7月7日のクエスト
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夏虫の音が聞こえる。
昼間の茹だるような暑さはどこへやら、夜は草原の中にいるようなさわやかな風が吹き、昼間にかいた汗が冷えて少し肌寒いくらいだ。
そして暑さがない分、蚊が飛ぶ数が多い。
とはいえ、魔獣取り線香を開発するディーヴァだ。もちろん、匂いや煙のない蚊取り線香をしっかりと装備しているので刺されることは全くない。
ダンテも同じく、快適な夜を過ごせていた。
「おい、まだ描き終わらないのか?」
「まーだー。これ難しいんだから話しかけないでよー」
ここに来てすぐ、群生するシダ植物は見つけた。
そこを野営地として、ディーヴァが不可視の陣を杖で刻んでいるのだがこれがまだ終わらないのだ。
お手本をなぞるかのように、本を見ながら描いているのだが、これがなかなか上手くいかない。
それもこれもディーヴァの絵心が皆無どころか最悪なせいだ。
「オレが描いてやろうか?」
見かねたオレがそう進言しても「いいですぅ」の一言だ。
もうすぐ夜中になるからか、シダ植物の一部に、薄桃色の膨らみが見てとれる。
じきに咲くだろう。
ディーヴァのお絵かき(笑)があと少しというところで、ピリと空気が張り詰めた。
何かくる。
何かというか、この感じは絶対魔獣としか思えないそれ。
ザワザワと森の木々もろとも騒がしくなり始め、ディーヴァも空気の変化に気がついたようだ。
「むっ!なんか来る…?」
「そのようだ。なんかっていうか、魔獣な。
…ったく、そら見ろ!ディーヴァが早くしねぇから魔獣が来ちまうじゃねぇか」
「そら見ろ?…お空見るの??」
「あほ!」
「びゃああいだいぃ!」
ダンテはディーヴァに思い切りデコピンした。
ディーヴァか額を押さえて吹っ飛んだが、これでも手加減している。
そんなコントのようなやり取りの中、地鳴りを響かせてこちらに近づいてくる何者か。
暗闇の中、赤い目が光る。
魔法を使うときは赤く目が光ることもあるが、もちろんの事目の前にいるダンテの目ではない。
「あらやだほんと。魔獣さん来てる」
「あらやだじゃねぇだろ…」
ディーヴァと話していると頭が痛くなる。
「その魔法陣(笑)を描く意味がなくなった今、どうする?不可視は効かない。ならば、相手取るしかねぇんじゃねぇか?」
「そーね…花が咲くまでは持ちこたえないとかも。
あとダンテ(笑)とはどういうことよ」
「どういうこともクソもねー。悔しかったら魔法陣くらいそらで描けぇい」
そうしている間に魔獣の姿が見えてきた。
真っ白な体に、テカテカとその硬い口が光る。
顔の大半を占める、三角の真っ赤なくちばしが。
赤いと思われた目は黒く、目の周りの赤いアイリングが光っていた。
手足はない。代わりにあるのは、体と同じ真っ白な翼に爬虫類の物に酷似した爪のついたか細い脚。
「わあかわいい!」
「大きさ以外はな」
魔獣の正体は、魔獣姿のダンテの数倍はありそうな、おおきなおおきな白文鳥だった。
そのくちばしならば、いとも簡単に首根っこをつままれ、食われてしまいそうだ。
突かれてはひとたまりもない。
だが。
「大きさはともかく、鳥相手じゃ負ける気がしねぇな。ディーヴァは花を摘む準備だけしとけ!」
「あいさー」
「とうっっっ!」
ダンテは飛び上がりながら、人という体を捨てて魔獣姿へと変化する。
「鳥は鳥らしく、空に飛んでけ!」
その勢いのまま、渾身の体当たりで文鳥を空へと弾き飛ばした。
残念ながら、ふわりと大空に舞い上がって旋回し、すぐに戻ってきたが。
鳥目だろうが暗い森の中でダンテの炎はよく目立ったことだろう。
ぽ、ぽ、ぽぽぽぽぎゃるるるるるる!!!
と独特の鳴き声で喉を震わせながら、文鳥が急降下してきた。
「げっやべっ!」
キラリと光るくちばしが見える。
あのでっかい物で突かれたら痛いじゃすまなさそうな気がする。
文鳥とは、脚や羽根が特質すべき点のない代わり、くちばしがずんぐりむっくりテカテカ大きく可愛くて。
でも、それが唯一の攻撃手段でもあるのだ。
「ぎゃーっ!肉!抉れる!!」
ドスッ!ガブッ!!グリンッ!!!
…ぶちっ。
血が滲むダンテの体。
文鳥はよく飼い主の指のささくれをつつき、くちばしで挟み、ドリルのように回転させてブチッッッと引きちぎる。
愛情表現の一種や、ささくれを食べているなんて思う飼い主もいるが、ささくれは無理に取ると血は出るしヒリヒリしてかなり痛い。
可愛さ余って憎さ百倍。
それと同じ事が、今、ダンテの皮膚に起きていた。
痛みに耐えかね、火属性の象徴たる炎が、ダンテを守るように周囲に渦巻く。
焼き鳥になるのは嫌だと、文鳥は羽ばたいて大きく飛び上がった。
巨大な翼の羽ばたきで捲き起こる突風。
「ピゥィーーーッピッピッピッピー、ピョッピョッピョッピェーーー!!」
オスの文鳥はさえずり、そしてダンスを踊る。
空中をダンスするように滑空しながら、大声でさえずっている。
その瞬間、羽ばたきの突風よりも強く、明確な意思を持って迫る風の攻撃が、ダンテに向かってきた。
「風の刃!?
こいつ…属性は『闇』じゃなかったのかよ!」
さえずり、音や声がカマイタチの如き刃となって襲ってくる。
全てを避けることはできなかったそれは、ダンテの体を薄く、浅く切り裂いていった。
とはいえ、属性『音』に至るほどの強力さは感じない事から、ギリ『風』の属性に思える。
くちばしの方が脅威だった。
「ダンテが頑張ってくれてる…。あと数分でお花咲きそう…お願いだから、はやく、はやく咲いて……!」
……じゃないとあたしお腹すいてダンテの分の夜食まで食べちゃう!
ボニトフレークス&チーズのソイソースライスボール最高。
ダンテの魔法で作られた携帯型『お弁当温めますか?はい温めで願いしますほのお君1号』を使ってほんのり温めて食べると、角切りにして中に入れたチーズがトロゥリ溶けてご飯に絡み、ボニトフレークスとチーズの相性の良い旨味成分に、塩味の利いたソイソースがとても美味しい。
この通り、ディーヴァがはやく咲いて欲しい理由は、ダンテが心配という物だけではなかった。
(聞こえますか)
「ん??」
その時、内緒話にも似た囁き声がディーヴァの耳に聞こえた。
耳を傾けてはいけないとされる、去年も聞いたであろうあの声だ。記憶を消されているためか、思い出そうとしてもなかなか上手くいかなかったそれ。
(聞こえますか。
ディーヴァ……聞こえますか?魔女ディーヴァよ……。ぶんちょすです……。ぶんちょすの中の人、管理人です……。
私は今、貴女の心に直接語りかけています……。
今年の七夕は現実も暑かったです……。
そんな暑い中クエストお疲れ様です……今年も失敗しなさい……。
夜が涼しく感じても今年は命に関わるほど熱中症のリスクが高いです…早い所クエスト失敗をひっさげて家帰ってクソして寝ろ!をするのです……。
さあ、忘れて回れ右、家へ帰るのです……!)
「回れ右、して…かえ、る……?」
「くっ、コイツ直接脳内に…!
ディーヴァ、聞くな!今年もクエスト失敗していいのか!?
いいやよくない!オレがいるのに失敗なんて、絶対ゆるさねぇぜ!!」
スパァン!!
ディーヴァの両耳を塞ぎたかったのだろう、文鳥の攻撃の合間にやってきたダンテが、ヒトガタに代わり、ディーヴァの耳を勢いよく叩いた。
「いたい!中耳炎になっちゃうよ!!」
「わり!」
「っていうかこの声、脳内に直接でしょ。耳塞いでも意味ないし。
それにダンテがこっち来たら、あたしまで攻撃に巻き込まれちゃうじゃないのさ!」
ディーヴァが言う通りだ。
文鳥の風刃やくちばしがこちらを狙ってくる。
それでもダンテはディーヴァが心配だった。
自分でもあんなに危惧していたはずの、囁き声に簡単に引っかかる、ディーヴァが。
存在自体が消されてしまう、そんな事になったらと、気が気ではなかったのだ。
ダンテはディーヴァに、そして花に危害が加えられぬよう、素早く飛び上がった。
ダンテの耳は鳥の羽根と同じ構造だ。小さいが、羽ばたけば飛ぶこともできる。
アグニ、そして自身の炎を左手のベオウルフに纏わせ、炎の拳を作り出す。
これぞ、武器と武器を組み合わせた、最強のワザでもって迎え撃つ。どこぞのイフリートとは思っちゃいけない。
「うおおお!明日の!メシはァ!焼き!鳥!だっ!!」
「ピィーーーッ!!」
ほのおのパンチ(出典:ポケモン)が文鳥に届く、と思われたその時!
ディーヴァが間延びした声を張り上げた。
「あっダンテお花咲いたから採ったよ、攻撃中止~」
このタイミングで撤収の合図。
「ハァーーー?ゴフッ!!?」
拳が緩み炎が消え、文鳥のくちばしでもなく渾身の体当たりが、ダンテの顔にクリーンヒットした。
その巨体から繰り出される体当たりは、予想以上の衝撃。
ダンテは向こうへと吹っ飛んだ。
文鳥もなぜかそれを追う。まるでダンテの赤に突進する牛のようだ。闘牛か。
「あーあ、ダンテったらひとりで先に帰っちゃったよ…」
別に先に帰ったわけではないのは、見ればわかろうが、ディーヴァの目にはそう映った。
ディーヴァが摘み取ったネムの木の花のような、柔く細い桃色の花弁だけが繊細に光っていた。
クエストクリア!!
昼間の茹だるような暑さはどこへやら、夜は草原の中にいるようなさわやかな風が吹き、昼間にかいた汗が冷えて少し肌寒いくらいだ。
そして暑さがない分、蚊が飛ぶ数が多い。
とはいえ、魔獣取り線香を開発するディーヴァだ。もちろん、匂いや煙のない蚊取り線香をしっかりと装備しているので刺されることは全くない。
ダンテも同じく、快適な夜を過ごせていた。
「おい、まだ描き終わらないのか?」
「まーだー。これ難しいんだから話しかけないでよー」
ここに来てすぐ、群生するシダ植物は見つけた。
そこを野営地として、ディーヴァが不可視の陣を杖で刻んでいるのだがこれがまだ終わらないのだ。
お手本をなぞるかのように、本を見ながら描いているのだが、これがなかなか上手くいかない。
それもこれもディーヴァの絵心が皆無どころか最悪なせいだ。
「オレが描いてやろうか?」
見かねたオレがそう進言しても「いいですぅ」の一言だ。
もうすぐ夜中になるからか、シダ植物の一部に、薄桃色の膨らみが見てとれる。
じきに咲くだろう。
ディーヴァのお絵かき(笑)があと少しというところで、ピリと空気が張り詰めた。
何かくる。
何かというか、この感じは絶対魔獣としか思えないそれ。
ザワザワと森の木々もろとも騒がしくなり始め、ディーヴァも空気の変化に気がついたようだ。
「むっ!なんか来る…?」
「そのようだ。なんかっていうか、魔獣な。
…ったく、そら見ろ!ディーヴァが早くしねぇから魔獣が来ちまうじゃねぇか」
「そら見ろ?…お空見るの??」
「あほ!」
「びゃああいだいぃ!」
ダンテはディーヴァに思い切りデコピンした。
ディーヴァか額を押さえて吹っ飛んだが、これでも手加減している。
そんなコントのようなやり取りの中、地鳴りを響かせてこちらに近づいてくる何者か。
暗闇の中、赤い目が光る。
魔法を使うときは赤く目が光ることもあるが、もちろんの事目の前にいるダンテの目ではない。
「あらやだほんと。魔獣さん来てる」
「あらやだじゃねぇだろ…」
ディーヴァと話していると頭が痛くなる。
「その魔法陣(笑)を描く意味がなくなった今、どうする?不可視は効かない。ならば、相手取るしかねぇんじゃねぇか?」
「そーね…花が咲くまでは持ちこたえないとかも。
あとダンテ(笑)とはどういうことよ」
「どういうこともクソもねー。悔しかったら魔法陣くらいそらで描けぇい」
そうしている間に魔獣の姿が見えてきた。
真っ白な体に、テカテカとその硬い口が光る。
顔の大半を占める、三角の真っ赤なくちばしが。
赤いと思われた目は黒く、目の周りの赤いアイリングが光っていた。
手足はない。代わりにあるのは、体と同じ真っ白な翼に爬虫類の物に酷似した爪のついたか細い脚。
「わあかわいい!」
「大きさ以外はな」
魔獣の正体は、魔獣姿のダンテの数倍はありそうな、おおきなおおきな白文鳥だった。
そのくちばしならば、いとも簡単に首根っこをつままれ、食われてしまいそうだ。
突かれてはひとたまりもない。
だが。
「大きさはともかく、鳥相手じゃ負ける気がしねぇな。ディーヴァは花を摘む準備だけしとけ!」
「あいさー」
「とうっっっ!」
ダンテは飛び上がりながら、人という体を捨てて魔獣姿へと変化する。
「鳥は鳥らしく、空に飛んでけ!」
その勢いのまま、渾身の体当たりで文鳥を空へと弾き飛ばした。
残念ながら、ふわりと大空に舞い上がって旋回し、すぐに戻ってきたが。
鳥目だろうが暗い森の中でダンテの炎はよく目立ったことだろう。
ぽ、ぽ、ぽぽぽぽぎゃるるるるるる!!!
と独特の鳴き声で喉を震わせながら、文鳥が急降下してきた。
「げっやべっ!」
キラリと光るくちばしが見える。
あのでっかい物で突かれたら痛いじゃすまなさそうな気がする。
文鳥とは、脚や羽根が特質すべき点のない代わり、くちばしがずんぐりむっくりテカテカ大きく可愛くて。
でも、それが唯一の攻撃手段でもあるのだ。
「ぎゃーっ!肉!抉れる!!」
ドスッ!ガブッ!!グリンッ!!!
…ぶちっ。
血が滲むダンテの体。
文鳥はよく飼い主の指のささくれをつつき、くちばしで挟み、ドリルのように回転させてブチッッッと引きちぎる。
愛情表現の一種や、ささくれを食べているなんて思う飼い主もいるが、ささくれは無理に取ると血は出るしヒリヒリしてかなり痛い。
可愛さ余って憎さ百倍。
それと同じ事が、今、ダンテの皮膚に起きていた。
痛みに耐えかね、火属性の象徴たる炎が、ダンテを守るように周囲に渦巻く。
焼き鳥になるのは嫌だと、文鳥は羽ばたいて大きく飛び上がった。
巨大な翼の羽ばたきで捲き起こる突風。
「ピゥィーーーッピッピッピッピー、ピョッピョッピョッピェーーー!!」
オスの文鳥はさえずり、そしてダンスを踊る。
空中をダンスするように滑空しながら、大声でさえずっている。
その瞬間、羽ばたきの突風よりも強く、明確な意思を持って迫る風の攻撃が、ダンテに向かってきた。
「風の刃!?
こいつ…属性は『闇』じゃなかったのかよ!」
さえずり、音や声がカマイタチの如き刃となって襲ってくる。
全てを避けることはできなかったそれは、ダンテの体を薄く、浅く切り裂いていった。
とはいえ、属性『音』に至るほどの強力さは感じない事から、ギリ『風』の属性に思える。
くちばしの方が脅威だった。
「ダンテが頑張ってくれてる…。あと数分でお花咲きそう…お願いだから、はやく、はやく咲いて……!」
……じゃないとあたしお腹すいてダンテの分の夜食まで食べちゃう!
ボニトフレークス&チーズのソイソースライスボール最高。
ダンテの魔法で作られた携帯型『お弁当温めますか?はい温めで願いしますほのお君1号』を使ってほんのり温めて食べると、角切りにして中に入れたチーズがトロゥリ溶けてご飯に絡み、ボニトフレークスとチーズの相性の良い旨味成分に、塩味の利いたソイソースがとても美味しい。
この通り、ディーヴァがはやく咲いて欲しい理由は、ダンテが心配という物だけではなかった。
(聞こえますか)
「ん??」
その時、内緒話にも似た囁き声がディーヴァの耳に聞こえた。
耳を傾けてはいけないとされる、去年も聞いたであろうあの声だ。記憶を消されているためか、思い出そうとしてもなかなか上手くいかなかったそれ。
(聞こえますか。
ディーヴァ……聞こえますか?魔女ディーヴァよ……。ぶんちょすです……。ぶんちょすの中の人、管理人です……。
私は今、貴女の心に直接語りかけています……。
今年の七夕は現実も暑かったです……。
そんな暑い中クエストお疲れ様です……今年も失敗しなさい……。
夜が涼しく感じても今年は命に関わるほど熱中症のリスクが高いです…早い所クエスト失敗をひっさげて家帰ってクソして寝ろ!をするのです……。
さあ、忘れて回れ右、家へ帰るのです……!)
「回れ右、して…かえ、る……?」
「くっ、コイツ直接脳内に…!
ディーヴァ、聞くな!今年もクエスト失敗していいのか!?
いいやよくない!オレがいるのに失敗なんて、絶対ゆるさねぇぜ!!」
スパァン!!
ディーヴァの両耳を塞ぎたかったのだろう、文鳥の攻撃の合間にやってきたダンテが、ヒトガタに代わり、ディーヴァの耳を勢いよく叩いた。
「いたい!中耳炎になっちゃうよ!!」
「わり!」
「っていうかこの声、脳内に直接でしょ。耳塞いでも意味ないし。
それにダンテがこっち来たら、あたしまで攻撃に巻き込まれちゃうじゃないのさ!」
ディーヴァが言う通りだ。
文鳥の風刃やくちばしがこちらを狙ってくる。
それでもダンテはディーヴァが心配だった。
自分でもあんなに危惧していたはずの、囁き声に簡単に引っかかる、ディーヴァが。
存在自体が消されてしまう、そんな事になったらと、気が気ではなかったのだ。
ダンテはディーヴァに、そして花に危害が加えられぬよう、素早く飛び上がった。
ダンテの耳は鳥の羽根と同じ構造だ。小さいが、羽ばたけば飛ぶこともできる。
アグニ、そして自身の炎を左手のベオウルフに纏わせ、炎の拳を作り出す。
これぞ、武器と武器を組み合わせた、最強のワザでもって迎え撃つ。どこぞのイフリートとは思っちゃいけない。
「うおおお!明日の!メシはァ!焼き!鳥!だっ!!」
「ピィーーーッ!!」
ほのおのパンチ(出典:ポケモン)が文鳥に届く、と思われたその時!
ディーヴァが間延びした声を張り上げた。
「あっダンテお花咲いたから採ったよ、攻撃中止~」
このタイミングで撤収の合図。
「ハァーーー?ゴフッ!!?」
拳が緩み炎が消え、文鳥のくちばしでもなく渾身の体当たりが、ダンテの顔にクリーンヒットした。
その巨体から繰り出される体当たりは、予想以上の衝撃。
ダンテは向こうへと吹っ飛んだ。
文鳥もなぜかそれを追う。まるでダンテの赤に突進する牛のようだ。闘牛か。
「あーあ、ダンテったらひとりで先に帰っちゃったよ…」
別に先に帰ったわけではないのは、見ればわかろうが、ディーヴァの目にはそう映った。
ディーヴァが摘み取ったネムの木の花のような、柔く細い桃色の花弁だけが繊細に光っていた。
クエストクリア!!
