邂逅
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ぐうううぉぉぉぉゴゴゴゴゴドドドドド!!
ホッとしたと同時、腹の底からものすごい音が響いた。
腹の虫だ。
「えっ何今の」
「腹の虫」
「わあー…ダンテさんたらずいぶんおっきなお腹の虫を飼ってるんだねぇ」
「あー、『さん』はつけなくていい。
ディーヴァ、悪いんだがこの通り腹が減っててな、なんか食うもん持ってねぇ?」
とはいえ、ディーヴァの持ち物といえば。
「ディーヴァが持ってるのは救急箱、か。さっきのケーキはお前食べちまってたし…持ってるわけねぇよな。悪い、忘れてくれ」
「えっと、食べ物あるケド……?」
ないと思っていたら持っている、だと。
ディーヴァは持っていた救急箱をぱかりと開け、中に黄色の粒が入った茶色で長い『栗羊羹』を取り出した。
なぜそこに。
「クリヨゥカン……チョイスが渋いな」
「今日は和菓子食べたくなっちゃって。
いつもはマカロンとかクッキー、焼き菓子詰めてるんだけど、だから今日は栗羊羹しかないんだ、ごめんね」
「おいさっき食べてたショートケーキはなんだ。あと、栗羊羹の下にスティック状の黄色いの見えたぞ。それチーズケーキだろ」
「食べたショートケーキの事はもう忘れた。喉元過ぎれば食べた事も忘れる…ってやつ。
チーズケーキは神格化されしあたしのベストスイーツなのでお気になさらず」
「あっそう」
まあ、空腹が満たされるのであればそれでいい。
栗羊羹を受け取ったダンテは、包み紙を剥くと、豪快に丸かじりした。
羊羹好きは一度やってみたい食べ方である。
「!!
なっなんだこれは…!」
食べた瞬間ダンテは仰け反り、そして体勢を直してから目ん玉ひん剥いて羊羹を見つめた。
「あっ実はその栗羊羹、あたしが作ったやつなんだ。今年の栗はよく出来てね…。でも、気に入らなかったならごめん」
「いや、そういうんじゃねぇ!
なんだよこの宇宙的美味さは………っ!」
「宇宙とはまたスケールの大きい」
「口の中広がるビックバン!!
丸ごと入った一粒栗が、まるで生まれたての銀河系の太陽のようだ!!!!
もっとくれ!!」
ガツガツ!バリムシャー!!
普通はお茶が必要だろうに、ダンテには必要なかったようだ。
一気に食べきり、次を要求する。
「え、いいけど…」
その後も持っている限りの羊羹をダンテに渡し、ディーヴァはダンテが羊羹に夢中になっている間に水場から飲み水を汲む。
そしてダンテに飲ませる、を繰り返した。
糖尿になりそうだが、羊羹はダンテの胃にすべて収まった。だが、腹は満たされど美味い食への渇望は止まることを知らない。
ダンテはさらに次のスイーツを要求した。
「もっと!もっとないのかぁ!!オレへの礼だと思ってなんか寄越せ!!」
ガッと肩を掴み、血走った目でダンテがディーヴァに詰め寄る。もちろん、ディーヴァは恐怖で固まった。
「ヒィ!?
今あげたのでお礼になったよね?十分過ぎるとおもう…!」
「まだそのチーズケーキがあるだろう…!?」
「言ったよね。チーズケーキはあげられないって!」
断固拒否。絶対死守。チーズケーキが一番好きだというのは本当らしい。
ダンテから見えないように救急箱を抱え、守っている。
しかし、これ以上もらえないというのであれば…。
「ほうほうほう…ならお前を食っちまおうかな」
ギラリ、ダンテの目とそして牙が鋭く光る。
ディーヴァは青ざめ、石化したように固まってしまった。
二度目に会ったあの時は魔獣姿だったし、食べられる!と勘違いされそうなものだった。
が、四度目である今の方…ヒトガタの時の方がディーヴァには怖かったようだ。
ダンテがディーヴァの頬に指を伸ばし、腰に手を回すとディーヴァの時は突如動き出す。
「ピャッ!
たっ、食べないでください!
あたし焼いて食べても美味しくない!美味しくないから…!」
「やれやれ…メシは諦めるか。
運命の相手食うわきゃねーだろ」
「あっ、食べない?よかったぁ……」
そう、食べない。…食事としては。
「まあ、性的にお前のこと食べたいけど、それはまたあとでにしてやる」
「性、的…。後にも先にもない方向でよろしく…」
「いや、絶対やる。
だいたいオレみたいに階級たっけェ上にカッピョイイ魔獣の寵愛うけるなんてすっげぇことなんだぞ。
誇れ!!!!」
「えええ誇れって……」
なんて自己中心的な考え方だろうとも思うが、階級の高さはプライドの高さに比例する。そこに個人差は発生するので、ダンテだけともいうが。
「とりあえずこの体勢、イイな。
誇りついでに、いっちょシとくか?」
「するって、何を」
今、ダンテがディーヴァを抱き寄せている体勢だというのをおわかりいただけているだろうか…。
ディーヴァ本人は、ダンテが尖らせた唇を近づけてきて初めて気がついた。
「んーーー」
「え、ちょ、ちょっと待っ…!」
顔を逸らしても、ダンテの胸板を押してもダメ。
そしてディーヴァがとった行動は。
「ふっ、不純異性交友だめぇーーー!ほぁた★」
「ゴフッ!?」
ドォォォォン!!
ディーヴァがいつのまにか持っていたのは、魔法の杖。
その杖から飛び出したキラキラお星様の光線が、ダンテに直撃し、空の彼方へと吹っ飛ばした。
なんと、ディーヴァが魔女だったとは。
これまで使わなかったのが驚きなぐらいだ。外套の裏から杖を出したのが、ダンテから一瞬だけ見えた。
放物線を描いて飛びながら、ダンテは驚愕の事実をかみしめる。
ディーヴァが魔女だというのは今の魔法で気がついたし、言われないと気がつかないくらい、魔力の匂いが薄くてわからなかった。
ディーヴァの持つ雌の甘い匂い…色香にばかりに気を取られていた。
恋をするというのは、時に鼻まで馬鹿にする。
ということは、あの森に住む魔女とはイコールディーヴァということで。
つまり、ダンテが散々引っかかった魔獣避けの罠の数々…あれもディーヴァの仕掛けた物だということ。コイツ、なかなかやりおる…。
攻撃特化型ではいなかろうが、そういった方面には魔女としてやり手とも言える。
「『アイツ』から逃げるためにもいい物件だな」
恋したのはまぎれもない事実だが、それとは別にディーヴァのそばにいたい理由ができた。
今仮契約をしている最後の魔女。彼女はものすごいソクバッキーだと説明したと思う。
あの魔女からトンズラこくため…おっと言い方。仮契約解除のためにも、新たな強い契約を結ぶ相手としてディーヴァの近くにいよう。
それは理にかなっているだろうと思うのだ。
ならはやくディーヴァとも仮契約まで結んでしまおう。オレは決めた今決めた。
***
そこから紆余曲折あり、ディーヴァの住む森…魔獣対策の罠だらけの広大な森へ住み着いたダンテは、偶然を装いディーヴァと更に逢瀬を交わしはじめた。
実際の距離は心の距離と比例し、徐々に物理的にも精神的にも距離の近くなっていった2人は、やがて仮の契約をするまでに至るわけである。
これが、ダンテとディーヴァが邂逅した、その時の話だった。
「ちなみに比較的初期の頃にストサン食わせてもらったんだぜ。
あのストサン、いつもの長編ディーヴァの作るヤツと同じくこだわり抜いててうめぇのなんのって!
そこも自分がディーヴァに惚れる要因でしたね」
そう、結局のところダンテは心だけでなく、胃袋をもがっつり掴まれたのだ。
ホッとしたと同時、腹の底からものすごい音が響いた。
腹の虫だ。
「えっ何今の」
「腹の虫」
「わあー…ダンテさんたらずいぶんおっきなお腹の虫を飼ってるんだねぇ」
「あー、『さん』はつけなくていい。
ディーヴァ、悪いんだがこの通り腹が減っててな、なんか食うもん持ってねぇ?」
とはいえ、ディーヴァの持ち物といえば。
「ディーヴァが持ってるのは救急箱、か。さっきのケーキはお前食べちまってたし…持ってるわけねぇよな。悪い、忘れてくれ」
「えっと、食べ物あるケド……?」
ないと思っていたら持っている、だと。
ディーヴァは持っていた救急箱をぱかりと開け、中に黄色の粒が入った茶色で長い『栗羊羹』を取り出した。
なぜそこに。
「クリヨゥカン……チョイスが渋いな」
「今日は和菓子食べたくなっちゃって。
いつもはマカロンとかクッキー、焼き菓子詰めてるんだけど、だから今日は栗羊羹しかないんだ、ごめんね」
「おいさっき食べてたショートケーキはなんだ。あと、栗羊羹の下にスティック状の黄色いの見えたぞ。それチーズケーキだろ」
「食べたショートケーキの事はもう忘れた。喉元過ぎれば食べた事も忘れる…ってやつ。
チーズケーキは神格化されしあたしのベストスイーツなのでお気になさらず」
「あっそう」
まあ、空腹が満たされるのであればそれでいい。
栗羊羹を受け取ったダンテは、包み紙を剥くと、豪快に丸かじりした。
羊羹好きは一度やってみたい食べ方である。
「!!
なっなんだこれは…!」
食べた瞬間ダンテは仰け反り、そして体勢を直してから目ん玉ひん剥いて羊羹を見つめた。
「あっ実はその栗羊羹、あたしが作ったやつなんだ。今年の栗はよく出来てね…。でも、気に入らなかったならごめん」
「いや、そういうんじゃねぇ!
なんだよこの宇宙的美味さは………っ!」
「宇宙とはまたスケールの大きい」
「口の中広がるビックバン!!
丸ごと入った一粒栗が、まるで生まれたての銀河系の太陽のようだ!!!!
もっとくれ!!」
ガツガツ!バリムシャー!!
普通はお茶が必要だろうに、ダンテには必要なかったようだ。
一気に食べきり、次を要求する。
「え、いいけど…」
その後も持っている限りの羊羹をダンテに渡し、ディーヴァはダンテが羊羹に夢中になっている間に水場から飲み水を汲む。
そしてダンテに飲ませる、を繰り返した。
糖尿になりそうだが、羊羹はダンテの胃にすべて収まった。だが、腹は満たされど美味い食への渇望は止まることを知らない。
ダンテはさらに次のスイーツを要求した。
「もっと!もっとないのかぁ!!オレへの礼だと思ってなんか寄越せ!!」
ガッと肩を掴み、血走った目でダンテがディーヴァに詰め寄る。もちろん、ディーヴァは恐怖で固まった。
「ヒィ!?
今あげたのでお礼になったよね?十分過ぎるとおもう…!」
「まだそのチーズケーキがあるだろう…!?」
「言ったよね。チーズケーキはあげられないって!」
断固拒否。絶対死守。チーズケーキが一番好きだというのは本当らしい。
ダンテから見えないように救急箱を抱え、守っている。
しかし、これ以上もらえないというのであれば…。
「ほうほうほう…ならお前を食っちまおうかな」
ギラリ、ダンテの目とそして牙が鋭く光る。
ディーヴァは青ざめ、石化したように固まってしまった。
二度目に会ったあの時は魔獣姿だったし、食べられる!と勘違いされそうなものだった。
が、四度目である今の方…ヒトガタの時の方がディーヴァには怖かったようだ。
ダンテがディーヴァの頬に指を伸ばし、腰に手を回すとディーヴァの時は突如動き出す。
「ピャッ!
たっ、食べないでください!
あたし焼いて食べても美味しくない!美味しくないから…!」
「やれやれ…メシは諦めるか。
運命の相手食うわきゃねーだろ」
「あっ、食べない?よかったぁ……」
そう、食べない。…食事としては。
「まあ、性的にお前のこと食べたいけど、それはまたあとでにしてやる」
「性、的…。後にも先にもない方向でよろしく…」
「いや、絶対やる。
だいたいオレみたいに階級たっけェ上にカッピョイイ魔獣の寵愛うけるなんてすっげぇことなんだぞ。
誇れ!!!!」
「えええ誇れって……」
なんて自己中心的な考え方だろうとも思うが、階級の高さはプライドの高さに比例する。そこに個人差は発生するので、ダンテだけともいうが。
「とりあえずこの体勢、イイな。
誇りついでに、いっちょシとくか?」
「するって、何を」
今、ダンテがディーヴァを抱き寄せている体勢だというのをおわかりいただけているだろうか…。
ディーヴァ本人は、ダンテが尖らせた唇を近づけてきて初めて気がついた。
「んーーー」
「え、ちょ、ちょっと待っ…!」
顔を逸らしても、ダンテの胸板を押してもダメ。
そしてディーヴァがとった行動は。
「ふっ、不純異性交友だめぇーーー!ほぁた★」
「ゴフッ!?」
ドォォォォン!!
ディーヴァがいつのまにか持っていたのは、魔法の杖。
その杖から飛び出したキラキラお星様の光線が、ダンテに直撃し、空の彼方へと吹っ飛ばした。
なんと、ディーヴァが魔女だったとは。
これまで使わなかったのが驚きなぐらいだ。外套の裏から杖を出したのが、ダンテから一瞬だけ見えた。
放物線を描いて飛びながら、ダンテは驚愕の事実をかみしめる。
ディーヴァが魔女だというのは今の魔法で気がついたし、言われないと気がつかないくらい、魔力の匂いが薄くてわからなかった。
ディーヴァの持つ雌の甘い匂い…色香にばかりに気を取られていた。
恋をするというのは、時に鼻まで馬鹿にする。
ということは、あの森に住む魔女とはイコールディーヴァということで。
つまり、ダンテが散々引っかかった魔獣避けの罠の数々…あれもディーヴァの仕掛けた物だということ。コイツ、なかなかやりおる…。
攻撃特化型ではいなかろうが、そういった方面には魔女としてやり手とも言える。
「『アイツ』から逃げるためにもいい物件だな」
恋したのはまぎれもない事実だが、それとは別にディーヴァのそばにいたい理由ができた。
今仮契約をしている最後の魔女。彼女はものすごいソクバッキーだと説明したと思う。
あの魔女からトンズラこくため…おっと言い方。仮契約解除のためにも、新たな強い契約を結ぶ相手としてディーヴァの近くにいよう。
それは理にかなっているだろうと思うのだ。
ならはやくディーヴァとも仮契約まで結んでしまおう。オレは決めた今決めた。
***
そこから紆余曲折あり、ディーヴァの住む森…魔獣対策の罠だらけの広大な森へ住み着いたダンテは、偶然を装いディーヴァと更に逢瀬を交わしはじめた。
実際の距離は心の距離と比例し、徐々に物理的にも精神的にも距離の近くなっていった2人は、やがて仮の契約をするまでに至るわけである。
これが、ダンテとディーヴァが邂逅した、その時の話だった。
「ちなみに比較的初期の頃にストサン食わせてもらったんだぜ。
あのストサン、いつもの長編ディーヴァの作るヤツと同じくこだわり抜いててうめぇのなんのって!
そこも自分がディーヴァに惚れる要因でしたね」
そう、結局のところダンテは心だけでなく、胃袋をもがっつり掴まれたのだ。