mission 4:Trust me, and I'm home~信頼とタダイマ~
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「いつもの」
呟くように言うと、初老のバーテンダーが何も言わずにジントニックを差し出す。
いっきに飲み干すと深く息を吐いた。
ここのバーはスラムにあるくせ、落ち着いた雰囲気でいい店だ。
周りが見えるか見えないかのギリギリまで落とされた照明と、大人しめに聞こえてくるジャズが心地いい。
何か考え事をするのには向いてるし、長時間の滞在にもバーテンダーが何も言ってこない。
ツケが利かないのがちょっと残念な点だが。
そろそろ話くらいしないと、とは思う。
三食きっちり彼女の手料理を食べているのでうっかり忘れてしまいそうになるが、ディーヴァとは初日以降、顔を合わせていない。
まるで家庭内別居だ。
そう仕向けているのは他でもない、自分だ。
このまま考え続けても堂々巡りで、何も答えが出ないのはわかっていた。
子犬もお預けを受け過ぎれば猛犬に変わる。いや、狂犬か。
逆にこのままでは悪魔の本能が鎌首をもたげてしまうかもしれない。
そうでなくても自分自身も彼女の顔を見たくてたまらないし、声を聞きたい。
今日は早めに切り上げて帰るか。
ダンテは飲み代を少し多めに残すと、重い腰を上げてその場を後にした。
「……消し忘れか」
ディーヴァはイマドキの女子高生にしては早いかもしれないが、遅くとも9時半くらいには必ず寝ている。
だのに、いつもなら暗いままの通りが少し明るい。
月明かりではない人工的な明かり。
見れば自分の事務所は窓から光をもらし、通り沿いをほんのりと照らしていた。
もう10時をとっくに過ぎていると言うのに付けっぱなし。
つまり、明かりを消し忘れたとしか思えない。
何事もきっちりこなすディーヴァも、たまにはドジをするのか。
ダンテは苦笑とともにゆっくりとドアを開けた。
だが、予想に反してディーヴァはそこにいた。
ダンテがよく寝転がる、愛用のソファーの上に小さく丸まって。
「おかえりなさい」
うつむいていてよくわからないが、ディーヴァの表情はひどく翳っているようにも見えた。
「あ、ああ……ただいま」
びっくりした。悪魔の気配には鋭いダンテだが、殺意も悪意もない純粋なディーヴァの気配にはまだ慣れておらず、気づけなかった。
寝ていると決めつけていたがら尚更だ。
平常心を保とうとディーヴァに背を向け、壁にリベリオンをゆっくりと立て掛けながら聞き返す。
「起きてたんだな」
「うん……」
うまく彼女の顔が見れない。
何を話していいかわからない。
ダンテはディーヴァに背を向け、壁を向いたままどう話しかけてよいか考えあぐねていた。
ぽす。
そうしていると背中からディーヴァが抱きついてきた。恥ずかしがり屋の彼女が珍しい。
自分よりひとまわりも小さな腕が一生懸命ダンテに巻き付く。
「ディーヴァ?」
久しぶりの彼女のぬくもりが体に伝わる。
うれしくないわけがない。……うれしいが色々抑えが利かなくなりそうである。
そんなわけがないとわかっていても、誘われているとしか考えられなくなりそうだ。
色々我慢していると、ダンテの耳に小さな嗚咽が聞こえてきた。
きつくまわされた腕をゆっくりとほどき、彼女に振り返る。
ダンテは泣きはらした彼女と目が合い、困惑した。
途端に鎌首をあげていた欲望の嵐がしぼんでいく。
「そんなに泣いてどうしたんだ」
「……一人は恐い。眠れない」
涙で赤く腫れており中々気がつかないが、かわいそうに彼女の眼の下には隈が浮かんでいた。
人の気配には鋭いはずの自分が彼女が起きているのに気がつかなかったのは、ディーヴァの寝不足も要因らしい。寝不足は気配をも微弱にさせる。
自分のことでいっぱいで彼女に気が回っていなく、申し訳ない思いだ。
「まさかずっと眠ってなかったのか?」
「子供みたいって笑うかもしれない。でもどうしても1人じゃ眠れなかったの」
恐くて寒くてさびしくてかなしい。
ダンテの胸で小さく嗚咽を上げ続けるディーヴァはとても幼く、彼女の言葉通り子供に見えた。
胸板やコートが濡れるのも構わず、ダンテはしばらく抱きつかせたままあやし続けた。
「ごめん、ダンテ」
「別にいいよ。少しは落ち着いたか?」
「……うん」
「ならお嬢様……ベッドに行きますか」
軽々とディーヴァを抱きあげて階段をあがる。俗に言うお姫様だっこというやつだ。
「ひゃっ!歩けるから降ろして」
そう抗議するがダンテはどこ吹く風。
鼻歌まじりにゆっくりと歩き、聞いてはくれない。
ディーヴァの部屋に入ろうとドアノブに手をかけると、彼女がビクリと動き動揺する。
ダンテはしばし考えてから踵を返し、今度は自分の部屋へと足を運んだ。
「ディーヴァの部屋に比べたら埃っぽいが我慢しろよ」
そう言ってダンテの使うベッドに優しく降ろされる。
確かに埃っぽさはあるが、来た時のキッチンやその他諸々の部屋ほどではない。
やはり寝るときくらいは快適に過ごしたいのだろう、ベッド周りはそこそこ綺麗だった。
ただ、小さな机には銃の部品だろうか、細かい機械や工具等が散乱しており、それが足元にも及んでいた。
畳んでしまうという考えにたどりつかなかったのか、Tシャツやパンツも落ちたまま。もしも歩く時は足元に気をつけよう。
極め付けには本棚…例によって肌色が目立つ物が多い。
それらを目に入れないよう、ディーヴァは窓の外の暗闇に目を向けた。
「一緒に寝るか。……一人じゃ眠れないんだろ?」
「ありがとう。でも……」
「大丈夫、なんもしない」
ダンテは自分の妹や娘を扱うかのように、ディーヴァの頭にポンポンと手を乗せた。
呟くように言うと、初老のバーテンダーが何も言わずにジントニックを差し出す。
いっきに飲み干すと深く息を吐いた。
ここのバーはスラムにあるくせ、落ち着いた雰囲気でいい店だ。
周りが見えるか見えないかのギリギリまで落とされた照明と、大人しめに聞こえてくるジャズが心地いい。
何か考え事をするのには向いてるし、長時間の滞在にもバーテンダーが何も言ってこない。
ツケが利かないのがちょっと残念な点だが。
そろそろ話くらいしないと、とは思う。
三食きっちり彼女の手料理を食べているのでうっかり忘れてしまいそうになるが、ディーヴァとは初日以降、顔を合わせていない。
まるで家庭内別居だ。
そう仕向けているのは他でもない、自分だ。
このまま考え続けても堂々巡りで、何も答えが出ないのはわかっていた。
子犬もお預けを受け過ぎれば猛犬に変わる。いや、狂犬か。
逆にこのままでは悪魔の本能が鎌首をもたげてしまうかもしれない。
そうでなくても自分自身も彼女の顔を見たくてたまらないし、声を聞きたい。
今日は早めに切り上げて帰るか。
ダンテは飲み代を少し多めに残すと、重い腰を上げてその場を後にした。
「……消し忘れか」
ディーヴァはイマドキの女子高生にしては早いかもしれないが、遅くとも9時半くらいには必ず寝ている。
だのに、いつもなら暗いままの通りが少し明るい。
月明かりではない人工的な明かり。
見れば自分の事務所は窓から光をもらし、通り沿いをほんのりと照らしていた。
もう10時をとっくに過ぎていると言うのに付けっぱなし。
つまり、明かりを消し忘れたとしか思えない。
何事もきっちりこなすディーヴァも、たまにはドジをするのか。
ダンテは苦笑とともにゆっくりとドアを開けた。
だが、予想に反してディーヴァはそこにいた。
ダンテがよく寝転がる、愛用のソファーの上に小さく丸まって。
「おかえりなさい」
うつむいていてよくわからないが、ディーヴァの表情はひどく翳っているようにも見えた。
「あ、ああ……ただいま」
びっくりした。悪魔の気配には鋭いダンテだが、殺意も悪意もない純粋なディーヴァの気配にはまだ慣れておらず、気づけなかった。
寝ていると決めつけていたがら尚更だ。
平常心を保とうとディーヴァに背を向け、壁にリベリオンをゆっくりと立て掛けながら聞き返す。
「起きてたんだな」
「うん……」
うまく彼女の顔が見れない。
何を話していいかわからない。
ダンテはディーヴァに背を向け、壁を向いたままどう話しかけてよいか考えあぐねていた。
ぽす。
そうしていると背中からディーヴァが抱きついてきた。恥ずかしがり屋の彼女が珍しい。
自分よりひとまわりも小さな腕が一生懸命ダンテに巻き付く。
「ディーヴァ?」
久しぶりの彼女のぬくもりが体に伝わる。
うれしくないわけがない。……うれしいが色々抑えが利かなくなりそうである。
そんなわけがないとわかっていても、誘われているとしか考えられなくなりそうだ。
色々我慢していると、ダンテの耳に小さな嗚咽が聞こえてきた。
きつくまわされた腕をゆっくりとほどき、彼女に振り返る。
ダンテは泣きはらした彼女と目が合い、困惑した。
途端に鎌首をあげていた欲望の嵐がしぼんでいく。
「そんなに泣いてどうしたんだ」
「……一人は恐い。眠れない」
涙で赤く腫れており中々気がつかないが、かわいそうに彼女の眼の下には隈が浮かんでいた。
人の気配には鋭いはずの自分が彼女が起きているのに気がつかなかったのは、ディーヴァの寝不足も要因らしい。寝不足は気配をも微弱にさせる。
自分のことでいっぱいで彼女に気が回っていなく、申し訳ない思いだ。
「まさかずっと眠ってなかったのか?」
「子供みたいって笑うかもしれない。でもどうしても1人じゃ眠れなかったの」
恐くて寒くてさびしくてかなしい。
ダンテの胸で小さく嗚咽を上げ続けるディーヴァはとても幼く、彼女の言葉通り子供に見えた。
胸板やコートが濡れるのも構わず、ダンテはしばらく抱きつかせたままあやし続けた。
「ごめん、ダンテ」
「別にいいよ。少しは落ち着いたか?」
「……うん」
「ならお嬢様……ベッドに行きますか」
軽々とディーヴァを抱きあげて階段をあがる。俗に言うお姫様だっこというやつだ。
「ひゃっ!歩けるから降ろして」
そう抗議するがダンテはどこ吹く風。
鼻歌まじりにゆっくりと歩き、聞いてはくれない。
ディーヴァの部屋に入ろうとドアノブに手をかけると、彼女がビクリと動き動揺する。
ダンテはしばし考えてから踵を返し、今度は自分の部屋へと足を運んだ。
「ディーヴァの部屋に比べたら埃っぽいが我慢しろよ」
そう言ってダンテの使うベッドに優しく降ろされる。
確かに埃っぽさはあるが、来た時のキッチンやその他諸々の部屋ほどではない。
やはり寝るときくらいは快適に過ごしたいのだろう、ベッド周りはそこそこ綺麗だった。
ただ、小さな机には銃の部品だろうか、細かい機械や工具等が散乱しており、それが足元にも及んでいた。
畳んでしまうという考えにたどりつかなかったのか、Tシャツやパンツも落ちたまま。もしも歩く時は足元に気をつけよう。
極め付けには本棚…例によって肌色が目立つ物が多い。
それらを目に入れないよう、ディーヴァは窓の外の暗闇に目を向けた。
「一緒に寝るか。……一人じゃ眠れないんだろ?」
「ありがとう。でも……」
「大丈夫、なんもしない」
ダンテは自分の妹や娘を扱うかのように、ディーヴァの頭にポンポンと手を乗せた。