mission 5:old name and bills ~射撃練習とマネー~
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「ま、オレの過去なんてこんなところだ」
「苦労したんだね……。ダンテに比べたらあたしはまだまだ幸せな方なのかも……。教えてくれてありがとう」
「どういたしまして」
ディーヴァが前向きになっていくなら、話して損はなかったと思える。今のダンテが一番に考えているのは、いつだってディーヴァの笑顔なのだから。
「ふふふ……ダンテ教官、射撃練習の続き、教えて?」
「おし、スパルタでいくからな」
「りょーかい!」
二人は日が暮れるまで的を相手に練習し続けた。事務所に差し込む夕日でその時間に気がつくまで。
「あ、こんな時間。今日は依頼の電話諦めた方がいいかな?」
「今日『も』だけどな」
その言葉にがっくりと肩を落とす。
「そもそも電話鳴ってるの聞いたことないんですけど」
「HAHAHA!きっと土曜だからだ」
「じゃあ明日ならきっと……!」
「ダトイイナ」
……ダンテの目が泳いだ。
そんなこんなで夜も更け、そして翌朝である。
「おはようダンテ」
「ふぁあ……はよ」
「ダンテがいつも腰掛けてる机の中も掃除していい?」
「お好きにどーぞ」
一足早く起き、朝から事務所内の掃除をしていると、ダンテがあくびをしながら起きてきた。
これから朝イチのシャワータイムにでも行くのだろう、のんきなものだ。
ただ毎回毎回、上半身裸のまま出られるのが困りどころの一つ。
その度、慣れろと言われ揶揄われるのだが、どうしても慣れない。
想像しただけで赤くなったディーヴァは、火照った顔を手で扇いだ。
……え?下履いているだけマシ?そう思えるようになるには時間がかかりそうだ。
それよりもダンテが出てくる前に朝食までの時間配分など、割り振っておかなくてはいけない。
調理台の上にはピザ生地が具を乗せられる時を今か今かと待っているはずだ。
「何を乗せて焼こうかな……」
机の引き出しを開けて細かい物や紙の束を整頓しながら、ディーヴァはワクワクと考えこんだ。
ディーヴァはダンテにピザを作る内に、ピザを作るのが楽しみになってきていた。
ダンテも自分の仕事に関わることなら少しは勉強するのかもしれない。机の中からは悪魔に関する記述が記された紙の束がたくさん出てきた。
そのどれもがぞっとするようなおぞましいイラストや写真が載っている。
それをなるべく目に入れないようにしてクリップで閉じた。
「気持ち悪いの見ちゃったなぁ……あれ?」
その紙の束と格闘し終わったと思ったらその下からまた違う束が出てきた。
先ほどまとめた物よりも分厚いそれはダンテがやったのだろう、粗雑にまとめて輪ゴムで止められ、裏返しにされている。
興味本位にそれをひっくり返してパラパラとめくる。
請求書、督促状、最終通告書、違反書、何やら破壊した修理代、『ツケあり、お早めに払われたし』と書かれた店のカード。
どれもこれもダンテのお金に対する考え方を疑うようなものだった。
「…………」
言葉を失い、顔はひきつる。
一呼吸おいて心を落ち着かせると、ディーヴァは頭の中で大まかな合計金額を数えた。
「どんだけ溜め込んでるのよ……」
借金地獄とはこのことか!
そのとんでもない額に、怒りのあまり手元がプルプルと震えてしまい紙の束に皺がよる。
朝食どころではない。これは由々しき問題である。
ディーヴァは請求書の束を片手にはらわた煮えくり返る思いで目をつりあげ、ダンテのいるのバスルーム方面へと足を進めた。
もはやダンテが上半身裸だろうが全裸だろうがかまわない、殴り込む勢いである。
ジリリリリ。
ディーヴァがバスルームのドアノブに手をかけたその時、けたたましく事務所の黒電話が鳴り響いた。
「風呂は今出るから代わりに電話とっといてくれ!」
ダンテがバスルームの中から早口で答える。
衣擦れの音がし出しているので、シャワーは浴び終わっているようだ。
全裸でも構わないとは思ったが、わざわざ見たいわけではない。見なくて済んでホッとする。
そしてダンテの早口に機嫌悪くしながら来た道を戻り、受話器をあげる。
そして気持ちを切り替えて営業モードの声を放った。
「はい、どういった依頼でしょうか?」
それはダンテへの仕事の依頼の電話だった。
まずは急いでメモを手元に引き寄せて名前と連絡先を書き留める。
「はい、えぇ、はい。はい?要人の警護ですか?ああ、はい、えっと……」
それはダンテの求める悪魔関連の依頼ではなく、偉い人などの警護を依頼する内容の電話だった。
だが守る対象人物によっては仕事料金は高いかもしれない、ディーヴァは嬉々として先方の話を聞いた。
「わかりました、すぐに向かいま……」
ヒョイ。
そんなディーヴァの後ろから受話器を取り上げる者が一人。
ポタポタ濡れたままの髪から水滴を滴らせ、上半身を露出させたダンテである。
「悪いがまだ開店準備中だ、他をあたってくれ」
ガチャン。
すっぱりと言い切り、受話器を電話機本体へ見もせずに戻す。
その際ダンテから垂れた水滴の冷たさにディーヴァは顔をしかめた。
「ちゃんと拭いてから出てきていただけませんかね。あと何度も言うけど服を着てくれる?」
だが本人はどこ吹く風でディーヴァに見せつけるようにその素肌をずずいとさらした。
怒り心頭なディーヴァはそんなダンテの格好を見ても赤くならなかったようだ。ダンテはいつものように顔を赤らめてあわてるディーヴァが見られず肩をすくめた。
「SPの真似事はごめんだ」
「表向きは便利屋なんでしょ、選り好みしないの!」
そう言って脱衣所から洗濯済Tシャツをダンテに投げる。
「お、気が利くなァ」
着替えるダンテを腕を組んで見据える。
「開店準備中ってどういうこと?ここっていつまで開店準備中なの」
「そりゃ店名が決まるまでだ」
「だったらお名前決めなさい、いーまーすーぐーにー!!」
エンジェルトリガーを発動しそうな勢いでディーヴァは喚き散らした。
「あーもー、耳もとで叫ぶな。鼓膜が破けちまうだろ。……もう少ししたら決めるって」
「店名決まってなくてもいいから仕事してよ〜」
「だって今のはどう考えても悪魔は関係してこないだろ」
「悪魔関係しない依頼も受けなさい。第一、そうそう悪魔ばっかいるわけないでしょ!何よりあたしが困る!」
ディーヴァの頭上に、ぷんぷんと効果音が展開して見えるのはきっとダンテだけではないはずだ。
ディーヴァは時々、こうやってダンテの母親のように怒る。
これではどっちが年上かわからない。
ダンテはそれを少し嬉しく思う反面、わずらわしくも感じた。
「苦労したんだね……。ダンテに比べたらあたしはまだまだ幸せな方なのかも……。教えてくれてありがとう」
「どういたしまして」
ディーヴァが前向きになっていくなら、話して損はなかったと思える。今のダンテが一番に考えているのは、いつだってディーヴァの笑顔なのだから。
「ふふふ……ダンテ教官、射撃練習の続き、教えて?」
「おし、スパルタでいくからな」
「りょーかい!」
二人は日が暮れるまで的を相手に練習し続けた。事務所に差し込む夕日でその時間に気がつくまで。
「あ、こんな時間。今日は依頼の電話諦めた方がいいかな?」
「今日『も』だけどな」
その言葉にがっくりと肩を落とす。
「そもそも電話鳴ってるの聞いたことないんですけど」
「HAHAHA!きっと土曜だからだ」
「じゃあ明日ならきっと……!」
「ダトイイナ」
……ダンテの目が泳いだ。
そんなこんなで夜も更け、そして翌朝である。
「おはようダンテ」
「ふぁあ……はよ」
「ダンテがいつも腰掛けてる机の中も掃除していい?」
「お好きにどーぞ」
一足早く起き、朝から事務所内の掃除をしていると、ダンテがあくびをしながら起きてきた。
これから朝イチのシャワータイムにでも行くのだろう、のんきなものだ。
ただ毎回毎回、上半身裸のまま出られるのが困りどころの一つ。
その度、慣れろと言われ揶揄われるのだが、どうしても慣れない。
想像しただけで赤くなったディーヴァは、火照った顔を手で扇いだ。
……え?下履いているだけマシ?そう思えるようになるには時間がかかりそうだ。
それよりもダンテが出てくる前に朝食までの時間配分など、割り振っておかなくてはいけない。
調理台の上にはピザ生地が具を乗せられる時を今か今かと待っているはずだ。
「何を乗せて焼こうかな……」
机の引き出しを開けて細かい物や紙の束を整頓しながら、ディーヴァはワクワクと考えこんだ。
ディーヴァはダンテにピザを作る内に、ピザを作るのが楽しみになってきていた。
ダンテも自分の仕事に関わることなら少しは勉強するのかもしれない。机の中からは悪魔に関する記述が記された紙の束がたくさん出てきた。
そのどれもがぞっとするようなおぞましいイラストや写真が載っている。
それをなるべく目に入れないようにしてクリップで閉じた。
「気持ち悪いの見ちゃったなぁ……あれ?」
その紙の束と格闘し終わったと思ったらその下からまた違う束が出てきた。
先ほどまとめた物よりも分厚いそれはダンテがやったのだろう、粗雑にまとめて輪ゴムで止められ、裏返しにされている。
興味本位にそれをひっくり返してパラパラとめくる。
請求書、督促状、最終通告書、違反書、何やら破壊した修理代、『ツケあり、お早めに払われたし』と書かれた店のカード。
どれもこれもダンテのお金に対する考え方を疑うようなものだった。
「…………」
言葉を失い、顔はひきつる。
一呼吸おいて心を落ち着かせると、ディーヴァは頭の中で大まかな合計金額を数えた。
「どんだけ溜め込んでるのよ……」
借金地獄とはこのことか!
そのとんでもない額に、怒りのあまり手元がプルプルと震えてしまい紙の束に皺がよる。
朝食どころではない。これは由々しき問題である。
ディーヴァは請求書の束を片手にはらわた煮えくり返る思いで目をつりあげ、ダンテのいるのバスルーム方面へと足を進めた。
もはやダンテが上半身裸だろうが全裸だろうがかまわない、殴り込む勢いである。
ジリリリリ。
ディーヴァがバスルームのドアノブに手をかけたその時、けたたましく事務所の黒電話が鳴り響いた。
「風呂は今出るから代わりに電話とっといてくれ!」
ダンテがバスルームの中から早口で答える。
衣擦れの音がし出しているので、シャワーは浴び終わっているようだ。
全裸でも構わないとは思ったが、わざわざ見たいわけではない。見なくて済んでホッとする。
そしてダンテの早口に機嫌悪くしながら来た道を戻り、受話器をあげる。
そして気持ちを切り替えて営業モードの声を放った。
「はい、どういった依頼でしょうか?」
それはダンテへの仕事の依頼の電話だった。
まずは急いでメモを手元に引き寄せて名前と連絡先を書き留める。
「はい、えぇ、はい。はい?要人の警護ですか?ああ、はい、えっと……」
それはダンテの求める悪魔関連の依頼ではなく、偉い人などの警護を依頼する内容の電話だった。
だが守る対象人物によっては仕事料金は高いかもしれない、ディーヴァは嬉々として先方の話を聞いた。
「わかりました、すぐに向かいま……」
ヒョイ。
そんなディーヴァの後ろから受話器を取り上げる者が一人。
ポタポタ濡れたままの髪から水滴を滴らせ、上半身を露出させたダンテである。
「悪いがまだ開店準備中だ、他をあたってくれ」
ガチャン。
すっぱりと言い切り、受話器を電話機本体へ見もせずに戻す。
その際ダンテから垂れた水滴の冷たさにディーヴァは顔をしかめた。
「ちゃんと拭いてから出てきていただけませんかね。あと何度も言うけど服を着てくれる?」
だが本人はどこ吹く風でディーヴァに見せつけるようにその素肌をずずいとさらした。
怒り心頭なディーヴァはそんなダンテの格好を見ても赤くならなかったようだ。ダンテはいつものように顔を赤らめてあわてるディーヴァが見られず肩をすくめた。
「SPの真似事はごめんだ」
「表向きは便利屋なんでしょ、選り好みしないの!」
そう言って脱衣所から洗濯済Tシャツをダンテに投げる。
「お、気が利くなァ」
着替えるダンテを腕を組んで見据える。
「開店準備中ってどういうこと?ここっていつまで開店準備中なの」
「そりゃ店名が決まるまでだ」
「だったらお名前決めなさい、いーまーすーぐーにー!!」
エンジェルトリガーを発動しそうな勢いでディーヴァは喚き散らした。
「あーもー、耳もとで叫ぶな。鼓膜が破けちまうだろ。……もう少ししたら決めるって」
「店名決まってなくてもいいから仕事してよ〜」
「だって今のはどう考えても悪魔は関係してこないだろ」
「悪魔関係しない依頼も受けなさい。第一、そうそう悪魔ばっかいるわけないでしょ!何よりあたしが困る!」
ディーヴァの頭上に、ぷんぷんと効果音が展開して見えるのはきっとダンテだけではないはずだ。
ディーヴァは時々、こうやってダンテの母親のように怒る。
これではどっちが年上かわからない。
ダンテはそれを少し嬉しく思う反面、わずらわしくも感じた。