御神籤 八枚目
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激しい銃撃や剣撃の音を避け、手を引かれて誘われるままに丘の上の小屋の傍。
真っ黒でまあるいテーブルにはいつの間にしたのか既にお茶と焼きリンゴが並べられていた。
と、そんなテーブルの端、ちょこんと座る見慣れた影。
「あれ、悪魔さん?」
「ゃア!魔ぉア魔!ぉデもお血ャぃえぃイ?」
「好きになさい。
貴女も好きに座って。」
「あ…はい。」
お茶会に参加したいという悪魔に素っ気なく返した魔女は空いた席を指すと用意された中で一番大きな椅子にと腰掛けた。
ぎこちなく返事をしたディーヴァは一番近くにあった椅子にちょこんと座る。
それを確認した魔女は再び空を指先でなぞるとディーヴァの前には血のように赤い紅茶と美味しそうなカラメル色になった焼きリンゴが整然と並んだ。
「どうぞ、召し上がって。」
「は、はい…。」
「ィあダキあーゥ!」
嬉しそうに自分よりも大きな焼きリンゴに悪魔を横目にディーヴァは思いがけず、”はい”と返事をしたことを後悔していた。
紅茶もリンゴも出してきたのは魔女、悪魔である。
これは果たして本当に食していいものであるのかないのか…と悩んでいるとそんなことなどお見通しなのか頬杖をついていた魔女が口を開いた。
「そんなに身構えなくていいわよ。
紅茶はただのハイビスカスティー、リンゴは魔界のものだけど人間や天使に害があるなんて生まれてこの方聞いた事もないわ。」
「そう…ですか。」
「そんなに信じられないなら、あそこで吊るされてるので試してみる?」
「め、滅相もないです!!いただきますっ!」
それでも疑うディーヴァに魔女は突然悪戯っぽく笑うと視線を木に吊るされたままの逢夏に投げる。
この魔女なら気を失ったままの逢夏の口にリンゴを詰めかねない。
もし紅茶やリンゴの中に毒があったとして、毒よりもまず先に窒息させてしまうんじゃないだろうか。
そっちの方が心配になったディーヴァは意を決して用意されていたフォークでリンゴを一切れ、口にと運び…
「ぁむ!
……んぅ?」
「どう?」
口の中広がる甘酸っぱさに首をひねった。
同じく首を傾げる魔女は不敵に笑ってディーヴァを見守る…と。
「おいひいれす!すっごく!!すっごくおいしい!!」
「そう、良かったわ。
好きなだけ食べていきなさい。
リンゴなんていくらでも出してあげるから。」
「はい!」
幸せそうな笑顔に満足そうに返る声。
ここは魔界で、遠くから二つの怒号が飛び交うのが嘘かのようにこの空間だけはほんわかとした空気で満たされていた。
もぐもぐと口いっぱいにリンゴを頬張るディーヴァを眺めながら、魔女は一つため息を吐いた。
「貴女ってほんと可愛いわ、……食べちゃいたいくらい。」
「ふぇ!?」
「なんて嘘よ。
それくらいその服が似合ってるって話。
まさに天使って感じ。」
「そ、そうですか…?」
リンゴに伸ばしたフォークを止めて、ぎこちなく小首を傾げるディーヴァはそっと自らの姿を見、そして目の前の魔女にと視線を映す。
「魔女さんも…魔女さんって感じでその、いいとおもいます…よ?」
革のような滑らかで体のラインを強調するようなタイトなライダースーツ…ぽい魔女の格好を一目見たディーヴァは頬を赤くして背ける。
その背けた理由を知るのか、魔女はざっくりと開いた胸元からかろうじて隠れている胸をわざと零さんばかりに寄せるとディーヴァにずいと詰め寄った。
「え、えと…。」
「ふふっ、変な子。
女同士なんだから気にしなくていいでしょう?」
「き、気にします!
だってそのっ、ダンテ達と戦ってたときも…その、見えそうでしたし!
魔女さんも女性なら自分の体は大切にしなきゃっ!!」
背中は出てるし、胸だってほとんど出てるし、白い足もスリットからまる見えだし!
隠れててもぴったり肌に張り付くような質感の服だから隠れているようでそうでないし!
「確かに魔女さんらしい格好ですけどっ!
でも、こんなの女性としてだめですっ!」
「…………。」
「あっ…!あたしったら、そ…その!聞かなかった事に!」
恥ずかしさのあまり、思わず説教してしまった訳なのだが。
本来これは非常に不味いんじゃないだろうか。
陽気で優し気な魔女のようだが、遥かに年下、若輩者に説教などされれば逆鱗に触れるどころの問題ではないような気がする。
今更思い至っても遅い気もするが…。
ディーヴァはすぐさま言葉を訂正しようと慌てふためく。
が、ディーヴァの努力とは裏腹に言われた当の本人はキョトンと目を丸くしてエメラルド色の目を眺めていたと思うと…
「あははっ!
そうね、確かに貴女の言う通りだわ。」
「ふぇ…?」
「でもね、今の私は所詮悪魔なの。
悪魔は人を誘惑してなんぼの生き物なのよ?
こういう姿も大切ってわけ…お分かりいただけた?」
「は、はぁ…。」
魔女は怒りもせずに一頻り笑うと落ち着いたトーンで話した。
声音は静かだが紅い目は楽し気な光を失っておらず、これが怒りを隠す演技でもないということがはっきりと分かる。
"助かった?"
ほっと胸を撫で下ろすディーヴァ。
その額に魔女は赤いマニキュアで彩られた爪先を伸ばして軽く弾くと屈託なく声を漏らしながら、突然の事に驚き、仰け反るディーヴァに笑いかけた。
「本当に楽しくて面白くて優しい子。
私、そんなディーヴァちゃんのこと、大好きよ。」
「ひゃっ!
だ、大好きって言われても、困ります…。
って、…あれ?
魔女さん、今なんて…」
何気ない魔女の言葉。
しかしふと感じた違和感にディーヴァが問おうとする………丁度その時だった。
「はっ、てめぇの本気ってのはその程度かよ、ネロ!」
「そういうお前はさっきからちょこまか逃げてばかりじゃねぇか!
…まぁ?正面切ってやり合う度胸もないんじゃしょうがねぇか!」
「んだと?ふざけた事言ってんじゃねぇよ!
てめぇを完璧にぶっつぶす為に頃合い見計らってやってんだよ!んなこともわかんねぇのか、このくそガキ!」
「アンタが頃合い見計らってるだぁ?
そんな頭があった事に驚きだぜ!」
罵倒の言葉がディーヴァの声をかき消すように響く、そして間髪入れずに大きなため息も。
大げんかの2人組に一度奪われていた視線を映せば、あきれ顔の魔女が得物を手に立ち上がったところだった。
「ここで待ってて。
そろそろあの馬鹿達を止めてくる。」
「あ、ま…まって!
今はだめだよ!!ねぇってば!!!」
必死に制止するディーヴァが手を伸ばす。
しかしその手をするりと避けるように魔女は更にヒートアップする2人の方へ。
あっという間に丘の上に取り残された天使1人と悪魔1匹。
悪魔の方は未だに焼きリンゴを美味しそうに頬張る…と、そんな悪魔を突如、天使の手が鷲掴んだ。
「ぷぎゆぅ!?
天ィ、ぁ二ぅる!!?」
「3人を止めなきゃっ!
悪魔さん、いこっ!」
言うが早いか丘を駆け下りるディーヴァ。
その先ではもうもうと赤茶けた砂煙が舞っていた。
真っ黒でまあるいテーブルにはいつの間にしたのか既にお茶と焼きリンゴが並べられていた。
と、そんなテーブルの端、ちょこんと座る見慣れた影。
「あれ、悪魔さん?」
「ゃア!魔ぉア魔!ぉデもお血ャぃえぃイ?」
「好きになさい。
貴女も好きに座って。」
「あ…はい。」
お茶会に参加したいという悪魔に素っ気なく返した魔女は空いた席を指すと用意された中で一番大きな椅子にと腰掛けた。
ぎこちなく返事をしたディーヴァは一番近くにあった椅子にちょこんと座る。
それを確認した魔女は再び空を指先でなぞるとディーヴァの前には血のように赤い紅茶と美味しそうなカラメル色になった焼きリンゴが整然と並んだ。
「どうぞ、召し上がって。」
「は、はい…。」
「ィあダキあーゥ!」
嬉しそうに自分よりも大きな焼きリンゴに悪魔を横目にディーヴァは思いがけず、”はい”と返事をしたことを後悔していた。
紅茶もリンゴも出してきたのは魔女、悪魔である。
これは果たして本当に食していいものであるのかないのか…と悩んでいるとそんなことなどお見通しなのか頬杖をついていた魔女が口を開いた。
「そんなに身構えなくていいわよ。
紅茶はただのハイビスカスティー、リンゴは魔界のものだけど人間や天使に害があるなんて生まれてこの方聞いた事もないわ。」
「そう…ですか。」
「そんなに信じられないなら、あそこで吊るされてるので試してみる?」
「め、滅相もないです!!いただきますっ!」
それでも疑うディーヴァに魔女は突然悪戯っぽく笑うと視線を木に吊るされたままの逢夏に投げる。
この魔女なら気を失ったままの逢夏の口にリンゴを詰めかねない。
もし紅茶やリンゴの中に毒があったとして、毒よりもまず先に窒息させてしまうんじゃないだろうか。
そっちの方が心配になったディーヴァは意を決して用意されていたフォークでリンゴを一切れ、口にと運び…
「ぁむ!
……んぅ?」
「どう?」
口の中広がる甘酸っぱさに首をひねった。
同じく首を傾げる魔女は不敵に笑ってディーヴァを見守る…と。
「おいひいれす!すっごく!!すっごくおいしい!!」
「そう、良かったわ。
好きなだけ食べていきなさい。
リンゴなんていくらでも出してあげるから。」
「はい!」
幸せそうな笑顔に満足そうに返る声。
ここは魔界で、遠くから二つの怒号が飛び交うのが嘘かのようにこの空間だけはほんわかとした空気で満たされていた。
もぐもぐと口いっぱいにリンゴを頬張るディーヴァを眺めながら、魔女は一つため息を吐いた。
「貴女ってほんと可愛いわ、……食べちゃいたいくらい。」
「ふぇ!?」
「なんて嘘よ。
それくらいその服が似合ってるって話。
まさに天使って感じ。」
「そ、そうですか…?」
リンゴに伸ばしたフォークを止めて、ぎこちなく小首を傾げるディーヴァはそっと自らの姿を見、そして目の前の魔女にと視線を映す。
「魔女さんも…魔女さんって感じでその、いいとおもいます…よ?」
革のような滑らかで体のラインを強調するようなタイトなライダースーツ…ぽい魔女の格好を一目見たディーヴァは頬を赤くして背ける。
その背けた理由を知るのか、魔女はざっくりと開いた胸元からかろうじて隠れている胸をわざと零さんばかりに寄せるとディーヴァにずいと詰め寄った。
「え、えと…。」
「ふふっ、変な子。
女同士なんだから気にしなくていいでしょう?」
「き、気にします!
だってそのっ、ダンテ達と戦ってたときも…その、見えそうでしたし!
魔女さんも女性なら自分の体は大切にしなきゃっ!!」
背中は出てるし、胸だってほとんど出てるし、白い足もスリットからまる見えだし!
隠れててもぴったり肌に張り付くような質感の服だから隠れているようでそうでないし!
「確かに魔女さんらしい格好ですけどっ!
でも、こんなの女性としてだめですっ!」
「…………。」
「あっ…!あたしったら、そ…その!聞かなかった事に!」
恥ずかしさのあまり、思わず説教してしまった訳なのだが。
本来これは非常に不味いんじゃないだろうか。
陽気で優し気な魔女のようだが、遥かに年下、若輩者に説教などされれば逆鱗に触れるどころの問題ではないような気がする。
今更思い至っても遅い気もするが…。
ディーヴァはすぐさま言葉を訂正しようと慌てふためく。
が、ディーヴァの努力とは裏腹に言われた当の本人はキョトンと目を丸くしてエメラルド色の目を眺めていたと思うと…
「あははっ!
そうね、確かに貴女の言う通りだわ。」
「ふぇ…?」
「でもね、今の私は所詮悪魔なの。
悪魔は人を誘惑してなんぼの生き物なのよ?
こういう姿も大切ってわけ…お分かりいただけた?」
「は、はぁ…。」
魔女は怒りもせずに一頻り笑うと落ち着いたトーンで話した。
声音は静かだが紅い目は楽し気な光を失っておらず、これが怒りを隠す演技でもないということがはっきりと分かる。
"助かった?"
ほっと胸を撫で下ろすディーヴァ。
その額に魔女は赤いマニキュアで彩られた爪先を伸ばして軽く弾くと屈託なく声を漏らしながら、突然の事に驚き、仰け反るディーヴァに笑いかけた。
「本当に楽しくて面白くて優しい子。
私、そんなディーヴァちゃんのこと、大好きよ。」
「ひゃっ!
だ、大好きって言われても、困ります…。
って、…あれ?
魔女さん、今なんて…」
何気ない魔女の言葉。
しかしふと感じた違和感にディーヴァが問おうとする………丁度その時だった。
「はっ、てめぇの本気ってのはその程度かよ、ネロ!」
「そういうお前はさっきからちょこまか逃げてばかりじゃねぇか!
…まぁ?正面切ってやり合う度胸もないんじゃしょうがねぇか!」
「んだと?ふざけた事言ってんじゃねぇよ!
てめぇを完璧にぶっつぶす為に頃合い見計らってやってんだよ!んなこともわかんねぇのか、このくそガキ!」
「アンタが頃合い見計らってるだぁ?
そんな頭があった事に驚きだぜ!」
罵倒の言葉がディーヴァの声をかき消すように響く、そして間髪入れずに大きなため息も。
大げんかの2人組に一度奪われていた視線を映せば、あきれ顔の魔女が得物を手に立ち上がったところだった。
「ここで待ってて。
そろそろあの馬鹿達を止めてくる。」
「あ、ま…まって!
今はだめだよ!!ねぇってば!!!」
必死に制止するディーヴァが手を伸ばす。
しかしその手をするりと避けるように魔女は更にヒートアップする2人の方へ。
あっという間に丘の上に取り残された天使1人と悪魔1匹。
悪魔の方は未だに焼きリンゴを美味しそうに頬張る…と、そんな悪魔を突如、天使の手が鷲掴んだ。
「ぷぎゆぅ!?
天ィ、ぁ二ぅる!!?」
「3人を止めなきゃっ!
悪魔さん、いこっ!」
言うが早いか丘を駆け下りるディーヴァ。
その先ではもうもうと赤茶けた砂煙が舞っていた。