とうらぶの短いお話
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栄養補給と休憩を堪能し終え、また園内を散策する。
あるじが鞄から扇風機を取り出した。
「こんなのでもないよりマシね」
「携帯用の扇風機と水分は欠かせないね。あるじが持ってきていて良かったよ」
「ええ、これだけ暑いんだもの。なかったらと思うと怖い。
はい、清光にも風を当ててあげる〜」
「ありがと」
アロマオイルを染み込ませて使えるそれは、あるじが好んでつけている香水の香りを風と一緒にふんわり運んできた。
ま、この香水も俺があるじにあげたものなんだけどね。
俺をイメージして作ってみた香水。まさかまさか、それをあるじがドンピシャだ、なんて愛用してくれるとは思わなかったけれど。
歌仙や長谷部が悔しそうにしてたっけ。
「あ、近すぎたわね。ごめんなさい」
「いーよいーよ。近くないと風が届かなくなっちゃう。距離は気にしないで」
小さな扇風機を囲むと、どうしてもさらに密着する体勢になる。
たしかにお互い外に出ている腕なんかも、汗に濡れている。それほど暑いんだ。
でも、こうして密着できる距離はとても喜ばしい。
相手は大好きなあるじだよ?腕がぶつかってもきもちわるいなんて、全く思わない。
ぴっとりくっついたなら、そのまま離れられなくなりそうだ。
匂いも相まって、ああ、なんと愛い。
俺達刀剣男士とあるじの間に、ソーシャルディスタンスなんて必要ない。
そうこうしてる間に、反対側の入り口付近に着いた。
そこにはなんと、俺が探していた幟が。
「!き、金箔ソフト!!」
つい、声が大きくなる。
俺はあるじの手を握ったまま、そこまで駆けた。長谷部の機動とどっこいどっこいのフルスピードだ。
「うわー!俺これ食べたかったんだ!
ねえあるじ、食べていい!?」
「もちろんよ」
「アッ……ごめん。はしゃいじゃった。」
気がつけば、あるじの手をぶんぶん振り回していた。
そして、俺のフルスピードだ。一歩間違えれば、あるじを転ばせてしまうところだった。他でもない、あるじと手を繋いだ俺によって。
「それにその……さっき、休憩して食べたばっかりなのに、ごめん……」
「いいじゃない。せっかくきてるんだから、清光だって楽しんでいい。食べたいものがあるなら食べていいと思うの」
やばい
嬉しくて夏なのに桜が舞う。金箔ソフトじゃなくて、桜ソフトになっちゃうね。
「もー!あるじ超好きー!
俺、ちゃーんとたくさんお給金持ってきてるし、自分で買うからね!
あるじと半分こ!なんだからね!!」
「はいはい」
俺はニッコニコで、金箔ソフトを購入した。
うお、ひとつ千円かー。プラチナだとさらに二倍の値段なんだ。高いなー。
少しばかり高価なお値段だけど、観光地だし使われている金箔は一枚まるのまんま。金箔の帽子被ってるみたいだ。
だから高くても仕方ない気がする。
アイスの部分もすごく濃厚なのにさっぱりとしてるから、大満足の買い食いだった。
こんな美味しいもの食べたこと、安定には内緒ね?
あと、やっぱり写真映えはすごくする。
ついつい、金箔以上にキラキラした目をしながら、何度もあるじと顔を並べて写真を撮ってしまった。
少し恥ずかしいところを見せちゃった気がするけど、これからはかっこいい俺でいるから、あーるじ、許してね?
るんるん気分で歩いていけば瓢箪の形をした、瓢池が。奥には翠の滝が流れ落ち、マイナスイオンを発しながらたゆたう水面。
苔むした石塔や、夕顔邸が美しかった。おすすめ。
近くの懐かしい建造物などを巡りながら、入ってきた方角へとぐるぅり、戻る。
途中に佇む時雨亭などは、まるで初期の本丸だ。普段いる時代は、これよりはるか未来なのに、本丸の形状は昔式。
刀剣男士が落ち着くようにとの設計だろうけど、それならあるじの元の生活に合わせたってよかったんじゃないかな、と思う。
刀剣男士はそれまでの生活様式が確立してるあるじ達と違って、生活や体の動かし方を一から覚えるのだからいくらでも覚えようがある。
「うちの本丸も、昔はあれくらいの大きさだったねえ」
「ええ。初めて刀剣男士を。歌仙を降ろした時を思い出すわ」
「へえ……」
懐かしそうに目を細めるあるじは、きっと歌仙のことばかり考えてる。
ああやっぱり、俺が初期刀だったらな。
歌仙への信頼、親愛、そういうものは他の刀剣男士へ与えられるものとは違う、特別なものだ。
あるじは山姥切にも何か思うことがあるみたいだけど、俺が心配するような何かではないしそこはいいとして。
いいなあ、歌仙が羨ましいなあ。いつだって悋気を覚えてしまう。
可愛がってもらってるし、愛してもらってるのはわかってるんだけどね。
少しばかりの胸の痛みを感じながら、兼六園の膝元にある、金澤神社にお参りさせてもらった。
付喪神が神社に手を合わせるのはおかしいって?別にいいじゃんねえ?
ここには水で視るという水みくじがある。
あるじがもっと俺を見てくれますように。
そう願いながら浮かべたそれは、大大吉だった。やった!
「水に浮かべると文字が浮かぶって有名なやつよね。……あら、私のは中吉ね。
それにしても、御朱印帳も持参してくればよかったわ」
「ここって御朱印も有名だもんね。じゃ、次持ってくればいいんじゃない?」
「もー。そう簡単に来れる場所じゃないでしょう?」
「簡単じゃなくても来れるなら、行けるも同然。また来るぜ!っていう明確な意思さえあれば大丈夫。
だってもう、今ここにあるじは来てるじゃない。今回だって、行くぜ!って思ったからこれたんでしょ?違う?」
思いはいだく事で、願う事で本当になる。
言葉にするのも同じ。いや、言葉にすればそれは言霊になり、真実になる。
だからこそ、今ここに来れているのだ。
「その通りだわ。……冬にも来たいわね。清光が教えてくれた蟹面食べなくちゃ!」
「ねー。美味しいおでんに、冬が本番の美味しい海鮮食べなくちゃだ。
あとね、唐崎松も実を言うと冬の方が綺麗なんだよ。雪吊りが施されるから」
「あらそうなの?それはぜひ行かなくてはね」
その時は、お隣の金沢城公園も行かないとな、なんて思う。
だって本丸に今後必要になってくるかもしれない、石落としや鉄砲窓についても学べるだろうから。
あるじが鞄から扇風機を取り出した。
「こんなのでもないよりマシね」
「携帯用の扇風機と水分は欠かせないね。あるじが持ってきていて良かったよ」
「ええ、これだけ暑いんだもの。なかったらと思うと怖い。
はい、清光にも風を当ててあげる〜」
「ありがと」
アロマオイルを染み込ませて使えるそれは、あるじが好んでつけている香水の香りを風と一緒にふんわり運んできた。
ま、この香水も俺があるじにあげたものなんだけどね。
俺をイメージして作ってみた香水。まさかまさか、それをあるじがドンピシャだ、なんて愛用してくれるとは思わなかったけれど。
歌仙や長谷部が悔しそうにしてたっけ。
「あ、近すぎたわね。ごめんなさい」
「いーよいーよ。近くないと風が届かなくなっちゃう。距離は気にしないで」
小さな扇風機を囲むと、どうしてもさらに密着する体勢になる。
たしかにお互い外に出ている腕なんかも、汗に濡れている。それほど暑いんだ。
でも、こうして密着できる距離はとても喜ばしい。
相手は大好きなあるじだよ?腕がぶつかってもきもちわるいなんて、全く思わない。
ぴっとりくっついたなら、そのまま離れられなくなりそうだ。
匂いも相まって、ああ、なんと愛い。
俺達刀剣男士とあるじの間に、ソーシャルディスタンスなんて必要ない。
そうこうしてる間に、反対側の入り口付近に着いた。
そこにはなんと、俺が探していた幟が。
「!き、金箔ソフト!!」
つい、声が大きくなる。
俺はあるじの手を握ったまま、そこまで駆けた。長谷部の機動とどっこいどっこいのフルスピードだ。
「うわー!俺これ食べたかったんだ!
ねえあるじ、食べていい!?」
「もちろんよ」
「アッ……ごめん。はしゃいじゃった。」
気がつけば、あるじの手をぶんぶん振り回していた。
そして、俺のフルスピードだ。一歩間違えれば、あるじを転ばせてしまうところだった。他でもない、あるじと手を繋いだ俺によって。
「それにその……さっき、休憩して食べたばっかりなのに、ごめん……」
「いいじゃない。せっかくきてるんだから、清光だって楽しんでいい。食べたいものがあるなら食べていいと思うの」
やばい
嬉しくて夏なのに桜が舞う。金箔ソフトじゃなくて、桜ソフトになっちゃうね。
「もー!あるじ超好きー!
俺、ちゃーんとたくさんお給金持ってきてるし、自分で買うからね!
あるじと半分こ!なんだからね!!」
「はいはい」
俺はニッコニコで、金箔ソフトを購入した。
うお、ひとつ千円かー。プラチナだとさらに二倍の値段なんだ。高いなー。
少しばかり高価なお値段だけど、観光地だし使われている金箔は一枚まるのまんま。金箔の帽子被ってるみたいだ。
だから高くても仕方ない気がする。
アイスの部分もすごく濃厚なのにさっぱりとしてるから、大満足の買い食いだった。
こんな美味しいもの食べたこと、安定には内緒ね?
あと、やっぱり写真映えはすごくする。
ついつい、金箔以上にキラキラした目をしながら、何度もあるじと顔を並べて写真を撮ってしまった。
少し恥ずかしいところを見せちゃった気がするけど、これからはかっこいい俺でいるから、あーるじ、許してね?
るんるん気分で歩いていけば瓢箪の形をした、瓢池が。奥には翠の滝が流れ落ち、マイナスイオンを発しながらたゆたう水面。
苔むした石塔や、夕顔邸が美しかった。おすすめ。
近くの懐かしい建造物などを巡りながら、入ってきた方角へとぐるぅり、戻る。
途中に佇む時雨亭などは、まるで初期の本丸だ。普段いる時代は、これよりはるか未来なのに、本丸の形状は昔式。
刀剣男士が落ち着くようにとの設計だろうけど、それならあるじの元の生活に合わせたってよかったんじゃないかな、と思う。
刀剣男士はそれまでの生活様式が確立してるあるじ達と違って、生活や体の動かし方を一から覚えるのだからいくらでも覚えようがある。
「うちの本丸も、昔はあれくらいの大きさだったねえ」
「ええ。初めて刀剣男士を。歌仙を降ろした時を思い出すわ」
「へえ……」
懐かしそうに目を細めるあるじは、きっと歌仙のことばかり考えてる。
ああやっぱり、俺が初期刀だったらな。
歌仙への信頼、親愛、そういうものは他の刀剣男士へ与えられるものとは違う、特別なものだ。
あるじは山姥切にも何か思うことがあるみたいだけど、俺が心配するような何かではないしそこはいいとして。
いいなあ、歌仙が羨ましいなあ。いつだって悋気を覚えてしまう。
可愛がってもらってるし、愛してもらってるのはわかってるんだけどね。
少しばかりの胸の痛みを感じながら、兼六園の膝元にある、金澤神社にお参りさせてもらった。
付喪神が神社に手を合わせるのはおかしいって?別にいいじゃんねえ?
ここには水で視るという水みくじがある。
あるじがもっと俺を見てくれますように。
そう願いながら浮かべたそれは、大大吉だった。やった!
「水に浮かべると文字が浮かぶって有名なやつよね。……あら、私のは中吉ね。
それにしても、御朱印帳も持参してくればよかったわ」
「ここって御朱印も有名だもんね。じゃ、次持ってくればいいんじゃない?」
「もー。そう簡単に来れる場所じゃないでしょう?」
「簡単じゃなくても来れるなら、行けるも同然。また来るぜ!っていう明確な意思さえあれば大丈夫。
だってもう、今ここにあるじは来てるじゃない。今回だって、行くぜ!って思ったからこれたんでしょ?違う?」
思いはいだく事で、願う事で本当になる。
言葉にするのも同じ。いや、言葉にすればそれは言霊になり、真実になる。
だからこそ、今ここに来れているのだ。
「その通りだわ。……冬にも来たいわね。清光が教えてくれた蟹面食べなくちゃ!」
「ねー。美味しいおでんに、冬が本番の美味しい海鮮食べなくちゃだ。
あとね、唐崎松も実を言うと冬の方が綺麗なんだよ。雪吊りが施されるから」
「あらそうなの?それはぜひ行かなくてはね」
その時は、お隣の金沢城公園も行かないとな、なんて思う。
だって本丸に今後必要になってくるかもしれない、石落としや鉄砲窓についても学べるだろうから。