とうらぶの短いお話
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そうなのだ。
お土産の中で私が一番気に入ったのが、この最中だ。あちらで購入するときに、味見用に個別で一つ買ったのだが、食べたらとっても美味しかった。
なので、大量購入の一途を辿った。
「ホントうンまいよね。いい買い物したなー。次行った時も買いに行こうね、あるじ」
「ええ、そうね」
割り込まれていた事もなんのその。
べったりとくっついてきた清光が花が咲くような笑顔で言う。
こういうかわいい清光が相手なら、私だっていつもそこまで緊張しなくてほっとできるのに。
「全く……せっかくの最中の造形美も堪能しないで……そんなに美味しいのかい?」
大事そうに愛でていたそれを、歌仙がぱくりと口にした。
……ああ、桜の花弁がはらりと舞ったから、美味しかったのね。
大きさに反してずっしりとした重量の最中。パリッとした皮の中は、重さ通り粒あんでぎっしり満たされている。
その餡子も一粒一粒が大きく、ちょっぴり硬くて蒸し立てかと思ってしまうくらいほくほくしていて、甘さは極力控えめに。でもねっとりとしていてすごく、すごーく美味しいのだ。
食にうるさい刀剣男士・歌仙兼定も唸る味かも。……って、本当に唸ってるようだった。
食べ応えはあるのに、思わずもう一個食べたくなる。なんという魔力だろうね。
いや夕餉が入らなくなると怒られるし、流石に二個目は食べないけれど。
「しかし、転んでも起き上がる起き上がり小法師。七転び八起き……縁起が良い。
歴史を守る我等刀剣男士にぴったりの菓子だね」
「うん。どんな時も精神までは引くことはない。……負けない。
あるじのため、歴史のため、俺は。俺達は、何度でも起き上がって戦う」
健康や厄除け、商売繁盛ではなく、彼らはそれに新たな御利益を自分で付け足した。
ああ、かっこいいなぁ。
顔だけじゃない。その誇り高い精神がかっこいい。
私の初期刀と今日の近侍がこんなにもかっこいい……!
恥ずかしくて言葉には出さないけれど、二振りとも、大好き……!
「主、この珈琲は金箔が浮かんでるんだな!
びっくりしたぞ!」
じたばたしたい思いを堪えていると、ひょっこりと真っ白な刀剣男士が顔を出した。
「うわ!?鶴丸か……びっくりしたのはこっちのほうよ」
「すまんすまん。だが「うわ」は、悲しすぎるぞ」
悲しいと言いながら、ケラケラ笑う平安刀。
木虫籠格子だから内側から外はよく見えるはずなのに、その格子の死角から現れるとは……この男はいつからそんなに隠蔽が高くなったのかしら。
なぁんて思ったけど、きっとびっくり爺の性格が故よね。
「はー。金箔珈琲って書いてあるんだからそりゃ金箔も浮くでしょーよ」
「おっ、今日の近侍は加州だったか。精が出るな」
鶴丸の登場で、清光は少し機嫌が悪くなったみたい。ぶすったれた顔で向こうを向き、お茶をあおっていた。
しかし鶴丸は清光の嫌味も気にしていない。相変わらず大物だ。
「俺も知らないで淹れてしまってな、今しがたパッケージを見たばかりなんだ。
なんだー?主を独り占めできなくなったからといって、そんな顔をするなって」
「僕もいるから独り占めではないよ」
「……歌仙か」
隠蔽が高いのは鶴丸でなくて歌仙だったか。
歌仙の存在に気がついた鶴丸が、どこか影のある目をした。
歌仙も、同じように表情の読めない、でも鋭い視線を鶴丸へよこした。
たまに歌仙は、鶴丸や三日月にこういった胡乱げな目をする事がある。……いつもは仲もいいのに。
それについて、清光は何も言わなかった。
「鶴丸が珈琲を飲むなんて珍しい。
食べているのは金箔カステラかしら。珈琲もカステラも金箔。縁起が良さそうな組み合わせね」
どこか刺々しい空気を変えようと、鶴丸と結びつきにくい珈琲について質問する。
これも、お土産として買ってきた金箔入りインスタントコーヒーだし。
「ああ、たまにはな。
このかすてぃらも金箔でキラキラしてるだけじゃなくて、面白い仕掛けがあっていい。
今、短刀の奴らが競って型抜きしあっているところだ。そのうち綺麗に型抜きできた者から、ここに突撃してくるんじゃないか?」
「なんだって?……食べ物で遊ぶとは。注意してこよう」
アッ厨の鬼が降臨する!
好き嫌いも許さず、御残しも許さず、そしてお行儀の悪い食事の摂り方は絶対に許さないのが、この歌仙兼定という厨の主人その一だ。ちなみに厨の主人その二は燭台切光忠。
昔は私の方が料理ができたはずなのに、今では歌仙にも光忠にも遠く及ばない。
「歌仙。そういう遊び心のあるお菓子なんだから、注意は無しよ。
それを言うなら、立ったまま食べていた鶴丸のほうを注意するといいわ」
「鶴丸ぅ、お行儀悪ぅ〜い」
ガヤがわりに、清光が裏声を出して歌仙の怒りを援護した。鶴丸の死亡フラグがより高くなってきた……。
「ハッ……そうだった!
鶴丸国永、主の御前で行儀が悪いぞ……今から説教だ!来い!!」
「おいおい、説教まですることはな、いだだだだ!?」
真っ白な鶴が、歌仙という猟師に捕まってドナドナされていく。耳をつまんで引っ張るのはさすがに痛い気がするけど……うーん。
さっきの空気よりマシになってるからいいか。
お土産の中で私が一番気に入ったのが、この最中だ。あちらで購入するときに、味見用に個別で一つ買ったのだが、食べたらとっても美味しかった。
なので、大量購入の一途を辿った。
「ホントうンまいよね。いい買い物したなー。次行った時も買いに行こうね、あるじ」
「ええ、そうね」
割り込まれていた事もなんのその。
べったりとくっついてきた清光が花が咲くような笑顔で言う。
こういうかわいい清光が相手なら、私だっていつもそこまで緊張しなくてほっとできるのに。
「全く……せっかくの最中の造形美も堪能しないで……そんなに美味しいのかい?」
大事そうに愛でていたそれを、歌仙がぱくりと口にした。
……ああ、桜の花弁がはらりと舞ったから、美味しかったのね。
大きさに反してずっしりとした重量の最中。パリッとした皮の中は、重さ通り粒あんでぎっしり満たされている。
その餡子も一粒一粒が大きく、ちょっぴり硬くて蒸し立てかと思ってしまうくらいほくほくしていて、甘さは極力控えめに。でもねっとりとしていてすごく、すごーく美味しいのだ。
食にうるさい刀剣男士・歌仙兼定も唸る味かも。……って、本当に唸ってるようだった。
食べ応えはあるのに、思わずもう一個食べたくなる。なんという魔力だろうね。
いや夕餉が入らなくなると怒られるし、流石に二個目は食べないけれど。
「しかし、転んでも起き上がる起き上がり小法師。七転び八起き……縁起が良い。
歴史を守る我等刀剣男士にぴったりの菓子だね」
「うん。どんな時も精神までは引くことはない。……負けない。
あるじのため、歴史のため、俺は。俺達は、何度でも起き上がって戦う」
健康や厄除け、商売繁盛ではなく、彼らはそれに新たな御利益を自分で付け足した。
ああ、かっこいいなぁ。
顔だけじゃない。その誇り高い精神がかっこいい。
私の初期刀と今日の近侍がこんなにもかっこいい……!
恥ずかしくて言葉には出さないけれど、二振りとも、大好き……!
「主、この珈琲は金箔が浮かんでるんだな!
びっくりしたぞ!」
じたばたしたい思いを堪えていると、ひょっこりと真っ白な刀剣男士が顔を出した。
「うわ!?鶴丸か……びっくりしたのはこっちのほうよ」
「すまんすまん。だが「うわ」は、悲しすぎるぞ」
悲しいと言いながら、ケラケラ笑う平安刀。
木虫籠格子だから内側から外はよく見えるはずなのに、その格子の死角から現れるとは……この男はいつからそんなに隠蔽が高くなったのかしら。
なぁんて思ったけど、きっとびっくり爺の性格が故よね。
「はー。金箔珈琲って書いてあるんだからそりゃ金箔も浮くでしょーよ」
「おっ、今日の近侍は加州だったか。精が出るな」
鶴丸の登場で、清光は少し機嫌が悪くなったみたい。ぶすったれた顔で向こうを向き、お茶をあおっていた。
しかし鶴丸は清光の嫌味も気にしていない。相変わらず大物だ。
「俺も知らないで淹れてしまってな、今しがたパッケージを見たばかりなんだ。
なんだー?主を独り占めできなくなったからといって、そんな顔をするなって」
「僕もいるから独り占めではないよ」
「……歌仙か」
隠蔽が高いのは鶴丸でなくて歌仙だったか。
歌仙の存在に気がついた鶴丸が、どこか影のある目をした。
歌仙も、同じように表情の読めない、でも鋭い視線を鶴丸へよこした。
たまに歌仙は、鶴丸や三日月にこういった胡乱げな目をする事がある。……いつもは仲もいいのに。
それについて、清光は何も言わなかった。
「鶴丸が珈琲を飲むなんて珍しい。
食べているのは金箔カステラかしら。珈琲もカステラも金箔。縁起が良さそうな組み合わせね」
どこか刺々しい空気を変えようと、鶴丸と結びつきにくい珈琲について質問する。
これも、お土産として買ってきた金箔入りインスタントコーヒーだし。
「ああ、たまにはな。
このかすてぃらも金箔でキラキラしてるだけじゃなくて、面白い仕掛けがあっていい。
今、短刀の奴らが競って型抜きしあっているところだ。そのうち綺麗に型抜きできた者から、ここに突撃してくるんじゃないか?」
「なんだって?……食べ物で遊ぶとは。注意してこよう」
アッ厨の鬼が降臨する!
好き嫌いも許さず、御残しも許さず、そしてお行儀の悪い食事の摂り方は絶対に許さないのが、この歌仙兼定という厨の主人その一だ。ちなみに厨の主人その二は燭台切光忠。
昔は私の方が料理ができたはずなのに、今では歌仙にも光忠にも遠く及ばない。
「歌仙。そういう遊び心のあるお菓子なんだから、注意は無しよ。
それを言うなら、立ったまま食べていた鶴丸のほうを注意するといいわ」
「鶴丸ぅ、お行儀悪ぅ〜い」
ガヤがわりに、清光が裏声を出して歌仙の怒りを援護した。鶴丸の死亡フラグがより高くなってきた……。
「ハッ……そうだった!
鶴丸国永、主の御前で行儀が悪いぞ……今から説教だ!来い!!」
「おいおい、説教まですることはな、いだだだだ!?」
真っ白な鶴が、歌仙という猟師に捕まってドナドナされていく。耳をつまんで引っ張るのはさすがに痛い気がするけど……うーん。
さっきの空気よりマシになってるからいいか。