それから半刻ほどして彼はこの世界を知った。

「僕は……帰れないの……」

さっきとはうって変わって不安な表情でしゅんと項垂れる彼に永久は内心きゅんとした。

ちょ、ギャップ萌えっていうのかな、何これかわいい。
いや不謹慎な考えってわかってるんだけどもでもお持ち帰りしたいんですけどー！！
ってここ元からあたしんちだよ。


まさか自分が誰も知ってる人のいないはるか未来に来てしまった上に戻れないとはね。

この子は土方さんの子孫だっていうし。
証拠がなかったら斬っちゃおうと思ったのに、証拠まであるし。
しかし、あの土方さんに子供ねぇ……ふーん、へぇー。

沖田は嘆きつつもあのお堅い土方に子供が出来る、という事実に驚いた。

しかし、驚くべきは自分がでているという『げぇむ』とやらがあるのだ。
架空の人物等と擬似的恋愛が出来る、という遊戯の一種らしい。
自分たちは確かに存在していて、架空等ではないのに。

恋愛対象にされるなんて複雑、でも彼女……永久ちゃん風に言うなら『しょっく』ってやつだよね。
その気持ちが大きい。

永久ちゃんは全部僕たちのことを知ってた。
名前も出生も誰にも教えてないことや食べ物の好みでさえ。
その『げぇむ』の前情報を書物で知ってたんだそうだ。
ってことは逆にそれを読んでるやつらってみんな僕らのこと知ってるってことだよね？

遠い未来で僕らが有名人になってるなんて近藤さんが知ったら破顔して喜ぶだろうな。

この未来に武士はいないみたいだけど、侍魂を、武士の魂を持っている人もいるにはいるみたいなことを聞いたから。
むしろこの永久ちゃんなんて武士魂？……この場合は大和魂のほうがいいのかな？持っている気がするし。

近藤さんのために僕はいるのに、帰れないのか。
どうすればいいんだろう。
どうしたら帰れるんだろう。

うわ、なんか泣きたくなる。
女の子の手前、涙なんて流さないけどさ。

沖田に不安と絶望とたくさんの感情があふれた。