スイーツまでの道のりは長い
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その頃、件のリアラの方はというと。
戦いを終え、呼吸や衣服を整えていると、そばの藪がガサリと大きく揺れた。
「誰!?」
「おっと、俺だ」
手を上げて降参ポーズをとったのは、自身のパートナー。
緊張感と殺気とを色濃く滲ませたリアラは、鋭い目でパートナーを射抜く。
「ずいぶん気が立ってるな。リアラ、大丈夫か」
「ええ…戦いの余韻よ。ごめんなさい」
あまり魔法を使いたくない今、新手の魔獣に襲われては叶わない。
つい、パートナーである髭に杖を向けてしまった。
申し訳なく思い、項垂れ気味に下を向いていれば、目の前に立たれる。
「な、なに…?」
ドギマギしながら待っていれば、ぽん、と頭に乗せられる髭の大きな手のひら。
暖かい。けれど、それの扱いはどこか。
「…子供扱いしないで」
「別に子供扱いなんてしてない。でも、」
目線を上げて軽く睨めば、スッと差し出された暖かな指が、リアラの頬を優しく擦る。
「頬が汚れてるぞ」
「ん……、あ、ありがと……」
触れている箇所から、溶けてしまいそう。
熱いくらいの、暖かさ。
それを目を閉じて甘受していれば、数秒で離れていくそれ。
名残惜しい、そう感じてしまったが、態度に出すのは憚られた。
首を回して軽くストレッチすると、ため息を吐いて空気を一新させる。
甘い空気はため息ごと熱帯の風に攫われていった。
「悪いのだけどちょっと今日はもう、魔法使わないわ」
「リアラともあろう者が手こずったのか?」
「しょうがないでしょ。意外と強敵だったのよ」
からかうような髭の言葉に、彼をよく見れば。
まるで、ワックスでめちゃくちゃに固めたあとのよう。その髪の毛は四方八方に伸びて、無造作ヘアーと化していた。
「ぷっ。貴方こそ、髪の毛ボサボサよ?」
「意外と強敵だったからなぁ」
「ほら、しゃがんで」
お互い軽く笑いあったあと、おとなしくしゃがんだ髭の髪を、無造作ヘアーから普段の髪型へと整えてやる。
まあ、これはこれでカッコいいとは思うけれども。
「やれやれ、これではどっちが保護者かわからないってあの2人に言われそうだな」
髪の毛を弄られている間、髭は肩をすくめてそう漏らした。
「んで。魔法使わないってことは、魔力が足りないんだな?少し譲渡してやろうか」
「今はいいわ家に帰ってゆっくり休めば回復する程度に魔力が不足してるだけだから!」
パートナー同士、魔力の受け渡しも出来ないことはない。
というか、出来る。
だが、その方法は様々で、その中でも簡単だがとても恥ずかしい方法がある。その名は口移し。
「…そりゃ残念」
頬を染めながらノンブレスで言い切ったリアラにそう返す髭の表情を見るに、またもからかっていたようだ。
仕返しに小さく手の甲をつまんでやれば、嬉しそうに痛がられた。
「ん?こりゃなんだ」
「え……鍵………?気がつかなかったわ」
草のかげに、キラリと光るものが落ちているのに気がついた。
先ほどリアラが捕らえた魔獣がいた場所にあったもので、それは真鍮製の鍵だった。
ゲートの扉についた南京錠にちょうどぴったり合うサイズに見える。
ならば、まずは若とディーヴァを呼ばなくては!
髭は自分が飛んで2人を探すと言い、拾い上げた鍵を、リアラの手の上に落とそうとした。
シュッ!!
「ちちち!」
だが鍵は手の中に落ちることなく、何者かの手によって奪われてしまった。
「「え」」
小さな動物…いや、魔獣のようだ。
「ぢっぢっぢっ!!」と、挑発するような鳴き声のする木の上を仰ぎ見れば、そこにいたのはネズミのような体躯に、体と同じくらいのふんわりした尾を建てるげっ歯類。
リスの魔獣。
「げっ、リスの魔獣かよ」
ジャングルにはおよそ似つかわしくないが、このエリアに多く生息する魔獣の種類の一つ。
それがこのリス型魔獣だ。
「こいつは厄介な奴に鍵を奪われたもんだ」
「何が厄介なの?やたら挑発してくれてるみたいだけど」
木の上で奪った鍵を手にお尻ペンペン、とこちらに尻を向けている。
腹が立つ所作なはずなのに、憎めない。小さなリスの姿だからか可愛らしく見える。
「人間に悪さ、とかじゃないんだが、なんでもかんでも欲しがって持ち逃げする特性を持ってるんだよ。
しかも、早く取り返さないと見つからない場所に隠して自らもバニシュしちまう」
「…それは困った魔獣ちゃんね」
目を見合わせて軽くうなずき合うと、ヒュンと飛び上がり、二人掛かりで捕まえようと手を伸ばす。
「ならさっさと捕まえるに限るわ!」
「ああ!」
だが、相手はそれを見越していたのか、指があと数センチで届くというところで、木を伝って素早く降りてしまった。
その後もちょこまかちょこまかと、捕まえられそうで捕まえられぬ展開が続く。
「ったく、すばしっこいわね」
「お前はいたずら好きのピーターラビットか」
ウサギじゃなくてリスだが。
木の上ばかりを逃げ惑っていた魔獣が、ぴょんと地に降りた。
そして地面に降りたところを捕まえようと、2人も地面に降りた瞬間。
「「え」」
落とし穴のように地面が抜けて、2人揃って下半身がすっぽりと埋まってしまった。
柔らかいはずの土が、体をからめ取りそして硬く固まる。
…痛くないが動けない。
見れば魔獣はゲラゲラ笑っている。さすがに少し腹立たしい。
「私達遊ばれてるわね」
「ああ。相手にとっちゃ遊びでしかないから、痛くもかゆくもないのが幸いだけどな」
そんな事言ってる間に、魔獣はあっかんべー、と舌を出して笑い、瞬く間に木の上を伝って逃げた。
戦いを終え、呼吸や衣服を整えていると、そばの藪がガサリと大きく揺れた。
「誰!?」
「おっと、俺だ」
手を上げて降参ポーズをとったのは、自身のパートナー。
緊張感と殺気とを色濃く滲ませたリアラは、鋭い目でパートナーを射抜く。
「ずいぶん気が立ってるな。リアラ、大丈夫か」
「ええ…戦いの余韻よ。ごめんなさい」
あまり魔法を使いたくない今、新手の魔獣に襲われては叶わない。
つい、パートナーである髭に杖を向けてしまった。
申し訳なく思い、項垂れ気味に下を向いていれば、目の前に立たれる。
「な、なに…?」
ドギマギしながら待っていれば、ぽん、と頭に乗せられる髭の大きな手のひら。
暖かい。けれど、それの扱いはどこか。
「…子供扱いしないで」
「別に子供扱いなんてしてない。でも、」
目線を上げて軽く睨めば、スッと差し出された暖かな指が、リアラの頬を優しく擦る。
「頬が汚れてるぞ」
「ん……、あ、ありがと……」
触れている箇所から、溶けてしまいそう。
熱いくらいの、暖かさ。
それを目を閉じて甘受していれば、数秒で離れていくそれ。
名残惜しい、そう感じてしまったが、態度に出すのは憚られた。
首を回して軽くストレッチすると、ため息を吐いて空気を一新させる。
甘い空気はため息ごと熱帯の風に攫われていった。
「悪いのだけどちょっと今日はもう、魔法使わないわ」
「リアラともあろう者が手こずったのか?」
「しょうがないでしょ。意外と強敵だったのよ」
からかうような髭の言葉に、彼をよく見れば。
まるで、ワックスでめちゃくちゃに固めたあとのよう。その髪の毛は四方八方に伸びて、無造作ヘアーと化していた。
「ぷっ。貴方こそ、髪の毛ボサボサよ?」
「意外と強敵だったからなぁ」
「ほら、しゃがんで」
お互い軽く笑いあったあと、おとなしくしゃがんだ髭の髪を、無造作ヘアーから普段の髪型へと整えてやる。
まあ、これはこれでカッコいいとは思うけれども。
「やれやれ、これではどっちが保護者かわからないってあの2人に言われそうだな」
髪の毛を弄られている間、髭は肩をすくめてそう漏らした。
「んで。魔法使わないってことは、魔力が足りないんだな?少し譲渡してやろうか」
「今はいいわ家に帰ってゆっくり休めば回復する程度に魔力が不足してるだけだから!」
パートナー同士、魔力の受け渡しも出来ないことはない。
というか、出来る。
だが、その方法は様々で、その中でも簡単だがとても恥ずかしい方法がある。その名は口移し。
「…そりゃ残念」
頬を染めながらノンブレスで言い切ったリアラにそう返す髭の表情を見るに、またもからかっていたようだ。
仕返しに小さく手の甲をつまんでやれば、嬉しそうに痛がられた。
「ん?こりゃなんだ」
「え……鍵………?気がつかなかったわ」
草のかげに、キラリと光るものが落ちているのに気がついた。
先ほどリアラが捕らえた魔獣がいた場所にあったもので、それは真鍮製の鍵だった。
ゲートの扉についた南京錠にちょうどぴったり合うサイズに見える。
ならば、まずは若とディーヴァを呼ばなくては!
髭は自分が飛んで2人を探すと言い、拾い上げた鍵を、リアラの手の上に落とそうとした。
シュッ!!
「ちちち!」
だが鍵は手の中に落ちることなく、何者かの手によって奪われてしまった。
「「え」」
小さな動物…いや、魔獣のようだ。
「ぢっぢっぢっ!!」と、挑発するような鳴き声のする木の上を仰ぎ見れば、そこにいたのはネズミのような体躯に、体と同じくらいのふんわりした尾を建てるげっ歯類。
リスの魔獣。
「げっ、リスの魔獣かよ」
ジャングルにはおよそ似つかわしくないが、このエリアに多く生息する魔獣の種類の一つ。
それがこのリス型魔獣だ。
「こいつは厄介な奴に鍵を奪われたもんだ」
「何が厄介なの?やたら挑発してくれてるみたいだけど」
木の上で奪った鍵を手にお尻ペンペン、とこちらに尻を向けている。
腹が立つ所作なはずなのに、憎めない。小さなリスの姿だからか可愛らしく見える。
「人間に悪さ、とかじゃないんだが、なんでもかんでも欲しがって持ち逃げする特性を持ってるんだよ。
しかも、早く取り返さないと見つからない場所に隠して自らもバニシュしちまう」
「…それは困った魔獣ちゃんね」
目を見合わせて軽くうなずき合うと、ヒュンと飛び上がり、二人掛かりで捕まえようと手を伸ばす。
「ならさっさと捕まえるに限るわ!」
「ああ!」
だが、相手はそれを見越していたのか、指があと数センチで届くというところで、木を伝って素早く降りてしまった。
その後もちょこまかちょこまかと、捕まえられそうで捕まえられぬ展開が続く。
「ったく、すばしっこいわね」
「お前はいたずら好きのピーターラビットか」
ウサギじゃなくてリスだが。
木の上ばかりを逃げ惑っていた魔獣が、ぴょんと地に降りた。
そして地面に降りたところを捕まえようと、2人も地面に降りた瞬間。
「「え」」
落とし穴のように地面が抜けて、2人揃って下半身がすっぽりと埋まってしまった。
柔らかいはずの土が、体をからめ取りそして硬く固まる。
…痛くないが動けない。
見れば魔獣はゲラゲラ笑っている。さすがに少し腹立たしい。
「私達遊ばれてるわね」
「ああ。相手にとっちゃ遊びでしかないから、痛くもかゆくもないのが幸いだけどな」
そんな事言ってる間に、魔獣はあっかんべー、と舌を出して笑い、瞬く間に木の上を伝って逃げた。