目まぐるしくダンテの今までの思い出や出来事が再生されていく。
そこへ現れる悪魔の軍勢。
女性が悪魔から幼いダンテを庇い、決して軽くはない怪我を負うのが見えた。
そこへ追い討ちのように女性に悪魔が群がり、危害を加えている。
目を背けたくなるような光景がそこにはあった。
辺りが静寂に包まれるのを待ち、どこかへ隠れていたダンテが戻ると、既に女性には息はなかった。
「母さん!母さんッ目を開けてよ!」
ダンテが泣き叫ぶのが見えたのを皮切りに、映像も音声もフェードアウトしていく。
そして完全なる無音になったと同時に、忽然とスクリーンすら消え失せた。
ディーヴァは見ていることしか出来なく、何も出来ない自分に悔しそうに唇を強く噛んだ。
唇の皮膚を破りそうなほど強く噛むが、血がまったく出ない。
そこでようやく気がついた。
ここはダンテの意識下の世界で、自分もまた意識だけが飛ばされてやって来ただけに過ぎないのだと。
そしてまた場面が変わる。
今度は暗闇から森の中だった。
森の中でちらほらと赤いコートが翻り、金属音、そして銃声が響く。
あの音は自分の屋敷で聞いたものと同じ。
ダンテが悪魔と戦っているようだった。
「ダンテッ!」
普段なら近寄らないディーヴァだが、その場へ急ぐと驚くべき光景が目に飛び込んできた。
悪魔と対峙するダンテの全身が、身体中から吹き出した血に染まっているのだ。
現実でも手当てはしたが、そんなの比じゃない程に血に濡れている。
最早赤いコートではなく、血で赤いコート。
これではいつ倒れてもおかしくないだろう。
ディーヴァはここまで漂う血の香りに、卒倒してしまいそうな思いをぐっと堪えて物陰から見守った。
しかしそうなるまでして戦うダンテが、いくら剣を振るい続けても悪魔にはまったく効いていないようだ。
それどころか、悪魔に体を貫かれ、傷を受け続けている。
ダンテにはあり得ないことだった。
だが、ダンテは笑っている。
その目は諦めていない者の目だった。
実際の今回の戦闘も、こんなものだったのかもしれないと思うと見ていられない。
悔しさと悲しみ、様々な思いで感情がぐちゃぐちゃになり、涙がこぼれ落ちる。
「もうやめてよ!」
耐えられずにディーヴァはその場に飛び出したが、悪魔もダンテもこちらを見ようともしない。
天使という獲物よりも、反逆者の息子を優先する悪魔がいないとも限らないから、そちらはいいとして。
ダンテがディーヴァの登場を無視するとは考えにくい。
そこでダンテにも悪魔にも、こちらの姿は見えないのに気がついた。
「……もしかしたら」
少し怖いが、戦闘を続ける悪魔とダンテの間に立ち、試しに攻撃を受けてみる。
迫るダンテの剣、迫る悪魔の爪と恐ろしい形相。その風すら感じられて、思わず目を瞑るほどだというのに、ディーヴァには傷ひとつついていない。
「やっぱり」
ここも先ほどの映像と同じ、ダンテの記憶の中。
ディーヴァが傷つくことはない。
ディーヴァは少々思うところがあり、今度は消えて欲しいと強く願いながら悪魔に触れてみた。
すると悪魔は、元からいなかったかのように消えていった。
自分がここで何をすればいいのかなんとなくわかった。
今、ディーヴァはダンテの中において白血球の役割を担う位置にいる。
白血球というのは、細菌やウイルス、異物を排除する働きがある細胞だ。
つまり、ディーヴァはダンテの中に巣食う『悪魔の呪い』という病巣をなんとかしなければならない。
戦いを終わらせればいいのだ。
「ダンテ……今助けるね」
ディーヴァはダンテの握るリベリオンに手を重ね、悪魔を見据えた。
そしてダンテが振るうその一振りに、思いを乗せて、悪魔へと叩きつけた。
ダンテのリベリオンがディーヴァの中に眠る天使の強大な力を纏い、悪魔に向かう。
真っ暗な闇が晴れていく。
血塗れのダンテも、悪魔も、何もかもが真っ白い光に包まれた。