御神籤 七枚目
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さて、出口と言えそうな扉はなかったが、洞窟の壁の薄い場所を切り裂いて(つまり悪魔の腹を裂いてということになるが)一行が出たところはというと……。
「うわ、キレー!」
元いたビーチだった。
ある程度時間が経っていたからか、その光景は美しいサンセットタイムである。
赤い夕日が水平線に落ちて行き、浜辺のヤシの木や岩礁が影になっていく景色……とても幻想的でロマンチックだ。
「ネロー、綺麗だね~」
「ああ、さっきまでの地獄から一変、心が穏やかになるな」
「ディーヴァ、見てみろ、確かに綺麗だな」
「うん、綺麗……とっても……」
ロマンチックだとは思うが、ディーヴァの耳にも目にも正常な音と景色はもう、入ってこなかった。
「ダンテ、……ごめ、ちょっともう、具合悪、ぃ…………」
白い砂浜の上、ディーヴァは崩れるようにして倒れこんでしまった。
その意識はないというより混濁し、熱を発して朦朧としているようだった。
「ちょ、ディーヴァ!?おい、ディーヴァ!!」
「え?ど、どうしたのディーヴァちゃん!!
……すごい熱!」
「おい逢夏、熱があるのに、ディーヴァのやつ全く汗かいてないぜ」
「……あ、水飲んでないから熱中症!!」
“水飲んでないから”その言葉が頭の中を反芻する。
自分のせいだ……。
「おい、悪魔!!もうこの籤の内容終わりだろ!?早く元に戻せ!」
『ァ、あィサー!』
一刻を争うようなダンテの声に、悪魔も指ぱっちん1つで元いたネロと逢夏の自宅へと戻す。
一瞬にして戻ると、衣服ももともと着ていた物へ戻り、変わっているのはディーヴァが倒れているだけとなった。
もちろん、それを囲むネロ達の表情も一転して芳しくない。
「ひどい熱中症だね……はやく処置しないと……。
ネロ、スポーツドリンクと保冷剤とタオルをお願い」
「ああ、今用意するところだ」
「ダンテ、ディーヴァちゃん抱えてベッドに運ぶから手伝って!」
「だったらオレ1人で運……」
「馬鹿!頭揺らしたら困るから一緒に運んでって言ってるの!」
「お、おう……」
ベッドに運ばれたディーヴァは、腋の下や首などにタオルを巻いた保冷剤を当てられ、少し顔の火照りがひいた。
つらそうな顔がたった少しの処置で穏やかになっていった。
「ディーヴァちゃん、聞こえる?」
「ぅ、ん……逢夏……?」
「そう、逢夏だよ。吐き気は……なさそうだね。
さ、ゆっくりでいいから水分摂って。ちゃんと全部飲むんだよ?
そしたらしばらく休んでね……」
「ぁりがとぅ……」
ディーヴァの頭をひと撫でした逢夏。
この時ほど、逢夏に感謝した事はなかったかもしれない。
言い過ぎじゃあない、聖母に見えた。
だって、オレはほとんど見てるしかできなかった。
テキパキとディーヴァの治療をしてくれる逢夏がいなかったらと思うとゾッとする。
「ディーヴァちゃんの体は普通の人間だもの。無理するとこうなっちゃうのは当たり前だよね」
「逢夏も普通の人間だろ?」
「私はなろうと思えば悪魔になれるから。
基本的にネロが許せば、だけど」
「今回みたいな場合に限るぞ」
「ほらね。
なるべく悪魔になって欲しくないってのが私の旦那様の気持ちらしいですー」
「当たり前だろ」
「後ろにいたんだなネロ」
「ずっと居たよ、お前がディーヴァの事考えすぎて背後に気を回してなかっただけだろ」
あとはダンテに任せる、また明日。そう言ってネロと逢夏はその場から離れた。
この場にはディーヴァがゆっくり水分を摂る音の他には何も聞こえない。
飲みづらそうな体勢の頭をそっと支えてやることくらいしか、してやれることはなかった。
「ありがとうダンテ、もう飲み終えたしだいじょぶ」
「……ごめん、オレのせいだよな」
倒れた時に比べればマシだが、随分疲れた表情のディーヴァを見てると懺悔の念にかられる。
ディーヴァは大きくため息を吐き出してダンテに手招きした。
「ダンテ、あたし怒ってないよ」
ぐいっ。
ベッドの端に来たダンテを引っ張り、その頭を抱えて胸に引き寄せる。
いつもなら喜ばしいはずの行為だが、今のダンテは素直に喜べず、頭の上からディーヴァが言い聞かせるように言葉を紡ぐのを聞いていた。
「ダンテはもうちょっと人間の体が柔だってこと知っておいたほうがいいかもね。
人間はしぶとい生き物で簡単に死ぬもんじゃないなんて結構言われてる。
でもやっぱりちょっとした事で死んじゃう」
「ああ……」
「ダンテは半分悪魔だからその辺の匙加減、まだそこまでわかんないことも多いのかもしれない。
あたしは天使の血は流れてても『人間の体』だから風邪が悪化するだけで肺炎になって死んじゃうこともあるし、熱中症がひどくなったら水分摂ってももう手遅れになっちゃうかもしれない。
怪我したら怪我自体が癒えても、感染症で死んじゃうかもしれない。
人間の体ってそう考えると怖いね、気を付けないといつ死んじゃうかわかんないもん」
「そうだな、ちょっとディーヴァの病気とか怪我とか甘く見てたかもしれない。
ディーヴァ……肝に銘じておくよ」
「うん…。ありがとう」
ようやくダンテの頭を解放したディーヴァと、ダンテの瞳がかち合う。
ようやく笑顔が見れた、そんな気がする。
「とまぁ、色々言ったけど、結局あたしは貴方の隣にいたい。
生きてる時はもちろん、死ぬ時も!
だから……今日はちょっと疲れちゃったし、まだ体調も不安だから…、一緒に寝てくれる?」
「そういう誘いは喜んで受けるよ」
逢夏とネロにも心配かけちゃったし、明日は元気に起きないとなぁ……。
ダンテの腕に包まれながら、ディーヴァはぼんやりとそう考え、夢の中に落ちていくのでした。
「うわ、キレー!」
元いたビーチだった。
ある程度時間が経っていたからか、その光景は美しいサンセットタイムである。
赤い夕日が水平線に落ちて行き、浜辺のヤシの木や岩礁が影になっていく景色……とても幻想的でロマンチックだ。
「ネロー、綺麗だね~」
「ああ、さっきまでの地獄から一変、心が穏やかになるな」
「ディーヴァ、見てみろ、確かに綺麗だな」
「うん、綺麗……とっても……」
ロマンチックだとは思うが、ディーヴァの耳にも目にも正常な音と景色はもう、入ってこなかった。
「ダンテ、……ごめ、ちょっともう、具合悪、ぃ…………」
白い砂浜の上、ディーヴァは崩れるようにして倒れこんでしまった。
その意識はないというより混濁し、熱を発して朦朧としているようだった。
「ちょ、ディーヴァ!?おい、ディーヴァ!!」
「え?ど、どうしたのディーヴァちゃん!!
……すごい熱!」
「おい逢夏、熱があるのに、ディーヴァのやつ全く汗かいてないぜ」
「……あ、水飲んでないから熱中症!!」
“水飲んでないから”その言葉が頭の中を反芻する。
自分のせいだ……。
「おい、悪魔!!もうこの籤の内容終わりだろ!?早く元に戻せ!」
『ァ、あィサー!』
一刻を争うようなダンテの声に、悪魔も指ぱっちん1つで元いたネロと逢夏の自宅へと戻す。
一瞬にして戻ると、衣服ももともと着ていた物へ戻り、変わっているのはディーヴァが倒れているだけとなった。
もちろん、それを囲むネロ達の表情も一転して芳しくない。
「ひどい熱中症だね……はやく処置しないと……。
ネロ、スポーツドリンクと保冷剤とタオルをお願い」
「ああ、今用意するところだ」
「ダンテ、ディーヴァちゃん抱えてベッドに運ぶから手伝って!」
「だったらオレ1人で運……」
「馬鹿!頭揺らしたら困るから一緒に運んでって言ってるの!」
「お、おう……」
ベッドに運ばれたディーヴァは、腋の下や首などにタオルを巻いた保冷剤を当てられ、少し顔の火照りがひいた。
つらそうな顔がたった少しの処置で穏やかになっていった。
「ディーヴァちゃん、聞こえる?」
「ぅ、ん……逢夏……?」
「そう、逢夏だよ。吐き気は……なさそうだね。
さ、ゆっくりでいいから水分摂って。ちゃんと全部飲むんだよ?
そしたらしばらく休んでね……」
「ぁりがとぅ……」
ディーヴァの頭をひと撫でした逢夏。
この時ほど、逢夏に感謝した事はなかったかもしれない。
言い過ぎじゃあない、聖母に見えた。
だって、オレはほとんど見てるしかできなかった。
テキパキとディーヴァの治療をしてくれる逢夏がいなかったらと思うとゾッとする。
「ディーヴァちゃんの体は普通の人間だもの。無理するとこうなっちゃうのは当たり前だよね」
「逢夏も普通の人間だろ?」
「私はなろうと思えば悪魔になれるから。
基本的にネロが許せば、だけど」
「今回みたいな場合に限るぞ」
「ほらね。
なるべく悪魔になって欲しくないってのが私の旦那様の気持ちらしいですー」
「当たり前だろ」
「後ろにいたんだなネロ」
「ずっと居たよ、お前がディーヴァの事考えすぎて背後に気を回してなかっただけだろ」
あとはダンテに任せる、また明日。そう言ってネロと逢夏はその場から離れた。
この場にはディーヴァがゆっくり水分を摂る音の他には何も聞こえない。
飲みづらそうな体勢の頭をそっと支えてやることくらいしか、してやれることはなかった。
「ありがとうダンテ、もう飲み終えたしだいじょぶ」
「……ごめん、オレのせいだよな」
倒れた時に比べればマシだが、随分疲れた表情のディーヴァを見てると懺悔の念にかられる。
ディーヴァは大きくため息を吐き出してダンテに手招きした。
「ダンテ、あたし怒ってないよ」
ぐいっ。
ベッドの端に来たダンテを引っ張り、その頭を抱えて胸に引き寄せる。
いつもなら喜ばしいはずの行為だが、今のダンテは素直に喜べず、頭の上からディーヴァが言い聞かせるように言葉を紡ぐのを聞いていた。
「ダンテはもうちょっと人間の体が柔だってこと知っておいたほうがいいかもね。
人間はしぶとい生き物で簡単に死ぬもんじゃないなんて結構言われてる。
でもやっぱりちょっとした事で死んじゃう」
「ああ……」
「ダンテは半分悪魔だからその辺の匙加減、まだそこまでわかんないことも多いのかもしれない。
あたしは天使の血は流れてても『人間の体』だから風邪が悪化するだけで肺炎になって死んじゃうこともあるし、熱中症がひどくなったら水分摂ってももう手遅れになっちゃうかもしれない。
怪我したら怪我自体が癒えても、感染症で死んじゃうかもしれない。
人間の体ってそう考えると怖いね、気を付けないといつ死んじゃうかわかんないもん」
「そうだな、ちょっとディーヴァの病気とか怪我とか甘く見てたかもしれない。
ディーヴァ……肝に銘じておくよ」
「うん…。ありがとう」
ようやくダンテの頭を解放したディーヴァと、ダンテの瞳がかち合う。
ようやく笑顔が見れた、そんな気がする。
「とまぁ、色々言ったけど、結局あたしは貴方の隣にいたい。
生きてる時はもちろん、死ぬ時も!
だから……今日はちょっと疲れちゃったし、まだ体調も不安だから…、一緒に寝てくれる?」
「そういう誘いは喜んで受けるよ」
逢夏とネロにも心配かけちゃったし、明日は元気に起きないとなぁ……。
ダンテの腕に包まれながら、ディーヴァはぼんやりとそう考え、夢の中に落ちていくのでした。