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あたしの住む場所のお隣。あたしが経営する農場近く。
ある意味ではあたしが管理する広大な森。
そこに最近、ダンテという魔獣が住み着いた。
魔獣嫌いなあたしだけど、ダンテと出会った事で、自分でもびっくりするくらい魔獣への考え方や態度が変わってきている。
きっと、彼と出会ってお話しして交流して…そして他の魔獣から助けてもらって……世の中には良い魔獣もいるんだってわかったからだと思う。
…彼が本当に良い魔獣かどうかはともかく。
ダンテは偶然って言ってるけど絶対狙ってだと思う、それから何かにつけて偶然を装って会った。
ある時はレストランで食事時に相席に。ある時は農場で虫が出て驚いている時に通りかかって退治してくれたり。
そんな事が続くものだから、まあ、仲良くなるのは早いよね。
そんなダンテが、とうとう本日、あたしのこじんまりとしたこの根城…おうちに来ることになった。
魔獣さんをおうちに入れるなんて、昔のあたしなら考えられない事だ。
だって、魔獣から逃げ込む最後の砦なのに、そこに招くんだもの。何かあっても逃げ場はないと言っているようなもの。
招いたが最後、という事。
ほら、吸血鬼もそうでしょ?家主に招かれないと中には進入できないが、招かれればもう好き勝手に入り込める。家主を襲うことも出来る…って。それと同じ。
まあ、揶揄ってふざけて来ることはあっても、ダンテは最終的にあたしが嫌がる事はしてこないと思ってる。
魔獣だから絶対とは言い切れなくも、それほどには信用してるんだ。
おっと!そろそろ到着するかも!
お菓子、おっけぃ。
お紅茶、おっけぃ。
お掃除、うん、おっけぃ。きれいきれい。カーテンレールも埃はオフ、と。
魔獣をお迎えする覚悟はいいか、あたしはできてる。
会うようになって少しは覚えたダンテの魔力の波動。
とうさん妖気が!と言いたくなるような、髪の毛が逆立つ(ただ単に静電気)魔力の気配を感じてしばらく、カンカンと金属製のノッカーを鳴らす音が響いた。
「はいはぁーい」
「オレだ、ダンテだ」
もしも他の魔獣だったら?
魔獣相手に警戒心の強いディーヴァは、招く者に合言葉を設定している。
そして今回、急ごしらえで設定したダンテを迎え入れるための合言葉はというと。
「…『チーズタルトはパブロが最高』これでいいか?」
パブロはネ申だと思う。
自分の作る物も美味しいよ。でも、あのタルトは季節ごとにいろいろな味が出ているところが最高だと思うんだ。いちごたっぷりの春がおススメだ。
「おっけ。
ダンテ、いらっしゃぁ~い」
「邪魔するぜ、…おぉ」
新婚さんいらっしゃい、のノリで玄関を開けると、ディーヴァの家の匂いにか、それとも他の理由でかダンテは惚けていた。
ディーヴァの家の匂いは全体的に甘い。スイーツばかり食べているというのが大きいだろう。
慣れぬ者、それも鼻の利く魔獣には辛かったのかもしれない。
もっとも、ダンテは実際のところ、ただ単にディーヴァの体臭やら部屋の匂いやらを胸いっぱい吸い込み悦っていただけだが。
「ほい、これ手土産な」
「ありがと~。そんなの気にしなくていいのに」
手渡された紙袋を見てびっくりした。
だって、それは今しがた自分の頭の中を支配していた件の…。
「あ、これ合言葉のチーズタルト!しかも季節限定の味!」
「どうせなら相手が喜ぶモンのがいいだろ?」
「そうだね!
あ~ん、美味しそううう!せっかくだし切って出そう!」
中にもトッピングにもフルーツがふんだんに使われたチーズタルト。テカテカツヤツヤに光るナパージュがより食欲をそそる。
テンションうなぎ登り。
「ははは!別にいいって。
お前も茶菓子作ったんだろ?だったらそっち食いてえな。だからタルトはあとで自分で食えよ」
「そーお?
じゃあ、お言葉に甘えちゃおっと」
もともといつもはホールで作ったり買ったり、そして独り占めコースなので珍しい者でもなんでもない。
が、人からこうして手土産なぞでいただいて…しかもそれをそのまま独り占めというのは普通はあり得ない。
これぞ最高の贅沢。
気を良くしたディーヴァは、相手が魔獣だという事すら空の彼方に吹っ飛ばし、その手を取って中へと誘導した。
「こっち!」
「え?な…、」
「一人暮らしだからこじんまりしててごめんねー。ここがリビングだよ」
ダンテが気がついたディーヴァの行動だが、本人は気がつかない。
にっこり笑顔で鼻歌なんぞ歌っているほど。
そうしてほんのり薄暗い玄関先を抜けると、たどり着くは陽の光がたっぷり差し込むカントリー調のリビング。
木でできた椅子やテーブル、敷かれたラグやクロスにディーヴァの女性らしさが出ている。
ダンテは知るところではないが、茶器もカントリーローズやワイルドストロベリーで揃えられ本当に“らしい”。
明るい陽の下であらわとなったディーヴァが自然に手を離し、冷蔵庫にチーズタルトを入れに行く。
「お茶淹れてくるからその辺かけてて」
「あ、ああ」
その後ろ姿は、いつも見るゴスロリのような黒と白と赤で構成されたものとは違う物だった。
「お待たせ。キッチンからも視線感じてたけど、どうかした?」
「いや、違う格好してるんだなと。特にロープの中身…どこかのJKかと思ったぜ」
「えー?」
まさに魔法使い、魔女。
そう思わせる裾が長く袖もひらひら長い焦げ茶色のローブ。
裾にも同じ系統の色レースがついているが、今やトレードマークといってもおかしくない真っ赤なリボンが後ろを飾る。
席につくためかそんなローブを脱ぎ去るディーヴァの、中に着ている物こそどこかの学校の制服スタイルだった。
レース付きでダークグリーンの格子模様ミニスカートに、真っ白なシャツブラウス。そしてまたも真っ赤なリボンタイが結ばれている。リボンタイの真ん中には、ダンテのアミュレットと似た色の赤いストーンアクセサリー。
これを制服と言わずしてなんと言おうか。
そして長い髪は下の方でゆる~くデカいリボンでひとまとめ、である。
ゆるすぎてまとめる意味があるのだろうかと、 思わせるレベル。
不思議な香りのお茶をカップにそそぎいれ、茶菓子と共にダンテに差し出したディーヴァがクスクス笑う。
「だってここあたしの家だよ?普段から魔女の正装してどうするのさ」
「あれ正装なのかよ」
「普段ほんとになんもない時はゴスロリに近い服着てる。好きなんだよね、フリフリ。あと着てるのはエプロンとかかな…。
あ、今着てるこれ部屋着ね」
部屋着でローブ着用とは、逆に動きづらそうである。だが、農業や薬草を育て、たまにそれらを使った薬も精製しているとなると、それでいいのかもしれない。
「つーか、それ部屋着ってことは、そのまま寝るのか?もしやそれをパジャマに……」
「そんな時もあるねー」
うん、ラクな格好して机に向かったりすると、大抵寝落ちする。
だから、この格好で眠ってしまうときはこれまでなんどもあった。…気がする。
「アッでもこのまま寝るときは下に見せパン履くから中身が見えるなんてこと絶対ないのでご心配なく!」
「おお…オレが言わんとしていた事を先に言われちまった。さっすが魔女だぜ…」
「魔女関係ナッシング」
変な想像と変な発言は断固阻止。
とはいえ、夏場なんかだとネグリジェとベビードールで寝る時も多かったりする。
変態センサーが目まぐるしく反応の一途を辿っているので、ダンテ相手にそれを言うことはないのだが。
ある意味ではあたしが管理する広大な森。
そこに最近、ダンテという魔獣が住み着いた。
魔獣嫌いなあたしだけど、ダンテと出会った事で、自分でもびっくりするくらい魔獣への考え方や態度が変わってきている。
きっと、彼と出会ってお話しして交流して…そして他の魔獣から助けてもらって……世の中には良い魔獣もいるんだってわかったからだと思う。
…彼が本当に良い魔獣かどうかはともかく。
ダンテは偶然って言ってるけど絶対狙ってだと思う、それから何かにつけて偶然を装って会った。
ある時はレストランで食事時に相席に。ある時は農場で虫が出て驚いている時に通りかかって退治してくれたり。
そんな事が続くものだから、まあ、仲良くなるのは早いよね。
そんなダンテが、とうとう本日、あたしのこじんまりとしたこの根城…おうちに来ることになった。
魔獣さんをおうちに入れるなんて、昔のあたしなら考えられない事だ。
だって、魔獣から逃げ込む最後の砦なのに、そこに招くんだもの。何かあっても逃げ場はないと言っているようなもの。
招いたが最後、という事。
ほら、吸血鬼もそうでしょ?家主に招かれないと中には進入できないが、招かれればもう好き勝手に入り込める。家主を襲うことも出来る…って。それと同じ。
まあ、揶揄ってふざけて来ることはあっても、ダンテは最終的にあたしが嫌がる事はしてこないと思ってる。
魔獣だから絶対とは言い切れなくも、それほどには信用してるんだ。
おっと!そろそろ到着するかも!
お菓子、おっけぃ。
お紅茶、おっけぃ。
お掃除、うん、おっけぃ。きれいきれい。カーテンレールも埃はオフ、と。
魔獣をお迎えする覚悟はいいか、あたしはできてる。
会うようになって少しは覚えたダンテの魔力の波動。
とうさん妖気が!と言いたくなるような、髪の毛が逆立つ(ただ単に静電気)魔力の気配を感じてしばらく、カンカンと金属製のノッカーを鳴らす音が響いた。
「はいはぁーい」
「オレだ、ダンテだ」
もしも他の魔獣だったら?
魔獣相手に警戒心の強いディーヴァは、招く者に合言葉を設定している。
そして今回、急ごしらえで設定したダンテを迎え入れるための合言葉はというと。
「…『チーズタルトはパブロが最高』これでいいか?」
パブロはネ申だと思う。
自分の作る物も美味しいよ。でも、あのタルトは季節ごとにいろいろな味が出ているところが最高だと思うんだ。いちごたっぷりの春がおススメだ。
「おっけ。
ダンテ、いらっしゃぁ~い」
「邪魔するぜ、…おぉ」
新婚さんいらっしゃい、のノリで玄関を開けると、ディーヴァの家の匂いにか、それとも他の理由でかダンテは惚けていた。
ディーヴァの家の匂いは全体的に甘い。スイーツばかり食べているというのが大きいだろう。
慣れぬ者、それも鼻の利く魔獣には辛かったのかもしれない。
もっとも、ダンテは実際のところ、ただ単にディーヴァの体臭やら部屋の匂いやらを胸いっぱい吸い込み悦っていただけだが。
「ほい、これ手土産な」
「ありがと~。そんなの気にしなくていいのに」
手渡された紙袋を見てびっくりした。
だって、それは今しがた自分の頭の中を支配していた件の…。
「あ、これ合言葉のチーズタルト!しかも季節限定の味!」
「どうせなら相手が喜ぶモンのがいいだろ?」
「そうだね!
あ~ん、美味しそううう!せっかくだし切って出そう!」
中にもトッピングにもフルーツがふんだんに使われたチーズタルト。テカテカツヤツヤに光るナパージュがより食欲をそそる。
テンションうなぎ登り。
「ははは!別にいいって。
お前も茶菓子作ったんだろ?だったらそっち食いてえな。だからタルトはあとで自分で食えよ」
「そーお?
じゃあ、お言葉に甘えちゃおっと」
もともといつもはホールで作ったり買ったり、そして独り占めコースなので珍しい者でもなんでもない。
が、人からこうして手土産なぞでいただいて…しかもそれをそのまま独り占めというのは普通はあり得ない。
これぞ最高の贅沢。
気を良くしたディーヴァは、相手が魔獣だという事すら空の彼方に吹っ飛ばし、その手を取って中へと誘導した。
「こっち!」
「え?な…、」
「一人暮らしだからこじんまりしててごめんねー。ここがリビングだよ」
ダンテが気がついたディーヴァの行動だが、本人は気がつかない。
にっこり笑顔で鼻歌なんぞ歌っているほど。
そうしてほんのり薄暗い玄関先を抜けると、たどり着くは陽の光がたっぷり差し込むカントリー調のリビング。
木でできた椅子やテーブル、敷かれたラグやクロスにディーヴァの女性らしさが出ている。
ダンテは知るところではないが、茶器もカントリーローズやワイルドストロベリーで揃えられ本当に“らしい”。
明るい陽の下であらわとなったディーヴァが自然に手を離し、冷蔵庫にチーズタルトを入れに行く。
「お茶淹れてくるからその辺かけてて」
「あ、ああ」
その後ろ姿は、いつも見るゴスロリのような黒と白と赤で構成されたものとは違う物だった。
「お待たせ。キッチンからも視線感じてたけど、どうかした?」
「いや、違う格好してるんだなと。特にロープの中身…どこかのJKかと思ったぜ」
「えー?」
まさに魔法使い、魔女。
そう思わせる裾が長く袖もひらひら長い焦げ茶色のローブ。
裾にも同じ系統の色レースがついているが、今やトレードマークといってもおかしくない真っ赤なリボンが後ろを飾る。
席につくためかそんなローブを脱ぎ去るディーヴァの、中に着ている物こそどこかの学校の制服スタイルだった。
レース付きでダークグリーンの格子模様ミニスカートに、真っ白なシャツブラウス。そしてまたも真っ赤なリボンタイが結ばれている。リボンタイの真ん中には、ダンテのアミュレットと似た色の赤いストーンアクセサリー。
これを制服と言わずしてなんと言おうか。
そして長い髪は下の方でゆる~くデカいリボンでひとまとめ、である。
ゆるすぎてまとめる意味があるのだろうかと、 思わせるレベル。
不思議な香りのお茶をカップにそそぎいれ、茶菓子と共にダンテに差し出したディーヴァがクスクス笑う。
「だってここあたしの家だよ?普段から魔女の正装してどうするのさ」
「あれ正装なのかよ」
「普段ほんとになんもない時はゴスロリに近い服着てる。好きなんだよね、フリフリ。あと着てるのはエプロンとかかな…。
あ、今着てるこれ部屋着ね」
部屋着でローブ着用とは、逆に動きづらそうである。だが、農業や薬草を育て、たまにそれらを使った薬も精製しているとなると、それでいいのかもしれない。
「つーか、それ部屋着ってことは、そのまま寝るのか?もしやそれをパジャマに……」
「そんな時もあるねー」
うん、ラクな格好して机に向かったりすると、大抵寝落ちする。
だから、この格好で眠ってしまうときはこれまでなんどもあった。…気がする。
「アッでもこのまま寝るときは下に見せパン履くから中身が見えるなんてこと絶対ないのでご心配なく!」
「おお…オレが言わんとしていた事を先に言われちまった。さっすが魔女だぜ…」
「魔女関係ナッシング」
変な想像と変な発言は断固阻止。
とはいえ、夏場なんかだとネグリジェとベビードールで寝る時も多かったりする。
変態センサーが目まぐるしく反応の一途を辿っているので、ダンテ相手にそれを言うことはないのだが。
