mission 4:Trust me, and I'm home~信頼とタダイマ~
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ダンテは今、幸せの絶頂の中にいた。
今まで生きてきてこんなに幸せな夜はあっただろうか、そう思えるほどに。
自分の腕の中には、今安らかな寝息を立てるディーヴァがいる。
楽しくて嬉しくて忘れていたが、そういえば2日目の添い寝になるのか。
何か悪いことや間違いが起こりやしないかひやひやしていたダンテだったが、真夜中を越えても至って何もなかった。
少し肩すかしをくらったが、自身の悪魔も大人しくしていてくれたことにほっと胸をなでおろした。
あり得ないことだが、添い寝ぐらいで満足したのかもしれない。
このまま行けば、ディーヴァとの愛しい日々へのゴールは近いかもしれない。
ダンテはうきうきと心踊りながら、愛する彼女の髪にこっそりと顔をうずめた。いい匂いがする。ふんわり甘くて、優しい女の子らしい香りだ。
そうして二人はまたも、抱き締め合って眠りについた。
明日が満月である事を、この時のダンテはすっかり忘れ去ってしまっていた。
次の日の夜。
二度あることは三度あるというのだろうか、ディーヴァとダンテはあたりまえのように寝床を共にした。
安らかな寝息の中、時間は真夜中2時を差そうとしていた。
外に浮かぶのはそれを待っていたかのように禍々しく輝く紅く丸い月。
ダンテの恐れていた満月である。
満月は悪魔の行動が活発になり力も増す、獲物である天使にとって最も危ない魔の月だからだ。
だからダンテもこの日を恐れていた。
だが一昨日、昨晩とおかしいほど夢のように過ごせたダンテは安心し油断しきっていた。
自分は、理性さえ抑えればディーヴァにとって何も危険ではない、と判断したのだ。
だが甘い夢は、夢でしかなかったのだ。
極東の地日本などでは午前2時は丑三つ時、魔の時間……と言われている。
時計の短針が2時を越えてしばらく、ダンテは違和感に目を開けた。
喉がヒリヒリと焼けつくほどに渇き、舌がざらつく。
キッチンに水を飲みに行こうかと起き上がった瞬間、どくん……。
軋むくらい心臓が大きく跳ねた。
「ッ!?」
耳鳴りがする。
その耳鳴りの向こうでもう一人の自分……自分の中の悪魔がノイズ交じりの声で笑っているのが聞こえた。
やはり悪魔は悪魔。
あのようなふわふわとしたぬるい甘さなどでは満足できなかったのだ。
“彼女を喰え”
悪魔が囁いた。
“そうすれば渇きは満たされるぜ”
その誘惑にダンテは心安らかに眠るディーヴァを見た。
傍らのぬくもりはひどく甘美で、美味そうにダンテの目に映る。
まるで香り高い熟成された年代物のワイン、もしくはダンテの大好きなストロベリーサンデーの甘い香りを放っているように感じてしまう。
悪魔はこの時を、満月を待っていた。
自分が出てこれる満月の真夜中を、天使を喰らう瞬間を。
悪魔はさらに渇きだしたダンテをニヤリと嘲笑った。
“オマエはオレだ”
“オマエもディーヴァを穢したいだろう?”
“喰らいたいだろう?”
悪魔の囁きが何度も頭の中を往復する。
確かにその気持ちはあるのだ。
悪魔の自分も、人間の自分も同じことを思っている。
肉体も心も魂も犯し、穢し、むさぼり、喰らい…奪い尽くして壊してしまえたらと。
悪魔が五感に呼び掛け、その甘い味を口にする場面を見せる。
力の満ちていく濃厚な天使の味、穢れを知らない純粋な血液、自分の好きな赤に染まりきった白い翼で、涙も唇もすべて赤く染め上げ壊れた笑顔で笑いかけてくるディーヴァ。
そこには、ダンテが無意識の中で渇望する、赤い世界がどこまでも広がっていた。
ダンテは唇を噛みしめ、悪魔の考えに乗っ取られていた思考の所有権を自分に戻した。
オレはそんな世界の壊れた笑顔のディーヴァじゃなく、今の笑顔のディーヴァを守りたい。
“見返りがいつまで経っても望めないのに?”
ダンテはその言葉に一瞬言葉をつまらせた。
しかし、ディーヴァを愛しく想う自分の心を取り戻した。
それでも好きだから、愛してるからな。
“愛するだけか?愛して欲しいんだろ?”
“そんなの待つより奪ったほうがラクだし楽しいだろうが”
“好きに犯しちまえよ”
“待つのは嫌いだろ?”
悪魔に耳を貸さないよう集中するが、耳障りなそのノイズは決して消えてくれなかった。
“刺激が欲しいだろ、気持ち良くなれるぞ”
想像してみろよ、そう言われて頭の中でイメージしてしまった。
それはとても魅力的に映った。
“気持ち良くなれるのはオマエだけじゃない”
“彼女も、だ”
その言葉は水薬のように乾いたダンテの心に浸透していった。
欲しい。欲しい欲しいホシイ。
ダンテの目の奥にぼんやりと紅い光が灯る。
いつの間にか耳鳴りとノイズは止まっていた。
ニヤリと悪魔が、ダンテが笑う。
悪魔の勝利だった。
ガタン、と大きな音が立ててダンテが立ち上がった。
その音で目を覚ましたディーヴァは眠そうに目をこすってダンテを見上げた。
「ん……ダンテ?まだ夜中だよぅ……」
ダンテの姿は満月の月明かりに照らされて逆光状態にある。
その上ディーヴァは寝ぼけ眼であったため、彼の表情をうかがい知ることは出来なかった。
気がつくとディーヴァは、ゆっくりと覆い被さるように倒れてきたダンテに組み敷かれていた。
「え……」
両手を押さえつけられ、閉じられないよう両足の間に足を滑り込ませ、逃げられないようにされている。
さすがに目が覚めた。
ディーヴァは数回瞬きをしてからダンテをねめつけた。
「何?ふざけてるの?それとも寝惚けて……ッッ!」
覗き込んだダンテの目はいつものアクアマリンではなく、血のように紅い色をしていた。
ダンテはその紅い目でこちらを見下ろして舌なめずりしている。
いつものダンテじゃない、このままでは恐ろしい目にあう。
ディーヴァは一瞬で悟り、本能のまま生理的な涙を浮かべ恐怖に震えた。
見ればダンテからは、経験したことのないほど禍々しい悪魔の気配が漂っていた。
自分を襲った悪魔とは比べられないほどのオーラを纏って、ディーヴァを覆い尽くそうとするその気配。
確かに、ダンテには悪魔の気配が付いて回っていた。
だが、ダンテの職業はデビルハンターである。
これはダンテの狩った悪魔の気配がまとわりついたものだとばかり思っていた。
けれど違う。
これはダンテが狩った悪魔の気配でもなく、ダンテに悪魔が取りついたものとか、そういった類いのものでもない。
ダンテが悪魔なのだ。
ダンテの口から覗く、小さくも尖った八重歯が月光に照らされ光る。
「イヤッやめて!!」
ディーヴァの恐怖に怯える口からは短い悲鳴が飛び出した。
悲鳴と言うより否定の言葉なそれに、ダンテはハッとして我に返り自分を取り戻した。
自分の下で涙をポロポロ溢すディーヴァを見て、自分が何をしたのか正しく理解した。
今まで生きてきてこんなに幸せな夜はあっただろうか、そう思えるほどに。
自分の腕の中には、今安らかな寝息を立てるディーヴァがいる。
楽しくて嬉しくて忘れていたが、そういえば2日目の添い寝になるのか。
何か悪いことや間違いが起こりやしないかひやひやしていたダンテだったが、真夜中を越えても至って何もなかった。
少し肩すかしをくらったが、自身の悪魔も大人しくしていてくれたことにほっと胸をなでおろした。
あり得ないことだが、添い寝ぐらいで満足したのかもしれない。
このまま行けば、ディーヴァとの愛しい日々へのゴールは近いかもしれない。
ダンテはうきうきと心踊りながら、愛する彼女の髪にこっそりと顔をうずめた。いい匂いがする。ふんわり甘くて、優しい女の子らしい香りだ。
そうして二人はまたも、抱き締め合って眠りについた。
明日が満月である事を、この時のダンテはすっかり忘れ去ってしまっていた。
次の日の夜。
二度あることは三度あるというのだろうか、ディーヴァとダンテはあたりまえのように寝床を共にした。
安らかな寝息の中、時間は真夜中2時を差そうとしていた。
外に浮かぶのはそれを待っていたかのように禍々しく輝く紅く丸い月。
ダンテの恐れていた満月である。
満月は悪魔の行動が活発になり力も増す、獲物である天使にとって最も危ない魔の月だからだ。
だからダンテもこの日を恐れていた。
だが一昨日、昨晩とおかしいほど夢のように過ごせたダンテは安心し油断しきっていた。
自分は、理性さえ抑えればディーヴァにとって何も危険ではない、と判断したのだ。
だが甘い夢は、夢でしかなかったのだ。
極東の地日本などでは午前2時は丑三つ時、魔の時間……と言われている。
時計の短針が2時を越えてしばらく、ダンテは違和感に目を開けた。
喉がヒリヒリと焼けつくほどに渇き、舌がざらつく。
キッチンに水を飲みに行こうかと起き上がった瞬間、どくん……。
軋むくらい心臓が大きく跳ねた。
「ッ!?」
耳鳴りがする。
その耳鳴りの向こうでもう一人の自分……自分の中の悪魔がノイズ交じりの声で笑っているのが聞こえた。
やはり悪魔は悪魔。
あのようなふわふわとしたぬるい甘さなどでは満足できなかったのだ。
“彼女を喰え”
悪魔が囁いた。
“そうすれば渇きは満たされるぜ”
その誘惑にダンテは心安らかに眠るディーヴァを見た。
傍らのぬくもりはひどく甘美で、美味そうにダンテの目に映る。
まるで香り高い熟成された年代物のワイン、もしくはダンテの大好きなストロベリーサンデーの甘い香りを放っているように感じてしまう。
悪魔はこの時を、満月を待っていた。
自分が出てこれる満月の真夜中を、天使を喰らう瞬間を。
悪魔はさらに渇きだしたダンテをニヤリと嘲笑った。
“オマエはオレだ”
“オマエもディーヴァを穢したいだろう?”
“喰らいたいだろう?”
悪魔の囁きが何度も頭の中を往復する。
確かにその気持ちはあるのだ。
悪魔の自分も、人間の自分も同じことを思っている。
肉体も心も魂も犯し、穢し、むさぼり、喰らい…奪い尽くして壊してしまえたらと。
悪魔が五感に呼び掛け、その甘い味を口にする場面を見せる。
力の満ちていく濃厚な天使の味、穢れを知らない純粋な血液、自分の好きな赤に染まりきった白い翼で、涙も唇もすべて赤く染め上げ壊れた笑顔で笑いかけてくるディーヴァ。
そこには、ダンテが無意識の中で渇望する、赤い世界がどこまでも広がっていた。
ダンテは唇を噛みしめ、悪魔の考えに乗っ取られていた思考の所有権を自分に戻した。
オレはそんな世界の壊れた笑顔のディーヴァじゃなく、今の笑顔のディーヴァを守りたい。
“見返りがいつまで経っても望めないのに?”
ダンテはその言葉に一瞬言葉をつまらせた。
しかし、ディーヴァを愛しく想う自分の心を取り戻した。
それでも好きだから、愛してるからな。
“愛するだけか?愛して欲しいんだろ?”
“そんなの待つより奪ったほうがラクだし楽しいだろうが”
“好きに犯しちまえよ”
“待つのは嫌いだろ?”
悪魔に耳を貸さないよう集中するが、耳障りなそのノイズは決して消えてくれなかった。
“刺激が欲しいだろ、気持ち良くなれるぞ”
想像してみろよ、そう言われて頭の中でイメージしてしまった。
それはとても魅力的に映った。
“気持ち良くなれるのはオマエだけじゃない”
“彼女も、だ”
その言葉は水薬のように乾いたダンテの心に浸透していった。
欲しい。欲しい欲しいホシイ。
ダンテの目の奥にぼんやりと紅い光が灯る。
いつの間にか耳鳴りとノイズは止まっていた。
ニヤリと悪魔が、ダンテが笑う。
悪魔の勝利だった。
ガタン、と大きな音が立ててダンテが立ち上がった。
その音で目を覚ましたディーヴァは眠そうに目をこすってダンテを見上げた。
「ん……ダンテ?まだ夜中だよぅ……」
ダンテの姿は満月の月明かりに照らされて逆光状態にある。
その上ディーヴァは寝ぼけ眼であったため、彼の表情をうかがい知ることは出来なかった。
気がつくとディーヴァは、ゆっくりと覆い被さるように倒れてきたダンテに組み敷かれていた。
「え……」
両手を押さえつけられ、閉じられないよう両足の間に足を滑り込ませ、逃げられないようにされている。
さすがに目が覚めた。
ディーヴァは数回瞬きをしてからダンテをねめつけた。
「何?ふざけてるの?それとも寝惚けて……ッッ!」
覗き込んだダンテの目はいつものアクアマリンではなく、血のように紅い色をしていた。
ダンテはその紅い目でこちらを見下ろして舌なめずりしている。
いつものダンテじゃない、このままでは恐ろしい目にあう。
ディーヴァは一瞬で悟り、本能のまま生理的な涙を浮かべ恐怖に震えた。
見ればダンテからは、経験したことのないほど禍々しい悪魔の気配が漂っていた。
自分を襲った悪魔とは比べられないほどのオーラを纏って、ディーヴァを覆い尽くそうとするその気配。
確かに、ダンテには悪魔の気配が付いて回っていた。
だが、ダンテの職業はデビルハンターである。
これはダンテの狩った悪魔の気配がまとわりついたものだとばかり思っていた。
けれど違う。
これはダンテが狩った悪魔の気配でもなく、ダンテに悪魔が取りついたものとか、そういった類いのものでもない。
ダンテが悪魔なのだ。
ダンテの口から覗く、小さくも尖った八重歯が月光に照らされ光る。
「イヤッやめて!!」
ディーヴァの恐怖に怯える口からは短い悲鳴が飛び出した。
悲鳴と言うより否定の言葉なそれに、ダンテはハッとして我に返り自分を取り戻した。
自分の下で涙をポロポロ溢すディーヴァを見て、自分が何をしたのか正しく理解した。