御神籤 十一枚目
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びゅうびゅう、どころではなく、ごうごう、でもない。
叩きつけるような吹雪だ。
吹雪がこんなに痛い物理攻撃になると、誰が思っただろう。
唯一肌が露出しているところ、つまり顔に当たるのは小石か何かのようで、当たった場所が赤くなるのが必須だった。
ダンテと逢夏、どちらも痛みにはそこそこ強いが、女性である逢夏の顔に傷を作るわけにはいかない。
そんなわけで先導するのは、自称フェミニストなダンテである。
「結構下ってきたよねぇ…。
なのにこの雪。下ってるのになんでこんな猛吹雪なのかしら」
「猛吹雪だけじゃなくて、顔が地味に痛い。ほんとに下ってるのか不安になるぜ」
すぐ治るとはいえ、ひっきりなしに雪のつぶてが美顔に直撃!
かわいそうに、ダンテの顔はところどころ赤くなっていた。
そんな状態だから、不安に思うのもわかる。
「それについては方位磁石ならぬ、ネロ位磁石でおおよそこっちのあたり!って出てますーぅ。ちゃんとお腹が教えてくれてますーぅ。
ダンテもそんな感じじゃないの?」
ネロ位磁石。
実際にそんなアイテムがあるわけでなく、逢夏の贄と主の関係性で、ある程度の方角を突き止めているだけだ。
「たしかにディーヴァの場所はこっちの方角っぽい…かな。
あいつらがロッジ付近にいないとしても、ディーヴァのあのスキーの腕前だ。
絶対こっちよりは下にいるから、オレ達は下ってるハズなんだ」
「うわ、遠回しにディーヴァちゃん下手って言ってる!恋人なのに!」
「あいつは運動音痴だからいいんだ。
つーか、逢夏の腹が教えてる方はただの腹の虫だろが」
「バレました?」
腹の虫が鳴く、という事は逢夏は空腹か。流石にかき氷じゃあ腹は膨れないもんなぁ。
……ディーヴァも腹、減ってんのかなあ、なんてディーヴァに意識を飛ばすダンテ。
ディーヴァは運動音痴な上、燃費の悪い腹っぺらし。
ダンテは自身の恋人の事をよく理解していた。
そうして歩いていれば…。
「ちょっと待って」
「なんだ?靴紐でもほどけたか?」
「違ぁぁう!このスノーブーツ靴紐ないですからぁ!
ダンテの轍が一瞬で消えるほどの吹雪よ?もう少しスピードゆるめて」
そう言われて逢夏が来るまで、その場で立ち止まるダンテ。
猛吹雪の中の雪の上を歩くにしては、確かに少々、歩くスピードが速かったかもしれない。
「それにここまですごい吹雪に見舞われてる時ってさ、あんまり歩きすぎるのもよくないんだよね…。
体力を余計に消耗するっていうやつ?」
「…少し休むか。オレは今んとこまだ平気だが」
「ダンテはね。体力おばけだし」
「ディーヴァからするとそうだから否定はしねぇよ」
「もー。またディーヴァちゃんで比べるんだから。比べやすいから気持ちわかるけど。
…あっちまで行ったらでいいから休ませて」
追いついてきた逢夏の顔には疲労の色が滲み始めている。
息をふうと吐き出しながら向こうを指してきた先を見ると、今歩いているただの雪原よりは休めそうな場所が遠く、吹雪の隙間から見えた。
「了解。……よっと」
ダンテは逢夏の腹に手を回し、荷物か何かのように軽々と抱え上げる。
ネロとは違うその感覚に、逢夏は驚き、そして警戒したか体をビクッと強張らせた。
「はあ?何抱えてんのよ!?」
「日本人は我慢強いし、顔に出さないって言うけど、さすがに疲れてきてるのバレバレだぜ。
逢夏自身、体力が切れかかってるの心配だろ?」
「ま。まあ…少しは心配になってきてるけど……」
逢夏はわたわたと暴れたが、ダンテの言葉にびたりと止まる。
「服は断られたが、明らかに疲れてる奴を放っておけないだろ。遭難時はその疲労が命取り、ってな。
おとなしく抱えられとけ…利子は高いけど」
「利子つくんかーい」
運んでもらう以上、ジッとする事にした逢夏だったが、利子の有無に突っ込みのチョップだけは忘れずに入れた。
「こうなってくると、ほんとディーヴァも心配だな…」
吹雪が自分の顔に当たるのをガードだけしてもらい、ダンテは抱えた逢夏に聞かせるようにぼそりと呟く。
「うーん。ネロがついてるけど…。このクジやる前は体調悪かったし、私より明らかに体力なさそうだしで、早く終わらせてあげないと本気で危ない…かも」
「そうなんだよ、そこなんだよな……。
あぁ~…!ディーヴァは平気とか言ってたけど、クジひくの明日にしときゃよかった…!」
「今更言っても仕方ない事言わない。過去は変えられない。それに明日ひいたらもっと酷いのでてたかもよ?」
過去を悔やみ、後悔する気持ちは誰にでもある。でも、そこばかり気にして前を見ないのはいけない事だ。
逢夏はダンテの脇を落とされぬ程度に弱く小突いた。
「そう、だな。
……せめて最初からロッジ付近にいてくれればいいんだが」
「…遭難するクジでもあるみたいだし、ロッジ付近にはいないと思う」
「ああ、離れてても初心者コースかそこらか。
それでも、寒くて震えてるだろうな。
…おぉぉぉ!ディーヴァかわいそうにっ!ほんと心配だ……!!待ってろ、お前の愛しいダンテが行ってやるからなっ!そして体と胸をすみっずみまで意味深にあっためてやる!!」
ダンテは嘆き、そして力強く、いざ目指すはディーヴァ(の胸)!と決意した。
その際、抱えられた逢夏はダンテの動きに合わせてぐるんぐるんと揺らされる事となる。
「ちょ、揺らすなアホンテ!
だいたいダンテはほんとそういうのばっかりね!」
「あったりまえだろ。ディーヴァの体は人間なんだぞ。
逢夏こそテメェの旦那が心配じゃねーのかよ。ネロがいくら頑丈でも、悪魔の血の濃度考えてみろよ!」
ダンテよ…人間の体を持つディーヴァはこのクジのせいで疲労困憊しているだろうに、意味深に温める気か。
逢夏は少しそう思ったが、ダンテが言うネロの悪魔の血の濃度について考える事にした。
逢夏の体は本当は人間だが、悪魔の姿時で考えると、血の濃さは100%だ。半魔のダンテは50%である。
ディーヴァ?もちろん0%だ。
そしてネロはクォーター、つまり25%の悪魔の血の濃さ。
血だけで考えると、強さは逢夏→ダンテ→ネロ→→→越えられない壁→→→ディーヴァ、となっている。
「うっ…!私もネロの事心配になってきた……!」
「なあひとついいか?その越えられない壁の表現必要なのか??」
休憩もそうだが、会話したせいでお互いパートナーの事がすごく不安になってしまったようだ。
そして、最終コーナー。カーブ状に雪の塊を回り込めば、逢夏が言っていた休めそうな場所に入る。
雪に足を取られ、逢夏の茶々を受け、そしてようやくたどり着くまでに、かなり時間をロスした気がする。
逢夏に倒れられるよりはよっぽど良かったが。
「ん?」
そこで第一村人発見!…とはいかなくとも、逢夏が何やら発見した様子で、ダンテの腕から抜け出してそこへ向かう。
「ちょっと待て。お前、まだ疲れてるんだろーが!」
「んーん。
ダンテが運んでくれたおかげでけっこう元気になったからご心配なく!」
「回復早いな!?」
「でっしょー。
…で、これは~、なにこれかわいい!」
そして歩み寄った逢夏が見ていたものを、ダンテも横から覗き込む。
そこには、真っ白な雪の中、これまた真っ白なふわふわもこもこの丸い塊があった。あった…いや、動いている。
シロクマのようだ。
「それ…クマのこどもか何かか?」
「たぶんそだねー。ここが雪山とはいえ、なんだってこんなところにいるんでしょ!」
「知らん。
ただ言える事は、ここが北極の山なのか、エベレストなのか、はたまた魔界の一角なのかわかんねぇが、どこに何がいてもおかしくねぇってこった」
「あの悪魔が貸切にしてるんだから、どーせ魔界の辺境地とかリゾート地よ」
キューキュー鳴く白い毛玉をわしゃわしゃと撫でまわして逢夏は言う。
「魔界にリゾート地なんてあんのかよ…」
もはやなんでもありである。
わしゃわしゃから、ごりゅごりゅ言いそうなほど、逢夏は撫でている。
その度、鳴き声が出るのだが、これがまた逢夏は癒されるようだ。ずっと続けている。
だが、相手は子グマ。ならば母グマは近くにいる可能性が高い。
「なあ…やたら切なそうに鳴いてるが、そいつの母グマが見たら……怒らね?」
「さあ?わかんないけど、この子グマお目々が8つあるの。かわいいー!」
逢夏の陰でよく見えなかったが、なんと目が8つあるご様子。これは…。
「おいー!?
クマっていうか悪魔だろ!どこがかわいいねん!目が8つとか、蜘蛛か!!」
その時、すぐ近くから唸り声が響いた。
叩きつけるような吹雪だ。
吹雪がこんなに痛い物理攻撃になると、誰が思っただろう。
唯一肌が露出しているところ、つまり顔に当たるのは小石か何かのようで、当たった場所が赤くなるのが必須だった。
ダンテと逢夏、どちらも痛みにはそこそこ強いが、女性である逢夏の顔に傷を作るわけにはいかない。
そんなわけで先導するのは、自称フェミニストなダンテである。
「結構下ってきたよねぇ…。
なのにこの雪。下ってるのになんでこんな猛吹雪なのかしら」
「猛吹雪だけじゃなくて、顔が地味に痛い。ほんとに下ってるのか不安になるぜ」
すぐ治るとはいえ、ひっきりなしに雪のつぶてが美顔に直撃!
かわいそうに、ダンテの顔はところどころ赤くなっていた。
そんな状態だから、不安に思うのもわかる。
「それについては方位磁石ならぬ、ネロ位磁石でおおよそこっちのあたり!って出てますーぅ。ちゃんとお腹が教えてくれてますーぅ。
ダンテもそんな感じじゃないの?」
ネロ位磁石。
実際にそんなアイテムがあるわけでなく、逢夏の贄と主の関係性で、ある程度の方角を突き止めているだけだ。
「たしかにディーヴァの場所はこっちの方角っぽい…かな。
あいつらがロッジ付近にいないとしても、ディーヴァのあのスキーの腕前だ。
絶対こっちよりは下にいるから、オレ達は下ってるハズなんだ」
「うわ、遠回しにディーヴァちゃん下手って言ってる!恋人なのに!」
「あいつは運動音痴だからいいんだ。
つーか、逢夏の腹が教えてる方はただの腹の虫だろが」
「バレました?」
腹の虫が鳴く、という事は逢夏は空腹か。流石にかき氷じゃあ腹は膨れないもんなぁ。
……ディーヴァも腹、減ってんのかなあ、なんてディーヴァに意識を飛ばすダンテ。
ディーヴァは運動音痴な上、燃費の悪い腹っぺらし。
ダンテは自身の恋人の事をよく理解していた。
そうして歩いていれば…。
「ちょっと待って」
「なんだ?靴紐でもほどけたか?」
「違ぁぁう!このスノーブーツ靴紐ないですからぁ!
ダンテの轍が一瞬で消えるほどの吹雪よ?もう少しスピードゆるめて」
そう言われて逢夏が来るまで、その場で立ち止まるダンテ。
猛吹雪の中の雪の上を歩くにしては、確かに少々、歩くスピードが速かったかもしれない。
「それにここまですごい吹雪に見舞われてる時ってさ、あんまり歩きすぎるのもよくないんだよね…。
体力を余計に消耗するっていうやつ?」
「…少し休むか。オレは今んとこまだ平気だが」
「ダンテはね。体力おばけだし」
「ディーヴァからするとそうだから否定はしねぇよ」
「もー。またディーヴァちゃんで比べるんだから。比べやすいから気持ちわかるけど。
…あっちまで行ったらでいいから休ませて」
追いついてきた逢夏の顔には疲労の色が滲み始めている。
息をふうと吐き出しながら向こうを指してきた先を見ると、今歩いているただの雪原よりは休めそうな場所が遠く、吹雪の隙間から見えた。
「了解。……よっと」
ダンテは逢夏の腹に手を回し、荷物か何かのように軽々と抱え上げる。
ネロとは違うその感覚に、逢夏は驚き、そして警戒したか体をビクッと強張らせた。
「はあ?何抱えてんのよ!?」
「日本人は我慢強いし、顔に出さないって言うけど、さすがに疲れてきてるのバレバレだぜ。
逢夏自身、体力が切れかかってるの心配だろ?」
「ま。まあ…少しは心配になってきてるけど……」
逢夏はわたわたと暴れたが、ダンテの言葉にびたりと止まる。
「服は断られたが、明らかに疲れてる奴を放っておけないだろ。遭難時はその疲労が命取り、ってな。
おとなしく抱えられとけ…利子は高いけど」
「利子つくんかーい」
運んでもらう以上、ジッとする事にした逢夏だったが、利子の有無に突っ込みのチョップだけは忘れずに入れた。
「こうなってくると、ほんとディーヴァも心配だな…」
吹雪が自分の顔に当たるのをガードだけしてもらい、ダンテは抱えた逢夏に聞かせるようにぼそりと呟く。
「うーん。ネロがついてるけど…。このクジやる前は体調悪かったし、私より明らかに体力なさそうだしで、早く終わらせてあげないと本気で危ない…かも」
「そうなんだよ、そこなんだよな……。
あぁ~…!ディーヴァは平気とか言ってたけど、クジひくの明日にしときゃよかった…!」
「今更言っても仕方ない事言わない。過去は変えられない。それに明日ひいたらもっと酷いのでてたかもよ?」
過去を悔やみ、後悔する気持ちは誰にでもある。でも、そこばかり気にして前を見ないのはいけない事だ。
逢夏はダンテの脇を落とされぬ程度に弱く小突いた。
「そう、だな。
……せめて最初からロッジ付近にいてくれればいいんだが」
「…遭難するクジでもあるみたいだし、ロッジ付近にはいないと思う」
「ああ、離れてても初心者コースかそこらか。
それでも、寒くて震えてるだろうな。
…おぉぉぉ!ディーヴァかわいそうにっ!ほんと心配だ……!!待ってろ、お前の愛しいダンテが行ってやるからなっ!そして体と胸をすみっずみまで意味深にあっためてやる!!」
ダンテは嘆き、そして力強く、いざ目指すはディーヴァ(の胸)!と決意した。
その際、抱えられた逢夏はダンテの動きに合わせてぐるんぐるんと揺らされる事となる。
「ちょ、揺らすなアホンテ!
だいたいダンテはほんとそういうのばっかりね!」
「あったりまえだろ。ディーヴァの体は人間なんだぞ。
逢夏こそテメェの旦那が心配じゃねーのかよ。ネロがいくら頑丈でも、悪魔の血の濃度考えてみろよ!」
ダンテよ…人間の体を持つディーヴァはこのクジのせいで疲労困憊しているだろうに、意味深に温める気か。
逢夏は少しそう思ったが、ダンテが言うネロの悪魔の血の濃度について考える事にした。
逢夏の体は本当は人間だが、悪魔の姿時で考えると、血の濃さは100%だ。半魔のダンテは50%である。
ディーヴァ?もちろん0%だ。
そしてネロはクォーター、つまり25%の悪魔の血の濃さ。
血だけで考えると、強さは逢夏→ダンテ→ネロ→→→越えられない壁→→→ディーヴァ、となっている。
「うっ…!私もネロの事心配になってきた……!」
「なあひとついいか?その越えられない壁の表現必要なのか??」
休憩もそうだが、会話したせいでお互いパートナーの事がすごく不安になってしまったようだ。
そして、最終コーナー。カーブ状に雪の塊を回り込めば、逢夏が言っていた休めそうな場所に入る。
雪に足を取られ、逢夏の茶々を受け、そしてようやくたどり着くまでに、かなり時間をロスした気がする。
逢夏に倒れられるよりはよっぽど良かったが。
「ん?」
そこで第一村人発見!…とはいかなくとも、逢夏が何やら発見した様子で、ダンテの腕から抜け出してそこへ向かう。
「ちょっと待て。お前、まだ疲れてるんだろーが!」
「んーん。
ダンテが運んでくれたおかげでけっこう元気になったからご心配なく!」
「回復早いな!?」
「でっしょー。
…で、これは~、なにこれかわいい!」
そして歩み寄った逢夏が見ていたものを、ダンテも横から覗き込む。
そこには、真っ白な雪の中、これまた真っ白なふわふわもこもこの丸い塊があった。あった…いや、動いている。
シロクマのようだ。
「それ…クマのこどもか何かか?」
「たぶんそだねー。ここが雪山とはいえ、なんだってこんなところにいるんでしょ!」
「知らん。
ただ言える事は、ここが北極の山なのか、エベレストなのか、はたまた魔界の一角なのかわかんねぇが、どこに何がいてもおかしくねぇってこった」
「あの悪魔が貸切にしてるんだから、どーせ魔界の辺境地とかリゾート地よ」
キューキュー鳴く白い毛玉をわしゃわしゃと撫でまわして逢夏は言う。
「魔界にリゾート地なんてあんのかよ…」
もはやなんでもありである。
わしゃわしゃから、ごりゅごりゅ言いそうなほど、逢夏は撫でている。
その度、鳴き声が出るのだが、これがまた逢夏は癒されるようだ。ずっと続けている。
だが、相手は子グマ。ならば母グマは近くにいる可能性が高い。
「なあ…やたら切なそうに鳴いてるが、そいつの母グマが見たら……怒らね?」
「さあ?わかんないけど、この子グマお目々が8つあるの。かわいいー!」
逢夏の陰でよく見えなかったが、なんと目が8つあるご様子。これは…。
「おいー!?
クマっていうか悪魔だろ!どこがかわいいねん!目が8つとか、蜘蛛か!!」
その時、すぐ近くから唸り声が響いた。