魔女と魔獣の日常(小話)
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『それは我儘で出来ている』
ディーヴァが魔法を放つ時にふりふりと振る、杖・ロサレプス。
杖を振る度に赤いリボンが風に揺れ、その上部には宙に浮かぶ羽根の形のユニットがぷかぷかり。
…一体どうなっているのやら。
魔法で浮かんでる?アッそうですか。
猫が獲物の動向を探るかの如くそれをジッと見つめ続けるダンテに、ディーヴァもようやく気がついた。
「ダンテ、あたしの杖の何を見てるの?そんなに見られると穴あいて壊れる。見物料とるよ」
「料金取るなよ。お前の杖は絶滅危惧種か」
金まで取られるのはごめんだ。
フイと目をそらし、ダンテは明後日の方角を向いた。
ところが、目の前に座ったディーヴァは杖を小脇に置いたので、見ていた杖はちょうどダンテの目に飛び込む。
ムッとして目の前のディーヴァを見ると、にやにやと笑っていた。ついで差し出された手のひらに、見物料がわりの飴玉を落とす。
よかった、ディーヴァの好きなリンゴ味だ。
わーい、と喜んで口に入れるディーヴァ。
そのおちょぼ口に飴がわりに、己の熱い棒でも無理やり突っ込んでやろうと仕返しを思いつきつつ、ダンテは聞いてみた。
「ディーヴァの杖の羽根ってさ、なんの意味があるんだ?その属性ゆえなのか?」
ディーヴァの属性は『聖』。
光から高位進化したとされる物珍しき属性で、『魔』女とは対照的な神の使いとも対等に渡り合える聖なる属性だ。
神の使いーーこの場合は天使だ。
天使の象徴たる形、それは純白の翼。その形を模した羽飾りが、ディーヴァの杖には使われていた。
だがその答えはダンテの想像とは違った。
「え、これ?ただの飾りだよ」
「は?飾りぃ!?」
「なんの役にも立たないよ、かわいいからネロにつけてもらったの」
「いやいやいや!隠された能力とかあんじゃねぇか?パートナーのオレにすら内緒にしてる秘密の特殊効果とか!」
「だからそんなのないって。ダンテはあたしの杖に何を期待してるのさ」
理由:かわいいから。
ああそうだった。ディーヴァはかわいいものが好きで、特に理由なく謎の装飾を求めるのだった。
だから機能は二の次。魔力増幅器だとかそういう能力を杖に期待しない。
そのあたり、少しは他の魔女を見習ってほしいものだ。
「ただの飾りかよ…。
ってことはその形状記憶だったり真っ赤だったりする服にもなんの機能もねぇのか」
「当たり前でしょ。服には他の魔女さんたちも特に機能持たせてないはずだよ?
布こそ火浣布だけど、あたしのは赤ずきんを参考にしてるだけ!キリッ」
「キリッとか言うなし。まあ、火浣布は燃えないからな」
「そーね。
……んふふふ、あとこの外套ね、キリエさんに赤ずきんみたいにしてってお願いした特注品なんだ~。
かわいいでしょ?」
赤い外套の他にもアシンメトリーなフリルスカート、薔薇のグラデーションの美しいニーソックスなど、キリエにオーダーメイドした服の魅力を語り続けるディーヴァ。
そのわがままをひとつひとつ叶えてやったキリエに同情する。
同じく、杖の整備や改造を任されているネロにも。
「はあ~…ネロもキリエもディーヴァの我儘に付き合って大変だなァ……」
「んむ?なんて言ったの~?」
「いや、かわいいなって言ったんだよ。
100歳のディーヴァちゃん?」
「歳は言わなくていいよ」
揶揄い交じりに歳を交えて言えば、ディーヴァのかわいらしい顔は、そうは見えぬような真顔になった。魔女の真顔こわ。
100年あまりも生きているくせ、見た目と同じくらいしか中身も生長していないことを、ディーヴァ自身気にしているのかもしれない。
ただ単に『女性に年齢を聞くのはタブー』の線の方が大きいが。
「んなにこぇぇ顔すんなよ。胸は100歳レベルの素晴らしいモノを持ってるしいいんじゃねえか?
立派に成長してくれてオレは嬉しいぜ」
「色々突っ込みどころはありそうだけど、なんでダンテが嬉しいのかだけ」
「なんでって、そんなの揉み甲斐があr」
杖から光でできたドでかい拳が飛んできて、ダンテにめり込み、家の一部を巻き込みながら外へ吹っ飛んだ。
家の目の前の大木に当たって止まったダンテは、体力ゲージが半分に下がって視界に赤いワーニング!の文字が浮かび上がるのを感じながら、ゆっくりと起き上がった。
ここまではテンプレートだ。
死ななきゃ安い。
「ぐっふ。おいドアどころか壁吹っ飛んでんぞ…この家はハリボテかよ」
「あとで直すからお気にせず~」
減らしたダンテの体力が徐々に回復していくのを見、ディーヴァはあまり心配することなくひとり茶を淹れて飲んだ。
家の中へ戻り、吹っ飛んだ衝撃で倒れた椅子を直して座るダンテ。
「ふー、痛かった…。
杖の羽根はともかく、ディーヴァの耳付近の羽根…それくらいには感覚共有されてりゃいいんだがな」
口から生まれたらしいこの男のお喋りは止まらない。
どうせロクな話ではないとわかっているが、ディーヴァは聞いてみる。
ダンテを完全にノックダウンさせれば、しばらくはおとなしかろうて。言っておくが、これでも相思相愛のパートナーなのでそこのところよろしく。
「…その理由、一応聞いておこっか?」
「弄った時にディーヴァがそれだけで気持ちヨくなるだろ?そしたらベッドに誘いやs」
「続けて喰らえ!震天裂空斬光旋風滅砕神罰割殺撃!」
先ほどの攻撃、光の拳の続きとしての呪文のよう。
どこぞの秘奥義と同じ、長ったらしい呪文を口にし、杖を次々に振るうディーヴァ。
…この技、英語バージョンが好きだったりする。
「へぶし!ぎゃふ!はぐっ!」
ちゅどん!!
最終的に杖を地に叩きつけ、ディーヴァは地面ごとダンテを大爆発させた。
家がさらに吹っ飛んだ。
直せるとはいえ、家具の破壊がやばい。どのくらいやばいかっていうと、とにかくやばい。やばいのゲシュタルト崩壊。
「ぐっふう…。なんでいつも呪文違うんだよ……」
「気分」
「気分で変わるのか、そうか…ガクッ」
合掌。
さすがのダンテも、これでしばらくは静かにしてくれそうだ。
ちなみに前に使った呪文は『魔女シウム光線』だったそうな。
カップラーメンできるくらいの時間制限がある、宇宙からの某ヒーローか。
ディーヴァが魔法を放つ時にふりふりと振る、杖・ロサレプス。
杖を振る度に赤いリボンが風に揺れ、その上部には宙に浮かぶ羽根の形のユニットがぷかぷかり。
…一体どうなっているのやら。
魔法で浮かんでる?アッそうですか。
猫が獲物の動向を探るかの如くそれをジッと見つめ続けるダンテに、ディーヴァもようやく気がついた。
「ダンテ、あたしの杖の何を見てるの?そんなに見られると穴あいて壊れる。見物料とるよ」
「料金取るなよ。お前の杖は絶滅危惧種か」
金まで取られるのはごめんだ。
フイと目をそらし、ダンテは明後日の方角を向いた。
ところが、目の前に座ったディーヴァは杖を小脇に置いたので、見ていた杖はちょうどダンテの目に飛び込む。
ムッとして目の前のディーヴァを見ると、にやにやと笑っていた。ついで差し出された手のひらに、見物料がわりの飴玉を落とす。
よかった、ディーヴァの好きなリンゴ味だ。
わーい、と喜んで口に入れるディーヴァ。
そのおちょぼ口に飴がわりに、己の熱い棒でも無理やり突っ込んでやろうと仕返しを思いつきつつ、ダンテは聞いてみた。
「ディーヴァの杖の羽根ってさ、なんの意味があるんだ?その属性ゆえなのか?」
ディーヴァの属性は『聖』。
光から高位進化したとされる物珍しき属性で、『魔』女とは対照的な神の使いとも対等に渡り合える聖なる属性だ。
神の使いーーこの場合は天使だ。
天使の象徴たる形、それは純白の翼。その形を模した羽飾りが、ディーヴァの杖には使われていた。
だがその答えはダンテの想像とは違った。
「え、これ?ただの飾りだよ」
「は?飾りぃ!?」
「なんの役にも立たないよ、かわいいからネロにつけてもらったの」
「いやいやいや!隠された能力とかあんじゃねぇか?パートナーのオレにすら内緒にしてる秘密の特殊効果とか!」
「だからそんなのないって。ダンテはあたしの杖に何を期待してるのさ」
理由:かわいいから。
ああそうだった。ディーヴァはかわいいものが好きで、特に理由なく謎の装飾を求めるのだった。
だから機能は二の次。魔力増幅器だとかそういう能力を杖に期待しない。
そのあたり、少しは他の魔女を見習ってほしいものだ。
「ただの飾りかよ…。
ってことはその形状記憶だったり真っ赤だったりする服にもなんの機能もねぇのか」
「当たり前でしょ。服には他の魔女さんたちも特に機能持たせてないはずだよ?
布こそ火浣布だけど、あたしのは赤ずきんを参考にしてるだけ!キリッ」
「キリッとか言うなし。まあ、火浣布は燃えないからな」
「そーね。
……んふふふ、あとこの外套ね、キリエさんに赤ずきんみたいにしてってお願いした特注品なんだ~。
かわいいでしょ?」
赤い外套の他にもアシンメトリーなフリルスカート、薔薇のグラデーションの美しいニーソックスなど、キリエにオーダーメイドした服の魅力を語り続けるディーヴァ。
そのわがままをひとつひとつ叶えてやったキリエに同情する。
同じく、杖の整備や改造を任されているネロにも。
「はあ~…ネロもキリエもディーヴァの我儘に付き合って大変だなァ……」
「んむ?なんて言ったの~?」
「いや、かわいいなって言ったんだよ。
100歳のディーヴァちゃん?」
「歳は言わなくていいよ」
揶揄い交じりに歳を交えて言えば、ディーヴァのかわいらしい顔は、そうは見えぬような真顔になった。魔女の真顔こわ。
100年あまりも生きているくせ、見た目と同じくらいしか中身も生長していないことを、ディーヴァ自身気にしているのかもしれない。
ただ単に『女性に年齢を聞くのはタブー』の線の方が大きいが。
「んなにこぇぇ顔すんなよ。胸は100歳レベルの素晴らしいモノを持ってるしいいんじゃねえか?
立派に成長してくれてオレは嬉しいぜ」
「色々突っ込みどころはありそうだけど、なんでダンテが嬉しいのかだけ」
「なんでって、そんなの揉み甲斐があr」
杖から光でできたドでかい拳が飛んできて、ダンテにめり込み、家の一部を巻き込みながら外へ吹っ飛んだ。
家の目の前の大木に当たって止まったダンテは、体力ゲージが半分に下がって視界に赤いワーニング!の文字が浮かび上がるのを感じながら、ゆっくりと起き上がった。
ここまではテンプレートだ。
死ななきゃ安い。
「ぐっふ。おいドアどころか壁吹っ飛んでんぞ…この家はハリボテかよ」
「あとで直すからお気にせず~」
減らしたダンテの体力が徐々に回復していくのを見、ディーヴァはあまり心配することなくひとり茶を淹れて飲んだ。
家の中へ戻り、吹っ飛んだ衝撃で倒れた椅子を直して座るダンテ。
「ふー、痛かった…。
杖の羽根はともかく、ディーヴァの耳付近の羽根…それくらいには感覚共有されてりゃいいんだがな」
口から生まれたらしいこの男のお喋りは止まらない。
どうせロクな話ではないとわかっているが、ディーヴァは聞いてみる。
ダンテを完全にノックダウンさせれば、しばらくはおとなしかろうて。言っておくが、これでも相思相愛のパートナーなのでそこのところよろしく。
「…その理由、一応聞いておこっか?」
「弄った時にディーヴァがそれだけで気持ちヨくなるだろ?そしたらベッドに誘いやs」
「続けて喰らえ!震天裂空斬光旋風滅砕神罰割殺撃!」
先ほどの攻撃、光の拳の続きとしての呪文のよう。
どこぞの秘奥義と同じ、長ったらしい呪文を口にし、杖を次々に振るうディーヴァ。
…この技、英語バージョンが好きだったりする。
「へぶし!ぎゃふ!はぐっ!」
ちゅどん!!
最終的に杖を地に叩きつけ、ディーヴァは地面ごとダンテを大爆発させた。
家がさらに吹っ飛んだ。
直せるとはいえ、家具の破壊がやばい。どのくらいやばいかっていうと、とにかくやばい。やばいのゲシュタルト崩壊。
「ぐっふう…。なんでいつも呪文違うんだよ……」
「気分」
「気分で変わるのか、そうか…ガクッ」
合掌。
さすがのダンテも、これでしばらくは静かにしてくれそうだ。
ちなみに前に使った呪文は『魔女シウム光線』だったそうな。
カップラーメンできるくらいの時間制限がある、宇宙からの某ヒーローか。