邂逅
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
きゅっと目をつぶったまま、震える唇で少女は答える。
「……で、でもっ、魔獣さんは、あたしを食べないし殺さないと思います……っ!」
「その心は?」
「だって、食べるならもう食べてる。殺すならもう殺してる…」
「魔獣嫌いなくせに買い被りすぎだな。オレがそんな優しい魔獣に見えるって?
この後に食っちまう気かもしれないぜ」
綺麗な緑色が見えないのが残念で、ベロンと再び首筋を舐める。ちょうど頸動脈の辺りで、噛まれれば一貫の終わりとなるそこ。
恐怖に少女は目を開けた。
「ひいぃ!
そっ、そうです!あたしは魔獣嫌いです!
貴方も大嫌いな魔獣さんだけど、他の危険な魔獣さんよりもちょっとだけ優しい…そう見えます…。
でも、やっぱり怖い!!
…ので、早く解放してほしいかな……なんて」
「ふーん」
目の前に燃え盛る焔の獅子の顔面だ。
なるべく直視は避けていたが、さすがに至近距離、それも接吻を交わせそうなほどの近さに、泡を吹きそうな思い。
でも、焔獅子…どこかで見たことがあるような……?
脳内メモリという思考の海に身を投げ入れてしまえば、少女は無意識の内にダンテの鬣に手を伸ばしていた。ほんわりと温かで、優しい指通り。
「…アレに似てる……」
「アレ?」
「日本の大叫喚地獄は双逼悩処の炎の牙の獅子…」
「誰がベニヒカリだ。誰が」
「何も名前まで出せとは言ってないです」
下手に名前まで出すと地獄の第一補佐官が来そうである。こちら側を管轄しているのはEU地獄なので問題はなさそうだが。
「で、だ。オレの鬣は気持ちいいか?」
「えっ!……あっ」
言われてはじめて、驚いたチンアナゴのように、ダンテの鬣からぴゅっと手を引っ込める。
せっかく気持ちよく梳かれていたのに、少し名残惜しい。言わなきゃよかった。
ダンテはそのままの手では満足に掴めぬ体を恨み、少女に伸ばした指先から魔獣化を解いていく。
少女の体の上、ヒトガタに戻ったダンテが薄く笑み、男らしい指先を少女の体に伸ばした。
この体勢、まるで青い晴天の下行う男女の交わり。なんだか興奮する。
しかしヒトの形を取ることでダンテとの間に隙間を認めると、その腕を払ってそこから脱する少女。が、もちろん、それもいとも簡単にダンテによって地へと縫いとめられてしまった。
「ひゃう!」
「おっとー?逃げるのはよくない。
オレは獅子…ネコだからな。獲物に逃げられちゃあ、跡を追って捕まえたくなるってもんだ」
グッと覆いかぶさり、体をぴとりと合わせる。
ヒトガタ時のダンテの服装は、例によって上半身を惜しげも無く晒す前を開けた赤いコート。中には何も着ていない。
前の時よりも至近距離で見るシックスパックが目に眩しい。
それが衣服の上からとは言え、圧迫するように少女の体に押し付けられる。
元は魔獣という恐怖もあるが、それ以上に恥ずかしさがあり、少女はタジタジで顔を背けた。
「兎を狩るにも全力を出すのも獅子だが、餌が弱るまで遊ぶのも獅子。お分かり?」
「うう、分かりたくない……。なんでこんなこと…。あたしもしかして何か魔獣さんの気に障るような事しましたかぁ…?」
「ぜーんぜん。
からかうのが楽しい・だ・け」
「おっふ…なんてメーワクな…」
玩具で遊び悪戯するかのように、少女の顔を掴んで上向かせるダンテは、至極楽しそうで何より。
まさに獲物を嬲る肉食獣だった。
「あとオレがお前にキョーミ出した理由それ」
「ふぇ?それとは…?」
指先を一直線、辿った先にあるのは。
……少女の体、胸だった。
「オレお前の容姿とかパーツけっこう好み。
特に…そうだなぁ。その美味そうな胸とか柔らかそうな太ももとか。
胸でも何でも大きいことはいいことだ。って、刀の神が言ってたぜ?」
それ人も刀ものやつ。刀の付喪神のやつ。
返す暇もなく、ダンテの手は少女の胸を無遠慮に触れかけた。
「ぴいっ!」
「ブフォ!?な、何しやがる……っ」
危険でも察知したかそれと同時に、少女は赤ずきんそっくりな真っ赤な外套をばふっと翻して被り、スケベなダンテの魔の手を逃れる。
「何って、防いだんですうううう!」
ダンテの体の下で、頭のフードまでもすっぽり被るその姿はまるで赤い蓑虫。
いや、顔…それも前髪が持ち上がって額がぺろんとこんにちはしているその状態は。
「お前はキューピーちゃんか!」
「たーらこーたーらこーたっぷりたーらこー。
どうです?萎えましたよね?さあ早くあたしから退くのです!退いてください」
でこっぱちをなぞを見せつけられては勃つ物も勃たなかろう。そう踏んだのだろうが残念だな。
猫の額のように小さなデコを見せられてもかわいいと思いこそすれ、萎える事は何もない。
そうまでして魔獣、男から逃げたいというのは加虐心を、そして雄の本能を刺激する。俄然燃えてきた。
精神的に燃えてきたなら、物理的にも燃えるぜバーニング。
ダンテは指先に全てを燃やし尽くす炎を灯し、獲物を覆う外殻…赤い外套にそれを移した。ぷす、と水にでも触れたかのように一瞬で消えたが。
「にゃろう…丈夫な布だな。オレの炎で燃えねぇとは……」
目を瞑って堪えるばかりで、叫び声をあげなかった少女も気になる。そして、その外套をよくよく見てみれば。
「って、この赤い外套の生地…これ、もしかして、いやもしかしなくても火浣布か?」
「ヒェァハィ!!」
ガッシリと肩を掴むダンテ。
まじまじと顔を覗き込んできて、少女は心臓が飛び出しそうになった。
「よ、よく火浣布なんて知ってますね……コレはまさにそれですぅぅ!」
「ああ、そりゃオレも火の魔獣の端くれだからな。火浣布や火鼠くらいは知ってるに決まってるだろ?」
火浣布とは、最西の火の山に生えた不尽木の中に棲む火鼠、その皮の毛を紡いで作る希少価値の高い魔法のアイテムだ。
火に投げ入れても燃えず、その布で作る衣装は着た者…特にフードを頭にかぶりし者を炎から守る。
その為、煉獄の最中でも火傷することなく歩みを進めることが出来る。…ただし涼しさは同かというとそれは別だが。
元は白いその布だが少女の着ている物は赤い。ということは、火浣布の中でも特別なもの。
そんな代物なわけで価値は総じて高く、一介の人間が持つのはおかしい。
「…ただの少女が着る物にしては高価だよな?これはどうした?」
確か煉獄の覇者たる魔獣が、最近火鼠の乱獲が目立つとこぼしているらしい。
まさか目の前の少女が関係するとは思えないが、一応念のため。
「どうしたもこうしたも…おうちにあった赤い布を仕立て屋をしてる魔女さんに洋服として仕立ててもらった、それだけです…。そ、それが、何か……?」
「へー」
目を見ればわかる。
そのメロン味な瞳は、嘘を言っていない。というか、そのメロン味はぜひ舐めてみたい。さすがに本人にそんな事言えないが。
魔法のアイテムは人間にとって先祖代々ずっと使い続けるような大事な物だ。家にあったということはそういうこと。
「その外套、大事にしろよ?
火事ン中飛び込んだとしても、それさえ被れば何事もなく助かるくらいには火に強いからな。
オレの炎からだって身を守れるぜ?」
「……はあ」
ダンテの炎は煉獄の覇者とタイマン張れるほどの温度だから、完全にとはいかないが、しっかり被れば熱さもあまり感じずに終わるはずだ。
「遊んじまって悪かったな。
確かにオレは人を食べないし殺さない。お前の言う優しい魔獣の部類に入る。
けど、そういう魔獣は少ない。オレが特別変わってるだけで危険なやつの方が多いんだ。奴らに心許すな。
………気ィつけろよ」
たっぷり遊んでしまったが、もう会うこともそうないだろうと思う。
少々残念でならないが。
優しく言い聞かせてから、そっと頭に手を伸ばせば拒否されることなく受け入れられた。
おとなしく撫でられる少女は、ダンテを一通り見つめ。
「よーく知ってます」
と返した。
「……で、でもっ、魔獣さんは、あたしを食べないし殺さないと思います……っ!」
「その心は?」
「だって、食べるならもう食べてる。殺すならもう殺してる…」
「魔獣嫌いなくせに買い被りすぎだな。オレがそんな優しい魔獣に見えるって?
この後に食っちまう気かもしれないぜ」
綺麗な緑色が見えないのが残念で、ベロンと再び首筋を舐める。ちょうど頸動脈の辺りで、噛まれれば一貫の終わりとなるそこ。
恐怖に少女は目を開けた。
「ひいぃ!
そっ、そうです!あたしは魔獣嫌いです!
貴方も大嫌いな魔獣さんだけど、他の危険な魔獣さんよりもちょっとだけ優しい…そう見えます…。
でも、やっぱり怖い!!
…ので、早く解放してほしいかな……なんて」
「ふーん」
目の前に燃え盛る焔の獅子の顔面だ。
なるべく直視は避けていたが、さすがに至近距離、それも接吻を交わせそうなほどの近さに、泡を吹きそうな思い。
でも、焔獅子…どこかで見たことがあるような……?
脳内メモリという思考の海に身を投げ入れてしまえば、少女は無意識の内にダンテの鬣に手を伸ばしていた。ほんわりと温かで、優しい指通り。
「…アレに似てる……」
「アレ?」
「日本の大叫喚地獄は双逼悩処の炎の牙の獅子…」
「誰がベニヒカリだ。誰が」
「何も名前まで出せとは言ってないです」
下手に名前まで出すと地獄の第一補佐官が来そうである。こちら側を管轄しているのはEU地獄なので問題はなさそうだが。
「で、だ。オレの鬣は気持ちいいか?」
「えっ!……あっ」
言われてはじめて、驚いたチンアナゴのように、ダンテの鬣からぴゅっと手を引っ込める。
せっかく気持ちよく梳かれていたのに、少し名残惜しい。言わなきゃよかった。
ダンテはそのままの手では満足に掴めぬ体を恨み、少女に伸ばした指先から魔獣化を解いていく。
少女の体の上、ヒトガタに戻ったダンテが薄く笑み、男らしい指先を少女の体に伸ばした。
この体勢、まるで青い晴天の下行う男女の交わり。なんだか興奮する。
しかしヒトの形を取ることでダンテとの間に隙間を認めると、その腕を払ってそこから脱する少女。が、もちろん、それもいとも簡単にダンテによって地へと縫いとめられてしまった。
「ひゃう!」
「おっとー?逃げるのはよくない。
オレは獅子…ネコだからな。獲物に逃げられちゃあ、跡を追って捕まえたくなるってもんだ」
グッと覆いかぶさり、体をぴとりと合わせる。
ヒトガタ時のダンテの服装は、例によって上半身を惜しげも無く晒す前を開けた赤いコート。中には何も着ていない。
前の時よりも至近距離で見るシックスパックが目に眩しい。
それが衣服の上からとは言え、圧迫するように少女の体に押し付けられる。
元は魔獣という恐怖もあるが、それ以上に恥ずかしさがあり、少女はタジタジで顔を背けた。
「兎を狩るにも全力を出すのも獅子だが、餌が弱るまで遊ぶのも獅子。お分かり?」
「うう、分かりたくない……。なんでこんなこと…。あたしもしかして何か魔獣さんの気に障るような事しましたかぁ…?」
「ぜーんぜん。
からかうのが楽しい・だ・け」
「おっふ…なんてメーワクな…」
玩具で遊び悪戯するかのように、少女の顔を掴んで上向かせるダンテは、至極楽しそうで何より。
まさに獲物を嬲る肉食獣だった。
「あとオレがお前にキョーミ出した理由それ」
「ふぇ?それとは…?」
指先を一直線、辿った先にあるのは。
……少女の体、胸だった。
「オレお前の容姿とかパーツけっこう好み。
特に…そうだなぁ。その美味そうな胸とか柔らかそうな太ももとか。
胸でも何でも大きいことはいいことだ。って、刀の神が言ってたぜ?」
それ人も刀ものやつ。刀の付喪神のやつ。
返す暇もなく、ダンテの手は少女の胸を無遠慮に触れかけた。
「ぴいっ!」
「ブフォ!?な、何しやがる……っ」
危険でも察知したかそれと同時に、少女は赤ずきんそっくりな真っ赤な外套をばふっと翻して被り、スケベなダンテの魔の手を逃れる。
「何って、防いだんですうううう!」
ダンテの体の下で、頭のフードまでもすっぽり被るその姿はまるで赤い蓑虫。
いや、顔…それも前髪が持ち上がって額がぺろんとこんにちはしているその状態は。
「お前はキューピーちゃんか!」
「たーらこーたーらこーたっぷりたーらこー。
どうです?萎えましたよね?さあ早くあたしから退くのです!退いてください」
でこっぱちをなぞを見せつけられては勃つ物も勃たなかろう。そう踏んだのだろうが残念だな。
猫の額のように小さなデコを見せられてもかわいいと思いこそすれ、萎える事は何もない。
そうまでして魔獣、男から逃げたいというのは加虐心を、そして雄の本能を刺激する。俄然燃えてきた。
精神的に燃えてきたなら、物理的にも燃えるぜバーニング。
ダンテは指先に全てを燃やし尽くす炎を灯し、獲物を覆う外殻…赤い外套にそれを移した。ぷす、と水にでも触れたかのように一瞬で消えたが。
「にゃろう…丈夫な布だな。オレの炎で燃えねぇとは……」
目を瞑って堪えるばかりで、叫び声をあげなかった少女も気になる。そして、その外套をよくよく見てみれば。
「って、この赤い外套の生地…これ、もしかして、いやもしかしなくても火浣布か?」
「ヒェァハィ!!」
ガッシリと肩を掴むダンテ。
まじまじと顔を覗き込んできて、少女は心臓が飛び出しそうになった。
「よ、よく火浣布なんて知ってますね……コレはまさにそれですぅぅ!」
「ああ、そりゃオレも火の魔獣の端くれだからな。火浣布や火鼠くらいは知ってるに決まってるだろ?」
火浣布とは、最西の火の山に生えた不尽木の中に棲む火鼠、その皮の毛を紡いで作る希少価値の高い魔法のアイテムだ。
火に投げ入れても燃えず、その布で作る衣装は着た者…特にフードを頭にかぶりし者を炎から守る。
その為、煉獄の最中でも火傷することなく歩みを進めることが出来る。…ただし涼しさは同かというとそれは別だが。
元は白いその布だが少女の着ている物は赤い。ということは、火浣布の中でも特別なもの。
そんな代物なわけで価値は総じて高く、一介の人間が持つのはおかしい。
「…ただの少女が着る物にしては高価だよな?これはどうした?」
確か煉獄の覇者たる魔獣が、最近火鼠の乱獲が目立つとこぼしているらしい。
まさか目の前の少女が関係するとは思えないが、一応念のため。
「どうしたもこうしたも…おうちにあった赤い布を仕立て屋をしてる魔女さんに洋服として仕立ててもらった、それだけです…。そ、それが、何か……?」
「へー」
目を見ればわかる。
そのメロン味な瞳は、嘘を言っていない。というか、そのメロン味はぜひ舐めてみたい。さすがに本人にそんな事言えないが。
魔法のアイテムは人間にとって先祖代々ずっと使い続けるような大事な物だ。家にあったということはそういうこと。
「その外套、大事にしろよ?
火事ン中飛び込んだとしても、それさえ被れば何事もなく助かるくらいには火に強いからな。
オレの炎からだって身を守れるぜ?」
「……はあ」
ダンテの炎は煉獄の覇者とタイマン張れるほどの温度だから、完全にとはいかないが、しっかり被れば熱さもあまり感じずに終わるはずだ。
「遊んじまって悪かったな。
確かにオレは人を食べないし殺さない。お前の言う優しい魔獣の部類に入る。
けど、そういう魔獣は少ない。オレが特別変わってるだけで危険なやつの方が多いんだ。奴らに心許すな。
………気ィつけろよ」
たっぷり遊んでしまったが、もう会うこともそうないだろうと思う。
少々残念でならないが。
優しく言い聞かせてから、そっと頭に手を伸ばせば拒否されることなく受け入れられた。
おとなしく撫でられる少女は、ダンテを一通り見つめ。
「よーく知ってます」
と返した。
