とうらぶの短いお話
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『加州と石川へ大加州刀展行った話』
***
「ふぁ、あ……」
今俺とあるじがいるのは、夜明けまでまだ遠い夜の中。大都会東京の下。
俺のあるじ、深見は薩摩国に配属されてはいるが、元は関東……武蔵国出身の審神者である。
現世に帰省として帰ることは少ないけれど、こうして時折、何かを思い出したかのように現世で公開されている刀剣を、その刀剣男士を連れて見に行くことがある。
「清光、大丈夫?まだ眠いわよね」
「んーん、夜戦だと思えばどうってことない。大丈夫」
今回は俺、加州清光が現世の2020年代に石川で開催されている『大加州刀展』なるものに行くことになった。
あるじとずっと二人っきりだし、誉高い役回り。
俺も行ってみたいってずっと思ってたし嬉しさこそあっても、不満なんてこれっぽっちもなかった。
「でも、欲を言えば加賀国の本部から行けるなら近くてよかったんだけどねー」
「そうね。私もそれは思ったわ。でも東京が大もとの本部だからそこからの出立になっても仕方ないわね。こちらの都合だし……。
少し遠出の遠征だと思いましょうか」
これについても不満はない。運転が嫌なわけでも遠いのが嫌なわけでも無い。
なにが不満って、長距離移動で大事なあるじの身体が凝ったり疲れたりすることなんだよね。
転送先を加賀国にしてくれれば済んだことなのに。政府の吝ん坊め。
「だね。俺が車の免許持っててよかったよ」
借りた車の鍵を、指でクルクルと回す。
そうでーす。
俺は刀剣男士だけど、人間が持っているような車の免許証を取得してるんだ。
どこかの左文字がトラクター運転してるくらいだよ?刀剣男士が車の運転免許証持っていてもおかしくないよね。
え?畑で使う分にはトラクターに免許証は必要ないって?うん知ってる。
だからこそ俺はその上をいくために、ちゃんとした免許証をとったんだよ。どやさ!
いやー、出陣に遠征、内番……そういうのもこなしながら自動車学校に通うのは大変だったねー。さすが俺。
というわけで。
俺たちはまだ暗いうちに、借りた車に乗り込んで加賀……石川へと出発した。
高速道路とやらも道も大丈夫。俺はできる刀剣男士なので、ナビの使い方も交通ルールもバッチリだ。
大事なあるじを乗せてるし、なるべく安全運転でそこそこ飛ばすよ〜!
飛ばすのは変わらない。オラオラオラオラ〜!
運転中だから前しか見れないけど、あるじは眠いことだろう。
窓の外を見つめているその気配でわかる。
「あるじ、休憩するサービスエリアに着くまでくらいは寝てていいんだよ?」
「ううん、大丈夫」
「でも昨日も、旅行前なのに出陣や遠征の采配とか遅くまでやってて疲れてるでしょ」
「本当に大丈夫よ、清光。
私ね、今日が楽しみすぎて眠れなかったの。だから眠れないなら出陣する部隊や遠征先について見直してようかなって思って」
「あるじ……」
そんなにも俺とのデートを楽しみに……。嬉しすぎて、一瞬だけ走行速度が上がった。
ふう、いけないいけない。周りに他の車がいなくてよかった。
「じゃあ、眠くなったら無理せずに寝ること!あるじが眠ってる間についちゃっててもびっくりしないでよ?」
「うん。ありがとう清光。
早く着くのは嬉しいけど、くれぐれも安全運転でお願いね」
「う゛、わかってるって!」
さっき一瞬速度が上がったの、あるじにはバレてたみたい。
その後あるじはラヂオから時折流れてくる懐かしの曲を口遊みながら、俺が飽きないようにと会話することに努めたみたいだった。
最近の新撰組刀のこと、万屋街の新商品、どこそこのカフェーのメニューが美味しいだの、他愛のない、でもとても楽しい会話になった。
「ねえ、清光は座布団本当にいらないの?長距離運転で疲れちゃうわよ」
貸そうか?と言われたのは、腰の下に敷かれた低反発高機能座布団。
せめて腰を少しでも労れるようにと持ってきた審神者愛用の座布団と、抱き枕よろしく抱かれてるクッションである。
長距離だとわかってたし車も借りてるから少し大荷物でも平気だからね。そういうの持ってくるのはありだと思う。
俺はドリンクホルダーに置かれたアイスコーヒーで喉を湿しながら、微かに笑い飛ばした。
「俺はいーの。
変に腰の位置が変わると逆に運転しづらいのよー。疲れたらその都度サービスエリアとかで休憩するし気にしないであるじが使って。
そのクッションだってあるじのお気に入りでしょ」
「そうだけど……疲れたら本当に早く休憩してね」
一瞬だけちらっと見たあるじは、心底心配するかのように、自分の抱えるクッションをむぎゅう、と力いっぱい抱きしめた。
いいなあ、そのクッションになりたい。なんて思ってしまう。
煩悩を振り払うかのように、俺はハンドルをしっかりと握った。
あまりにも心配するので、俺は何度かパーキングエリアやサービスエリアに寄って休憩した。
うーん。休憩ばっかりしてると、到着時刻がどんどん遅くなっちゃうんだけどな。
ま、車から降りて伸びをすると、凝り固まった体がバキバキと音を立てて伸ばされて気持ちいいからよしとする。
ずっと座ってると、エコノミークラス症候群?っていうおっかない病に侵されるらしいことを薬研も言ってたし。
しかも、俺じゃなくて一番大切なあるじがかかるのだ。
休憩大事。
「清光、お腹空かない?軽く何か食べましょ」
時間を見れば、いつもはとっくの昔に朝餉を場終えて内番の一つもこなし終えるくらい。
運転で気を張っていたから、空腹なんて忘れてたぜ。
思い出したらお腹すいた。
「うん。朝ごはん食べようか」
こじんまりとしたサービスエリアのフードコートで頼んだのは、越中国名物の氷見うどん。俺もあるじも、どこかへ行くならできる限り地の物を食べたがるからだ。
そう考えると、加賀……石川は食事面は美味しいものだらけで期待十分。楽しみだ。
白海老の出汁につけて食べる冷たい氷見うどんは、ツルツルでコシも粘りも十分。喉越し良く歯応え抜群でいうことが無しだった。
「氷見うどんは江戸の頃からの富山の名物ね。白海老も富山湾でしか採れない希少なもの。この出汁、甘みがあって美味しい……」
「うん、美味しいね。こういうのも厨の刀剣男士にお土産できるといいよねー」
ねえ知ってる?一番美味しい理由は、だいすきなあるじが隣にいるからなんだよ。
***
「ふぁ、あ……」
今俺とあるじがいるのは、夜明けまでまだ遠い夜の中。大都会東京の下。
俺のあるじ、深見は薩摩国に配属されてはいるが、元は関東……武蔵国出身の審神者である。
現世に帰省として帰ることは少ないけれど、こうして時折、何かを思い出したかのように現世で公開されている刀剣を、その刀剣男士を連れて見に行くことがある。
「清光、大丈夫?まだ眠いわよね」
「んーん、夜戦だと思えばどうってことない。大丈夫」
今回は俺、加州清光が現世の2020年代に石川で開催されている『大加州刀展』なるものに行くことになった。
あるじとずっと二人っきりだし、誉高い役回り。
俺も行ってみたいってずっと思ってたし嬉しさこそあっても、不満なんてこれっぽっちもなかった。
「でも、欲を言えば加賀国の本部から行けるなら近くてよかったんだけどねー」
「そうね。私もそれは思ったわ。でも東京が大もとの本部だからそこからの出立になっても仕方ないわね。こちらの都合だし……。
少し遠出の遠征だと思いましょうか」
これについても不満はない。運転が嫌なわけでも遠いのが嫌なわけでも無い。
なにが不満って、長距離移動で大事なあるじの身体が凝ったり疲れたりすることなんだよね。
転送先を加賀国にしてくれれば済んだことなのに。政府の吝ん坊め。
「だね。俺が車の免許持っててよかったよ」
借りた車の鍵を、指でクルクルと回す。
そうでーす。
俺は刀剣男士だけど、人間が持っているような車の免許証を取得してるんだ。
どこかの左文字がトラクター運転してるくらいだよ?刀剣男士が車の運転免許証持っていてもおかしくないよね。
え?畑で使う分にはトラクターに免許証は必要ないって?うん知ってる。
だからこそ俺はその上をいくために、ちゃんとした免許証をとったんだよ。どやさ!
いやー、出陣に遠征、内番……そういうのもこなしながら自動車学校に通うのは大変だったねー。さすが俺。
というわけで。
俺たちはまだ暗いうちに、借りた車に乗り込んで加賀……石川へと出発した。
高速道路とやらも道も大丈夫。俺はできる刀剣男士なので、ナビの使い方も交通ルールもバッチリだ。
大事なあるじを乗せてるし、なるべく安全運転でそこそこ飛ばすよ〜!
飛ばすのは変わらない。オラオラオラオラ〜!
運転中だから前しか見れないけど、あるじは眠いことだろう。
窓の外を見つめているその気配でわかる。
「あるじ、休憩するサービスエリアに着くまでくらいは寝てていいんだよ?」
「ううん、大丈夫」
「でも昨日も、旅行前なのに出陣や遠征の采配とか遅くまでやってて疲れてるでしょ」
「本当に大丈夫よ、清光。
私ね、今日が楽しみすぎて眠れなかったの。だから眠れないなら出陣する部隊や遠征先について見直してようかなって思って」
「あるじ……」
そんなにも俺とのデートを楽しみに……。嬉しすぎて、一瞬だけ走行速度が上がった。
ふう、いけないいけない。周りに他の車がいなくてよかった。
「じゃあ、眠くなったら無理せずに寝ること!あるじが眠ってる間についちゃっててもびっくりしないでよ?」
「うん。ありがとう清光。
早く着くのは嬉しいけど、くれぐれも安全運転でお願いね」
「う゛、わかってるって!」
さっき一瞬速度が上がったの、あるじにはバレてたみたい。
その後あるじはラヂオから時折流れてくる懐かしの曲を口遊みながら、俺が飽きないようにと会話することに努めたみたいだった。
最近の新撰組刀のこと、万屋街の新商品、どこそこのカフェーのメニューが美味しいだの、他愛のない、でもとても楽しい会話になった。
「ねえ、清光は座布団本当にいらないの?長距離運転で疲れちゃうわよ」
貸そうか?と言われたのは、腰の下に敷かれた低反発高機能座布団。
せめて腰を少しでも労れるようにと持ってきた審神者愛用の座布団と、抱き枕よろしく抱かれてるクッションである。
長距離だとわかってたし車も借りてるから少し大荷物でも平気だからね。そういうの持ってくるのはありだと思う。
俺はドリンクホルダーに置かれたアイスコーヒーで喉を湿しながら、微かに笑い飛ばした。
「俺はいーの。
変に腰の位置が変わると逆に運転しづらいのよー。疲れたらその都度サービスエリアとかで休憩するし気にしないであるじが使って。
そのクッションだってあるじのお気に入りでしょ」
「そうだけど……疲れたら本当に早く休憩してね」
一瞬だけちらっと見たあるじは、心底心配するかのように、自分の抱えるクッションをむぎゅう、と力いっぱい抱きしめた。
いいなあ、そのクッションになりたい。なんて思ってしまう。
煩悩を振り払うかのように、俺はハンドルをしっかりと握った。
あまりにも心配するので、俺は何度かパーキングエリアやサービスエリアに寄って休憩した。
うーん。休憩ばっかりしてると、到着時刻がどんどん遅くなっちゃうんだけどな。
ま、車から降りて伸びをすると、凝り固まった体がバキバキと音を立てて伸ばされて気持ちいいからよしとする。
ずっと座ってると、エコノミークラス症候群?っていうおっかない病に侵されるらしいことを薬研も言ってたし。
しかも、俺じゃなくて一番大切なあるじがかかるのだ。
休憩大事。
「清光、お腹空かない?軽く何か食べましょ」
時間を見れば、いつもはとっくの昔に朝餉を場終えて内番の一つもこなし終えるくらい。
運転で気を張っていたから、空腹なんて忘れてたぜ。
思い出したらお腹すいた。
「うん。朝ごはん食べようか」
こじんまりとしたサービスエリアのフードコートで頼んだのは、越中国名物の氷見うどん。俺もあるじも、どこかへ行くならできる限り地の物を食べたがるからだ。
そう考えると、加賀……石川は食事面は美味しいものだらけで期待十分。楽しみだ。
白海老の出汁につけて食べる冷たい氷見うどんは、ツルツルでコシも粘りも十分。喉越し良く歯応え抜群でいうことが無しだった。
「氷見うどんは江戸の頃からの富山の名物ね。白海老も富山湾でしか採れない希少なもの。この出汁、甘みがあって美味しい……」
「うん、美味しいね。こういうのも厨の刀剣男士にお土産できるといいよねー」
ねえ知ってる?一番美味しい理由は、だいすきなあるじが隣にいるからなんだよ。