その1、二度目の審神者業
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「次は刀装……出陣の為の装備をするよ」
そう言って案内したのは鍛刀部屋にほど近い一室。
神棚と神鏡で祀られたそこにも資材の山が積まれており、それらを使って刀装を作成するよう指示されている。
だが、これを作る事までこちらはしない。
その代わりに、資材はある程度好きな量を使っても構わない。
「ここで出陣支度を整えるようにしてね。
そして、自分の刀装は自分で作る事」
自分が装備する刀装くらいは自分で作る、それは私の本丸でのルールだ。
そうする事で、刀剣男士のやる気を引き出そうという魂胆だ。
もちろん、何度やっても消し炭しかできないという時には、こちらが手伝う事もあろうが…。
「武具の拵えは得意でね。これくらい、わけないさ」
「難しいなぁ、手伝ってくれない?」
「こらこら。諦めるのが早すぎやしないか?」
歌仙は得意なようだが、乱は少し苦手意識が先行してしまっている。
「乱、もうちょっと頑張ってみよっか」
「うーん……わかった」
作ると言っても、実際に焼いたり冷やしたりといった、鍛刀部屋のような作業をするのとは違う。
刀剣男士が元々持っている神力を資材に移して、創り上げるのだ。
しばしの時を経て、漸く出来上がったようだ。
それぞれの刀装たるキラキラした宝珠の出来栄えをこちらに見せつつ、多種多様の反応をする。得意と言っていただけはあり、歌仙は上手くいったようだが、乱はしゅんとうなだれていた。
「よし、出来た、特上だ。どうだいこの輝き…」
「うん。お疲れ様」
「あー。僕の並だぁ……」
「初めてなんだし仕方ないよ。失敗すると消し炭になるだけだからまだ良い方でしょ?」
「うえー、消し炭……。だったら並のがマシだね!」
そしてすぐ、出来上がったばかりの刀装を装備して完了。
「うん、悪くない武具だ」
「き・せ・か・え!」
「お着替え済んだところで次は、食事しましょ」
具合を確かめ満足そうな二人に、今度は初めての食事を勧める。
大丈夫、食材はたくさんあったし、現世には戻れなくとも買おうと思えばすぐ買いに行ける万屋というのがある。
それに古風な日本家屋の割に、電化製品も充実しているため、今日のように米を炊いてはいなくとも、素晴らしき神器レトルトの温めご飯があるのだから。
「わーい!ご飯!一度食べてみたかったんだー!!」
「主、僕らは刀剣だ。食物を摂取する必要はないんじゃないかな?」
「じゃあ、自分のお腹に聞いてみてよ」
そろそろ昼餉の時間帯。
静かにして耳を澄ましてみると。
ぐー。
「…………」
歌仙のお腹が、鳴っていた。
恥ずかしさに歌仙の自尊心が少し崩れる。
「腹が減っては戦はできぬって言うでしょ」
「……確かに、違いないね」
そこから三人ぞろぞろ連れ立ち、最初に歌仙と顔を合わせた大広間へ向かう。
刀剣男士が増えたらここが、皆で食卓を囲んだり、談笑したり、出陣や戦いについて話し合ったりする場所になるだろう。
端に積まれた座布団を敷き、私は二人にそこに座ってしばし待つよう指示する。
そして厨に十分程度篭り、冷蔵庫に入っていた菜っ葉と油揚げの味噌汁、出汁巻卵、梅干しの入ったお握り、暖かい緑茶をササッと用意した。
「時間的にお握りとお味噌汁、卵焼きくらいしか出来なかったけど、はい、どうぞ」
「わぁ、美味しそう!」
「もしかして、というか、もしかしなくてもこれは君が……?」
「そうだけど?」
歌仙の指が震えている。
乱はというと、目をキラキラさせて喜んでいた。
お握りや味噌汁くらいで喜んでもらえるなら嬉しいものだ。
「あ、歌仙は食べ方がわからないとか……だったり?」
「そんなのわかるに決まってるだろう?前の持ち主達の食事風景とて何度も見てきたよ」
「えー。ボクわかんない~上手くお箸持てないぃ~。
あるじさん、食・べ・さ・せ・て?」
上目遣いで大きな目をくりくりさせ、あーんと口を開ける乱。
なんとあざとい可愛さを持つ刀剣男士だ。
思わず、乱の望むまま、その口に箸を近づけてしまった。
「乱。わがまま言うんじゃない。主も、 甘やかすんじゃない!」
「ご、ごめんなさいっ!」
「はぁーい。いただきます!」
歌仙に怒られてしまった。
その歌仙は乱に続き、料理にようやく箸を付けた。
「いただきます。ん、どれも美味しいね。ただ……」
「ただ?」
「食事を作るのはしばらく僕がやってもいいかい?」
そう言われてしまった。
出陣もあり他の内番だってあるのに、何故?と不思議そうにしていると、言いづらそうに歌仙が理由を語った。
「食事は特に顕著なんだが、審神者が『作り出す物』には、神気が宿る。だからもったいないし、怖くて食べ辛いんだ」
「ボクは食べるよ!だって美味しいもん。まるであるじさんを食べてるみたいに……ネ?」
ペロ、と乱が舌舐めずりしたあと、にっこりと笑みを浮かべる。
それを見て私は、ゾクッとした。
取り込まれそうな、危うさを湛えた瞳を見た瞬間、どんなに可愛くても、やはり神様だと改めて理解してしまったのだ。
以前は、あまり仲良くしてこなかった刀剣達。
あの時は、彼らが神様だなんてそこまで理解していなかった気がする。
そう言って案内したのは鍛刀部屋にほど近い一室。
神棚と神鏡で祀られたそこにも資材の山が積まれており、それらを使って刀装を作成するよう指示されている。
だが、これを作る事までこちらはしない。
その代わりに、資材はある程度好きな量を使っても構わない。
「ここで出陣支度を整えるようにしてね。
そして、自分の刀装は自分で作る事」
自分が装備する刀装くらいは自分で作る、それは私の本丸でのルールだ。
そうする事で、刀剣男士のやる気を引き出そうという魂胆だ。
もちろん、何度やっても消し炭しかできないという時には、こちらが手伝う事もあろうが…。
「武具の拵えは得意でね。これくらい、わけないさ」
「難しいなぁ、手伝ってくれない?」
「こらこら。諦めるのが早すぎやしないか?」
歌仙は得意なようだが、乱は少し苦手意識が先行してしまっている。
「乱、もうちょっと頑張ってみよっか」
「うーん……わかった」
作ると言っても、実際に焼いたり冷やしたりといった、鍛刀部屋のような作業をするのとは違う。
刀剣男士が元々持っている神力を資材に移して、創り上げるのだ。
しばしの時を経て、漸く出来上がったようだ。
それぞれの刀装たるキラキラした宝珠の出来栄えをこちらに見せつつ、多種多様の反応をする。得意と言っていただけはあり、歌仙は上手くいったようだが、乱はしゅんとうなだれていた。
「よし、出来た、特上だ。どうだいこの輝き…」
「うん。お疲れ様」
「あー。僕の並だぁ……」
「初めてなんだし仕方ないよ。失敗すると消し炭になるだけだからまだ良い方でしょ?」
「うえー、消し炭……。だったら並のがマシだね!」
そしてすぐ、出来上がったばかりの刀装を装備して完了。
「うん、悪くない武具だ」
「き・せ・か・え!」
「お着替え済んだところで次は、食事しましょ」
具合を確かめ満足そうな二人に、今度は初めての食事を勧める。
大丈夫、食材はたくさんあったし、現世には戻れなくとも買おうと思えばすぐ買いに行ける万屋というのがある。
それに古風な日本家屋の割に、電化製品も充実しているため、今日のように米を炊いてはいなくとも、素晴らしき神器レトルトの温めご飯があるのだから。
「わーい!ご飯!一度食べてみたかったんだー!!」
「主、僕らは刀剣だ。食物を摂取する必要はないんじゃないかな?」
「じゃあ、自分のお腹に聞いてみてよ」
そろそろ昼餉の時間帯。
静かにして耳を澄ましてみると。
ぐー。
「…………」
歌仙のお腹が、鳴っていた。
恥ずかしさに歌仙の自尊心が少し崩れる。
「腹が減っては戦はできぬって言うでしょ」
「……確かに、違いないね」
そこから三人ぞろぞろ連れ立ち、最初に歌仙と顔を合わせた大広間へ向かう。
刀剣男士が増えたらここが、皆で食卓を囲んだり、談笑したり、出陣や戦いについて話し合ったりする場所になるだろう。
端に積まれた座布団を敷き、私は二人にそこに座ってしばし待つよう指示する。
そして厨に十分程度篭り、冷蔵庫に入っていた菜っ葉と油揚げの味噌汁、出汁巻卵、梅干しの入ったお握り、暖かい緑茶をササッと用意した。
「時間的にお握りとお味噌汁、卵焼きくらいしか出来なかったけど、はい、どうぞ」
「わぁ、美味しそう!」
「もしかして、というか、もしかしなくてもこれは君が……?」
「そうだけど?」
歌仙の指が震えている。
乱はというと、目をキラキラさせて喜んでいた。
お握りや味噌汁くらいで喜んでもらえるなら嬉しいものだ。
「あ、歌仙は食べ方がわからないとか……だったり?」
「そんなのわかるに決まってるだろう?前の持ち主達の食事風景とて何度も見てきたよ」
「えー。ボクわかんない~上手くお箸持てないぃ~。
あるじさん、食・べ・さ・せ・て?」
上目遣いで大きな目をくりくりさせ、あーんと口を開ける乱。
なんとあざとい可愛さを持つ刀剣男士だ。
思わず、乱の望むまま、その口に箸を近づけてしまった。
「乱。わがまま言うんじゃない。主も、 甘やかすんじゃない!」
「ご、ごめんなさいっ!」
「はぁーい。いただきます!」
歌仙に怒られてしまった。
その歌仙は乱に続き、料理にようやく箸を付けた。
「いただきます。ん、どれも美味しいね。ただ……」
「ただ?」
「食事を作るのはしばらく僕がやってもいいかい?」
そう言われてしまった。
出陣もあり他の内番だってあるのに、何故?と不思議そうにしていると、言いづらそうに歌仙が理由を語った。
「食事は特に顕著なんだが、審神者が『作り出す物』には、神気が宿る。だからもったいないし、怖くて食べ辛いんだ」
「ボクは食べるよ!だって美味しいもん。まるであるじさんを食べてるみたいに……ネ?」
ペロ、と乱が舌舐めずりしたあと、にっこりと笑みを浮かべる。
それを見て私は、ゾクッとした。
取り込まれそうな、危うさを湛えた瞳を見た瞬間、どんなに可愛くても、やはり神様だと改めて理解してしまったのだ。
以前は、あまり仲良くしてこなかった刀剣達。
あの時は、彼らが神様だなんてそこまで理解していなかった気がする。