その2、連続鍛刀と体調不良
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「なにここ、本当にボク達の本丸?」
二振りが本丸へと戻ると、本丸はその姿を歪ませていた。
まるで異次元空間にでも飲み込まれる瞬間のようで、床や壁だけではなく、空気自体が波打って見える。
本丸のある次元は、審神者の霊力で成り立つもの。
審神者の霊力が不安定ならば……?もう、お分かりだろう。
「主は異常なくらい動揺していた。あの動揺は霊力にまで作用し、本丸の空間自体が不安定になっているんだろう」
「えーーー!?」
顕現した矢先、自分の家たる本丸がなくなるかもしれないという事実に、歌仙は苦虫を噛み潰したような、そして乱は驚愕の顔をした。
「か、歌仙……!乱……!!よかった、無事……!?」
その時、草履も下駄も履かず素足のままの深見がゲートのある庭先に駆けてきた。
それでは白い足袋が汚れてしまうではないか。
どれだけ急いできたのだろう、途中で転んだのか、足袋だけでなく手や服も薄汚れている。
深見は本丸の様相が様変わりしているのさえ気がついていないようだ。
いや、本丸の揺らぎと同化して深見本人も存在を歪ませている。
「急いで帰るよう言われて戻ってみれば……どうなってるんだいこれは?」
「あの……兄弟刀を保護したんだけど……。それよりあるじさんだいじょーぶ?」
「それよりも怪我!はやく治さなくちゃ!!」
この有様よりも保護した刀の事よりも、深見にとっては怪我の方が最優先のようだ。
歌仙と乱の怪我の具合を確かめるように震える指で、そっと触れてきた。
そこまで付いていないが、多少の血の付着があるのを、悲痛な面持ちで見ている。
だが、血を見るのが苦手というわけではなさそうだ。
空気を取り込みすぎたか、深見がハッハッと息苦しそうに胸を押さえる。
ドサリと倒れそうになるのを、歌仙は間一髪支えた。
「はやく、手入れ部屋、に……!」
「主!大丈夫か!?」
「と、とりあえずはやくあるじさん寝かそう?」
「ああ」
「だめ、手入れ部屋が……先……。お願い……」
「だが君の体が、」
倒れてもなお、手入れ部屋へと促そうとする深見を見て歌仙はハッとした。
思えば、怪我をしたという言葉のあとに、深見の様子はおかしくなったのだ。
ここはおとなしく手入れ部屋に行くのが一番かもしれない。
「乱、兄弟刀を置いてきたらそのまま手入れ部屋に来てくれ」
「え……?
うん、わかった。手入れ部屋だね」
足元が覚束ない深見に肩を貸し、歌仙は手入れ部屋へと向かう。
ぱっと見、刀剣男士の手入れ部屋なのに、審神者用の手入れ部屋に見えてくるのは状況上、致し方ないだろう。
「……本当に大丈夫かい?」
「ええ、少し落ち着いたわ。
さあ、とりあえず歌仙から始めましょうか」
ふかふかな座布団に座る深見はにこと笑顔を浮かべているが、玉のような汗を額にかいている。
体調不良を我慢しているのが丸わかりだ。
歌仙の本体を手に取った深見は、表面の汚れや油を懐紙で拭うと、たんぽで打ち粉をポンポンと丁寧にはたいていく。
作業1つ1つに霊力を込め、手入れ部屋の妖精と協力して、だ。
そして最後に再び油を塗って懐紙で拭う。
これで目に見える傷は消える。
あとは深見の霊力と時間経過で治っていく。
ゆっくりとだが傷が癒えていく感覚、深見の温かな霊力が体に染みていく心地よさ、傷は痛むのに、長く、しばらく感じていたくなる。
気がつけば隣では乱も同じように、深見の手入れを施されていた。
ふと、深見を見れば、手入れが即終わるという『手伝い札』を棚から取り出しているのが目に入った。
「主、何をしているんだい。それは手伝い札だろう?」
「ええ。はやく治ってもらいたいから手伝い札使わせてもらおうと思って……」
ゆるりと起き上がった歌仙は、その手伝い札を深見から取り、元の棚へと戻した。
「僕らはじきに治る。使うのはもったいない。
これから来る者達が、重症になった時にでも使うといい」
「重症に……?」
その言葉は深見の何かに触れたようだ。
唇がわなわなと震え、目からはらり、はらりと涙を零し始めた。
「大事な貴方達が重症になるのを、この私が耐えられると思う!?
重症になんてさせない……。いやだ、そんなの、だれかが傷つくのを、見たくない……!!」
「あるじさん……」
わっと本格的に泣き出した深見に寄り添い、その背を撫でる乱。
歌仙もそれに続きたかったが、深見が続けて放った言葉を疑問に思い、その場で動けなくなった。
「貴方達が傷つくならなぜまた私が審神者になったのか、わからなくなる……」
「『また』……?」
深見が泣き続けている間に手入れ時間は終了したようだ。
完全に回復している。
「……とりあえずもう大丈夫だ。もう傷はないよ」
「ボクも、もう元気!ほら、こんなにピンピンしてるよ!」
「……本当に?」
「本当に、だよ」
「うん。ホラ、ちゃんと見て?」
「ああ、よかった……」
歌仙と乱の姿を上から下まで見た深見は、袖で涙を拭い、へにゃりと笑った。
その瞬間、本丸の次元が安定し直した。
二振りが本丸へと戻ると、本丸はその姿を歪ませていた。
まるで異次元空間にでも飲み込まれる瞬間のようで、床や壁だけではなく、空気自体が波打って見える。
本丸のある次元は、審神者の霊力で成り立つもの。
審神者の霊力が不安定ならば……?もう、お分かりだろう。
「主は異常なくらい動揺していた。あの動揺は霊力にまで作用し、本丸の空間自体が不安定になっているんだろう」
「えーーー!?」
顕現した矢先、自分の家たる本丸がなくなるかもしれないという事実に、歌仙は苦虫を噛み潰したような、そして乱は驚愕の顔をした。
「か、歌仙……!乱……!!よかった、無事……!?」
その時、草履も下駄も履かず素足のままの深見がゲートのある庭先に駆けてきた。
それでは白い足袋が汚れてしまうではないか。
どれだけ急いできたのだろう、途中で転んだのか、足袋だけでなく手や服も薄汚れている。
深見は本丸の様相が様変わりしているのさえ気がついていないようだ。
いや、本丸の揺らぎと同化して深見本人も存在を歪ませている。
「急いで帰るよう言われて戻ってみれば……どうなってるんだいこれは?」
「あの……兄弟刀を保護したんだけど……。それよりあるじさんだいじょーぶ?」
「それよりも怪我!はやく治さなくちゃ!!」
この有様よりも保護した刀の事よりも、深見にとっては怪我の方が最優先のようだ。
歌仙と乱の怪我の具合を確かめるように震える指で、そっと触れてきた。
そこまで付いていないが、多少の血の付着があるのを、悲痛な面持ちで見ている。
だが、血を見るのが苦手というわけではなさそうだ。
空気を取り込みすぎたか、深見がハッハッと息苦しそうに胸を押さえる。
ドサリと倒れそうになるのを、歌仙は間一髪支えた。
「はやく、手入れ部屋、に……!」
「主!大丈夫か!?」
「と、とりあえずはやくあるじさん寝かそう?」
「ああ」
「だめ、手入れ部屋が……先……。お願い……」
「だが君の体が、」
倒れてもなお、手入れ部屋へと促そうとする深見を見て歌仙はハッとした。
思えば、怪我をしたという言葉のあとに、深見の様子はおかしくなったのだ。
ここはおとなしく手入れ部屋に行くのが一番かもしれない。
「乱、兄弟刀を置いてきたらそのまま手入れ部屋に来てくれ」
「え……?
うん、わかった。手入れ部屋だね」
足元が覚束ない深見に肩を貸し、歌仙は手入れ部屋へと向かう。
ぱっと見、刀剣男士の手入れ部屋なのに、審神者用の手入れ部屋に見えてくるのは状況上、致し方ないだろう。
「……本当に大丈夫かい?」
「ええ、少し落ち着いたわ。
さあ、とりあえず歌仙から始めましょうか」
ふかふかな座布団に座る深見はにこと笑顔を浮かべているが、玉のような汗を額にかいている。
体調不良を我慢しているのが丸わかりだ。
歌仙の本体を手に取った深見は、表面の汚れや油を懐紙で拭うと、たんぽで打ち粉をポンポンと丁寧にはたいていく。
作業1つ1つに霊力を込め、手入れ部屋の妖精と協力して、だ。
そして最後に再び油を塗って懐紙で拭う。
これで目に見える傷は消える。
あとは深見の霊力と時間経過で治っていく。
ゆっくりとだが傷が癒えていく感覚、深見の温かな霊力が体に染みていく心地よさ、傷は痛むのに、長く、しばらく感じていたくなる。
気がつけば隣では乱も同じように、深見の手入れを施されていた。
ふと、深見を見れば、手入れが即終わるという『手伝い札』を棚から取り出しているのが目に入った。
「主、何をしているんだい。それは手伝い札だろう?」
「ええ。はやく治ってもらいたいから手伝い札使わせてもらおうと思って……」
ゆるりと起き上がった歌仙は、その手伝い札を深見から取り、元の棚へと戻した。
「僕らはじきに治る。使うのはもったいない。
これから来る者達が、重症になった時にでも使うといい」
「重症に……?」
その言葉は深見の何かに触れたようだ。
唇がわなわなと震え、目からはらり、はらりと涙を零し始めた。
「大事な貴方達が重症になるのを、この私が耐えられると思う!?
重症になんてさせない……。いやだ、そんなの、だれかが傷つくのを、見たくない……!!」
「あるじさん……」
わっと本格的に泣き出した深見に寄り添い、その背を撫でる乱。
歌仙もそれに続きたかったが、深見が続けて放った言葉を疑問に思い、その場で動けなくなった。
「貴方達が傷つくならなぜまた私が審神者になったのか、わからなくなる……」
「『また』……?」
深見が泣き続けている間に手入れ時間は終了したようだ。
完全に回復している。
「……とりあえずもう大丈夫だ。もう傷はないよ」
「ボクも、もう元気!ほら、こんなにピンピンしてるよ!」
「……本当に?」
「本当に、だよ」
「うん。ホラ、ちゃんと見て?」
「ああ、よかった……」
歌仙と乱の姿を上から下まで見た深見は、袖で涙を拭い、へにゃりと笑った。
その瞬間、本丸の次元が安定し直した。