mission 7:overcome a sad memory ~記憶に打ち勝て~
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せっかくのハロウィンだからと、ダンテとディーヴァは町に繰り出すことにした。
といっても仮装はやめにし、いつもの私服に着替えてだ。
外に出てスラム街を少し歩くと、陰になっている場所の所々に、漆黒のもやが立ち上っているのに、ダンテが気がついた。
あれは、下級悪魔の出現の合図だ。まじかよ。
「走るぞ」
「え」
ダンテはディーヴァの背と膝裏にすばやく手を入れると抱きかかえて走り出した。
いわゆるお姫様抱っこというやつである。
「きゃっ」
二人が通りすぎると同時、それが悪魔の姿を形成していく。徐々に数を増やしていくのが見えた。
自分達がいることに気が付いた悪魔は、どんどんと寄ってくるであろう事、ダンテはわかっていた。
だが、いつもはここまで集まってこない悪魔がどうして数を多くしているのだろうか。ましてや今は太陽の出ている昼間である。
ダンテは首を傾げた。
そんなダンテの突然の行動に、ディーヴァは舌を噛みそうになりながら怒った。
「い……いきなり何なの?」
「後ろを見てみ」
ちら。
ダンテの首から後方を覗くとたくさんの悪魔が追いかけてきているのが見えた。
「げ」
ダンテに抱きかかえられなかったら今ごろは悪魔のど真ん中に置き去りだろう。考えてぞっとする。
一方、ディーヴァを軽々と抱え走っているダンテの目に、人間の魂がプカプカと宙に浮かんでいるのが映った。
ダンテの半分悪魔の目だからこそ、こうしてたまに見えてしまう人間の魂。
悪魔達は人間の魂を回収しに魔界からやってきているようで、時折虚空に手を伸ばしている。
さながらハロウィンに菓子を強請る子どものようだ。
ああ。ハロウィンだからか。
ハロウィンには死んだ者の魂がこの世にやってくるという。
だからそれを求めてやってきたのだろう。
しかし悪魔達はダンテ達を見つけるや否や、すべてこちらに向かってくる。反逆者スパーダの息子討つべし、天使の血肉喰らうべし、と言ったところ。
面倒くさいったらありゃしない。
「奴らもハロウィンを楽しみにしてたようだな。魔界からはるばるご苦労なこって」
フン、と鼻で笑う。
「悪魔がハロウィンを祝うの?」
「違う違う。ハロウィンだから里帰りしてきた魂がそこらを浮いてるんだ。それを求めて悪魔どもが湧いたらしい。
あとはオレが悪魔から追っかけされるほどの人気者ってのが、理由かな。おっと、最近はディーヴァにもいっぱい悪魔のファンがついてたな」
「全然うれしくない」
「だな。……ち、増えすぎた」
このままでは他の人間にも被害がでる。
どんなに弱い悪魔でも数が揃えば人間には脅威になる。
ディーヴァ以外がどうなろうがぶっちゃけ知ったこっちゃないが、悪魔による負傷者が近くで出ようものなら心優しいディーヴァは悲しむ。
それが例え極悪人でも、人殺しでもだ。
「どうするの?」
「倒してくる。ここなら陰がなくて明るいから安全なはずだ」
やはり昼間だから動きが制限されるのか、悪魔達は暗いスラムの影の中でだけ行動しているようだ。
召喚されたのが低級悪魔でよかった。
ダンテはディーヴァを日の光の降り注ぐ明るい場所に降ろした。
「ちょっと待ってろ」
そして得物を手に悪魔の群れへと突っ込んで行った。
***
『ディーヴァ……』
ダンテと別れてしばらく、自分を呼ぶ懐かしい声が聞こえてきた。
その声は、今いる明るい通りから一本入った路地裏の奥から聞き取れる。
幸い、ダンテは周りの悪魔を引き連れながら倒しに行ってしまったのでこの辺りに悪魔はいない。
ダンテにはあまり一人で入らないように言われていた路地裏だが、ディーヴァはどうしても気になり、一瞬だけ躊躇してからそっと入り込んだ。
『ディーヴァ』
呼んでいる。
『ディーヴァ』
聞こえる、慣れ親しんだ大事な者の声。
家族の声。
ディーヴァは徐々に足の速度をあげ、声に導かれるまま道を進む。
声が聞こえた場所へと、息を切らしながらもようやくたどり着いたディーヴァは、周りをぐるりと見回した。
「ここだよ」
ディーヴァが振り替えるとそこには兄がいた。
顔も、服も、そのすべてが最後に会話した時のままの姿がそこにあった。
あの日はディーヴァの誕生日だった。家族で祝った誕生日。あのあと悪魔に襲われた。
腕を広げてただただ微笑みかける兄の姿に涙が溢れる。
なぜこんなところにいるのか、死んだはずじゃないのか。
そんなことは何も浮かんでこなかった。
ディーヴァはその胸に一直線に飛び込んだのだった。
「お兄ちゃん!!」
「ディーヴァ…」
優しく抱き止める兄は生前とまったく変わらないぬくもりでディーヴァを迎えた。
「会いたかったよ、お兄ちゃん……」
嗚咽まじりに話すディーヴァの髪を優しい動きで鋤いていく指の動きさえ、何も変わらずそこにあった。
これが夢でもまた会えて嬉しい。
ディーヴァはギュッと目を瞑り溜まっていた涙を流した。
「あたしのせいで……ごめんなさい。お兄ちゃんもパパもママも死なせてしまった……」
目を閉じれば家族の最後の光景がよみがえる。
ディーヴァを守るため部屋へと促し、悪魔に立ち向かった家族。
恐怖の中でディーヴァはその悲痛な叫び、最後の断末魔を聞いた。
「あたしにもっと力があったら皆は死なずにすんだの……ごめんなさい」
止まることのない涙が流れ落ちる。
兄は何も言わずディーヴァをなで続けた。
といっても仮装はやめにし、いつもの私服に着替えてだ。
外に出てスラム街を少し歩くと、陰になっている場所の所々に、漆黒のもやが立ち上っているのに、ダンテが気がついた。
あれは、下級悪魔の出現の合図だ。まじかよ。
「走るぞ」
「え」
ダンテはディーヴァの背と膝裏にすばやく手を入れると抱きかかえて走り出した。
いわゆるお姫様抱っこというやつである。
「きゃっ」
二人が通りすぎると同時、それが悪魔の姿を形成していく。徐々に数を増やしていくのが見えた。
自分達がいることに気が付いた悪魔は、どんどんと寄ってくるであろう事、ダンテはわかっていた。
だが、いつもはここまで集まってこない悪魔がどうして数を多くしているのだろうか。ましてや今は太陽の出ている昼間である。
ダンテは首を傾げた。
そんなダンテの突然の行動に、ディーヴァは舌を噛みそうになりながら怒った。
「い……いきなり何なの?」
「後ろを見てみ」
ちら。
ダンテの首から後方を覗くとたくさんの悪魔が追いかけてきているのが見えた。
「げ」
ダンテに抱きかかえられなかったら今ごろは悪魔のど真ん中に置き去りだろう。考えてぞっとする。
一方、ディーヴァを軽々と抱え走っているダンテの目に、人間の魂がプカプカと宙に浮かんでいるのが映った。
ダンテの半分悪魔の目だからこそ、こうしてたまに見えてしまう人間の魂。
悪魔達は人間の魂を回収しに魔界からやってきているようで、時折虚空に手を伸ばしている。
さながらハロウィンに菓子を強請る子どものようだ。
ああ。ハロウィンだからか。
ハロウィンには死んだ者の魂がこの世にやってくるという。
だからそれを求めてやってきたのだろう。
しかし悪魔達はダンテ達を見つけるや否や、すべてこちらに向かってくる。反逆者スパーダの息子討つべし、天使の血肉喰らうべし、と言ったところ。
面倒くさいったらありゃしない。
「奴らもハロウィンを楽しみにしてたようだな。魔界からはるばるご苦労なこって」
フン、と鼻で笑う。
「悪魔がハロウィンを祝うの?」
「違う違う。ハロウィンだから里帰りしてきた魂がそこらを浮いてるんだ。それを求めて悪魔どもが湧いたらしい。
あとはオレが悪魔から追っかけされるほどの人気者ってのが、理由かな。おっと、最近はディーヴァにもいっぱい悪魔のファンがついてたな」
「全然うれしくない」
「だな。……ち、増えすぎた」
このままでは他の人間にも被害がでる。
どんなに弱い悪魔でも数が揃えば人間には脅威になる。
ディーヴァ以外がどうなろうがぶっちゃけ知ったこっちゃないが、悪魔による負傷者が近くで出ようものなら心優しいディーヴァは悲しむ。
それが例え極悪人でも、人殺しでもだ。
「どうするの?」
「倒してくる。ここなら陰がなくて明るいから安全なはずだ」
やはり昼間だから動きが制限されるのか、悪魔達は暗いスラムの影の中でだけ行動しているようだ。
召喚されたのが低級悪魔でよかった。
ダンテはディーヴァを日の光の降り注ぐ明るい場所に降ろした。
「ちょっと待ってろ」
そして得物を手に悪魔の群れへと突っ込んで行った。
***
『ディーヴァ……』
ダンテと別れてしばらく、自分を呼ぶ懐かしい声が聞こえてきた。
その声は、今いる明るい通りから一本入った路地裏の奥から聞き取れる。
幸い、ダンテは周りの悪魔を引き連れながら倒しに行ってしまったのでこの辺りに悪魔はいない。
ダンテにはあまり一人で入らないように言われていた路地裏だが、ディーヴァはどうしても気になり、一瞬だけ躊躇してからそっと入り込んだ。
『ディーヴァ』
呼んでいる。
『ディーヴァ』
聞こえる、慣れ親しんだ大事な者の声。
家族の声。
ディーヴァは徐々に足の速度をあげ、声に導かれるまま道を進む。
声が聞こえた場所へと、息を切らしながらもようやくたどり着いたディーヴァは、周りをぐるりと見回した。
「ここだよ」
ディーヴァが振り替えるとそこには兄がいた。
顔も、服も、そのすべてが最後に会話した時のままの姿がそこにあった。
あの日はディーヴァの誕生日だった。家族で祝った誕生日。あのあと悪魔に襲われた。
腕を広げてただただ微笑みかける兄の姿に涙が溢れる。
なぜこんなところにいるのか、死んだはずじゃないのか。
そんなことは何も浮かんでこなかった。
ディーヴァはその胸に一直線に飛び込んだのだった。
「お兄ちゃん!!」
「ディーヴァ…」
優しく抱き止める兄は生前とまったく変わらないぬくもりでディーヴァを迎えた。
「会いたかったよ、お兄ちゃん……」
嗚咽まじりに話すディーヴァの髪を優しい動きで鋤いていく指の動きさえ、何も変わらずそこにあった。
これが夢でもまた会えて嬉しい。
ディーヴァはギュッと目を瞑り溜まっていた涙を流した。
「あたしのせいで……ごめんなさい。お兄ちゃんもパパもママも死なせてしまった……」
目を閉じれば家族の最後の光景がよみがえる。
ディーヴァを守るため部屋へと促し、悪魔に立ち向かった家族。
恐怖の中でディーヴァはその悲痛な叫び、最後の断末魔を聞いた。
「あたしにもっと力があったら皆は死なずにすんだの……ごめんなさい」
止まることのない涙が流れ落ちる。
兄は何も言わずディーヴァをなで続けた。