魔女と魔獣の日常(小話)
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その頃のディーヴァと同じ魔女であるリアラとルティア。
いまだディーヴァという魔女の存在を知らぬこの2人の魔女はすでに親しい間柄であり、互いのパートナーも交えて茶会を楽しむほどになっていた。
そして巷でもイベントとして定着しているハロウィンも、共に菓子を作って過ごしていたようである。
「やっと焼けたね」
「うん。すっごい美味しそう!」
死神の城と言った方がよろしいだろう屋敷の一角、キッチンの中のテーブルに所狭しと並べられた菓子が置かれていた。
そのどれもがほかほかと湯気を立てており、作りたて焼きたてであることがうかがえる。
魔法を駆使すれば調理が省かれるところもあるが、菓子においてそれはしない2人。
菓子を作る過程も楽しむのがハロウィンパーリィの醍醐味である。
「ルティア、氷菓も出来たぞ」
「あ、どうもねバージル」
「フン…別にこれくらい造作もない。他にしてほしいことはあるか?」
「じゃあ、かぼちゃのアイスクリームでも作ってもらおうかな。ハロウィンだし」
こくり、頷くにとどめた基本寡黙なバージル。
彼はディーヴァのところのダンテの双子の兄であり、姿形はよく似ているが、性格も違ければその属性も正反対。
ディーヴァ'sダンテが(熱苦しい)炎の属性を持つのに対しバージルは氷の属性を持つ。
ルティアのパートナーであり、今や初々しくも恋人であるそんな彼が手に持ってきたのは冷たい氷菓。
鮮やかな赤いベリィと白いアイス、そして甘やかな香りの生クリームが深いグラスに詰められたそれこそ、『ダンテ』という生物の好物として皆さんご存知、ストロベリーサンデーである。
ハロウィンだろうが、ハロウィンじゃなかろうが、菓子というよりダンテの主食と認識されるこのスイーツは当然のごとく作られるのだ。
もちろんダンテや自分のためだけならば、バージルも作ったりはしない。
が!ルティアやリアラも食べるのならば話は別。
ということで、今回作ったのである。
「バージル、ありがとう。私もストロベリーサンデーとか作りたかったのだけれど」
「構わん。リアラは他の菓子をルティアと作っていたのだ、俺が代われる所なぞいくらでも代わってやる」
アイスクリームを作りに戻る途中のバージルに声をかけるリアラ。
リアラもバージルと同様持つ属性は氷。
氷菓を作るのに最適な体質をしているし、魔法も多数知っている。
そのためか、時折このような互いを気遣った言葉を交わすこともあるようだ。
「俺も菓子作り手伝いたかったが、出来なくてすまんな」
「いいんですよダンテさん。お気持ちだけ受け取っておきます」
「そそ。適材適所って言うでしょ?」
新たに登場したこの男、名はダンテという。
ディーヴァのところにいるダンテと同じ名前で見た目も似ているが、明らかに体格や筋肉量が違うので年上だろう。それに髭が生えている。
このダンテはリアラとパートナーを組む、400年を生きる魔獣だ。
そんなダンテに割り振ったのは器具やセッティングなど調理以外の作業。
料理ができぬわけではない。
理由は彼の属性、木から派生したとされる毒にある。あらゆる毒に耐性があり、あらゆる毒を生成する能力に長けているが、それは本人のみ。
もしかしたら調理した際、料理にも毒が入ってしまうのではないか…他の者に毒を食らわせてしまうのではないか…などと彼なりに配慮した結果、よほどのことがない限り手を出さなくなったのである。
ルティアの言う通り適材適所。
やれる事をやれば、それでいいのだ。
「ルティア達も楽しそうに菓子を作っているのだから、料理なぞ得意な者に任せておけば良い」
そう言って登場したのは薔薇と茨の装飾を施したマスクをつけた黒髪の麗人。
ルティアの育ての親にして2500年という永き時を生きる『死神』と呼ばれる魔獣である。
おぅふ、2500年とはダンテ達の父、スパーダとどっこいどっこいなご長寿。
彼女が手にするのは菓子ではなく、煌びやかで鮮やかな色合いの金属類。
形はどれもハロウィンじみていて、パンプキンやコウモリ、蜘蛛の巣のそれだ。
「死神さんの持ってるそれは何ですか?」
「いつも街に売りに出す貴金属じゃなさそうだね」
「ハロウィンの飾り付けだ。私はハロウィンの菓子代わりに魔法でさまざまなところへ飾り付けをしておいた」
衣食住がしっかりしていなければ長生きなんて出来ないことだ。
これまで死神は、自らの属性である土派生の金属を駆使し、貴金属を生み出しては街に売り得た収入で生計を立てていた。
が、今回の金属はそれとは違うナリをしていて、売るためのものではないことが伺えた。
「ちなみに菓子は準備しない。だからくれぐれも菓子を強請ったりせぬように」
「じゃあ強請ってみようかな。トリックオア…」
「するならそれでいいが、攻撃呪文しか渡さないからな」
「じゃあいいでーす」
するなと言われると人間、逆にしてみたくなるのがサガである。
この場合は人間ではなく、魔女か。
ひょいパク。
その時、一瞬の隙をついて死神が焼きたてクッキーを一枚食べた。
「あ。死神さんつまみ食いー」
「ひとつくらいいいだろう。そう減るものでもない」
「自分はくれないのに不公平!」
悪びれもせずしれっと宣う死神に噛み付くルティア。
「まあまあ、まだまだあるんだし。あと数品作ろう。ね?」
「リアラがそう言うなら…」
「死神、あまりルティアをからかってやるな。またバージルと喧嘩になるぞ?」
「喧嘩上等。あいつにも良い鍛錬になろう」
リアラが苦笑してルティアをなだめすかし、他の作業に没頭していたダンテは死神に一言注意した。
「…バージルの氷技受けて錆びちゃえ」
「何か言ったか?」
「ひえっ!?なーんにも!」
死神の体は金属という属性柄、水気には弱い。弱体化するわけではないが、錆びやすくなるためお手入れは欠かせない。
そしてバージルの属性は水気をたっぷりと含むであろう氷。…言わなくともわかるだろう。
しかし、ルティアが小さくぼそっと呟いた一言さえ聞き逃さないとは、さすが死神。
そこに痺れる憧れるゥ!
揶揄いのためだろう恐ろしげな一瞥をルティアにだけくれる(<●>言<●>←こんな感じの)と、死神はリアラの頭をそっと撫でる。
「さて。お次はバージルに鍛錬という名の喧嘩を売ってこようか。
ルティアだけで作られた時よりも、リアラが共に作った時の方が菓子は美味いからな。期待してるぞ」
軽く、とても軽くルティアの頭にも手をポンと置き(ついでにしか感じられなかったが)、死神は部屋から出て行った。
とりあえず、バージルに喧嘩は売らないでいただきたいものだが。
「死神さん、ほんっとリアラには優しいんだから」
「そんなことないと思うけど…」
ルティアは気がついていないかもしれないが、死神がルティアを遠くから見つめる時、死神は慈愛に満ちた目をしている時がある。
それはまるでやわらかい真綿で包むような、母のような…。
もちろん、ルティア本人にはバレないようにしているのは明らか。
そしてソレが起こったのは、死神がバージルに予定通り鍛錬という名の喧嘩をふっかけた時だった。
閻魔刀とウィルダネスが金属音を奏で、ダンテがよくやるな…などと呆れ顔で観戦する中、その空気は突如としてその場を包んだ。
「…ん」
先に気がついたのは、城の持ち主たる死神ではなく、ひとり黙々とテーブルセッティングに勤しんでいたダンテ。
空気は魔法の匂い、しかし魔女のとは思えぬ清浄さも醸し出す謎の気配に満ちていた。
「む。何者かの魔力の気配…!?」
「お、アンタも気がついたか」
鍔迫り合いをしていたさなかであったが、ウィルダネスをおろし、その気配を探る死神。
自らの武器を仕舞ったことで閻魔刀が死神に迫るが、ひらりと躱し片手で真剣白刃取りする。すごい。
バージルは簡単にいなされて不服そうにしつつ、自分も周りの様子を探る。
たしかに、何者かの魔力の気配を感じた。
「なんだ?死神の魔力に包まれた難攻不落の要塞のようなこの地に、敵襲でもあったというのか…?
しかも、この気配、ルティアのものとは違うが限りなくルティアの属性に近い属性のようだな」
「バージルはそこまでわかるのかよ」
「ここに来て長いからな」
しかし、3人とも同じ見解に至った。
この魔力、敵襲にしては見習いレベルの経験不足さを感じるのだ。
「えっ!お菓子がなくなったんですけど!」
「いきなり消えたわ!あの大量のお菓子、どこにいったの!?」
…キッチンの方から慌ただしい声がする。
菓子が消えたと聞こえたがしかし、あれだけ大量に作っていた菓子がいきなり消えるというのはおかしい。
「菓子がなくなったとよ。死神、アンタ全部つまみ食いしたのか?」
「それはない。だいたい全部食べる時点でそれはつまみ食いとは言わないだろ」
「…盗みに特化した魔術か?」
「そんなところだろう。…痕跡を辿るとしよう」
死神は息をふうと吐き出し、魔法が唱えられたであろう場所の特定にダンテ、バージル、そしてキッチンの魔女2人も連れ立って乗り出すのだった。
いまだディーヴァという魔女の存在を知らぬこの2人の魔女はすでに親しい間柄であり、互いのパートナーも交えて茶会を楽しむほどになっていた。
そして巷でもイベントとして定着しているハロウィンも、共に菓子を作って過ごしていたようである。
「やっと焼けたね」
「うん。すっごい美味しそう!」
死神の城と言った方がよろしいだろう屋敷の一角、キッチンの中のテーブルに所狭しと並べられた菓子が置かれていた。
そのどれもがほかほかと湯気を立てており、作りたて焼きたてであることがうかがえる。
魔法を駆使すれば調理が省かれるところもあるが、菓子においてそれはしない2人。
菓子を作る過程も楽しむのがハロウィンパーリィの醍醐味である。
「ルティア、氷菓も出来たぞ」
「あ、どうもねバージル」
「フン…別にこれくらい造作もない。他にしてほしいことはあるか?」
「じゃあ、かぼちゃのアイスクリームでも作ってもらおうかな。ハロウィンだし」
こくり、頷くにとどめた基本寡黙なバージル。
彼はディーヴァのところのダンテの双子の兄であり、姿形はよく似ているが、性格も違ければその属性も正反対。
ディーヴァ'sダンテが(熱苦しい)炎の属性を持つのに対しバージルは氷の属性を持つ。
ルティアのパートナーであり、今や初々しくも恋人であるそんな彼が手に持ってきたのは冷たい氷菓。
鮮やかな赤いベリィと白いアイス、そして甘やかな香りの生クリームが深いグラスに詰められたそれこそ、『ダンテ』という生物の好物として皆さんご存知、ストロベリーサンデーである。
ハロウィンだろうが、ハロウィンじゃなかろうが、菓子というよりダンテの主食と認識されるこのスイーツは当然のごとく作られるのだ。
もちろんダンテや自分のためだけならば、バージルも作ったりはしない。
が!ルティアやリアラも食べるのならば話は別。
ということで、今回作ったのである。
「バージル、ありがとう。私もストロベリーサンデーとか作りたかったのだけれど」
「構わん。リアラは他の菓子をルティアと作っていたのだ、俺が代われる所なぞいくらでも代わってやる」
アイスクリームを作りに戻る途中のバージルに声をかけるリアラ。
リアラもバージルと同様持つ属性は氷。
氷菓を作るのに最適な体質をしているし、魔法も多数知っている。
そのためか、時折このような互いを気遣った言葉を交わすこともあるようだ。
「俺も菓子作り手伝いたかったが、出来なくてすまんな」
「いいんですよダンテさん。お気持ちだけ受け取っておきます」
「そそ。適材適所って言うでしょ?」
新たに登場したこの男、名はダンテという。
ディーヴァのところにいるダンテと同じ名前で見た目も似ているが、明らかに体格や筋肉量が違うので年上だろう。それに髭が生えている。
このダンテはリアラとパートナーを組む、400年を生きる魔獣だ。
そんなダンテに割り振ったのは器具やセッティングなど調理以外の作業。
料理ができぬわけではない。
理由は彼の属性、木から派生したとされる毒にある。あらゆる毒に耐性があり、あらゆる毒を生成する能力に長けているが、それは本人のみ。
もしかしたら調理した際、料理にも毒が入ってしまうのではないか…他の者に毒を食らわせてしまうのではないか…などと彼なりに配慮した結果、よほどのことがない限り手を出さなくなったのである。
ルティアの言う通り適材適所。
やれる事をやれば、それでいいのだ。
「ルティア達も楽しそうに菓子を作っているのだから、料理なぞ得意な者に任せておけば良い」
そう言って登場したのは薔薇と茨の装飾を施したマスクをつけた黒髪の麗人。
ルティアの育ての親にして2500年という永き時を生きる『死神』と呼ばれる魔獣である。
おぅふ、2500年とはダンテ達の父、スパーダとどっこいどっこいなご長寿。
彼女が手にするのは菓子ではなく、煌びやかで鮮やかな色合いの金属類。
形はどれもハロウィンじみていて、パンプキンやコウモリ、蜘蛛の巣のそれだ。
「死神さんの持ってるそれは何ですか?」
「いつも街に売りに出す貴金属じゃなさそうだね」
「ハロウィンの飾り付けだ。私はハロウィンの菓子代わりに魔法でさまざまなところへ飾り付けをしておいた」
衣食住がしっかりしていなければ長生きなんて出来ないことだ。
これまで死神は、自らの属性である土派生の金属を駆使し、貴金属を生み出しては街に売り得た収入で生計を立てていた。
が、今回の金属はそれとは違うナリをしていて、売るためのものではないことが伺えた。
「ちなみに菓子は準備しない。だからくれぐれも菓子を強請ったりせぬように」
「じゃあ強請ってみようかな。トリックオア…」
「するならそれでいいが、攻撃呪文しか渡さないからな」
「じゃあいいでーす」
するなと言われると人間、逆にしてみたくなるのがサガである。
この場合は人間ではなく、魔女か。
ひょいパク。
その時、一瞬の隙をついて死神が焼きたてクッキーを一枚食べた。
「あ。死神さんつまみ食いー」
「ひとつくらいいいだろう。そう減るものでもない」
「自分はくれないのに不公平!」
悪びれもせずしれっと宣う死神に噛み付くルティア。
「まあまあ、まだまだあるんだし。あと数品作ろう。ね?」
「リアラがそう言うなら…」
「死神、あまりルティアをからかってやるな。またバージルと喧嘩になるぞ?」
「喧嘩上等。あいつにも良い鍛錬になろう」
リアラが苦笑してルティアをなだめすかし、他の作業に没頭していたダンテは死神に一言注意した。
「…バージルの氷技受けて錆びちゃえ」
「何か言ったか?」
「ひえっ!?なーんにも!」
死神の体は金属という属性柄、水気には弱い。弱体化するわけではないが、錆びやすくなるためお手入れは欠かせない。
そしてバージルの属性は水気をたっぷりと含むであろう氷。…言わなくともわかるだろう。
しかし、ルティアが小さくぼそっと呟いた一言さえ聞き逃さないとは、さすが死神。
そこに痺れる憧れるゥ!
揶揄いのためだろう恐ろしげな一瞥をルティアにだけくれる(<●>言<●>←こんな感じの)と、死神はリアラの頭をそっと撫でる。
「さて。お次はバージルに鍛錬という名の喧嘩を売ってこようか。
ルティアだけで作られた時よりも、リアラが共に作った時の方が菓子は美味いからな。期待してるぞ」
軽く、とても軽くルティアの頭にも手をポンと置き(ついでにしか感じられなかったが)、死神は部屋から出て行った。
とりあえず、バージルに喧嘩は売らないでいただきたいものだが。
「死神さん、ほんっとリアラには優しいんだから」
「そんなことないと思うけど…」
ルティアは気がついていないかもしれないが、死神がルティアを遠くから見つめる時、死神は慈愛に満ちた目をしている時がある。
それはまるでやわらかい真綿で包むような、母のような…。
もちろん、ルティア本人にはバレないようにしているのは明らか。
そしてソレが起こったのは、死神がバージルに予定通り鍛錬という名の喧嘩をふっかけた時だった。
閻魔刀とウィルダネスが金属音を奏で、ダンテがよくやるな…などと呆れ顔で観戦する中、その空気は突如としてその場を包んだ。
「…ん」
先に気がついたのは、城の持ち主たる死神ではなく、ひとり黙々とテーブルセッティングに勤しんでいたダンテ。
空気は魔法の匂い、しかし魔女のとは思えぬ清浄さも醸し出す謎の気配に満ちていた。
「む。何者かの魔力の気配…!?」
「お、アンタも気がついたか」
鍔迫り合いをしていたさなかであったが、ウィルダネスをおろし、その気配を探る死神。
自らの武器を仕舞ったことで閻魔刀が死神に迫るが、ひらりと躱し片手で真剣白刃取りする。すごい。
バージルは簡単にいなされて不服そうにしつつ、自分も周りの様子を探る。
たしかに、何者かの魔力の気配を感じた。
「なんだ?死神の魔力に包まれた難攻不落の要塞のようなこの地に、敵襲でもあったというのか…?
しかも、この気配、ルティアのものとは違うが限りなくルティアの属性に近い属性のようだな」
「バージルはそこまでわかるのかよ」
「ここに来て長いからな」
しかし、3人とも同じ見解に至った。
この魔力、敵襲にしては見習いレベルの経験不足さを感じるのだ。
「えっ!お菓子がなくなったんですけど!」
「いきなり消えたわ!あの大量のお菓子、どこにいったの!?」
…キッチンの方から慌ただしい声がする。
菓子が消えたと聞こえたがしかし、あれだけ大量に作っていた菓子がいきなり消えるというのはおかしい。
「菓子がなくなったとよ。死神、アンタ全部つまみ食いしたのか?」
「それはない。だいたい全部食べる時点でそれはつまみ食いとは言わないだろ」
「…盗みに特化した魔術か?」
「そんなところだろう。…痕跡を辿るとしよう」
死神は息をふうと吐き出し、魔法が唱えられたであろう場所の特定にダンテ、バージル、そしてキッチンの魔女2人も連れ立って乗り出すのだった。