ダイススロー 17回目
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
気がつくと暗闇で震えていた。
両膝を抱え込み、小さく丸くなって…ただひたすら怯え、声を殺して泣いていた。
どこで?
…クローゼットの中だ。
何年と過ぎた今でも夢見る忌まわしい光景と全く一緒なのだから、ダンテは調べずとも分かっていた。
下階からは悪魔が暴れまわる激しい物音が聞こえる。
そして響く、…絹を裂くような女性の声。
「母さん!?」
思わず声を上げた。
すぐさまクローゼットの戸に手を伸ばした。
戸は僅かに開き、隙間から微かな光がこぼれる。
しかしそれはすぐさま横から伸びてきた手によって再び暗闇と化した。
「バージル!?
母さんが、このままじゃ母さんが!」
「分かってる、そんなこと!
でも、仕方ないだろ………僕たちにはどうしようもないんだから。
…母さん、言ってたじゃないか…静かになるまで…ここにいるようにって。」
「でも!」
「でもじゃない!
静かにしろ…、母さんが言ってたように。
ここでじっとしてるんだ、……母さんが言ってた、ように。」
徐々に嗚咽交じりとなっていくバージルの声。
そんな兄の必死の説得にダンテは悔しげに涙を浮かべ押し黙った。
が、その直後である。
突然、ギシッ…と音を立ててクローゼットの戸がゆっくりと開けられた。
見上げると、赤くギョロリとした目をかち合った。
「ぁっ…あ…。」
「っ、ダンテ!」
竦んで動けない。
今の自分であれば取るに足らない雑魚と成り下がった悪魔を前に恐怖を感じ、竦んで動けないダンテ。
そんなダンテの手を…大きな声を上げて名を呼んだバージルがとった。
手を引かれ、駆け出し、悪魔の横をすり抜けてリビングを横切る。
…その時。
一瞬だけ視界に入った金色。
鮮やかな赤い服を中心に広がる赤黒い海。
その海に沈む、青白い手。
「―――っ!」
何度も何度も夢見た光景。
けれどまたも…声も出なかった。
-----------------------------------
そのすぐ後、視界が突然の光を得た様に白む。
気がつくと握られていた手は解放されていた。
そして解放されたのと反対の手には温かく小さな手。
こちらに笑顔を向けるディーヴァの白くたおやかな指先を握っていた。
「どうしたの、ダンテ?」
「い、いや…。
なんでも…ねぇよ。」
ディーヴァの笑みに安堵し、心の底から温かさを感じたダンテは苦笑して答えた。
二人並んで歩くそこは人の通りの多い賑わう道。
「あのね、ダンテ。
今、とってもおもしろい映画が上映されてるんだって。
…見に、行かない?」
「なんでそんな不安そうに聞くんだ?
もちろんいいにきまってんだろ、今からでも見に行くか!」
「うんっ!」
尽きない会話と最中に漏れる笑い。
先ほどの体験が嘘のように幸せだった。
幸せ、だった。
「…ディーヴァ?」
突然、握っていたディーヴァの手が冷たくなった。
しっかりと握り返してきていた指先から力が抜け、手がするりと離れていく。
振り向くと
「ディーヴァ!?
―――――っ!!!」
母と同じように赤黒い海に沈むディーヴァ。
周りには淡い緑色に発光する羽が散乱し、けれどその背には翼は無く、ただ華奢な体を大きく抉るような傷があるだけ。
ようやく気付き、見渡した辺りは廃墟と化し、神経を逆撫でる悪魔の下卑たな嗤い声が響くのみ。
が、そんな状況にも関わらず
「う、そだ…。」
ダンテは崩れ落ちるようにその場、ディーヴァの前に膝をついた。
悪魔への怒りはあった。
しかしそれ以上に今ダンテを支配するのは例えようのない喪失感と悲しみ。
そして、あの頃と変わらない…守ることすらできなかった悔しさ。
まるで力不足な己を嘲笑うような唐突すぎるディーヴァの死という体験の前に、ただただダンテは涙を流し、放心するだけだった。
両膝を抱え込み、小さく丸くなって…ただひたすら怯え、声を殺して泣いていた。
どこで?
…クローゼットの中だ。
何年と過ぎた今でも夢見る忌まわしい光景と全く一緒なのだから、ダンテは調べずとも分かっていた。
下階からは悪魔が暴れまわる激しい物音が聞こえる。
そして響く、…絹を裂くような女性の声。
「母さん!?」
思わず声を上げた。
すぐさまクローゼットの戸に手を伸ばした。
戸は僅かに開き、隙間から微かな光がこぼれる。
しかしそれはすぐさま横から伸びてきた手によって再び暗闇と化した。
「バージル!?
母さんが、このままじゃ母さんが!」
「分かってる、そんなこと!
でも、仕方ないだろ………僕たちにはどうしようもないんだから。
…母さん、言ってたじゃないか…静かになるまで…ここにいるようにって。」
「でも!」
「でもじゃない!
静かにしろ…、母さんが言ってたように。
ここでじっとしてるんだ、……母さんが言ってた、ように。」
徐々に嗚咽交じりとなっていくバージルの声。
そんな兄の必死の説得にダンテは悔しげに涙を浮かべ押し黙った。
が、その直後である。
突然、ギシッ…と音を立ててクローゼットの戸がゆっくりと開けられた。
見上げると、赤くギョロリとした目をかち合った。
「ぁっ…あ…。」
「っ、ダンテ!」
竦んで動けない。
今の自分であれば取るに足らない雑魚と成り下がった悪魔を前に恐怖を感じ、竦んで動けないダンテ。
そんなダンテの手を…大きな声を上げて名を呼んだバージルがとった。
手を引かれ、駆け出し、悪魔の横をすり抜けてリビングを横切る。
…その時。
一瞬だけ視界に入った金色。
鮮やかな赤い服を中心に広がる赤黒い海。
その海に沈む、青白い手。
「―――っ!」
何度も何度も夢見た光景。
けれどまたも…声も出なかった。
-----------------------------------
そのすぐ後、視界が突然の光を得た様に白む。
気がつくと握られていた手は解放されていた。
そして解放されたのと反対の手には温かく小さな手。
こちらに笑顔を向けるディーヴァの白くたおやかな指先を握っていた。
「どうしたの、ダンテ?」
「い、いや…。
なんでも…ねぇよ。」
ディーヴァの笑みに安堵し、心の底から温かさを感じたダンテは苦笑して答えた。
二人並んで歩くそこは人の通りの多い賑わう道。
「あのね、ダンテ。
今、とってもおもしろい映画が上映されてるんだって。
…見に、行かない?」
「なんでそんな不安そうに聞くんだ?
もちろんいいにきまってんだろ、今からでも見に行くか!」
「うんっ!」
尽きない会話と最中に漏れる笑い。
先ほどの体験が嘘のように幸せだった。
幸せ、だった。
「…ディーヴァ?」
突然、握っていたディーヴァの手が冷たくなった。
しっかりと握り返してきていた指先から力が抜け、手がするりと離れていく。
振り向くと
「ディーヴァ!?
―――――っ!!!」
母と同じように赤黒い海に沈むディーヴァ。
周りには淡い緑色に発光する羽が散乱し、けれどその背には翼は無く、ただ華奢な体を大きく抉るような傷があるだけ。
ようやく気付き、見渡した辺りは廃墟と化し、神経を逆撫でる悪魔の下卑たな嗤い声が響くのみ。
が、そんな状況にも関わらず
「う、そだ…。」
ダンテは崩れ落ちるようにその場、ディーヴァの前に膝をついた。
悪魔への怒りはあった。
しかしそれ以上に今ダンテを支配するのは例えようのない喪失感と悲しみ。
そして、あの頃と変わらない…守ることすらできなかった悔しさ。
まるで力不足な己を嘲笑うような唐突すぎるディーヴァの死という体験の前に、ただただダンテは涙を流し、放心するだけだった。