とうらぶの短いお話
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次に向かったのはひがし茶屋街だ。
近くのパーキングに車を停め、徒歩で向かうと現れる、江戸の街並みにも似た場所がそこである。
「現世にこういう街並みがあるって、なんだか不思議で、それでいて懐かしい感じするわ」
「あるじはそうかもね。懐かしいというよりも、馴染みあるって言った方が俺にはしっくりくるや。
京都とかもそうだけど、関東にもあるよね。川越や佐原とかさ」
「ええ、あの街並みにも似たところがあるわ。ただ、ここまで雰囲気ある感じはしないけれど……」
雰囲気、ね。雰囲気や趣というか、これは見慣れた万屋街だ。
それも、審神者は行かない側の、いわゆる花街のそれに限りなく近い。
べ、べつに変なことするために行くようなそんな街のことじゃないよ!そもそも俺はそういうところには行かないんで!
あるじ一筋なんでぇーーー!!
……うん、格式ある花街って感じ。そうそれだ。
「あ。元は花街らしいわね」
「ぶほぁッ!!」
花街のこと考えてたら、あるじの口から花街なんて言葉が出てしまい、俺は吹き出してしまった。
いや、タイミング良すぎだなって。
「娼妓がいたというより、芸妓遊びができるような場所だったのかしらね。
今でも芸妓さんがいて、お座敷体験ができる場所もあるみたいよ。予約制らしいけれど……」
清光、顔赤いけどもしかして興味あった?
なんて聞かれてしまった。
それじゃ俺がまるで他の女の人を好きみたいじゃないか!
一番変な誤解されたくない相手が、あるじだというのに。……つらい。
そのあと、誤解を解くのにちょっぴり苦労したのはいうまでもない。
散策がてら歩いてみれば、観光客だろう、浴衣や着物を着込んでいる人がたくさん見られた。
浴衣の人間は兼六園にも見かけたけれど、ここはその比じゃない。
たおやかな着物。町娘風の小袖。涼やかな浴衣。
ここの景色や風情とよく合っているが衣装も多いし、どこかに貸衣装屋でもあるのかもしれない。
いいなー。あるじを着飾りたい欲が、またも俺を支配した。
本丸に帰ったら、ワガママ言って着物を着てもらおう。
助言をもらうのは少しだけしゃくだけど、歌仙に相談すれば雅を愛する刀の事だ。きっと全力であるじに着物を勧めてくれる。
「楽しみだね」
「?清光、何が楽しみなの」
「なんでもないよ」
木虫籠と呼ばれるひがし茶屋街を代表する目隠し格子。
これは外からは見えず、中からは見えるという特徴があり、芸妓が自分のお客が他の店に浮気するのを見張ったりする意味があるらしい。
ただただ、ベンガルの赤色顔料で紅殻格子として趣があるだけじゃない。理由がある。
……そうだ。
木虫籠格子を本丸のどこかに採用して貰えば、芸妓さんではないけれど似たような風情の中で刀剣男士を待つあるじが見られるかもしれない。
ただ着物を着てもらうだけじゃさびしいなって。
ちょっとだけ俺の好みが爆発してるけど、妄想だけでもさせてほしい。
ひがし茶屋街にはさまざまな店が立ち並んでいた。
加賀野菜を使った食事を提供する店、石川の港で獲れた海鮮を出す店、金沢土産を扱う店や、九谷焼、地酒やにせうゆ屋、加賀麩を売る店。
すべてが金箔でできた蔵を残す場所、当時から変わらぬ茶屋。
そして国指定の重要文化財……。
昔からある店。最近できた店どちらもあるが、そのどれもが趣ある建物を有効活用して古き良き時代のいいところを残しているのだ。
刀と同じだ。後世に、ありのままの歴史を残そうとしていた。そのことにちょっぴり嬉しくなる。
俺としてみれば、そのすべてをまるっと重要文化財にしてもいいと思った。
そのあとは飲兵衛だらけの本丸へのお土産に、地酒屋でお酒を買うことにした。
蔵のような内装の店の中には所狭しと酒瓶が並んでおり、空気が甘い酒の匂いで満ちて息をするだけでもふわふわしそうだった。
見れば、お客さんのほとんどがお酒を選びながらも、お酒を飲んでいた。
どういうことかと不思議だったけど、お札一枚で地酒の飲み比べができるようだ。へぇ、面白そう。
そう思いながらも、俺は安定達と飲む酒を選んだ。
「清光はあの地酒飲み比べしたかった?」
外へ出ればあるじがそう聞いてきた。したかったかどうかと聞かれると、実はイエスだ。言わないけどね。
「新撰組刀のみんなで飲むお酒買ったじゃない?あのチョイスでいいか迷っただけだよ。
それに、俺はこのあと運転が待ってるから飲まないよ」
さすがに付喪神だとはいえ、飲酒運転は絶対にやっちゃいけないことだ。
飲酒運転、ダメ!絶対!だよ。
「むしろあるじこそ飲めばよかったのに。おでん屋の時よりも今のお店のお酒なら遥かに美味しいでしょ。地酒飲み比べとか楽しいだろうし」
うちの本丸の酒飲み刀剣なら、大喜びで飲むだろうな……。
あでも、飲み比べないでどれも美味い美味い言いながら飲んで終わりになりそう。
ま、美味しく飲めればいいんだし、そういう飲み方でも間違いじゃないんだけどね。
「店内全体にお酒の強いにおいが漂うような度数が高そうなお酒。それを何杯も飲み比べするなんて……酔ったら困るわ」
たしかにすごい匂いだった。悪い匂いじゃなかったのがまた困る。
八岐大蛇や鬼が惹かれたお酒の誘惑も、こんな感じだったのかなあ。なんて思いつつ。
酔ったら困る、と下を向くあるじの手をするりと取る。あるじが上を向き、俺の顔をやっと見た。
「酔ったあるじは可愛いから大丈夫だよ」
とった手を俺の頬に滑らせて、俺はあるじの視線を独り占めした。
みるみる赤くなるあるじに俺の顔から笑みが溢れる。
「ばか。車酔いの事よ!」
「ははは、知ってる。
でもあるじ、お酒飲んでないのに顔真っ赤だよ。匂いだけで酔っちゃったんじゃない?
俺が介抱してあげよっか」
耳元でささやけば余計赤くなってしまった。
あーあ、あるじったら顔から湯気が出そうだね。やりすぎちゃったかな?
でもこれで、花街のことを指摘された時の仕返しができたね。
やられたらすぐにやり返さないと。ついでに、ころころと変わるあるじの表情も見れるし最高だよね。
「清光ぅーーー!」
「あはははは!」
近くのパーキングに車を停め、徒歩で向かうと現れる、江戸の街並みにも似た場所がそこである。
「現世にこういう街並みがあるって、なんだか不思議で、それでいて懐かしい感じするわ」
「あるじはそうかもね。懐かしいというよりも、馴染みあるって言った方が俺にはしっくりくるや。
京都とかもそうだけど、関東にもあるよね。川越や佐原とかさ」
「ええ、あの街並みにも似たところがあるわ。ただ、ここまで雰囲気ある感じはしないけれど……」
雰囲気、ね。雰囲気や趣というか、これは見慣れた万屋街だ。
それも、審神者は行かない側の、いわゆる花街のそれに限りなく近い。
べ、べつに変なことするために行くようなそんな街のことじゃないよ!そもそも俺はそういうところには行かないんで!
あるじ一筋なんでぇーーー!!
……うん、格式ある花街って感じ。そうそれだ。
「あ。元は花街らしいわね」
「ぶほぁッ!!」
花街のこと考えてたら、あるじの口から花街なんて言葉が出てしまい、俺は吹き出してしまった。
いや、タイミング良すぎだなって。
「娼妓がいたというより、芸妓遊びができるような場所だったのかしらね。
今でも芸妓さんがいて、お座敷体験ができる場所もあるみたいよ。予約制らしいけれど……」
清光、顔赤いけどもしかして興味あった?
なんて聞かれてしまった。
それじゃ俺がまるで他の女の人を好きみたいじゃないか!
一番変な誤解されたくない相手が、あるじだというのに。……つらい。
そのあと、誤解を解くのにちょっぴり苦労したのはいうまでもない。
散策がてら歩いてみれば、観光客だろう、浴衣や着物を着込んでいる人がたくさん見られた。
浴衣の人間は兼六園にも見かけたけれど、ここはその比じゃない。
たおやかな着物。町娘風の小袖。涼やかな浴衣。
ここの景色や風情とよく合っているが衣装も多いし、どこかに貸衣装屋でもあるのかもしれない。
いいなー。あるじを着飾りたい欲が、またも俺を支配した。
本丸に帰ったら、ワガママ言って着物を着てもらおう。
助言をもらうのは少しだけしゃくだけど、歌仙に相談すれば雅を愛する刀の事だ。きっと全力であるじに着物を勧めてくれる。
「楽しみだね」
「?清光、何が楽しみなの」
「なんでもないよ」
木虫籠と呼ばれるひがし茶屋街を代表する目隠し格子。
これは外からは見えず、中からは見えるという特徴があり、芸妓が自分のお客が他の店に浮気するのを見張ったりする意味があるらしい。
ただただ、ベンガルの赤色顔料で紅殻格子として趣があるだけじゃない。理由がある。
……そうだ。
木虫籠格子を本丸のどこかに採用して貰えば、芸妓さんではないけれど似たような風情の中で刀剣男士を待つあるじが見られるかもしれない。
ただ着物を着てもらうだけじゃさびしいなって。
ちょっとだけ俺の好みが爆発してるけど、妄想だけでもさせてほしい。
ひがし茶屋街にはさまざまな店が立ち並んでいた。
加賀野菜を使った食事を提供する店、石川の港で獲れた海鮮を出す店、金沢土産を扱う店や、九谷焼、地酒やにせうゆ屋、加賀麩を売る店。
すべてが金箔でできた蔵を残す場所、当時から変わらぬ茶屋。
そして国指定の重要文化財……。
昔からある店。最近できた店どちらもあるが、そのどれもが趣ある建物を有効活用して古き良き時代のいいところを残しているのだ。
刀と同じだ。後世に、ありのままの歴史を残そうとしていた。そのことにちょっぴり嬉しくなる。
俺としてみれば、そのすべてをまるっと重要文化財にしてもいいと思った。
そのあとは飲兵衛だらけの本丸へのお土産に、地酒屋でお酒を買うことにした。
蔵のような内装の店の中には所狭しと酒瓶が並んでおり、空気が甘い酒の匂いで満ちて息をするだけでもふわふわしそうだった。
見れば、お客さんのほとんどがお酒を選びながらも、お酒を飲んでいた。
どういうことかと不思議だったけど、お札一枚で地酒の飲み比べができるようだ。へぇ、面白そう。
そう思いながらも、俺は安定達と飲む酒を選んだ。
「清光はあの地酒飲み比べしたかった?」
外へ出ればあるじがそう聞いてきた。したかったかどうかと聞かれると、実はイエスだ。言わないけどね。
「新撰組刀のみんなで飲むお酒買ったじゃない?あのチョイスでいいか迷っただけだよ。
それに、俺はこのあと運転が待ってるから飲まないよ」
さすがに付喪神だとはいえ、飲酒運転は絶対にやっちゃいけないことだ。
飲酒運転、ダメ!絶対!だよ。
「むしろあるじこそ飲めばよかったのに。おでん屋の時よりも今のお店のお酒なら遥かに美味しいでしょ。地酒飲み比べとか楽しいだろうし」
うちの本丸の酒飲み刀剣なら、大喜びで飲むだろうな……。
あでも、飲み比べないでどれも美味い美味い言いながら飲んで終わりになりそう。
ま、美味しく飲めればいいんだし、そういう飲み方でも間違いじゃないんだけどね。
「店内全体にお酒の強いにおいが漂うような度数が高そうなお酒。それを何杯も飲み比べするなんて……酔ったら困るわ」
たしかにすごい匂いだった。悪い匂いじゃなかったのがまた困る。
八岐大蛇や鬼が惹かれたお酒の誘惑も、こんな感じだったのかなあ。なんて思いつつ。
酔ったら困る、と下を向くあるじの手をするりと取る。あるじが上を向き、俺の顔をやっと見た。
「酔ったあるじは可愛いから大丈夫だよ」
とった手を俺の頬に滑らせて、俺はあるじの視線を独り占めした。
みるみる赤くなるあるじに俺の顔から笑みが溢れる。
「ばか。車酔いの事よ!」
「ははは、知ってる。
でもあるじ、お酒飲んでないのに顔真っ赤だよ。匂いだけで酔っちゃったんじゃない?
俺が介抱してあげよっか」
耳元でささやけば余計赤くなってしまった。
あーあ、あるじったら顔から湯気が出そうだね。やりすぎちゃったかな?
でもこれで、花街のことを指摘された時の仕返しができたね。
やられたらすぐにやり返さないと。ついでに、ころころと変わるあるじの表情も見れるし最高だよね。
「清光ぅーーー!」
「あはははは!」