7月7日のクエスト
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昼食後、テーブルの上をちちんぷいぷい、杖の一振りで片付けたディーヴァは、そのまま本日の目的地が描かれたマ●オン地図を大きく広げた。
片付けくらいは自分の手でやれ、と思うがディーヴァもダンテに負けず劣らず面倒臭がり屋。
手を抜けるところはどんどん抜くタイプの人間…いや、魔女である。
「さーて。改めまして作戦会議いっきまーす」
羽ペンで目的地をぐるぐる何度も丸で囲む。
あまりにも同じ場所をペンでなぞってばかりいるので、地図が破けてしまいそうだ。
と、ダンテがディーヴァの顔を見てブホッと吹き出した。
「それはいいがお前弁当付いてんぞ」
「え、なんかついてる?どこどこ」
ペタペタと手で口周りを拭うディーヴァの手を掴み、ダンテは顔を近づけ。
べろ。
ディーヴァの唇を舐めとった。
「おべんとついてんのはココ」
「!」
囁くように呟いて離れていったダンテの顔を見ると、お弁当ーー白いごま粒がダンテの舌先に移動したのが見える。
つい先ほどまで、ディーヴァの唇の端についていたらしい、その粒が…。
「すりごま味ってのが残念だが、ごっそーさん」
ぺろ、自分の唇を舌で舐めて、ダンテはその粒を飲み込む。いかにいつも甘いイメージのディーヴァの唇にあったものとはいえ全く甘くない。
だが、ディーヴァを照れさせるには、じゅうぶん事足りたようだ。
「口じゃなくて手でやってよね!」
「ククク、すまんすまん」
「……もうついてない?」
「ついてない。ぷっくり桃色の唇が、オレを誘ってるだけだぜ」
ダンテが再び唇を近づけると、ディーヴァはそれが到達する前にササッと逃げた。
「…逃げるなんて酷いな」
「先に進まないでしょ。ほら、地図に注目!」
「へいへい」
「返事は『はい』で一回ね」
いちいち厳しい。
言いながらディーヴァは、何重にも丸で囲まれた場所をペン先でトントンと突く。
「場所はここに記された森の中、古代遺跡の近く。夕方から行くけれど、決行するのは真夜中ちょっと前。ここまでオッケー?」
「オッケーオッケー」
ディーヴァの示す古代遺跡なら、行ったことがある。
そこまで詳しく覚えていないが、シダ植物は群生していた…ような気がする。
ボーッと思い出していると、ふとディーヴァの目に視線を止めてしまった。
不謹慎にも、ディーヴァの顔に影を作る長い睫毛に欲を覚えた。
ああ、キスしたい。
さすがにこんな真剣な場面でするわけにいかない。先ほども盛大に照れられたことだし。
今回の仕事が無事に終わってから、ディーヴァの唇を、そして体を堪能すればいい。
ディーヴァだってそれくらいのご褒美はくれるはずだ。
ダンテは小さく舌舐めずりした。
「真夜中になる前にはお花の前に陣取って待つ。花が咲いたら摘み取るの。
それでおしまい」
それだけ聞けばラクにも思う。
だが、花を守る魔獣。それがネックなのだろうことは想像に難くない。
「んで、魔獣の相手はオレがする、と。そういうことか」
「それはやむを得ない時だけ」
危害を加えてこない魔獣に対して、先に手を出してはいけない。
この世界において、暗黙の了解。ルールだ。
下手にこちらから手を出せば、こちらが魔獣のブラックリストに載り、果ては魔獣の監獄行き。…になることもあるらしい。
恐ろしいことだ。
正義の魔獣を謳うダンテとしては、避けたいところである。
「基本的には、地面に不可視になる魔法陣を描いて魔獣の目から身を守るの。
相手は『鳥目』だからね」
「鳥目…魔獣のクセに夜目が利かないのか」
「みたいだね」
結局、昼食後のデザートが欲しくなったのか、またもちちんぷいぷい~でカラフルな琥珀糖、そして水出し煎茶を呼び寄せ、口に含んでディーヴァが答える。
キラキラした宝石のような甘~い琥珀糖に、苦味を抑えまろみを感じる煎茶はディーヴァの口にさぞや合うことだろう。
「みたいってなんだよ。去年も行ったんじゃないのか?去年の魔獣覚えてないのかよ」
「そこで起こった事実も記憶もすべて『消され』ちゃった」
「クエスト失敗、てことか」
「うう、お恥ずかしながらそーです」
記憶やらなにやら消される。相手はそういう魔法を使う魔獣ということか。
ならば、きっと『闇』の属性持ちの可能性が高い。
そんな考察をしているダンテの目の前で、失敗を恥じたディーヴァがポコポコと琥珀糖を口にする。おい、そういう食べ方はヤメロ!
「でも今年はダンテという味方がついてるッ!
ダンテが足引っ張るようなことしなければ上手くいくと思うんだぁ~」
「はあ…オレが足引っ張るわきゃねーわ」
ディーヴァも魔女で、人間より長く生きている。だから人間よりは物知りだろう。
だが魔獣についてなら、ダンテの方がディーヴァよりもたくさんのことを知っている。
生きた年数ではない、自身が魔獣だからだ。
「あ。
闇から聞こえる甘い囁きやさえずりには耳を貸しちゃダメなんだって。返事すると存在ごと消されかねないらしいから」
「へー。
…ということは、ディーヴァのように記憶を消されるパターンは珍しく、唯一の救いだったといえる。
そして注意すべきは、オレではなくディーヴァだ。
それから、『鳥目』で夜目が利かなく、囁きに『さえずり』。そして闇属性。
どんな魔獣なのか種族名こそ思い出せないが、多分鳥型だろうことが予想される。
魔獣の姿を取ったダンテよりは、小さかろうて。
「ダンテ、囁き声やさえずりが、あたしの声で聞こえたとしても、ぜーったいに知らんぷりしてよね?」
「はあ…。
オレがお前の声を間違えるわけないだろ」
ディーヴァじゃあるまいし。
耳の良い魔獣であるオレがいてクエスト失敗するわけがないのだ。
ダンテは口に入れた一粒の琥珀糖を、ガリ、と噛み砕いた。
片付けくらいは自分の手でやれ、と思うがディーヴァもダンテに負けず劣らず面倒臭がり屋。
手を抜けるところはどんどん抜くタイプの人間…いや、魔女である。
「さーて。改めまして作戦会議いっきまーす」
羽ペンで目的地をぐるぐる何度も丸で囲む。
あまりにも同じ場所をペンでなぞってばかりいるので、地図が破けてしまいそうだ。
と、ダンテがディーヴァの顔を見てブホッと吹き出した。
「それはいいがお前弁当付いてんぞ」
「え、なんかついてる?どこどこ」
ペタペタと手で口周りを拭うディーヴァの手を掴み、ダンテは顔を近づけ。
べろ。
ディーヴァの唇を舐めとった。
「おべんとついてんのはココ」
「!」
囁くように呟いて離れていったダンテの顔を見ると、お弁当ーー白いごま粒がダンテの舌先に移動したのが見える。
つい先ほどまで、ディーヴァの唇の端についていたらしい、その粒が…。
「すりごま味ってのが残念だが、ごっそーさん」
ぺろ、自分の唇を舌で舐めて、ダンテはその粒を飲み込む。いかにいつも甘いイメージのディーヴァの唇にあったものとはいえ全く甘くない。
だが、ディーヴァを照れさせるには、じゅうぶん事足りたようだ。
「口じゃなくて手でやってよね!」
「ククク、すまんすまん」
「……もうついてない?」
「ついてない。ぷっくり桃色の唇が、オレを誘ってるだけだぜ」
ダンテが再び唇を近づけると、ディーヴァはそれが到達する前にササッと逃げた。
「…逃げるなんて酷いな」
「先に進まないでしょ。ほら、地図に注目!」
「へいへい」
「返事は『はい』で一回ね」
いちいち厳しい。
言いながらディーヴァは、何重にも丸で囲まれた場所をペン先でトントンと突く。
「場所はここに記された森の中、古代遺跡の近く。夕方から行くけれど、決行するのは真夜中ちょっと前。ここまでオッケー?」
「オッケーオッケー」
ディーヴァの示す古代遺跡なら、行ったことがある。
そこまで詳しく覚えていないが、シダ植物は群生していた…ような気がする。
ボーッと思い出していると、ふとディーヴァの目に視線を止めてしまった。
不謹慎にも、ディーヴァの顔に影を作る長い睫毛に欲を覚えた。
ああ、キスしたい。
さすがにこんな真剣な場面でするわけにいかない。先ほども盛大に照れられたことだし。
今回の仕事が無事に終わってから、ディーヴァの唇を、そして体を堪能すればいい。
ディーヴァだってそれくらいのご褒美はくれるはずだ。
ダンテは小さく舌舐めずりした。
「真夜中になる前にはお花の前に陣取って待つ。花が咲いたら摘み取るの。
それでおしまい」
それだけ聞けばラクにも思う。
だが、花を守る魔獣。それがネックなのだろうことは想像に難くない。
「んで、魔獣の相手はオレがする、と。そういうことか」
「それはやむを得ない時だけ」
危害を加えてこない魔獣に対して、先に手を出してはいけない。
この世界において、暗黙の了解。ルールだ。
下手にこちらから手を出せば、こちらが魔獣のブラックリストに載り、果ては魔獣の監獄行き。…になることもあるらしい。
恐ろしいことだ。
正義の魔獣を謳うダンテとしては、避けたいところである。
「基本的には、地面に不可視になる魔法陣を描いて魔獣の目から身を守るの。
相手は『鳥目』だからね」
「鳥目…魔獣のクセに夜目が利かないのか」
「みたいだね」
結局、昼食後のデザートが欲しくなったのか、またもちちんぷいぷい~でカラフルな琥珀糖、そして水出し煎茶を呼び寄せ、口に含んでディーヴァが答える。
キラキラした宝石のような甘~い琥珀糖に、苦味を抑えまろみを感じる煎茶はディーヴァの口にさぞや合うことだろう。
「みたいってなんだよ。去年も行ったんじゃないのか?去年の魔獣覚えてないのかよ」
「そこで起こった事実も記憶もすべて『消され』ちゃった」
「クエスト失敗、てことか」
「うう、お恥ずかしながらそーです」
記憶やらなにやら消される。相手はそういう魔法を使う魔獣ということか。
ならば、きっと『闇』の属性持ちの可能性が高い。
そんな考察をしているダンテの目の前で、失敗を恥じたディーヴァがポコポコと琥珀糖を口にする。おい、そういう食べ方はヤメロ!
「でも今年はダンテという味方がついてるッ!
ダンテが足引っ張るようなことしなければ上手くいくと思うんだぁ~」
「はあ…オレが足引っ張るわきゃねーわ」
ディーヴァも魔女で、人間より長く生きている。だから人間よりは物知りだろう。
だが魔獣についてなら、ダンテの方がディーヴァよりもたくさんのことを知っている。
生きた年数ではない、自身が魔獣だからだ。
「あ。
闇から聞こえる甘い囁きやさえずりには耳を貸しちゃダメなんだって。返事すると存在ごと消されかねないらしいから」
「へー。
…ということは、ディーヴァのように記憶を消されるパターンは珍しく、唯一の救いだったといえる。
そして注意すべきは、オレではなくディーヴァだ。
それから、『鳥目』で夜目が利かなく、囁きに『さえずり』。そして闇属性。
どんな魔獣なのか種族名こそ思い出せないが、多分鳥型だろうことが予想される。
魔獣の姿を取ったダンテよりは、小さかろうて。
「ダンテ、囁き声やさえずりが、あたしの声で聞こえたとしても、ぜーったいに知らんぷりしてよね?」
「はあ…。
オレがお前の声を間違えるわけないだろ」
ディーヴァじゃあるまいし。
耳の良い魔獣であるオレがいてクエスト失敗するわけがないのだ。
ダンテは口に入れた一粒の琥珀糖を、ガリ、と噛み砕いた。
