とうらぶの短いお話
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「地金も板目肌に、杢目肌……相変わらず全然違う。
一本一本全く反り具合も違い、魅力たっぷりねえ……。
ん、あれ?この刀は……」
あるじの足が、一振りの刀の前で止まった。
「ああ、わかる?この刀は俺の生みの刀匠、六代目長兵衛清光が鍛えた刀だよ」
「どうりで。刃文が似ていると思ったわ」
直刃で若干の湾が入った、美しい刃は俺自身ととても似ている。
まあ、今日は持ってきていないけど。現世旅行に持ってきてしまったら、それこそ銃刀法違反だ。
本体がないというのは心許ないけれど、なんとかなるでしょ。
六代目清光は貧窮救済施設である非人小屋で暮らすが故に非人清光との異名を持ち、その困窮した生活の中でも熱心にそして心を込めて一打ち一打ち、俺を打ち拵えた。
薙刀、脇指、短刀、太刀、もちろん打刀も打った。環境さえ良ければ、きっともっとたくさん打って残しただろう。
あの人は、刀鍛冶としては無類の天才肌だった。
天才肌なんて、沖田くんと同じだね。鼻が高い。
沖田くんの元にいた頃とは違う、初めの頃の俺の思い出。
懐かしいその頃に想いを馳せていれば、あるじがようやく動き出したのがわかった。
「あるじったらやっと見終わったの?遅いから足に根っこ生えちゃうとこだったよ」
「清光だって、しばらく見ていたでしょ。おあいこよ」
刀のコーナーを見終わり拵や刀装具へと視線を向ければ、そこにはたくさんの煌びやかなものが。
あちらこちらに金箔が使われているようだった。
うーん。蜂須賀みたいにキラキラしてるな。
「加賀藩だからかしら。金工師の技が拵や刀装具に表されてるよね。
清光はどういうのがお好み?
「この中なら、俺はこれかな。雪花文鞘がかわいい」
金は使われているが、派手すぎない。雪の結晶のような紋様が散りばめられたその鞘は美しくもとてもかわいかった。
最初からこれくらいのデコり具合で生まれたなんて羨ましいや。
「あでも、こっちの脇指の拵や小柄も可愛すぎない?これいいなー。
みてよあるじ、これなんか鍔が栗鼠だよ栗鼠。綺麗だしかわいいし……なんなのもう、小柄もたくさん種類があっておしゃれ……」
無い物ねだりが止まらない。
「俺もこういうのだったらもっとかわいかったのかな。もっともっとあるじにかわいがってもらえ……」
「清光」
振り向くと、ぴとりと鼻先にあるじの指がつけられた。
そして向けられる真剣な目。
「何言ってるの?私の『加州清光』は今のままでも十分に可愛くてかっこいい私の誇りよ」
曇りなきまなこでそう言われる。
そのまっすぐで純粋な言葉が、眩しくてたまらない。後光すら差して見える。
これじゃ、どっちが神様かわかったもんじゃない。
「でも、そうね……雪花文鞘の鍔に刻まれている白澤はかわいい気がする」
「エッ……。ごめんちょっとあるじのその気持ちはわからないや」
「そうかな?」
あるじは動物とされる生き物は、なんであろうと大抵は可愛いと連呼している。ま、白澤は動物ではないんだけども。
でも、自分もそのノリでいつもかわいいって言われている気がしてしまい、少しモヤモヤする。
さっきは気分をあげられたのに、今度は落とされた気分。
あーあ、他と一緒の扱いかよ。俺だけ、なんてわがまま言わないけど、もっと俺を可愛がってほしい。見て欲しいなあ。
それさえあれば、あるじからの愛って完成されてるだろうに。
展示物を見終わった俺達は、まず厠に寄った。……が、俺が出たところでは、あるじが他の審神者らしき人と会話していた。
男の!審神者だ!
今回の刀の話をしてるようで、熱が入ってきて白熱しているのはわかるけど……。
ちょっと距離が近すぎないかな!?
キープ!ディスタンス!!
これは俺のものだ。
ズンズンと目の前まで進み、眼力をこめて睨みつければ。
相手の審神者だけではない。おつきの刀剣男士もが、恐怖に震えて挨拶もそこそこに去って行った。
「ああー大事な同志があー」
はあ……。
人見知りしがちで、あまり他の人間とやりとりをしないあるじ。刀剣を見にきたことで、そのハードルが下がったのはいいけど、余計な人間が寄るのはいただけない。
何あの笑顔。刀剣男士に向けていれば十分な綺麗なあの笑顔を、知らない男にまで向けないでほしい。
しょんぼりするあるじに、俺はまたもや注意した。せっかくの旅行だし、あまり言いたくはないんだけれどね。
「あるじ。
いっぱいいっぱい、気持ちや感想を吐き出したいなら、俺がいる。
あるじの髪の毛一本残さずに聞いてやっから、旅行の最中くらい俺の隣にいてくれる?」
髪をひとすくい、口付ける。
そうすれば、あるじは真っ赤になって何度も何度も頷いた。
「うん、ならよーし。
さて、せっかく来たんだし、記念にもっともっと写真撮ろっか。細かいことは気にしなーい!精神でね」
「え、ちょ、そんな鶯丸みたいなこと言って……は、清光!?」
「ぴーすぴーす!はいちーず!」
入り口付近のとは違う、フォトスポットになっている窓に移動し、俺はあわてるあるじと肩を並べ、シャッターボタンを何度も押した。
まだまだ何か言いたげなあるじをかわし、お土産を買ってから車に乗り込む。いやー、審神者専用のお土産コーナーはすごかったな。
あの場所もまた、白熱してた。
ああ、暑い。
まだ陽が高いから暑いのかな。それとも、赤くなったあるじに脈アリかも?なんて気持ちが弾んでいるからいつまでも暑いのかな。
一本一本全く反り具合も違い、魅力たっぷりねえ……。
ん、あれ?この刀は……」
あるじの足が、一振りの刀の前で止まった。
「ああ、わかる?この刀は俺の生みの刀匠、六代目長兵衛清光が鍛えた刀だよ」
「どうりで。刃文が似ていると思ったわ」
直刃で若干の湾が入った、美しい刃は俺自身ととても似ている。
まあ、今日は持ってきていないけど。現世旅行に持ってきてしまったら、それこそ銃刀法違反だ。
本体がないというのは心許ないけれど、なんとかなるでしょ。
六代目清光は貧窮救済施設である非人小屋で暮らすが故に非人清光との異名を持ち、その困窮した生活の中でも熱心にそして心を込めて一打ち一打ち、俺を打ち拵えた。
薙刀、脇指、短刀、太刀、もちろん打刀も打った。環境さえ良ければ、きっともっとたくさん打って残しただろう。
あの人は、刀鍛冶としては無類の天才肌だった。
天才肌なんて、沖田くんと同じだね。鼻が高い。
沖田くんの元にいた頃とは違う、初めの頃の俺の思い出。
懐かしいその頃に想いを馳せていれば、あるじがようやく動き出したのがわかった。
「あるじったらやっと見終わったの?遅いから足に根っこ生えちゃうとこだったよ」
「清光だって、しばらく見ていたでしょ。おあいこよ」
刀のコーナーを見終わり拵や刀装具へと視線を向ければ、そこにはたくさんの煌びやかなものが。
あちらこちらに金箔が使われているようだった。
うーん。蜂須賀みたいにキラキラしてるな。
「加賀藩だからかしら。金工師の技が拵や刀装具に表されてるよね。
清光はどういうのがお好み?
「この中なら、俺はこれかな。雪花文鞘がかわいい」
金は使われているが、派手すぎない。雪の結晶のような紋様が散りばめられたその鞘は美しくもとてもかわいかった。
最初からこれくらいのデコり具合で生まれたなんて羨ましいや。
「あでも、こっちの脇指の拵や小柄も可愛すぎない?これいいなー。
みてよあるじ、これなんか鍔が栗鼠だよ栗鼠。綺麗だしかわいいし……なんなのもう、小柄もたくさん種類があっておしゃれ……」
無い物ねだりが止まらない。
「俺もこういうのだったらもっとかわいかったのかな。もっともっとあるじにかわいがってもらえ……」
「清光」
振り向くと、ぴとりと鼻先にあるじの指がつけられた。
そして向けられる真剣な目。
「何言ってるの?私の『加州清光』は今のままでも十分に可愛くてかっこいい私の誇りよ」
曇りなきまなこでそう言われる。
そのまっすぐで純粋な言葉が、眩しくてたまらない。後光すら差して見える。
これじゃ、どっちが神様かわかったもんじゃない。
「でも、そうね……雪花文鞘の鍔に刻まれている白澤はかわいい気がする」
「エッ……。ごめんちょっとあるじのその気持ちはわからないや」
「そうかな?」
あるじは動物とされる生き物は、なんであろうと大抵は可愛いと連呼している。ま、白澤は動物ではないんだけども。
でも、自分もそのノリでいつもかわいいって言われている気がしてしまい、少しモヤモヤする。
さっきは気分をあげられたのに、今度は落とされた気分。
あーあ、他と一緒の扱いかよ。俺だけ、なんてわがまま言わないけど、もっと俺を可愛がってほしい。見て欲しいなあ。
それさえあれば、あるじからの愛って完成されてるだろうに。
展示物を見終わった俺達は、まず厠に寄った。……が、俺が出たところでは、あるじが他の審神者らしき人と会話していた。
男の!審神者だ!
今回の刀の話をしてるようで、熱が入ってきて白熱しているのはわかるけど……。
ちょっと距離が近すぎないかな!?
キープ!ディスタンス!!
これは俺のものだ。
ズンズンと目の前まで進み、眼力をこめて睨みつければ。
相手の審神者だけではない。おつきの刀剣男士もが、恐怖に震えて挨拶もそこそこに去って行った。
「ああー大事な同志があー」
はあ……。
人見知りしがちで、あまり他の人間とやりとりをしないあるじ。刀剣を見にきたことで、そのハードルが下がったのはいいけど、余計な人間が寄るのはいただけない。
何あの笑顔。刀剣男士に向けていれば十分な綺麗なあの笑顔を、知らない男にまで向けないでほしい。
しょんぼりするあるじに、俺はまたもや注意した。せっかくの旅行だし、あまり言いたくはないんだけれどね。
「あるじ。
いっぱいいっぱい、気持ちや感想を吐き出したいなら、俺がいる。
あるじの髪の毛一本残さずに聞いてやっから、旅行の最中くらい俺の隣にいてくれる?」
髪をひとすくい、口付ける。
そうすれば、あるじは真っ赤になって何度も何度も頷いた。
「うん、ならよーし。
さて、せっかく来たんだし、記念にもっともっと写真撮ろっか。細かいことは気にしなーい!精神でね」
「え、ちょ、そんな鶯丸みたいなこと言って……は、清光!?」
「ぴーすぴーす!はいちーず!」
入り口付近のとは違う、フォトスポットになっている窓に移動し、俺はあわてるあるじと肩を並べ、シャッターボタンを何度も押した。
まだまだ何か言いたげなあるじをかわし、お土産を買ってから車に乗り込む。いやー、審神者専用のお土産コーナーはすごかったな。
あの場所もまた、白熱してた。
ああ、暑い。
まだ陽が高いから暑いのかな。それとも、赤くなったあるじに脈アリかも?なんて気持ちが弾んでいるからいつまでも暑いのかな。