mission 7:overcome a sad memory ~記憶に打ち勝て~
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……恨んでない?」
ディーヴァは何も話さない兄に、怒っているからしゃべろうとしないのかと思った。
「もしかしてあの人と楽しそうに過ごしてるから怒ってるの?
あたしが家族のこと忘れたとでも思ってる?
あたし……一時だって忘れたことないわ。パパも、ママも、お兄ちゃんのことも」
パパとママ……。思い出して気がつく。
兄がいるならママとパパはどこにいるんだろう。
「そういえば……何でお兄ちゃんだけがここにいるの?」
「ハロウィンだから会いに来たんだよ。こうして肉体も借りてね」
兄はにこりと笑うとようやく口を開いた。
話せないわけでも怒っていたわけでもないようで少し安心する。
でもダンテが言うには確か……。
「悪魔に殺されたら魂が無くなるって聞いたよ」
「魂を食われるのを俺だけ免れたんだ」
「そうなの、なら良かった……」
パパやママに会えないのは残念だけど、兄と会えただけでもうれしい。
ディーヴァはそのぬくもりにさらに強く抱き締めた。
「あたしね、ちゃんと生きるって約束したの。お兄ちゃんやパパ、ママの分も一生懸命生きる……今一緒にいる人との約束なんだ」
お兄ちゃんは会ったら怒るかもしれないけどね、と兄には聞こえないくらいの小さな声で付け足す。
兄はディーヴァでもわかるくらいシスコンだった。
だからダンテの話は下手に出来ないのだ。
「そうか……」
兄の顔に陰が差す。
低身長のディーヴァが下から覗いているというのに、その表情は全くうかがえなかった。
「残念だな。今からその約束は破られることになる」
「え……?」
ドスッ!
ディーヴァの首筋に手刀が入った。
「うっ!」
倒れる寸前に見えた兄の表情は、見たこともないくらい下卑た笑みに歪んでいた。
「な……んで、お兄ちゃ……」
薄れる意識の中、遠くでダンテがディーヴァを呼ぶ声がしたような気がした。
兄はしばし、満足げにぐったりと横たわるディーヴァを見ていた。
どうやっていただこうか、どこからいただこうか思案して舌舐めずりする。
その耳にディーヴァを呼ぶ声が届いた。
忌々しきスパーダの血族がディーヴァを探していたのを思い出す。
「さっさとずらかるか」
ディーヴァを荷物のように俵担ぎにし、その場から立ち去った。
***
悪魔を退治し終えたダンテは、ディーヴァを探していた。
ここで待っていろ、そう言ったはずの場所では、ディーヴァの姿は忽然と消していた。
ディーヴァに自分の魔力を纏わせてでもおけばよかった。
そうすればディーヴァの居場所はいつでもわかったはずだ。
少し前の自分を殴りたい。
「ディーヴァ!くそ、いない……こっちじゃないのか?」
何かを思い立ったダンテは、闇雲に探すのをやめ屋根に上がる。
神経を研ぎ澄まし、ディーヴァの聖域の如く神聖な気配、あの全てを癒す空気が流れる場所を探す。
「あっちだな!」
目を閉じて感覚を研ぎ澄ませば、暗く淀んだスラムの空気の中に、淡く白く光る一筋の明かりを感じる。
それこそが、天使の血が流れるディーヴァの、居場所だ。
ダンテはその気配を感じた方角へ屋根づたいに駆け寄り、飛び降りた。
着地ポイントはちょうどディーヴァを担ぎ、どこかへと連れ去ろうとする男の目の前だった。
「ビンゴ!」
「ちっ……!見つかったか……!!」
男は小さく舌打ちすると、ダンテに顔を向けて笑った。
「初めまして?
ディーヴァの兄のミシェルです。妹は連れて帰らせてもらうよ……。妹から聞いてるけど、えーと……確かダンテくんだったかな?」
ニコニコと人の良さそうな笑顔は、見た者の警戒心を解きほぐすには十分なもの。
だが、ダンテには全く通用しなかった。
冷たい銃口を突きつけるように、恐ろしく無表情のダンテ。
「へぇ……?上手く化けたもんだな、白々しい。
見た目だけはディーヴァの兄貴にそっくりだぜ」
「クックックックッ……。騙されやしないかったか。こいつの記憶を読み取ったから、ほらこのとおり、そっくりに化けられたのだ!
……似ているでしょう?」
下卑た表情をあらわにし、笑って見せた悪魔だが、それを手で覆い隠し、人好きのする顔へと一瞬で変化させた。
見れば見るほどディーヴァの兄にそっくりだ。
実際にディーヴァの兄が生きているところを見ていないのでわからないが、おそらく立ち居振舞いや口調も似せる事が出来るのだろう。
が、悪魔の匂い、纏う血の匂いは隠せない。
「腐り切った悪魔のくせぇ匂い。てめぇらのそれは隠そうとしても無駄だ。
そもそもディーヴァは気を失ってるじゃねーか。拐おうとしてるのが丸わかりなんだよ!」
「ふむ、匂いを誤魔化せなかったとは……。やはり半魔たるスパーダの息子を騙すのは無理だったか」
やれやれ、と腕をすくめてみせた悪魔。
その間もずっと悪魔の目は、逃げ道を探してギョロギョロと動いていた。
ダンテもそれがわかっているのか、ジリジリ追い詰めながら悪魔の逃げ道を塞ぐ。
「いくら見た目を変えたって匂いまでは変えられねぇ。他の奴は騙せても、オレの鼻からは逃げられねぇぜ。
……んで、てめぇは、この間オレ達の周りをうろついてた悪魔だな?」
「よくおわかりで」
「ディーヴァを大人しく返せば今ならまだ一発だけで見逃してやる……。見た目がディーヴァの兄貴の悪魔なんて、ぶっ飛ばしづらいからな」
今はディーヴァが無事に返ってくればそれでいい。ダンテにしては譲歩したほうだ。
だが、一発だけとはいえ、撃つ気満々。ダンテは構えた銃の照準を、悪魔の眉間に合わせたままだ。
「聞くわけがないだろう」
「だよな……。
ディーヴァをどうする気だ?喰うつもりならてめえら悪魔は捕まえた瞬間にさっさと喰うだろ」
「決まってる。いたぶってけがすのさ。絶望に染まった天使の血肉は格別だからな」
お前もよく知っておろう、と悪魔が笑みを浮かべる。
知っていると言うよりも、ダンテには身に覚えがあった。
未遂に終わったが、前に満月の夜にディーヴァを襲いかけた。あの時の怯えたディーヴァの顔を思い出す。
もう二度と怖がらせないと誓ったのだ。
自分からも、悪魔からも、ディーヴァを危険にさらすすべてから守ると。
ディーヴァは何も話さない兄に、怒っているからしゃべろうとしないのかと思った。
「もしかしてあの人と楽しそうに過ごしてるから怒ってるの?
あたしが家族のこと忘れたとでも思ってる?
あたし……一時だって忘れたことないわ。パパも、ママも、お兄ちゃんのことも」
パパとママ……。思い出して気がつく。
兄がいるならママとパパはどこにいるんだろう。
「そういえば……何でお兄ちゃんだけがここにいるの?」
「ハロウィンだから会いに来たんだよ。こうして肉体も借りてね」
兄はにこりと笑うとようやく口を開いた。
話せないわけでも怒っていたわけでもないようで少し安心する。
でもダンテが言うには確か……。
「悪魔に殺されたら魂が無くなるって聞いたよ」
「魂を食われるのを俺だけ免れたんだ」
「そうなの、なら良かった……」
パパやママに会えないのは残念だけど、兄と会えただけでもうれしい。
ディーヴァはそのぬくもりにさらに強く抱き締めた。
「あたしね、ちゃんと生きるって約束したの。お兄ちゃんやパパ、ママの分も一生懸命生きる……今一緒にいる人との約束なんだ」
お兄ちゃんは会ったら怒るかもしれないけどね、と兄には聞こえないくらいの小さな声で付け足す。
兄はディーヴァでもわかるくらいシスコンだった。
だからダンテの話は下手に出来ないのだ。
「そうか……」
兄の顔に陰が差す。
低身長のディーヴァが下から覗いているというのに、その表情は全くうかがえなかった。
「残念だな。今からその約束は破られることになる」
「え……?」
ドスッ!
ディーヴァの首筋に手刀が入った。
「うっ!」
倒れる寸前に見えた兄の表情は、見たこともないくらい下卑た笑みに歪んでいた。
「な……んで、お兄ちゃ……」
薄れる意識の中、遠くでダンテがディーヴァを呼ぶ声がしたような気がした。
兄はしばし、満足げにぐったりと横たわるディーヴァを見ていた。
どうやっていただこうか、どこからいただこうか思案して舌舐めずりする。
その耳にディーヴァを呼ぶ声が届いた。
忌々しきスパーダの血族がディーヴァを探していたのを思い出す。
「さっさとずらかるか」
ディーヴァを荷物のように俵担ぎにし、その場から立ち去った。
***
悪魔を退治し終えたダンテは、ディーヴァを探していた。
ここで待っていろ、そう言ったはずの場所では、ディーヴァの姿は忽然と消していた。
ディーヴァに自分の魔力を纏わせてでもおけばよかった。
そうすればディーヴァの居場所はいつでもわかったはずだ。
少し前の自分を殴りたい。
「ディーヴァ!くそ、いない……こっちじゃないのか?」
何かを思い立ったダンテは、闇雲に探すのをやめ屋根に上がる。
神経を研ぎ澄まし、ディーヴァの聖域の如く神聖な気配、あの全てを癒す空気が流れる場所を探す。
「あっちだな!」
目を閉じて感覚を研ぎ澄ませば、暗く淀んだスラムの空気の中に、淡く白く光る一筋の明かりを感じる。
それこそが、天使の血が流れるディーヴァの、居場所だ。
ダンテはその気配を感じた方角へ屋根づたいに駆け寄り、飛び降りた。
着地ポイントはちょうどディーヴァを担ぎ、どこかへと連れ去ろうとする男の目の前だった。
「ビンゴ!」
「ちっ……!見つかったか……!!」
男は小さく舌打ちすると、ダンテに顔を向けて笑った。
「初めまして?
ディーヴァの兄のミシェルです。妹は連れて帰らせてもらうよ……。妹から聞いてるけど、えーと……確かダンテくんだったかな?」
ニコニコと人の良さそうな笑顔は、見た者の警戒心を解きほぐすには十分なもの。
だが、ダンテには全く通用しなかった。
冷たい銃口を突きつけるように、恐ろしく無表情のダンテ。
「へぇ……?上手く化けたもんだな、白々しい。
見た目だけはディーヴァの兄貴にそっくりだぜ」
「クックックックッ……。騙されやしないかったか。こいつの記憶を読み取ったから、ほらこのとおり、そっくりに化けられたのだ!
……似ているでしょう?」
下卑た表情をあらわにし、笑って見せた悪魔だが、それを手で覆い隠し、人好きのする顔へと一瞬で変化させた。
見れば見るほどディーヴァの兄にそっくりだ。
実際にディーヴァの兄が生きているところを見ていないのでわからないが、おそらく立ち居振舞いや口調も似せる事が出来るのだろう。
が、悪魔の匂い、纏う血の匂いは隠せない。
「腐り切った悪魔のくせぇ匂い。てめぇらのそれは隠そうとしても無駄だ。
そもそもディーヴァは気を失ってるじゃねーか。拐おうとしてるのが丸わかりなんだよ!」
「ふむ、匂いを誤魔化せなかったとは……。やはり半魔たるスパーダの息子を騙すのは無理だったか」
やれやれ、と腕をすくめてみせた悪魔。
その間もずっと悪魔の目は、逃げ道を探してギョロギョロと動いていた。
ダンテもそれがわかっているのか、ジリジリ追い詰めながら悪魔の逃げ道を塞ぐ。
「いくら見た目を変えたって匂いまでは変えられねぇ。他の奴は騙せても、オレの鼻からは逃げられねぇぜ。
……んで、てめぇは、この間オレ達の周りをうろついてた悪魔だな?」
「よくおわかりで」
「ディーヴァを大人しく返せば今ならまだ一発だけで見逃してやる……。見た目がディーヴァの兄貴の悪魔なんて、ぶっ飛ばしづらいからな」
今はディーヴァが無事に返ってくればそれでいい。ダンテにしては譲歩したほうだ。
だが、一発だけとはいえ、撃つ気満々。ダンテは構えた銃の照準を、悪魔の眉間に合わせたままだ。
「聞くわけがないだろう」
「だよな……。
ディーヴァをどうする気だ?喰うつもりならてめえら悪魔は捕まえた瞬間にさっさと喰うだろ」
「決まってる。いたぶってけがすのさ。絶望に染まった天使の血肉は格別だからな」
お前もよく知っておろう、と悪魔が笑みを浮かべる。
知っていると言うよりも、ダンテには身に覚えがあった。
未遂に終わったが、前に満月の夜にディーヴァを襲いかけた。あの時の怯えたディーヴァの顔を思い出す。
もう二度と怖がらせないと誓ったのだ。
自分からも、悪魔からも、ディーヴァを危険にさらすすべてから守ると。