とうらぶの短いお話
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歴史博物館を後にした俺達は、予約しておいたホテルへと車を走らせた。
利便性が高い周囲の建造物、交通、様々な店を横目にたどり着いたそこは、金沢駅の目の前のホテルだった。立地いいなあ。
駅前にはかの有名な鼓門がどっしり座しているし、荷物を置いたら遅い昼食とお土産を買いに行きがてら、鼓門も見に行こう。
世界でも綺麗な駅番付で上位に入るほどの金沢駅だ。そういう観光も楽しみだな。
「結構上の階がとれたのね。街並みと山がよく見える。
清光はどっちのベッド使う?」
「うええっ!お、俺はどっちでもいいよ!?」
意識しちゃうからいきなり寝具の話なんてしないで!?
あるじとこんなこじんまりしたビジネスホテルで二人きりで泊まるなんて初めてなんだから!
脈アリかも!なんて思っただけで、何もする気はないよ!?真名だって知らないしさあ!?
真名知ってても無体を働こうなんてことも俺は思わないけど、でも二人きりだよ??
ツインルームってやつだから、寝具こそ別だけど手を伸ばせば届きそうな距離にあるじがいるんだよ??
緊張するよね!?緊張しないような、心臓に毛が生えてるレアで新しい刀剣男士いるなら出てこいやこらぁ!富士札使うからさあ!!
こほん、俺もちょっとテンパりすぎたかも。
暑いし少しだけ疲れてるのかもね。うん、暑さと疲れのせいにしよ。疲労度は黄色でもないけど。
……結局俺が扉側。あるじが窓側になった。
遡行軍が現世まで現れることはまずないと思うけど、もし現れたら俺が扉からやってきた奴らを片っ端から倒す予定で。
俺の練度?初期の頃からいたからそれ相当の高さだよ。
「ふー……、焦った」
ばふ、と寝具に横になれば、私室のものよりも遥かに広いそれに体が沈み込む。
鼻に届くのは、清潔な布団の香り。
目に入るのは自分の手や足なのに、それがあるじの肢体の想像に容易に変わる。
やばい、落ち着かせようとしたのに、何考えてんの俺!頭の中に叱咤してくる安定を召喚して、俺は煩悩を振り払う。
仕上げには、あるじが淹れてくれた即席茶を飲んで、だ。
「重い荷物も置いたし、と。清光、そろそろ外に行きましょうか」
「うぉあ!?う、うん、そうだね!!
……着替えたの?」
「汗かいちゃったから軽くね」
身軽な服装に着替えてきたあるじが俺の手を取る。
ほのかにかおるあるじの匂いと、汗拭きシートの清々しく甘い、薄荷と苺の香りにくらくらする。
俺は付喪神。俺は刀剣男士。俺はあるじよりもすごく年上の神様……。
いつもなら褒める言葉が出てくるところだけれど、胸がどきどきしてしまった俺は何も言えず、ちょっぴり変わった自己暗示を胸にただあるじに従った。
駅前で迎えてくれたのは、能楽加賀宝生に使われる鼓をイメージして作られた巨大な鼓門だ。
金沢に来たらこれは見とけ!ってよく言われるやつだね。
「大きい……風格あるわね〜……螺旋状にねじれた木材が組み合わされてできてるのね。でもなんで鼓なのかしら」
「ここらでは前田利家の時代から、ずっと能楽が愛されてきたんだ。時代を経ていくごとに宝生流っていう流派が好まれてきて、そこに登場する鼓が目の前の鼓門ってワケ。
『金沢へ行くと松の上から謡が降ってくる』なんて言われてるほど、加賀では能楽が盛んだったのを、門に採用したってところじゃない?」
「そういえば、今も能が見れるところもあるみたいだものね……」
「そーね。
まあ、能楽の辺りや明日行く予定の兼六園の事なんかは俺よりもあるじよりも、前田達のほうが詳しいかもね」
俺は能楽自体は見たことないけど、生まれがここだから記憶にほんのちょっぴり組み込まれている。
だからさわりくらいはこうして説明ができた。残りは、前田に頼むのがいい。
「でも今回ここにいるのは清光でしょ。私は、清光の口から聞きたいと思ったんだけど、だめかな」
「〜〜〜っ!」
「どうしたの?清光お顔真っ赤。熱中症?」
「あーもう!ほんっと、そういうとこだよ!!」
俺の一言であるじも赤くなり、あるじの一言で俺も赤くなる。
その繰り返しが続いてるのは俺もわかってるし、なんならお互い様なのはわかるけど。
でもでも!このいたちごっこを止めてくれそうな安定に今すぐ来てほしい!
切にそう思った。
実際暑いのは暑いし、熱中症にならないうちに俺たちは駅の中へ入る。
もっと言えば、駅の中にあるお土産スポットの金沢百番街だ。
でもまずはかるい腹ごなしが先だ。だってお昼食べてないからね。
残念ながら時間の関係上、空いている食事処は少なく、昼間からお酒が飲める居酒屋形式の、金沢おでんの店へ入ることに。
「清光はお酒飲まないの?」
注文を終え、頬杖ついて聞いてくるあるじを目の前に、俺はぐいー、とお冷を煽る。
あ、熱った体に冷たい水がめちゃくちゃ美味い。生き返る〜。
「飲まないよ、あるじは飲むの?」
「いいえ、清光が飲まないのなら、私もやめておくわ」
「別に俺のことは気にしないで飲んでいいのにー」
「清光こそ、神様なんだから飲めばいいのに」
日本の神はお酒が好き。例外なく俺もお酒は好きだけど、ここにあるじを守れる刀剣男士は俺しかいない。何かあった時に困るから、酔うわけにはいかないんだ。
何度も言うけど、遡行軍がここにくるなんて、万が一、いや。億が一の確率だろうけども。
鰹出汁でじっくりと煮込まれた金沢おでんが白飯とともに届く。
一部の酒飲み刀剣男士は、おでんに白飯!?なんて言ってきそうだけど、俺は白飯でおでんたべるのも嫌いじゃない。
「車麩のおでんなんて珍しいね。じゅわっとつゆがしみててとっても美味しい」
「赤巻きとか車麩を具にするのは金沢おでんの特徴なんだよ。
冬じゃないから蟹面はないみたいだけどね」
他の地域では見かけない具材を煮込むのもここならでは。
ちなみに蟹面っていう蟹のおでんが出るのは12月だけっていうのが通常だから、旅行するならその12月がおすすめ。
兼六園的にもその季節だね。
軽く腹ごなしをしてお土産購入という戦場へ出陣するあるじと俺。
明日は少しだけ観光してまた運転して帰る予定だし、お土産は今ここでほとんど買ってしまう算段を立ててるからだ。
「新幹線とも直結だからかな?たくさんのお土産屋があるわね。初めて来たけどびっくりしちゃった」
「金沢はお土産にも力入れてるからね〜」
出陣、なんて言葉は使ったけど、俺たちは楽しみながら土産物屋を回れている。
加賀八幡起上最中に、金箔のカステラ、銘菓柴舟、あんころ餅。
たくさん、たくさん買った。買ったものは甘いものが多いけども。
なんてったって、本丸にはたくさんの刀剣男士達もいるし大量に必要になるのは当然のことだよね。
「この『紙ふうせん』ってお菓子なんて、歌仙が好きそうよね」
「……そーね」
ニッコニコでお土産を選ぶあるじの想いの先にほんのちょっぴり嫉妬するけど、歌仙相手じゃしょうがないかもね。
俺はどう頑張っても、初期刀にはなれないのだから。
そんなことのために歴史を変えるわけにもいかないし、それじゃ遡行軍とやってることは一緒。
ちなみに金箔の顔パックや、金箔の浮かぶコーヒーも買った。
へへへ、これは俺のだ。
歌仙に負けないよう。他の刀剣男士に遅れを取らないよう。
金箔アイテムを使って、俺はもっともっとかわいくなるんだー。
利便性が高い周囲の建造物、交通、様々な店を横目にたどり着いたそこは、金沢駅の目の前のホテルだった。立地いいなあ。
駅前にはかの有名な鼓門がどっしり座しているし、荷物を置いたら遅い昼食とお土産を買いに行きがてら、鼓門も見に行こう。
世界でも綺麗な駅番付で上位に入るほどの金沢駅だ。そういう観光も楽しみだな。
「結構上の階がとれたのね。街並みと山がよく見える。
清光はどっちのベッド使う?」
「うええっ!お、俺はどっちでもいいよ!?」
意識しちゃうからいきなり寝具の話なんてしないで!?
あるじとこんなこじんまりしたビジネスホテルで二人きりで泊まるなんて初めてなんだから!
脈アリかも!なんて思っただけで、何もする気はないよ!?真名だって知らないしさあ!?
真名知ってても無体を働こうなんてことも俺は思わないけど、でも二人きりだよ??
ツインルームってやつだから、寝具こそ別だけど手を伸ばせば届きそうな距離にあるじがいるんだよ??
緊張するよね!?緊張しないような、心臓に毛が生えてるレアで新しい刀剣男士いるなら出てこいやこらぁ!富士札使うからさあ!!
こほん、俺もちょっとテンパりすぎたかも。
暑いし少しだけ疲れてるのかもね。うん、暑さと疲れのせいにしよ。疲労度は黄色でもないけど。
……結局俺が扉側。あるじが窓側になった。
遡行軍が現世まで現れることはまずないと思うけど、もし現れたら俺が扉からやってきた奴らを片っ端から倒す予定で。
俺の練度?初期の頃からいたからそれ相当の高さだよ。
「ふー……、焦った」
ばふ、と寝具に横になれば、私室のものよりも遥かに広いそれに体が沈み込む。
鼻に届くのは、清潔な布団の香り。
目に入るのは自分の手や足なのに、それがあるじの肢体の想像に容易に変わる。
やばい、落ち着かせようとしたのに、何考えてんの俺!頭の中に叱咤してくる安定を召喚して、俺は煩悩を振り払う。
仕上げには、あるじが淹れてくれた即席茶を飲んで、だ。
「重い荷物も置いたし、と。清光、そろそろ外に行きましょうか」
「うぉあ!?う、うん、そうだね!!
……着替えたの?」
「汗かいちゃったから軽くね」
身軽な服装に着替えてきたあるじが俺の手を取る。
ほのかにかおるあるじの匂いと、汗拭きシートの清々しく甘い、薄荷と苺の香りにくらくらする。
俺は付喪神。俺は刀剣男士。俺はあるじよりもすごく年上の神様……。
いつもなら褒める言葉が出てくるところだけれど、胸がどきどきしてしまった俺は何も言えず、ちょっぴり変わった自己暗示を胸にただあるじに従った。
駅前で迎えてくれたのは、能楽加賀宝生に使われる鼓をイメージして作られた巨大な鼓門だ。
金沢に来たらこれは見とけ!ってよく言われるやつだね。
「大きい……風格あるわね〜……螺旋状にねじれた木材が組み合わされてできてるのね。でもなんで鼓なのかしら」
「ここらでは前田利家の時代から、ずっと能楽が愛されてきたんだ。時代を経ていくごとに宝生流っていう流派が好まれてきて、そこに登場する鼓が目の前の鼓門ってワケ。
『金沢へ行くと松の上から謡が降ってくる』なんて言われてるほど、加賀では能楽が盛んだったのを、門に採用したってところじゃない?」
「そういえば、今も能が見れるところもあるみたいだものね……」
「そーね。
まあ、能楽の辺りや明日行く予定の兼六園の事なんかは俺よりもあるじよりも、前田達のほうが詳しいかもね」
俺は能楽自体は見たことないけど、生まれがここだから記憶にほんのちょっぴり組み込まれている。
だからさわりくらいはこうして説明ができた。残りは、前田に頼むのがいい。
「でも今回ここにいるのは清光でしょ。私は、清光の口から聞きたいと思ったんだけど、だめかな」
「〜〜〜っ!」
「どうしたの?清光お顔真っ赤。熱中症?」
「あーもう!ほんっと、そういうとこだよ!!」
俺の一言であるじも赤くなり、あるじの一言で俺も赤くなる。
その繰り返しが続いてるのは俺もわかってるし、なんならお互い様なのはわかるけど。
でもでも!このいたちごっこを止めてくれそうな安定に今すぐ来てほしい!
切にそう思った。
実際暑いのは暑いし、熱中症にならないうちに俺たちは駅の中へ入る。
もっと言えば、駅の中にあるお土産スポットの金沢百番街だ。
でもまずはかるい腹ごなしが先だ。だってお昼食べてないからね。
残念ながら時間の関係上、空いている食事処は少なく、昼間からお酒が飲める居酒屋形式の、金沢おでんの店へ入ることに。
「清光はお酒飲まないの?」
注文を終え、頬杖ついて聞いてくるあるじを目の前に、俺はぐいー、とお冷を煽る。
あ、熱った体に冷たい水がめちゃくちゃ美味い。生き返る〜。
「飲まないよ、あるじは飲むの?」
「いいえ、清光が飲まないのなら、私もやめておくわ」
「別に俺のことは気にしないで飲んでいいのにー」
「清光こそ、神様なんだから飲めばいいのに」
日本の神はお酒が好き。例外なく俺もお酒は好きだけど、ここにあるじを守れる刀剣男士は俺しかいない。何かあった時に困るから、酔うわけにはいかないんだ。
何度も言うけど、遡行軍がここにくるなんて、万が一、いや。億が一の確率だろうけども。
鰹出汁でじっくりと煮込まれた金沢おでんが白飯とともに届く。
一部の酒飲み刀剣男士は、おでんに白飯!?なんて言ってきそうだけど、俺は白飯でおでんたべるのも嫌いじゃない。
「車麩のおでんなんて珍しいね。じゅわっとつゆがしみててとっても美味しい」
「赤巻きとか車麩を具にするのは金沢おでんの特徴なんだよ。
冬じゃないから蟹面はないみたいだけどね」
他の地域では見かけない具材を煮込むのもここならでは。
ちなみに蟹面っていう蟹のおでんが出るのは12月だけっていうのが通常だから、旅行するならその12月がおすすめ。
兼六園的にもその季節だね。
軽く腹ごなしをしてお土産購入という戦場へ出陣するあるじと俺。
明日は少しだけ観光してまた運転して帰る予定だし、お土産は今ここでほとんど買ってしまう算段を立ててるからだ。
「新幹線とも直結だからかな?たくさんのお土産屋があるわね。初めて来たけどびっくりしちゃった」
「金沢はお土産にも力入れてるからね〜」
出陣、なんて言葉は使ったけど、俺たちは楽しみながら土産物屋を回れている。
加賀八幡起上最中に、金箔のカステラ、銘菓柴舟、あんころ餅。
たくさん、たくさん買った。買ったものは甘いものが多いけども。
なんてったって、本丸にはたくさんの刀剣男士達もいるし大量に必要になるのは当然のことだよね。
「この『紙ふうせん』ってお菓子なんて、歌仙が好きそうよね」
「……そーね」
ニッコニコでお土産を選ぶあるじの想いの先にほんのちょっぴり嫉妬するけど、歌仙相手じゃしょうがないかもね。
俺はどう頑張っても、初期刀にはなれないのだから。
そんなことのために歴史を変えるわけにもいかないし、それじゃ遡行軍とやってることは一緒。
ちなみに金箔の顔パックや、金箔の浮かぶコーヒーも買った。
へへへ、これは俺のだ。
歌仙に負けないよう。他の刀剣男士に遅れを取らないよう。
金箔アイテムを使って、俺はもっともっとかわいくなるんだー。