ダイススロー 17回目
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「いってらっしゃい!」
「あぁ、いってくる。」
爪先立ちの逢夏を見て、すぐに膝を軽く折ったネロは頬にキスを受けた。
場所は夕日の眩しい玄関。
"恐ろしい体験"とはかけ離れた、いつもの幸せな一場面。
しかしネロにはこの後、これがどうなるのか予想がついていた。
『行くなよ…、逢夏を…一人に、…おいていくなっ!』
叫ぶ。
けれど、何故か自分は逢夏に笑顔を向け…出かけてしまう。
手を振り見送ってくれた逢夏を一人、家に残して。
そこで場面は急速に変化した。
夕暮れは暗闇へ。
背を向けたはずの玄関のドアを眼前にして…ノブを握る手が震えていた。
一度顔を上げて辺りを見回すが家には一切電気がついていない。
僅かな物音は…する。
が、決して生活感のある音ではない。
何より、鼻先を掠める血の匂い。
甘い甘い、独特の甘さを放つ…あの血の匂いがする。
いくら主とはいえ、これだけ強い血の香りの前に理性を保つ事は難しい。
ふらふらと、けれどなんとか理性を保ちながらドアを…開けた。
開けたすぐそこの壁には大きな傷があった。
上から下へとはしる、鋭いもので切り裂かれたような大きな亀裂。
そしてその下に
「シャ…、ティ…。」
白いはずのその毛皮を真っ黒に染めたシャティが横たわっていた。
ピクリとも動かない体を大きく引き裂く傷は壁のものと同じ。
分かっていても、混乱は止まない。
しかし、ネロの足はこの異常事態に機能を失いかけている思考を置き去りにし
勝手に悪魔の残したシャティの血による足跡を追った。
が、ギリギリの理性と気が動転している最中で覚束ないその歩みはぐにゃりと柔らかいものに阻まれる。
いとも容易くその柔らかいものに足は取られた。
横に体が崩れ、壁に当たるとずるずるもたれながら完全に腰を下ろした状態となる。
そんな状況の所為か、足元のそれははっきりと見てとれた。
白地に刻まれる青い茨の印、先の方にはきらりと銀色が光る。
まぎれもない、…そこにあったのは逢夏の左腕。
左腕、だけ。
「っ、逢夏!!?
逢夏!どこだ!返事をしろ!」
ネロは叫ぶように名前を呼ぶがそれに返答はない。
…その返答の代わりか、静かなリビングに"にちゃり…にちゃり…"と不気味な音が響く。
音の出所はキッチンとダイニングのさらに奥、プレールームの方から。
震える縺れる足で無理やり立ち、転げそうになりながらプレールームへとネロは向かう。
「逢夏!
っ……お前、は…。」
部屋の真ん中、足を崩した形で座らされている逢夏の大きく開いた黒い瞳と目があった。
そしてその後ろには男が一人。
逢夏を抱きしめる様に腕をまわし、黒髪を揺らして赤い瞳を細め、大きく抉られた首元に舌を這わせていた。
それはいつかの夢にも似た光景。
そうネロが気付いた通り。
次の瞬間には、その男と自分の場所が入れ替わっていた。
腕の中には全身血で濡れそぼり、冷たくなった逢夏。
顔を上げると黒い姿をした自分が赤い目を歪めて嗤う。
まるで
『今だってそうだろう?
お前は逢夏が欲しいんじゃない。
贄が欲しいんだ。』
とでもいう様に。
「…違う。
違う違うちがうちがウ、チがウチガウ!」
声を上げて否定しながらネロはただ抱きしめる。
いつか犯してしまいそうな過ちから目を背けるために。
「あぁ、いってくる。」
爪先立ちの逢夏を見て、すぐに膝を軽く折ったネロは頬にキスを受けた。
場所は夕日の眩しい玄関。
"恐ろしい体験"とはかけ離れた、いつもの幸せな一場面。
しかしネロにはこの後、これがどうなるのか予想がついていた。
『行くなよ…、逢夏を…一人に、…おいていくなっ!』
叫ぶ。
けれど、何故か自分は逢夏に笑顔を向け…出かけてしまう。
手を振り見送ってくれた逢夏を一人、家に残して。
そこで場面は急速に変化した。
夕暮れは暗闇へ。
背を向けたはずの玄関のドアを眼前にして…ノブを握る手が震えていた。
一度顔を上げて辺りを見回すが家には一切電気がついていない。
僅かな物音は…する。
が、決して生活感のある音ではない。
何より、鼻先を掠める血の匂い。
甘い甘い、独特の甘さを放つ…あの血の匂いがする。
いくら主とはいえ、これだけ強い血の香りの前に理性を保つ事は難しい。
ふらふらと、けれどなんとか理性を保ちながらドアを…開けた。
開けたすぐそこの壁には大きな傷があった。
上から下へとはしる、鋭いもので切り裂かれたような大きな亀裂。
そしてその下に
「シャ…、ティ…。」
白いはずのその毛皮を真っ黒に染めたシャティが横たわっていた。
ピクリとも動かない体を大きく引き裂く傷は壁のものと同じ。
分かっていても、混乱は止まない。
しかし、ネロの足はこの異常事態に機能を失いかけている思考を置き去りにし
勝手に悪魔の残したシャティの血による足跡を追った。
が、ギリギリの理性と気が動転している最中で覚束ないその歩みはぐにゃりと柔らかいものに阻まれる。
いとも容易くその柔らかいものに足は取られた。
横に体が崩れ、壁に当たるとずるずるもたれながら完全に腰を下ろした状態となる。
そんな状況の所為か、足元のそれははっきりと見てとれた。
白地に刻まれる青い茨の印、先の方にはきらりと銀色が光る。
まぎれもない、…そこにあったのは逢夏の左腕。
左腕、だけ。
「っ、逢夏!!?
逢夏!どこだ!返事をしろ!」
ネロは叫ぶように名前を呼ぶがそれに返答はない。
…その返答の代わりか、静かなリビングに"にちゃり…にちゃり…"と不気味な音が響く。
音の出所はキッチンとダイニングのさらに奥、プレールームの方から。
震える縺れる足で無理やり立ち、転げそうになりながらプレールームへとネロは向かう。
「逢夏!
っ……お前、は…。」
部屋の真ん中、足を崩した形で座らされている逢夏の大きく開いた黒い瞳と目があった。
そしてその後ろには男が一人。
逢夏を抱きしめる様に腕をまわし、黒髪を揺らして赤い瞳を細め、大きく抉られた首元に舌を這わせていた。
それはいつかの夢にも似た光景。
そうネロが気付いた通り。
次の瞬間には、その男と自分の場所が入れ替わっていた。
腕の中には全身血で濡れそぼり、冷たくなった逢夏。
顔を上げると黒い姿をした自分が赤い目を歪めて嗤う。
まるで
『今だってそうだろう?
お前は逢夏が欲しいんじゃない。
贄が欲しいんだ。』
とでもいう様に。
「…違う。
違う違うちがうちがウ、チがウチガウ!」
声を上げて否定しながらネロはただ抱きしめる。
いつか犯してしまいそうな過ちから目を背けるために。