mission 9:love, after the envy ~クリスマス・キス~
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クリスマスを目前にディーヴァはまるで葬式のように落ち込んでいた。
脳内で流れ出す、葬送行進曲。
だが、それすらもダンテには悟らせず、ディーヴァは明るく気丈に振る舞った。
明日はクリスマス当日だ。
話すなら今しかない。
幸いダンテはすでに帰宅しているのだから。
ディーヴァは、死刑宣告を受けに行くような絶望をはらんだ面持ちで、ダンテに思いを伝える決心をした。
「ダンテ」
「ん……何だ?」
寝ぼけ眼でダンテは答えた。
疲れているのだろう。帰ってきてからというもの、ずっとうとうとと船を漕いでいたのだ。
「あのね、本当は見てたの……」
「見てた?」
「スーパーマーケットの帰り道にダンテが女の子といるところ」
その言葉にダンテの頭の中が真っ白になった。
「み、見てたのか」
「うん……かわいい子だよね。クリスマスはあの子と過ごすならあたしはもうお役御免かな。お邪魔だったら出ていくよ」
偽りの笑顔を顔に張り付けたまま、ディーヴァは事前に決めていた言葉を唇にのせた。
「は……?どういうことだよ。意味わかんねぇ」
「だって、付き合ってるんじゃないの?」
「オレが好きなのはディーヴァだけだ!」
「じゃああの子は?」
ここまで問い詰めても白を切るということはまた何か見落としているのかもしれないし、勘違いしているのかもしれない。
ただ、最近こういったことばかりが起きすぎて、何が真実で何が偽りなのか正常な判断がつかなかった。
「あれはあの近くのショップのアルバイトだよ」
「幸せそうに笑い合ってたの見たもん」
「それは……ディーヴァのことを相談してたからだ。
……オレってディーヴァの話題になるとつい、笑顔になっちまうんだよ。多分、笑い合ってたって時は丁度ディーヴァのこと教えてた時だと思うぜ」
また勘違いだというのか。タイミングが悪かった、それだけか。
そんなことを言われるとうれしくなって頬が緩んできてしまうではないか。
まだ油断はしないぞ。
「……相談?」
「本当はまだ内緒にしたかったんだけどなぁ……。
アルバイトのあの子に『大事な女の子にクリスマスにあげるものって何にしたらいいんだ』って聞いてな、ずっと相談にのって貰ってたんだ」
「じゃあ、好きな人ってわけじゃないんだね?」
「あほか!当たり前だろが。勘違いだ!」
ダンテが冗談だろ?と笑って言う。
ディーヴァへのプレゼントと選んでいただけのようだ。
しかも、サプライズで計画していたらしく今度こそ幸せな気分である。
その途端、ディーヴァの顔に浮かぶのは、偽りの笑顔から、本物の笑顔に変わる。
現金なものだ。
「……疑っちゃってごめんなさい。
なーんだ、勘違いだったのかあ……。あはは、女の子のところに通う甲斐性はあったんだぁ、とか思っちゃったじゃんか!」
ディーヴァは、嫉妬していたことについてはダンテに黙っていようと心に誓った。
「何だよ、嫉妬してくれたんじゃないのか?」
「さぁね」
深い湖の底へ沈めたはずの暗く黒い感情が、ダンテの暖かな温もりでゆっくりと溶けて消えていく。
それはまるで、生き物すらいない凍りついた冬が、雪解けと共に生命溢れる暖かで美しい春に移ったかのようだ。
そして静かに燃えていた嫉妬の炎さえ、綺麗さっぱり跡形もなく消えていくのを感じる。
久しぶりに、実に晴れやかな気分になった。
「まぁ、バレちまったもんはしゃーねぇか……」
ダンテが頭を掻きながらボソリと呟く。
「ディーヴァ、お前にプレゼントがあるんだけど、今はここにない。明日取りに行ってくるぜ」
ありがとうの言葉の代わりにと、ディーヴァはダンテに勢いよく抱きついた。
自分も、何かダンテに渡したい。何かしてあげたい。
もらってばかりになるのは嫌だ。
「クリスマスだもの。たくさんお料理用意するね。何が食べたい?」
ダンテはディーヴァの指通りのよい髪をすいて、愛しげに抱き締め返した。
思わず、ディーヴァが食べたい……と本音が出そうだ。
本音の代わりに「ディーヴァが作るものならなんでも」と答えた。
「なんでもかぁ。クリスマスだし、七面鳥とケーキ焼こうかな?」
「おお、クリスマスっぽいな!楽しみにしてるぜ」
明日はもうクリスマス当日だったが、ディーヴァは自分も何かプレゼントしようと考えた。
何がいいだろう?
明日中に用意できそうな物でダンテに使ってもらえそうな物…。
ぎゅうと抱きついてダンテの胸にその身を預ける。
ダンテは至福の表情で自分を抱き締めていた。
緩慢な動きで撫でてくるその手には、長年使い古したであろうボロボロになった革のグローブ。
ボロボロすぎて端々がささくれ立ち、ところどころ破けて革がめくれ上がっているそれが、ダンテの手にぴったり嵌められているのが目に留まる。
「ねぇダンテ、」
「ん?」
「このグローブっていつから使ってるの」
その言葉にダンテは撫でるのを止め、自分の手を見た。
「いつからだっけか、けっこう長く使ってるな……もしかしてささくれ立って痛いか?」
「違うの。何か思い出の品だったりするのかなぁって」
もしそうなら新しいものは必要ないかもしれない。思い出とは古さをも凌ぐ大事な要素だ。
「いや……特にそういうんじゃねぇな。どうしてだ?」
「ううん、何でもないよ」
ダンテへのプレゼントはこの瞬間、決まった。
脳内で流れ出す、葬送行進曲。
だが、それすらもダンテには悟らせず、ディーヴァは明るく気丈に振る舞った。
明日はクリスマス当日だ。
話すなら今しかない。
幸いダンテはすでに帰宅しているのだから。
ディーヴァは、死刑宣告を受けに行くような絶望をはらんだ面持ちで、ダンテに思いを伝える決心をした。
「ダンテ」
「ん……何だ?」
寝ぼけ眼でダンテは答えた。
疲れているのだろう。帰ってきてからというもの、ずっとうとうとと船を漕いでいたのだ。
「あのね、本当は見てたの……」
「見てた?」
「スーパーマーケットの帰り道にダンテが女の子といるところ」
その言葉にダンテの頭の中が真っ白になった。
「み、見てたのか」
「うん……かわいい子だよね。クリスマスはあの子と過ごすならあたしはもうお役御免かな。お邪魔だったら出ていくよ」
偽りの笑顔を顔に張り付けたまま、ディーヴァは事前に決めていた言葉を唇にのせた。
「は……?どういうことだよ。意味わかんねぇ」
「だって、付き合ってるんじゃないの?」
「オレが好きなのはディーヴァだけだ!」
「じゃああの子は?」
ここまで問い詰めても白を切るということはまた何か見落としているのかもしれないし、勘違いしているのかもしれない。
ただ、最近こういったことばかりが起きすぎて、何が真実で何が偽りなのか正常な判断がつかなかった。
「あれはあの近くのショップのアルバイトだよ」
「幸せそうに笑い合ってたの見たもん」
「それは……ディーヴァのことを相談してたからだ。
……オレってディーヴァの話題になるとつい、笑顔になっちまうんだよ。多分、笑い合ってたって時は丁度ディーヴァのこと教えてた時だと思うぜ」
また勘違いだというのか。タイミングが悪かった、それだけか。
そんなことを言われるとうれしくなって頬が緩んできてしまうではないか。
まだ油断はしないぞ。
「……相談?」
「本当はまだ内緒にしたかったんだけどなぁ……。
アルバイトのあの子に『大事な女の子にクリスマスにあげるものって何にしたらいいんだ』って聞いてな、ずっと相談にのって貰ってたんだ」
「じゃあ、好きな人ってわけじゃないんだね?」
「あほか!当たり前だろが。勘違いだ!」
ダンテが冗談だろ?と笑って言う。
ディーヴァへのプレゼントと選んでいただけのようだ。
しかも、サプライズで計画していたらしく今度こそ幸せな気分である。
その途端、ディーヴァの顔に浮かぶのは、偽りの笑顔から、本物の笑顔に変わる。
現金なものだ。
「……疑っちゃってごめんなさい。
なーんだ、勘違いだったのかあ……。あはは、女の子のところに通う甲斐性はあったんだぁ、とか思っちゃったじゃんか!」
ディーヴァは、嫉妬していたことについてはダンテに黙っていようと心に誓った。
「何だよ、嫉妬してくれたんじゃないのか?」
「さぁね」
深い湖の底へ沈めたはずの暗く黒い感情が、ダンテの暖かな温もりでゆっくりと溶けて消えていく。
それはまるで、生き物すらいない凍りついた冬が、雪解けと共に生命溢れる暖かで美しい春に移ったかのようだ。
そして静かに燃えていた嫉妬の炎さえ、綺麗さっぱり跡形もなく消えていくのを感じる。
久しぶりに、実に晴れやかな気分になった。
「まぁ、バレちまったもんはしゃーねぇか……」
ダンテが頭を掻きながらボソリと呟く。
「ディーヴァ、お前にプレゼントがあるんだけど、今はここにない。明日取りに行ってくるぜ」
ありがとうの言葉の代わりにと、ディーヴァはダンテに勢いよく抱きついた。
自分も、何かダンテに渡したい。何かしてあげたい。
もらってばかりになるのは嫌だ。
「クリスマスだもの。たくさんお料理用意するね。何が食べたい?」
ダンテはディーヴァの指通りのよい髪をすいて、愛しげに抱き締め返した。
思わず、ディーヴァが食べたい……と本音が出そうだ。
本音の代わりに「ディーヴァが作るものならなんでも」と答えた。
「なんでもかぁ。クリスマスだし、七面鳥とケーキ焼こうかな?」
「おお、クリスマスっぽいな!楽しみにしてるぜ」
明日はもうクリスマス当日だったが、ディーヴァは自分も何かプレゼントしようと考えた。
何がいいだろう?
明日中に用意できそうな物でダンテに使ってもらえそうな物…。
ぎゅうと抱きついてダンテの胸にその身を預ける。
ダンテは至福の表情で自分を抱き締めていた。
緩慢な動きで撫でてくるその手には、長年使い古したであろうボロボロになった革のグローブ。
ボロボロすぎて端々がささくれ立ち、ところどころ破けて革がめくれ上がっているそれが、ダンテの手にぴったり嵌められているのが目に留まる。
「ねぇダンテ、」
「ん?」
「このグローブっていつから使ってるの」
その言葉にダンテは撫でるのを止め、自分の手を見た。
「いつからだっけか、けっこう長く使ってるな……もしかしてささくれ立って痛いか?」
「違うの。何か思い出の品だったりするのかなぁって」
もしそうなら新しいものは必要ないかもしれない。思い出とは古さをも凌ぐ大事な要素だ。
「いや……特にそういうんじゃねぇな。どうしてだ?」
「ううん、何でもないよ」
ダンテへのプレゼントはこの瞬間、決まった。