mission 9:love, after the envy ~クリスマス・キス~
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……パタン。
受話器を力強く置いた拍子に、そばにあった写真立てが倒れたようだ。
あわてて起こして割れていないかチェックするが、どこもなんともない。
ほっと胸を撫で下ろした。
「危ない危ない」
ディーヴァはその写真立ての中の人物をまじまじと観察した。
こんなにじっくりと見るのは初めてかもしれない。
とても綺麗な人だ。
艶々の金髪はまぶしく、赤い服を身に纏い美しい笑顔を惜しげもなくこちらにさらした美女である。
トップモデルだと言われても違和感をまったく感じない。
いつ見てもこの写真立てには埃がかぶっていない。
そういえば初めてここに来た時も、この写真立てだけには埃一つついていなかった気がする。
ダンテにとってよほど大切な写真なのかもしれない。
でも、いつもは気にならないそんなら些細なことが、今はとても引っ掛かった。
聞いたことはなかったが、この女性は一体誰なんだろうか?
実はダンテの本来の彼女なんではないか?
ふとそんな考えが脳裏をよぎる。
ダンテには告白されたが、彼女になってくれと言われたわけではないのだ。
そしてディーヴァもまた、ダンテに好きとは伝えたものの彼氏になって欲しいと言った覚えはない。
「ん?あれ……。
そもそも何をもってして彼氏彼女なの?」
男性と付き合った経験なんて一度もないから全然わからない。
どこからがお付き合いのスタートなんだろう?
お付き合いって何?
好きという気持ちがあればいいんじゃなかったん
考えれば考えるほどに脳が混乱をきたす。
「あーもう、やーめたっ!」
ディーヴァは考えを脳の隅に追いやるようにブンブンと首を振った。
少しばかりすっきりした頭で、もう一度写真立ての中の人物を見る。
自分よりもダンテに似合っている気がした。
このブロンドの美女とダンテが一緒に歩いているところを想像するのは容易だ。
それにしてはダンテの方が少々若く感じるため、ヒモ状態のダンテも想像に難くないのだが。
それでも自分とダンテの、身長差がありすぎるデコボコカップルよりは、よっぽどお似合いに見えた。
ダンテはものすごい美男子だし、写真の彼女ものすごい美女なのだから。
とはいえ、自慢ではないが自分へのダンテの溺愛っぷりを見ると、実はほかに本命がいるとは考えにくい。
それでも……。
ディーヴァはダンテを想えば想うほどに、形容しがたい不安を感じた。
切れない糸で雁字搦めになったような、逃げ場のない感情に支配される。
嫉妬するなんて嫌なのに。
面倒臭い女になりたくないのに。
「ダンテは、あたしのモノなのに……」
ぼそりと呟いて初めて、ディーヴァはダンテを自分のモノ扱いしている自分に気がついた。
なんて醜い。
こんな感情を持っている自分は、なんと汚い女なのだろう。
前にも思ったが、ダンテへの自分の気持ちはもう手遅れなほど、堕ちるところまで堕ちているのかもしれない。
自分でも恐ろしく感じ、静かに目を閉じた。
「こういうこと考えちゃうのってやだな……。でも確認、しないと……」
でないと汚い感情だらけの、もっと嫌な女になりそうだ。
***
その夜、ダンテは久しぶりに早く帰宅した。
「ディーヴァ、ただいま」
「うん、お帰り」
ディーヴァは出来るだけ暗くならないよう、明るい笑顔でダンテを迎え入れた。
ダンテはその裏に潜む、黒い感情に気がつかない。
ディーヴァが上手く感情を隠しているためだ。
夕食を口にしながら、他愛のない会話をする。その会話を終え、切り出すディーヴァ。
「そう言えば、ダンテに電話があったよ。ツケを払ってくださいって、来たんだけど……」
続きを言うのに一瞬ためらう。
だが、ディーヴァは女性達からの話を、言いづらいことさえも包み隠さず話した。
「ダンテが行けばいっぱいサービスしてくれるってさ。あたしのこと経験もない上にダンテを満足させられない『pussy』だって」
「ぶふっ」
『pussy』のところでダンテは盛大に噴き出した。
口から咀嚼物が飛び出すことは防げたが、ダンテのフォークが料理を逸れて皿にガチンとぶつかった。
その振動にバター煮の豆が皿の外に弾け飛ぶ。
そしてそれはテーブルを離れてコロコロと下へ転がり落ちていった。
ダンテは気まずそうにディーヴァを無言で見た。
ニコニコと笑顔のままだったが、それが何故かとても恐ろく感じた。
「あ、女の人の名前は聞かず仕舞いだったよ、ごめんね?」
ダンテが動揺しているのは一目瞭然だった。その動揺を見ていると、どこか覚めていく感情。
ディーヴァは目を細め、フォークとナイフを勢いよく皿の料理に刺した。
ブチブチッ……。
今夜のメインであるチキンステーキの繊維が裂かれる音がする。
「そう言えばさあ……」
ディーヴァが下を向いて、一心不乱に肉を解体しながら話し出した。
ダンテの動きがフォークとナイフを持った姿勢のまま固まる。
なんか……怖いぞ……?
ダンテは、悪魔と対峙した時など比ではない例えようのない恐怖を感じながら、黙って聞いていた。
「聞いてなかったけど、あの写真って……ダァレ?」
顔を上げたディーヴァの表情にはほの暗い炎が灯っていた。
「写真って……なんだ?」
写真、といえばつい最近、ディーヴァとハロウィンに撮った一枚しか思い付かない。
でもそれだと、その質問には当てはまらないだろう。
「事務所に飾ってある写真立ての人だよ」
飾ってある写真立て、それで何のことだか気づいた。
お袋の写真のことを言っているのか。
「ああ……あれか」
「そう、すっごく綺麗な人だよね。ダンテの大事な人なんでしょう?」
「そうだな、すごく大事だよ」
照れ臭そうにしながらも言うダンテにディーヴァは心の中が燃え上がるのを感じた。
やはり、ダンテにはディーヴァなんかより大事な人が他にいたのだ。
好きって言ってくれたくせにダンテはウソつきだ。
悲しさよりも今は何故か嫉妬する気持ちが強い。
昼間にかかってきたいかがわしい店の女性達よりもその気持ちが強いのは、やはり写真立ての女性がダンテの寵愛を一身に受けているからかもしれない。
ディーヴァは唇を強く噛んだ。
受話器を力強く置いた拍子に、そばにあった写真立てが倒れたようだ。
あわてて起こして割れていないかチェックするが、どこもなんともない。
ほっと胸を撫で下ろした。
「危ない危ない」
ディーヴァはその写真立ての中の人物をまじまじと観察した。
こんなにじっくりと見るのは初めてかもしれない。
とても綺麗な人だ。
艶々の金髪はまぶしく、赤い服を身に纏い美しい笑顔を惜しげもなくこちらにさらした美女である。
トップモデルだと言われても違和感をまったく感じない。
いつ見てもこの写真立てには埃がかぶっていない。
そういえば初めてここに来た時も、この写真立てだけには埃一つついていなかった気がする。
ダンテにとってよほど大切な写真なのかもしれない。
でも、いつもは気にならないそんなら些細なことが、今はとても引っ掛かった。
聞いたことはなかったが、この女性は一体誰なんだろうか?
実はダンテの本来の彼女なんではないか?
ふとそんな考えが脳裏をよぎる。
ダンテには告白されたが、彼女になってくれと言われたわけではないのだ。
そしてディーヴァもまた、ダンテに好きとは伝えたものの彼氏になって欲しいと言った覚えはない。
「ん?あれ……。
そもそも何をもってして彼氏彼女なの?」
男性と付き合った経験なんて一度もないから全然わからない。
どこからがお付き合いのスタートなんだろう?
お付き合いって何?
好きという気持ちがあればいいんじゃなかったん
考えれば考えるほどに脳が混乱をきたす。
「あーもう、やーめたっ!」
ディーヴァは考えを脳の隅に追いやるようにブンブンと首を振った。
少しばかりすっきりした頭で、もう一度写真立ての中の人物を見る。
自分よりもダンテに似合っている気がした。
このブロンドの美女とダンテが一緒に歩いているところを想像するのは容易だ。
それにしてはダンテの方が少々若く感じるため、ヒモ状態のダンテも想像に難くないのだが。
それでも自分とダンテの、身長差がありすぎるデコボコカップルよりは、よっぽどお似合いに見えた。
ダンテはものすごい美男子だし、写真の彼女ものすごい美女なのだから。
とはいえ、自慢ではないが自分へのダンテの溺愛っぷりを見ると、実はほかに本命がいるとは考えにくい。
それでも……。
ディーヴァはダンテを想えば想うほどに、形容しがたい不安を感じた。
切れない糸で雁字搦めになったような、逃げ場のない感情に支配される。
嫉妬するなんて嫌なのに。
面倒臭い女になりたくないのに。
「ダンテは、あたしのモノなのに……」
ぼそりと呟いて初めて、ディーヴァはダンテを自分のモノ扱いしている自分に気がついた。
なんて醜い。
こんな感情を持っている自分は、なんと汚い女なのだろう。
前にも思ったが、ダンテへの自分の気持ちはもう手遅れなほど、堕ちるところまで堕ちているのかもしれない。
自分でも恐ろしく感じ、静かに目を閉じた。
「こういうこと考えちゃうのってやだな……。でも確認、しないと……」
でないと汚い感情だらけの、もっと嫌な女になりそうだ。
***
その夜、ダンテは久しぶりに早く帰宅した。
「ディーヴァ、ただいま」
「うん、お帰り」
ディーヴァは出来るだけ暗くならないよう、明るい笑顔でダンテを迎え入れた。
ダンテはその裏に潜む、黒い感情に気がつかない。
ディーヴァが上手く感情を隠しているためだ。
夕食を口にしながら、他愛のない会話をする。その会話を終え、切り出すディーヴァ。
「そう言えば、ダンテに電話があったよ。ツケを払ってくださいって、来たんだけど……」
続きを言うのに一瞬ためらう。
だが、ディーヴァは女性達からの話を、言いづらいことさえも包み隠さず話した。
「ダンテが行けばいっぱいサービスしてくれるってさ。あたしのこと経験もない上にダンテを満足させられない『pussy』だって」
「ぶふっ」
『pussy』のところでダンテは盛大に噴き出した。
口から咀嚼物が飛び出すことは防げたが、ダンテのフォークが料理を逸れて皿にガチンとぶつかった。
その振動にバター煮の豆が皿の外に弾け飛ぶ。
そしてそれはテーブルを離れてコロコロと下へ転がり落ちていった。
ダンテは気まずそうにディーヴァを無言で見た。
ニコニコと笑顔のままだったが、それが何故かとても恐ろく感じた。
「あ、女の人の名前は聞かず仕舞いだったよ、ごめんね?」
ダンテが動揺しているのは一目瞭然だった。その動揺を見ていると、どこか覚めていく感情。
ディーヴァは目を細め、フォークとナイフを勢いよく皿の料理に刺した。
ブチブチッ……。
今夜のメインであるチキンステーキの繊維が裂かれる音がする。
「そう言えばさあ……」
ディーヴァが下を向いて、一心不乱に肉を解体しながら話し出した。
ダンテの動きがフォークとナイフを持った姿勢のまま固まる。
なんか……怖いぞ……?
ダンテは、悪魔と対峙した時など比ではない例えようのない恐怖を感じながら、黙って聞いていた。
「聞いてなかったけど、あの写真って……ダァレ?」
顔を上げたディーヴァの表情にはほの暗い炎が灯っていた。
「写真って……なんだ?」
写真、といえばつい最近、ディーヴァとハロウィンに撮った一枚しか思い付かない。
でもそれだと、その質問には当てはまらないだろう。
「事務所に飾ってある写真立ての人だよ」
飾ってある写真立て、それで何のことだか気づいた。
お袋の写真のことを言っているのか。
「ああ……あれか」
「そう、すっごく綺麗な人だよね。ダンテの大事な人なんでしょう?」
「そうだな、すごく大事だよ」
照れ臭そうにしながらも言うダンテにディーヴァは心の中が燃え上がるのを感じた。
やはり、ダンテにはディーヴァなんかより大事な人が他にいたのだ。
好きって言ってくれたくせにダンテはウソつきだ。
悲しさよりも今は何故か嫉妬する気持ちが強い。
昼間にかかってきたいかがわしい店の女性達よりもその気持ちが強いのは、やはり写真立ての女性がダンテの寵愛を一身に受けているからかもしれない。
ディーヴァは唇を強く噛んだ。