mission 8:drinking blood down ~月下の悪魔~
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今日は久しぶりに悪魔退治の依頼が入った。
本業はデビルハンターのダンテは喜び、勇み足で出掛けていった。
当たり前だがディーヴァは行かない。
行ったところで無力どころか餌になりえるディーヴァは、食われて死ぬのがオチである。
そんなわけでディーヴァは、うつらうつらと船を漕ぎながらダンテが無事に帰ってくる時を待っていた。
ドターン!
そんな時、事務所の方から大きな音が聞こえた。
大きな物が倒れたような音だ。
その大きな音に、ディーヴァは一瞬トリップしていた夢の世界から浮上した。
夢の中ではダンテが吸血鬼の格好をして、霞がかり顔のよく見えぬ女性の首筋へと、牙を突き立てていた。
痛そうとか、怖いとか。そういった感情よりも、その位置にいるのは自分ではないかもしれないと夢に嫉妬する。
夢にまで嫉妬するなんて、思ったよりダンテへのディーヴァの気持ちは重症なのかもしれない。
と、今はあの物音の事だ。
夢のこと置いておき、今の物音は何だろう。
「……ダンテ?」
ダンテが帰ってきたのかもしれない。
でも相手がダンテならば、ただいまの声が聞こえるはずである。
スラムでまとも……かどうかはともかく、そこそこまともに営業を再開しているのは、この便利屋くらいだ。
まさか泥棒じゃなかろうか。ほかに盗みに入れるような場所はあまりない。
何より、盗み、殺人、強姦の跋扈するスラムなのだ。何か犯罪に巻き込まれても、不思議なことではない。
ディーヴァは太ももに取り付けた銃を確認すると、事務所へ繋がるドアをゆっくりと開けた。
そこには、ダンテが苦しそうにうめき声をあげ、うつ伏せに倒れていた。
「ぅ、ぐ……」
「ダ、ダンテ!?」
目を見開き、慌てたように駆け寄り、そっと抱き起こすディーヴァ。
「……ディーヴァ、ただいま……」
「おかえり……ってそれどころじゃないでしょ!具合悪いの!?」
「please,Kiss me.
おかえりのキスが欲しいぜ」
ダンテはつらそうにしながらもおどけてみせる。
「そんな冗談言ってる場合!?とにかく休まなきゃでしょ!!
今から部屋に行くよ?ぅんしょ……立てる?捕まって」
ディーヴァはピシャリと言い放つと、ダンテの腕を肩にかけ、自身が踏ん張ることでダンテを立たせた。
「きゃっ」
だが、立って一歩踏み出した途端、ディーヴァはダンテもろともずるりと滑り、前へと転倒した。
ダンテの重みで潰れる。内臓が出そうだった。
「……悪い」
「うっ……だ、大丈夫だよ……」
滑ったのはダンテの重さのせいもあるだろうが、違う。
漂う匂いは血の匂い。
ぬるりと濡れるものに触れたディーヴァは、ダンテの血が床にボタボタと染みを描いているのを見てしまった。
この大量の血で滑ったようだ。
ディーヴァはその尋常じゃない出血量に、サアッと青ざめた。
出血多量で死んでしまう。
「はは、ヘマしちまった……」
ダンテは玉の汗を浮かべながら、申し訳なさそうに笑みを浮かべる。
赤いコートでわからなかったが、コートを捲った裏の腹には深い裂傷があり、血でべっとりと濡れていたのだ。
傷口を見るのも怖いその裂傷から、おびただしい量の血が流れていた。
「血……止まってないの!?」
見たくなくても見なくては。
焦りながらもディーヴァはダンテの深い傷を確認する。
目を覆いたくなるほどグロテスクな裂傷は、臓器まで達しているかいないか、わからないくらいの重症だった。
半分悪魔であるダンテでなければ確実に死んでいた。
「なんとか……やっつけたんだけどよ。
最後の最後で、悪魔に魔力が消える呪い、かけられた……ちょうど攻撃受けた直後だったんだ……。
おかげで、今のオレは回復力が……人並みなんだわ……」
ダンテは息継ぎを各所各所に混ぜ言いきると、目を閉じた。
その体はぐったりとして、死体のように重く、ディーヴァの肩にのし掛かった。
「ダンテ!しっかりして!!」
呼び掛けてもダンテは目を閉じたままピクリとも動かない。
最悪の事態が頭をよぎったディーヴァは、取り乱したい気持ちを抑え、ダンテの心音と呼吸を確認した。
「大丈夫……息してるし、心臓もちゃんと動いてる……」
とくん、とくんと聞こえてくる心音と、荒く浅いけれど止まってはいない呼吸。
ホッとしたディーヴァは、大丈夫、大丈夫と、自分に言い聞かせるように呟いた。
そういえば、ダンテは回復力が人並みになってると言っていた。
なら、こんな寒い所にいたら風邪をひいてしまうだろう。
なおさら部屋に行かなくては。部屋に横になって、暖かくしなくては。
「ふぬぅ!」
ディーヴァはダンテの脇の下に首を入れると、今度こそ足を踏ん張って立ち上がった。
その重さに膝が笑いそうになる。
気を失い全身の力が抜けた肉体は、こんなに重いものだったのか。
「んぅ~……ご、ごめんダンテ……」
傷に触れぬよう気を付けつけてはいたが、ディーヴァの細腕にはダンテを浮かすほどの力はない。
ダンテに謝罪し、その体を引きずるようにして部屋に向かった。
階段が一番気を使ったが、そこもダンテに断りを入れ、足を引きずって一段一段、持ち上げた。
ズルズルと通ったあとに、血で出来た二本線が続いている。
シーツや廊下、床が血で汚れたって構わない。
もうすでにダンテもディーヴァの服も床も、あちらこちらが血に染まっているのだから。
ヒイヒイ言いながら階段を上りきり、部屋へと続く廊下の窓ガラスから見える月は満月だ。
ダンテの強さは知っている。
でも、ダンテが相手をした悪魔も強かったのかもしれない。
ディーヴァは禍禍しい満月に照らされ、ぼーっと考えた。
満月の日はろくなことがない。
満月なんか大嫌いだ。
本業はデビルハンターのダンテは喜び、勇み足で出掛けていった。
当たり前だがディーヴァは行かない。
行ったところで無力どころか餌になりえるディーヴァは、食われて死ぬのがオチである。
そんなわけでディーヴァは、うつらうつらと船を漕ぎながらダンテが無事に帰ってくる時を待っていた。
ドターン!
そんな時、事務所の方から大きな音が聞こえた。
大きな物が倒れたような音だ。
その大きな音に、ディーヴァは一瞬トリップしていた夢の世界から浮上した。
夢の中ではダンテが吸血鬼の格好をして、霞がかり顔のよく見えぬ女性の首筋へと、牙を突き立てていた。
痛そうとか、怖いとか。そういった感情よりも、その位置にいるのは自分ではないかもしれないと夢に嫉妬する。
夢にまで嫉妬するなんて、思ったよりダンテへのディーヴァの気持ちは重症なのかもしれない。
と、今はあの物音の事だ。
夢のこと置いておき、今の物音は何だろう。
「……ダンテ?」
ダンテが帰ってきたのかもしれない。
でも相手がダンテならば、ただいまの声が聞こえるはずである。
スラムでまとも……かどうかはともかく、そこそこまともに営業を再開しているのは、この便利屋くらいだ。
まさか泥棒じゃなかろうか。ほかに盗みに入れるような場所はあまりない。
何より、盗み、殺人、強姦の跋扈するスラムなのだ。何か犯罪に巻き込まれても、不思議なことではない。
ディーヴァは太ももに取り付けた銃を確認すると、事務所へ繋がるドアをゆっくりと開けた。
そこには、ダンテが苦しそうにうめき声をあげ、うつ伏せに倒れていた。
「ぅ、ぐ……」
「ダ、ダンテ!?」
目を見開き、慌てたように駆け寄り、そっと抱き起こすディーヴァ。
「……ディーヴァ、ただいま……」
「おかえり……ってそれどころじゃないでしょ!具合悪いの!?」
「please,Kiss me.
おかえりのキスが欲しいぜ」
ダンテはつらそうにしながらもおどけてみせる。
「そんな冗談言ってる場合!?とにかく休まなきゃでしょ!!
今から部屋に行くよ?ぅんしょ……立てる?捕まって」
ディーヴァはピシャリと言い放つと、ダンテの腕を肩にかけ、自身が踏ん張ることでダンテを立たせた。
「きゃっ」
だが、立って一歩踏み出した途端、ディーヴァはダンテもろともずるりと滑り、前へと転倒した。
ダンテの重みで潰れる。内臓が出そうだった。
「……悪い」
「うっ……だ、大丈夫だよ……」
滑ったのはダンテの重さのせいもあるだろうが、違う。
漂う匂いは血の匂い。
ぬるりと濡れるものに触れたディーヴァは、ダンテの血が床にボタボタと染みを描いているのを見てしまった。
この大量の血で滑ったようだ。
ディーヴァはその尋常じゃない出血量に、サアッと青ざめた。
出血多量で死んでしまう。
「はは、ヘマしちまった……」
ダンテは玉の汗を浮かべながら、申し訳なさそうに笑みを浮かべる。
赤いコートでわからなかったが、コートを捲った裏の腹には深い裂傷があり、血でべっとりと濡れていたのだ。
傷口を見るのも怖いその裂傷から、おびただしい量の血が流れていた。
「血……止まってないの!?」
見たくなくても見なくては。
焦りながらもディーヴァはダンテの深い傷を確認する。
目を覆いたくなるほどグロテスクな裂傷は、臓器まで達しているかいないか、わからないくらいの重症だった。
半分悪魔であるダンテでなければ確実に死んでいた。
「なんとか……やっつけたんだけどよ。
最後の最後で、悪魔に魔力が消える呪い、かけられた……ちょうど攻撃受けた直後だったんだ……。
おかげで、今のオレは回復力が……人並みなんだわ……」
ダンテは息継ぎを各所各所に混ぜ言いきると、目を閉じた。
その体はぐったりとして、死体のように重く、ディーヴァの肩にのし掛かった。
「ダンテ!しっかりして!!」
呼び掛けてもダンテは目を閉じたままピクリとも動かない。
最悪の事態が頭をよぎったディーヴァは、取り乱したい気持ちを抑え、ダンテの心音と呼吸を確認した。
「大丈夫……息してるし、心臓もちゃんと動いてる……」
とくん、とくんと聞こえてくる心音と、荒く浅いけれど止まってはいない呼吸。
ホッとしたディーヴァは、大丈夫、大丈夫と、自分に言い聞かせるように呟いた。
そういえば、ダンテは回復力が人並みになってると言っていた。
なら、こんな寒い所にいたら風邪をひいてしまうだろう。
なおさら部屋に行かなくては。部屋に横になって、暖かくしなくては。
「ふぬぅ!」
ディーヴァはダンテの脇の下に首を入れると、今度こそ足を踏ん張って立ち上がった。
その重さに膝が笑いそうになる。
気を失い全身の力が抜けた肉体は、こんなに重いものだったのか。
「んぅ~……ご、ごめんダンテ……」
傷に触れぬよう気を付けつけてはいたが、ディーヴァの細腕にはダンテを浮かすほどの力はない。
ダンテに謝罪し、その体を引きずるようにして部屋に向かった。
階段が一番気を使ったが、そこもダンテに断りを入れ、足を引きずって一段一段、持ち上げた。
ズルズルと通ったあとに、血で出来た二本線が続いている。
シーツや廊下、床が血で汚れたって構わない。
もうすでにダンテもディーヴァの服も床も、あちらこちらが血に染まっているのだから。
ヒイヒイ言いながら階段を上りきり、部屋へと続く廊下の窓ガラスから見える月は満月だ。
ダンテの強さは知っている。
でも、ダンテが相手をした悪魔も強かったのかもしれない。
ディーヴァは禍禍しい満月に照らされ、ぼーっと考えた。
満月の日はろくなことがない。
満月なんか大嫌いだ。