mission 9:love, after the envy ~クリスマス・キス~
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「そういやぁ、ディーヴァに言ってなかったな……」
ダンテが思い出したように話す。
「あれはオレのお袋の写真なんだ。
母親の写真を飾ってるなんて、マザコンと思われるんじゃないかと思った。だから言わなかったんだ……ごめんな」
「は?え……ウソぉ…………」
予想外の答えに思考が止まった。
苦笑しながらダンテは食事を再開しだした。
大きく切り分けたチキンステーキが口に放り込まれる。
「ウソ言ってどうすんだよ」
「でも……似てないよ?」
「オレは親父似だから」
お母さんの写真だったんだ……。
その答えを聞いて、すごくほっとした自分がいる。
「あれが唯一手元に残ったお袋の写真なんだ……」
「そっか……そう、だったんだ…」
それなら唯一埃がかぶってなかったのもわかる気がする。
勝手に思い込んでいただけだったようだ。
ディーヴァはダンテを疑った自分が恥ずかしくなった。
「うわああああ!
あたしのバカバカバカ!」
ディーヴァは両手で顔を覆った。
「うぉ!急に叫んでどうかしたのか!?バカ?バカってなんでだ!!?」
「はぅぅ、何でもないぃ……」
ダンテの母親相手に嫉妬なんかして……なんと恥ずかしい!恥ずか死ぬッ!
ずっと嫉妬に身を任せそうになっていたディーヴァだが、事実がわかった今、その炎はゆっくりと勢いをなくしていく。
代わりにとてつもない恥ずかしさからか。顔から火が出そうになった。
それでも一度燃え上がった嫉妬の炎は鎮火せず、未だにディーヴァの心の奥底で種火を残していた。
意外に嫉妬深い自分に気がついたディーヴァは、ダンテをもっと信じようと思った。
……なるべく、ではあったが。
***
はてさて、カレンダーはあと三日でクリスマスという時期を迎えていた。
クリスマス休暇前になると学校でも街中でも、そこかしこにカップルが増えて幸せそうな空気をまとい、そして撒き散らし出す。
だが、ダンテとディーヴァもカップルだというのに、そんな素振りを見せなかった。
ダンテなどディーヴァにいつもべったりしていたというのに、ここ最近は依頼が忙しいのかほとんど留守にしている。
と言っても、一緒にいる時のダンテは通常運転で、触れるなと言っても触れてくるのだが。
そもそもディーヴァは別に街行くカップルのようにいちゃいちゃしたいわけではない。
しかし、会えない時間が多くなってくると正直さびしく感じるものだ。
それが起きたのは、その日の学校の帰り道のこと。
ディーヴァは学校の用事がたてこみ、少しばかり帰りが遅くなった。
しかし、買い物をしなくては今夜のおかずに困ってしまう。
そう考えたディーヴァはタイムセールが遅い時間にあるという、いつもは利用しない店に足を運んだのだった。
「ふふ、安いから色々買っちゃった~♪」
なんとかタイムセールにも間に合い、店を出てほくほく顔で帰路を歩く。
買いすぎたのか、ちょっとばかり重い。
「ん……あれってもしかしてダンテ?」
ふと見上げると、トレードマークの赤いコートと、銀髪がちらりと見えた。
こちらの方角の区画にいるとは珍しい。
珍しくも仕事の現場がこちら側にあったのかもしれない。
笑顔を浮かべたディーヴァは、ダンテに声をかけるべく歩み寄ろうと一歩前に踏み出した。
だが、進むことは叶わなかった。
見てしまったのだ。
それまでダンテの影に隠れてよく見えなかったのだが、見知らぬ女の子と一緒にいるダンテの姿を。
「え……?」
どういうこと?
仕事じゃなかったの?
もやもやと黒い感情が再び鎌首をあげていく。
嫉妬の炎がチリチリと心の端から焦がしていく。
相手はディーヴァとそう変わらない年齢だろう、ディーヴァよりも活発そうな少女。
ウェーブのかかった茶色のミディアムロングが風にふわふわと揺れている。
影に隠れて見ていれば、何を話しているかまではわからないが、ダンテも少女も楽しそうに笑っていた。
それが仲睦まじく幸せそうにディーヴァの目には映った。
しばらく見ていると相手がダンテから離れ、去っていくのが確認できた。
ダンテが手を振り返してからこちらの方へ歩いてくるのが見えて、ディーヴァはあわてた。
「……ディーヴァ?」
「あ…あれ、ダンテ?奇遇だね!」
見つかるのは当たり前だ。
半分悪魔のダンテは目もいい。そうでなくても、ディーヴァはすぐに見つかるようなそんな小さな影にいたのだから。
「今帰りなのか?こっちの方角の店に来るなんて珍しいな」
「うん、ちょっと学校出るのが遅くなっちゃって、ここならタイムセールも間に合うからね……。ダンテはもう帰れるの?」
「ああ、今日は終わりだな。一緒に帰ろうぜ」
「うん……」
ダンテは何も言わずにディーヴァの抱える荷物を取り上げた。
「……ありがとう」
礼を言ったその声が少しだけ低くなるのは、見てしまったあの光景のせいか。
その低さでダンテが何かを悟ったか、聞きづらそうに声をかける。
「あー、えっと。もしかして、何か……見たか?」
「え?今、店を出たばっかりだけど?」
ディーヴァは見てしまったことを咄嗟に隠した。
たった今店から出たかのようにふるまう。
「何かって何?どうかしたの?」
ダンテの前で、努めて明るくふるまう。
「いや、何でもねぇ……。ところで今日のメシは何だ?」
「えっとね……」
話しながらも、ディーヴァの思考は違うところに飛んでいた。
さっきディーヴァが見たあの光景のことをダンテは隠そうとしている。
これは浮気確定で合ってるのかもしれない。
男の人は釣った魚に餌はやらない、なんて友達が言っていたが、これがそうなのか。
魚を釣り終えたら、次の魚に夢中になる。
そういえばその友達も、クリスマスを目前にして恋人に浮気されたと昨日ぼやいていた。
ダンテに対し、はらわたが煮えくりかえりそうな思いがあふれてたまらない。思わず奥歯を噛みしめる。
……でも。
あの少女といる時のダンテは笑っていた。
あたかも相思相愛のように。
ダンテのその笑顔を思い出した途端、嫉妬の気持ちや怒りの感情が、悲しみへと変わっていくのを感じる。
あれを見せられてはたまらない。
勝てない。
敵わないと思った。
ダンテを渡したくない。
でもダンテが他の人を好きなのなら、身をひくしかない。
相手もダンテのことを、心から好きで愛してくれる人であるなら尚更だ。
天使の血、悪魔の血。
そんなものを気にしないですむ、普通の人間の方がダンテにはきっといい。
この嫉妬ばかり繰り返していた思いには固い蓋をし、鎖で固定して暗く冷たい湖の底へと、深く深く沈めてしまおう。
この場所はすごく楽しかったし、居心地も良く幸せだった。
でも、他の人の場所に変わるのなら、自分は出ていった方がいいに決まっている。
ディーヴァは心の中で静かに涙した。
ダンテが思い出したように話す。
「あれはオレのお袋の写真なんだ。
母親の写真を飾ってるなんて、マザコンと思われるんじゃないかと思った。だから言わなかったんだ……ごめんな」
「は?え……ウソぉ…………」
予想外の答えに思考が止まった。
苦笑しながらダンテは食事を再開しだした。
大きく切り分けたチキンステーキが口に放り込まれる。
「ウソ言ってどうすんだよ」
「でも……似てないよ?」
「オレは親父似だから」
お母さんの写真だったんだ……。
その答えを聞いて、すごくほっとした自分がいる。
「あれが唯一手元に残ったお袋の写真なんだ……」
「そっか……そう、だったんだ…」
それなら唯一埃がかぶってなかったのもわかる気がする。
勝手に思い込んでいただけだったようだ。
ディーヴァはダンテを疑った自分が恥ずかしくなった。
「うわああああ!
あたしのバカバカバカ!」
ディーヴァは両手で顔を覆った。
「うぉ!急に叫んでどうかしたのか!?バカ?バカってなんでだ!!?」
「はぅぅ、何でもないぃ……」
ダンテの母親相手に嫉妬なんかして……なんと恥ずかしい!恥ずか死ぬッ!
ずっと嫉妬に身を任せそうになっていたディーヴァだが、事実がわかった今、その炎はゆっくりと勢いをなくしていく。
代わりにとてつもない恥ずかしさからか。顔から火が出そうになった。
それでも一度燃え上がった嫉妬の炎は鎮火せず、未だにディーヴァの心の奥底で種火を残していた。
意外に嫉妬深い自分に気がついたディーヴァは、ダンテをもっと信じようと思った。
……なるべく、ではあったが。
***
はてさて、カレンダーはあと三日でクリスマスという時期を迎えていた。
クリスマス休暇前になると学校でも街中でも、そこかしこにカップルが増えて幸せそうな空気をまとい、そして撒き散らし出す。
だが、ダンテとディーヴァもカップルだというのに、そんな素振りを見せなかった。
ダンテなどディーヴァにいつもべったりしていたというのに、ここ最近は依頼が忙しいのかほとんど留守にしている。
と言っても、一緒にいる時のダンテは通常運転で、触れるなと言っても触れてくるのだが。
そもそもディーヴァは別に街行くカップルのようにいちゃいちゃしたいわけではない。
しかし、会えない時間が多くなってくると正直さびしく感じるものだ。
それが起きたのは、その日の学校の帰り道のこと。
ディーヴァは学校の用事がたてこみ、少しばかり帰りが遅くなった。
しかし、買い物をしなくては今夜のおかずに困ってしまう。
そう考えたディーヴァはタイムセールが遅い時間にあるという、いつもは利用しない店に足を運んだのだった。
「ふふ、安いから色々買っちゃった~♪」
なんとかタイムセールにも間に合い、店を出てほくほく顔で帰路を歩く。
買いすぎたのか、ちょっとばかり重い。
「ん……あれってもしかしてダンテ?」
ふと見上げると、トレードマークの赤いコートと、銀髪がちらりと見えた。
こちらの方角の区画にいるとは珍しい。
珍しくも仕事の現場がこちら側にあったのかもしれない。
笑顔を浮かべたディーヴァは、ダンテに声をかけるべく歩み寄ろうと一歩前に踏み出した。
だが、進むことは叶わなかった。
見てしまったのだ。
それまでダンテの影に隠れてよく見えなかったのだが、見知らぬ女の子と一緒にいるダンテの姿を。
「え……?」
どういうこと?
仕事じゃなかったの?
もやもやと黒い感情が再び鎌首をあげていく。
嫉妬の炎がチリチリと心の端から焦がしていく。
相手はディーヴァとそう変わらない年齢だろう、ディーヴァよりも活発そうな少女。
ウェーブのかかった茶色のミディアムロングが風にふわふわと揺れている。
影に隠れて見ていれば、何を話しているかまではわからないが、ダンテも少女も楽しそうに笑っていた。
それが仲睦まじく幸せそうにディーヴァの目には映った。
しばらく見ていると相手がダンテから離れ、去っていくのが確認できた。
ダンテが手を振り返してからこちらの方へ歩いてくるのが見えて、ディーヴァはあわてた。
「……ディーヴァ?」
「あ…あれ、ダンテ?奇遇だね!」
見つかるのは当たり前だ。
半分悪魔のダンテは目もいい。そうでなくても、ディーヴァはすぐに見つかるようなそんな小さな影にいたのだから。
「今帰りなのか?こっちの方角の店に来るなんて珍しいな」
「うん、ちょっと学校出るのが遅くなっちゃって、ここならタイムセールも間に合うからね……。ダンテはもう帰れるの?」
「ああ、今日は終わりだな。一緒に帰ろうぜ」
「うん……」
ダンテは何も言わずにディーヴァの抱える荷物を取り上げた。
「……ありがとう」
礼を言ったその声が少しだけ低くなるのは、見てしまったあの光景のせいか。
その低さでダンテが何かを悟ったか、聞きづらそうに声をかける。
「あー、えっと。もしかして、何か……見たか?」
「え?今、店を出たばっかりだけど?」
ディーヴァは見てしまったことを咄嗟に隠した。
たった今店から出たかのようにふるまう。
「何かって何?どうかしたの?」
ダンテの前で、努めて明るくふるまう。
「いや、何でもねぇ……。ところで今日のメシは何だ?」
「えっとね……」
話しながらも、ディーヴァの思考は違うところに飛んでいた。
さっきディーヴァが見たあの光景のことをダンテは隠そうとしている。
これは浮気確定で合ってるのかもしれない。
男の人は釣った魚に餌はやらない、なんて友達が言っていたが、これがそうなのか。
魚を釣り終えたら、次の魚に夢中になる。
そういえばその友達も、クリスマスを目前にして恋人に浮気されたと昨日ぼやいていた。
ダンテに対し、はらわたが煮えくりかえりそうな思いがあふれてたまらない。思わず奥歯を噛みしめる。
……でも。
あの少女といる時のダンテは笑っていた。
あたかも相思相愛のように。
ダンテのその笑顔を思い出した途端、嫉妬の気持ちや怒りの感情が、悲しみへと変わっていくのを感じる。
あれを見せられてはたまらない。
勝てない。
敵わないと思った。
ダンテを渡したくない。
でもダンテが他の人を好きなのなら、身をひくしかない。
相手もダンテのことを、心から好きで愛してくれる人であるなら尚更だ。
天使の血、悪魔の血。
そんなものを気にしないですむ、普通の人間の方がダンテにはきっといい。
この嫉妬ばかり繰り返していた思いには固い蓋をし、鎖で固定して暗く冷たい湖の底へと、深く深く沈めてしまおう。
この場所はすごく楽しかったし、居心地も良く幸せだった。
でも、他の人の場所に変わるのなら、自分は出ていった方がいいに決まっている。
ディーヴァは心の中で静かに涙した。