mission 5:old name and bills ~射撃練習とマネー~
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そのあとダンテはクリーニングロッドにガーゼ、グリスをふんだんに使い、ディーヴァの銃を掃除しはじめた。
「たった一発撃っただけでお掃除?」
「いくらこまめに分解掃除してたとはいえ、ずっと使ってなかったから」
ディーヴァは手持ち無沙汰に、メンテナンスを始めてしまったダンテのその手元や双子銃を覗き込む。
ふと、双子銃に彫られた文字がディーヴァの目に留まった。
「あれ?ねえダンテ、これ、スペル間違ってるみたい」
「どこだ?」
双子銃のその箇所を指し示す。
BY .45 ART WARKS
FOR TONY REDGRAVE
「WARKS?WORKSじゃなくて?……元はトニーって人の銃だったの?」
「あー、これか」
目を閉じると思い出すあの頃。
「ちょっと前の話だが、聞くか?」
「うん、聞きたいな」
照れ臭そうにしながらダンテは自分の過去について語り始めた。
「オレはちょっと前まで素性を隠すため、トニー・レッドグレイブって名乗ってたんだ。
16~17歳くらいに便利屋を始めて、すぐに名が売れて来た。あの頃のが身入りのいい仕事はしてたなぁ……便利屋として仕事の選り好みもあまりしなかったし」
「便利屋で選り好みしなかったってことは人殺しもしてた、とか?」
恐る恐るダンテに尋ねる。テレビドラマなんかの影響か、ディーヴァの中では便利屋=殺し屋というイメージも強い。
「いいや、殺しだけはいやだったからしてねーよ。殺しなんてダサいぜ、なんて言い訳してな……とんだ甘ちゃんってやつさ」
ダンテは皮肉って言うがディーヴァはダンテが殺しはしてないと聞き、ほっとした。
「ボビーの穴蔵とかいうきったねー酒場があったんだが、そこを拠点に仕事を選んでた」
出されるストサンはディーヴァのに負けず劣らず美味かったなあ、としみじみ語る。
「職業安定所みたいだね」
「まあ、そんなとこか」
今もそこでお仕事もらえばいいと思ったが、ダンテが過去形を使ったことを考えるともうないのだろう。ディーヴァは押し黙った。
「最初の頃は、そこで知り合ったグルーっていうやつとコンビ組んでたよ。煙草が嫌いだからオレの前で吸うなって言ったのにやめねーんだ、体にも毒なのにな……」
スパーダとは違った意味で親父みたいなやつだった。そう語るダンテは寂しそうだった。
「グルーには三人の娘がいて、その内一人がジェシカっていう女の子だった……生きてればちょうどディーヴァくらいだろうな」
生きていれば。その言葉に、ディーヴァはギュッとダンテの手を握った。
どうか、この人の心が少しでも安らぎますように。
「ジェシカはドリアを作ると決まって黒こげにしてくるような子でさ。最後は悪魔の樹と同化し、魔界の道を開くゲートにさせられそうになって……結局助けられなかった」
「だからドリア食べた時微妙な顔してたんだね」
「悪かったな、別に不味かったとかそういうんじゃねーから」
「ううん、いいの。でもドリアはあまり作らない方がいいかな」
「いや、作ってかまわねーぜ。こうやって話すことでかなり楽になってるから。
それにあいつのはあいつの味で、ディーヴァのはディーヴァの味。また作ってくれ」
ダンテはディーヴァの心遣いに嬉しくなり、彼女を愛しげに見つめた。
「なんでジェシカさんは悪魔の樹とくっついちゃったの?」
「それにはギルバってやつが関係してくる。
皮肉なことにダンテっていう本名を名乗るのも悪魔を狩り続けているのもディーヴァとこうして過ごすのも半分はあいつのお陰だ」
ダンテは自嘲気味に鼻で笑った。
「エンツォっていう小太り仲介屋がいて、こいつは腐れ縁のような……「友達?」まあそんなとこか。
で、エンツォがスーツを着こみ刀を持ったギルバを連れてきたんだ。こいつ、目以外の出てるところは全て包帯に覆われた包帯野郎だったんだぜ」
「ミイラ男みたい。ハロウィンだったらありだけど」
「ミイラ男なぁ……そんな感じだ。
出会い頭に手合わせしたんだが、体術、剣術ともに互角だった」
一呼吸おいてダンテが言う。
「そいつが日常を壊したのさ。
この愛銃、エボニーとアイボリーを作った銃職人もその被害者の一人だ。彼女も殺された」
愛しそうに銃のレリーフを指でなぞりあげる。
「ニール・ゴールドスタイン。稀代の名工、銃職人って呼ばれてた腕のいいガンスミスだった。
オレにとっちゃただの憎まれ口がひどい婆さんだったけどな。その頃は照れくさくて言えなかったけど、お袋のように思ってた」
手の中で双子銃がこここそ我等が居場所、というかのようにくるくる踊るように回った。
「火事の中、その背をギルバに無残にも切り裂かれて致命傷だってのに、最後の最後まで命をかけてこのエボニーとアイボリーを作ってくれた、……形見みたいなもんだ。
婆さんが設計したそれを、オレは炎の中目の前で組みあげた」
秒間十数発の連射に耐え得る強靭な銃身。ダンテのためだけに生まれた一対の双子拳銃。
それがエボニーとアイボリーだった。
「スペルミスは店を構えた時からの大事な想い出って言ってた。……その直後、銃の完成を待って逝った婆さんを看取って、オレはオレを思い出したんだ。
長らく隠していた自分を、な」
とん、と自分の胸を親指で指した。
『ダンテ』に戻ってからは、それまでの自分しか知らない人にはオレが誰だかわからなかったようだ、とダンテは残念そうに語った。
「見た目は全く同じなのにな。そこそこ長い付き合いのエンツォはすぐ分かったみたいで安心したよ」
「他の人も斬られちゃったの?」
「いや、ギルバは悪魔の手先を使ってオレを外堀からじわじわ殺そうとした。斬ったのは婆さん一人だ。
手始めにジェシカを悪魔の樹と融合、その次に婆さんを斬り、そして穴蔵の男共を悪魔に変えたんだ……多分グルーもギルバに殺られたんだろうけどな。
ディーヴァなら悪魔になった仲間をどう助けようと思う?」
ディーヴァは首を振ることでわからないと示した。
「例外もあるかもしれないが、悪魔になったらもう人間には戻れない。
オレは悪魔になったあいつらを無に帰した……オレに関わったから死んだのかもしれねーな」
ディーヴァはたまらずダンテに抱きついて涙した。そんなディーヴァの背をゆっくり撫でながらダンテは続けた。
「そこに至るまでギルバとは何回もコンビを組んだ。だから戦い方もお互い熟知してたんだ。敵に回った時はちと厄介だったぜ……しかもあいつは火器銃器は大嫌いなはずなのに、オレを殺すため銃を使ってた」
さすがに至近距離でのショットガンの散弾はキツかった…と思い出したのか鳥肌をたたせるダンテ。
「戦いの中でやつの包帯が外れてオレと同じ顔が出てきたんだ。GILVEの文字がアナグラムとその時わかった」
「アナグラム?」
赤くなった目をごし、と拭ってディーヴァが聞く。
「オレには生き別れた双子の兄貴がいる。名前はバージル。
GILVERを並び替えるとVERGIL。バージルだ。
兄貴は昔からオレよりちょっと厳つくて親父を真似たのか髪を後ろにかきあげてた……こんな風に」
と、ダンテは髪を後ろに撫で付けてみせた。
「兄弟……なのになんでダンテの事殺そうとしたの?」
バサッと髪をもとに戻すのを手伝いながらディーヴァが不思議そうにした。
「バージルはオレとは反対に強さを求めて悪魔として生きることを選んだ……んじゃないかな。非力な人間として生きることを選ぶのは悪魔の血への裏切りらしいぜ。
バージルが憧れる親父だって、人間側について人間として生きようとした悪魔だってのによ」
「それ以来会ってないの?」
「さあね、オレも河岸を変えたし、今は何してるのかさっぱりだ」
バージルとはまた会う気がする、次もきっと戦いになるだろう。
その時、自分はディーヴァを守りきれるだろうか?
天使の力を持っているのとわかったら何かに利用されてしまうのではないか?
少し不安に思う。愛しい温もりを隣にダンテは不安を隠せなかった。
「たった一発撃っただけでお掃除?」
「いくらこまめに分解掃除してたとはいえ、ずっと使ってなかったから」
ディーヴァは手持ち無沙汰に、メンテナンスを始めてしまったダンテのその手元や双子銃を覗き込む。
ふと、双子銃に彫られた文字がディーヴァの目に留まった。
「あれ?ねえダンテ、これ、スペル間違ってるみたい」
「どこだ?」
双子銃のその箇所を指し示す。
BY .45 ART WARKS
FOR TONY REDGRAVE
「WARKS?WORKSじゃなくて?……元はトニーって人の銃だったの?」
「あー、これか」
目を閉じると思い出すあの頃。
「ちょっと前の話だが、聞くか?」
「うん、聞きたいな」
照れ臭そうにしながらダンテは自分の過去について語り始めた。
「オレはちょっと前まで素性を隠すため、トニー・レッドグレイブって名乗ってたんだ。
16~17歳くらいに便利屋を始めて、すぐに名が売れて来た。あの頃のが身入りのいい仕事はしてたなぁ……便利屋として仕事の選り好みもあまりしなかったし」
「便利屋で選り好みしなかったってことは人殺しもしてた、とか?」
恐る恐るダンテに尋ねる。テレビドラマなんかの影響か、ディーヴァの中では便利屋=殺し屋というイメージも強い。
「いいや、殺しだけはいやだったからしてねーよ。殺しなんてダサいぜ、なんて言い訳してな……とんだ甘ちゃんってやつさ」
ダンテは皮肉って言うがディーヴァはダンテが殺しはしてないと聞き、ほっとした。
「ボビーの穴蔵とかいうきったねー酒場があったんだが、そこを拠点に仕事を選んでた」
出されるストサンはディーヴァのに負けず劣らず美味かったなあ、としみじみ語る。
「職業安定所みたいだね」
「まあ、そんなとこか」
今もそこでお仕事もらえばいいと思ったが、ダンテが過去形を使ったことを考えるともうないのだろう。ディーヴァは押し黙った。
「最初の頃は、そこで知り合ったグルーっていうやつとコンビ組んでたよ。煙草が嫌いだからオレの前で吸うなって言ったのにやめねーんだ、体にも毒なのにな……」
スパーダとは違った意味で親父みたいなやつだった。そう語るダンテは寂しそうだった。
「グルーには三人の娘がいて、その内一人がジェシカっていう女の子だった……生きてればちょうどディーヴァくらいだろうな」
生きていれば。その言葉に、ディーヴァはギュッとダンテの手を握った。
どうか、この人の心が少しでも安らぎますように。
「ジェシカはドリアを作ると決まって黒こげにしてくるような子でさ。最後は悪魔の樹と同化し、魔界の道を開くゲートにさせられそうになって……結局助けられなかった」
「だからドリア食べた時微妙な顔してたんだね」
「悪かったな、別に不味かったとかそういうんじゃねーから」
「ううん、いいの。でもドリアはあまり作らない方がいいかな」
「いや、作ってかまわねーぜ。こうやって話すことでかなり楽になってるから。
それにあいつのはあいつの味で、ディーヴァのはディーヴァの味。また作ってくれ」
ダンテはディーヴァの心遣いに嬉しくなり、彼女を愛しげに見つめた。
「なんでジェシカさんは悪魔の樹とくっついちゃったの?」
「それにはギルバってやつが関係してくる。
皮肉なことにダンテっていう本名を名乗るのも悪魔を狩り続けているのもディーヴァとこうして過ごすのも半分はあいつのお陰だ」
ダンテは自嘲気味に鼻で笑った。
「エンツォっていう小太り仲介屋がいて、こいつは腐れ縁のような……「友達?」まあそんなとこか。
で、エンツォがスーツを着こみ刀を持ったギルバを連れてきたんだ。こいつ、目以外の出てるところは全て包帯に覆われた包帯野郎だったんだぜ」
「ミイラ男みたい。ハロウィンだったらありだけど」
「ミイラ男なぁ……そんな感じだ。
出会い頭に手合わせしたんだが、体術、剣術ともに互角だった」
一呼吸おいてダンテが言う。
「そいつが日常を壊したのさ。
この愛銃、エボニーとアイボリーを作った銃職人もその被害者の一人だ。彼女も殺された」
愛しそうに銃のレリーフを指でなぞりあげる。
「ニール・ゴールドスタイン。稀代の名工、銃職人って呼ばれてた腕のいいガンスミスだった。
オレにとっちゃただの憎まれ口がひどい婆さんだったけどな。その頃は照れくさくて言えなかったけど、お袋のように思ってた」
手の中で双子銃がこここそ我等が居場所、というかのようにくるくる踊るように回った。
「火事の中、その背をギルバに無残にも切り裂かれて致命傷だってのに、最後の最後まで命をかけてこのエボニーとアイボリーを作ってくれた、……形見みたいなもんだ。
婆さんが設計したそれを、オレは炎の中目の前で組みあげた」
秒間十数発の連射に耐え得る強靭な銃身。ダンテのためだけに生まれた一対の双子拳銃。
それがエボニーとアイボリーだった。
「スペルミスは店を構えた時からの大事な想い出って言ってた。……その直後、銃の完成を待って逝った婆さんを看取って、オレはオレを思い出したんだ。
長らく隠していた自分を、な」
とん、と自分の胸を親指で指した。
『ダンテ』に戻ってからは、それまでの自分しか知らない人にはオレが誰だかわからなかったようだ、とダンテは残念そうに語った。
「見た目は全く同じなのにな。そこそこ長い付き合いのエンツォはすぐ分かったみたいで安心したよ」
「他の人も斬られちゃったの?」
「いや、ギルバは悪魔の手先を使ってオレを外堀からじわじわ殺そうとした。斬ったのは婆さん一人だ。
手始めにジェシカを悪魔の樹と融合、その次に婆さんを斬り、そして穴蔵の男共を悪魔に変えたんだ……多分グルーもギルバに殺られたんだろうけどな。
ディーヴァなら悪魔になった仲間をどう助けようと思う?」
ディーヴァは首を振ることでわからないと示した。
「例外もあるかもしれないが、悪魔になったらもう人間には戻れない。
オレは悪魔になったあいつらを無に帰した……オレに関わったから死んだのかもしれねーな」
ディーヴァはたまらずダンテに抱きついて涙した。そんなディーヴァの背をゆっくり撫でながらダンテは続けた。
「そこに至るまでギルバとは何回もコンビを組んだ。だから戦い方もお互い熟知してたんだ。敵に回った時はちと厄介だったぜ……しかもあいつは火器銃器は大嫌いなはずなのに、オレを殺すため銃を使ってた」
さすがに至近距離でのショットガンの散弾はキツかった…と思い出したのか鳥肌をたたせるダンテ。
「戦いの中でやつの包帯が外れてオレと同じ顔が出てきたんだ。GILVEの文字がアナグラムとその時わかった」
「アナグラム?」
赤くなった目をごし、と拭ってディーヴァが聞く。
「オレには生き別れた双子の兄貴がいる。名前はバージル。
GILVERを並び替えるとVERGIL。バージルだ。
兄貴は昔からオレよりちょっと厳つくて親父を真似たのか髪を後ろにかきあげてた……こんな風に」
と、ダンテは髪を後ろに撫で付けてみせた。
「兄弟……なのになんでダンテの事殺そうとしたの?」
バサッと髪をもとに戻すのを手伝いながらディーヴァが不思議そうにした。
「バージルはオレとは反対に強さを求めて悪魔として生きることを選んだ……んじゃないかな。非力な人間として生きることを選ぶのは悪魔の血への裏切りらしいぜ。
バージルが憧れる親父だって、人間側について人間として生きようとした悪魔だってのによ」
「それ以来会ってないの?」
「さあね、オレも河岸を変えたし、今は何してるのかさっぱりだ」
バージルとはまた会う気がする、次もきっと戦いになるだろう。
その時、自分はディーヴァを守りきれるだろうか?
天使の力を持っているのとわかったら何かに利用されてしまうのではないか?
少し不安に思う。愛しい温もりを隣にダンテは不安を隠せなかった。