その1、二度目の審神者業
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こほん、一つ咳払いしてから続けた。
「歌仙、乱。食べながら聞いて欲しいんだけど、これから先、ここには新しい刀剣男士が次々にやって来ると思う。
乱への本丸の案内や内番の説明は、歌仙が。次にやってきた者へは乱が、という風に教えていって欲しいの」
「今後も新しい刀剣男士が来次第、来た順に、というわけだね」
「そんなのお安い御用だよ!というわけで歌仙さん、ボクに優しく教えてね!」
「ああ、しっかりと厳しく教えさせてもらうよ」
「む。優しくって言ったのに。いちにい来たら告げ口してやる……」
歌仙と乱の会話に苦笑が漏れる。
そんな事を言っていても、きっと歌仙は優しく教える事だろうと思う。
根がとても優しい刀だと、私はこの短期間でわかったから。
「実際にやる内容や指標は私が立てるし、やり方がわからなければ一緒にやるから。畑当番も馬当番も」
「畑も?馬も!?」
「うん。手合わせはさすがに出来ないけど、他の事ならやれる時には、と思ってるよ。
あ、馬当番はまだ先かな。まだ馬がいないし……」
「あのねぇ、主。さっきは僕も内番は慣れるまで一緒にしてほしいような態度をとったけど、君の仕事は審神者だろう?部隊の指揮を取ったりして、審神者ってのは何かと忙しいんだからね。そこはわかってるのかい?」
「わ、わかって……ます、ハイ」
またも窘められてしまった。
そこまで言われてしまうと食事がどこへ行ったのか、ちゃんと胃袋に入ったのかどうかわかったもんじゃない。
とりあえず腹ごなしも済んだ今、これで出陣は出来る。
審神者である私は、場を研ぎ澄ませて空気を変えようと手のひらをパンと鳴らした。
「さて、刀装も整ったし、お腹も満たされただろうし、早速だけど二人には出陣してもらいたいんだけど、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
「もちろん!」
やる気満々。
士気も上がっているようだ。
その勢いのまま、出陣ゲートのある庭へ移動する。
ゲートの言葉が似合う赤い鳥居。
それがずらりと連なるその前に、過去へ行ける装置がある。
これは、自分で回して目盛りを合わせる日時計のような大きな歯車で、これを弄る事で目的の時代目的の場所へと向かえるとのことだ。
科学の進歩の賜物なのか、神の力なのか……多分どちらもなのだろう。
そのゲート前には、こんのすけがちょこんと行儀よく座って待っていた。
「深見殿、やっと出陣の準備が整いましたね!」
「待たせてごめんね、こんちゃん」
「いいのですよ。私めも美味しいお揚げを頂きましたし!いやぁ、あのお揚げの味、煮方、大変素晴らしく美味でございました……!
深見殿の為ならば、あと数時間、いや、数日くらい余裕で待ちますとも!」
「そこまでしなくていいのよ?」
実は、味噌汁用の油揚げを切っている最中、狙いすましたかのようにこんのすけがやってきたのだ。
狐といえば油揚げ。
別の小鍋で軽く醤油とお砂糖、それにみりんで煮てやり、この管狐に差し出したのだ。
こんのすけの餌付け、ここに極まる。
たった一度の油揚げが、ここまで喜んでもらえるとは思わなかった。
チョロい、チョロいぞこんのすけ。
「それでは、出陣の仕方だけ刀剣男士に説明しましたら、私めはしばらく姿を現しませぬ。
ですが、何か入り用の際には端末もしくは連絡用の式神にて御連絡をお願いいたします」
「わかりました」
こんのすけが二人に出陣ゲートの使い方を伝授している。
さあ、記念すべき初陣だ。
最初の出陣先とは確か、維新の記憶、函館だ。
一振りで行けば傷を負うその場所も、二振りならばそうやられやしないだろうと思っている。
それでも体を得てから初めての戦闘、不安は付いて回る。
「用意できたよ、主」
日時計が江戸と明治の間を指し、光を放っている。
これであとはゲートたる鳥居をくぐればその時代に着くわけだ。
ここからは主として相応しい言葉を使い、戦い前の士気を下げぬよう、凛とした声音で命令を下す。
「第一部隊、歌仙兼定を部隊長に、乱藤四郎と共に二振り、維新の記憶、函館へ出陣せよ!
私はこちらで布陣や攻め入れ方の指揮を取る。
合戦場で実際に刀を振るうのは刀剣男士。現場では隊長の指示に従うこと!
それと……」
加えて自分の願いを一つぶつける。
このたった一つこそが、私の伝えたい思いそのもの。
「この出陣で気をつけることはたった一つ、折れないで無事に帰還すること」
「時間遡行軍の殲滅じゃないの?」
「ちがう。無理はしないこと。……いいね?」
乱の来る前に私のこの考えは歌仙に話してあるので彼は理解しているが、こくり、しっかりと乱も頷いてくれた。
「了解。じゃあ、行ってくるよ」
「いざ、しゅっつじーん!」
半ば駆け足で、二人は鳥居の奥へ、過去の世界へと消える。
こんな安全なところから指示するだけなんて、と思うが私は私のできることをしよう。
指示を出すのはもちろん、彼らの無事を祈る事だ。
「どうか、気をつけて……」
「歌仙、乱。食べながら聞いて欲しいんだけど、これから先、ここには新しい刀剣男士が次々にやって来ると思う。
乱への本丸の案内や内番の説明は、歌仙が。次にやってきた者へは乱が、という風に教えていって欲しいの」
「今後も新しい刀剣男士が来次第、来た順に、というわけだね」
「そんなのお安い御用だよ!というわけで歌仙さん、ボクに優しく教えてね!」
「ああ、しっかりと厳しく教えさせてもらうよ」
「む。優しくって言ったのに。いちにい来たら告げ口してやる……」
歌仙と乱の会話に苦笑が漏れる。
そんな事を言っていても、きっと歌仙は優しく教える事だろうと思う。
根がとても優しい刀だと、私はこの短期間でわかったから。
「実際にやる内容や指標は私が立てるし、やり方がわからなければ一緒にやるから。畑当番も馬当番も」
「畑も?馬も!?」
「うん。手合わせはさすがに出来ないけど、他の事ならやれる時には、と思ってるよ。
あ、馬当番はまだ先かな。まだ馬がいないし……」
「あのねぇ、主。さっきは僕も内番は慣れるまで一緒にしてほしいような態度をとったけど、君の仕事は審神者だろう?部隊の指揮を取ったりして、審神者ってのは何かと忙しいんだからね。そこはわかってるのかい?」
「わ、わかって……ます、ハイ」
またも窘められてしまった。
そこまで言われてしまうと食事がどこへ行ったのか、ちゃんと胃袋に入ったのかどうかわかったもんじゃない。
とりあえず腹ごなしも済んだ今、これで出陣は出来る。
審神者である私は、場を研ぎ澄ませて空気を変えようと手のひらをパンと鳴らした。
「さて、刀装も整ったし、お腹も満たされただろうし、早速だけど二人には出陣してもらいたいんだけど、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
「もちろん!」
やる気満々。
士気も上がっているようだ。
その勢いのまま、出陣ゲートのある庭へ移動する。
ゲートの言葉が似合う赤い鳥居。
それがずらりと連なるその前に、過去へ行ける装置がある。
これは、自分で回して目盛りを合わせる日時計のような大きな歯車で、これを弄る事で目的の時代目的の場所へと向かえるとのことだ。
科学の進歩の賜物なのか、神の力なのか……多分どちらもなのだろう。
そのゲート前には、こんのすけがちょこんと行儀よく座って待っていた。
「深見殿、やっと出陣の準備が整いましたね!」
「待たせてごめんね、こんちゃん」
「いいのですよ。私めも美味しいお揚げを頂きましたし!いやぁ、あのお揚げの味、煮方、大変素晴らしく美味でございました……!
深見殿の為ならば、あと数時間、いや、数日くらい余裕で待ちますとも!」
「そこまでしなくていいのよ?」
実は、味噌汁用の油揚げを切っている最中、狙いすましたかのようにこんのすけがやってきたのだ。
狐といえば油揚げ。
別の小鍋で軽く醤油とお砂糖、それにみりんで煮てやり、この管狐に差し出したのだ。
こんのすけの餌付け、ここに極まる。
たった一度の油揚げが、ここまで喜んでもらえるとは思わなかった。
チョロい、チョロいぞこんのすけ。
「それでは、出陣の仕方だけ刀剣男士に説明しましたら、私めはしばらく姿を現しませぬ。
ですが、何か入り用の際には端末もしくは連絡用の式神にて御連絡をお願いいたします」
「わかりました」
こんのすけが二人に出陣ゲートの使い方を伝授している。
さあ、記念すべき初陣だ。
最初の出陣先とは確か、維新の記憶、函館だ。
一振りで行けば傷を負うその場所も、二振りならばそうやられやしないだろうと思っている。
それでも体を得てから初めての戦闘、不安は付いて回る。
「用意できたよ、主」
日時計が江戸と明治の間を指し、光を放っている。
これであとはゲートたる鳥居をくぐればその時代に着くわけだ。
ここからは主として相応しい言葉を使い、戦い前の士気を下げぬよう、凛とした声音で命令を下す。
「第一部隊、歌仙兼定を部隊長に、乱藤四郎と共に二振り、維新の記憶、函館へ出陣せよ!
私はこちらで布陣や攻め入れ方の指揮を取る。
合戦場で実際に刀を振るうのは刀剣男士。現場では隊長の指示に従うこと!
それと……」
加えて自分の願いを一つぶつける。
このたった一つこそが、私の伝えたい思いそのもの。
「この出陣で気をつけることはたった一つ、折れないで無事に帰還すること」
「時間遡行軍の殲滅じゃないの?」
「ちがう。無理はしないこと。……いいね?」
乱の来る前に私のこの考えは歌仙に話してあるので彼は理解しているが、こくり、しっかりと乱も頷いてくれた。
「了解。じゃあ、行ってくるよ」
「いざ、しゅっつじーん!」
半ば駆け足で、二人は鳥居の奥へ、過去の世界へと消える。
こんな安全なところから指示するだけなんて、と思うが私は私のできることをしよう。
指示を出すのはもちろん、彼らの無事を祈る事だ。
「どうか、気をつけて……」