とうらぶの短いお話
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残された歌仙と深見。
顔を見合わせると、どちらからともなく卓を囲んで座りなおす。
ユキは未だ歌仙の腕だ。軸足をブレさせることなく、腕にしっかと立っている。
「はあ、やっとふたりになれたようだ」
「え?歌仙はふたりになりたかったの?」
不思議に思いながら、茶のおかわりを歌仙の茶碗に注ぎいれたためか、溢れそうになった。
ふう、危ない危ない。
「仲間が増えた今、きみとふたりっきりになれる機会なんてそうそうないからね。乱が来るまでの一刻くらいだっただろう?」
「そういえばそうね……」
「僕は主とゆっくりした刻を過ごしてみたかったんだよ」
「歌仙……」
伸ばした手で、深見の手をぎゅうと包む歌仙。
歌仙が思いを、この大事な記念日でもある今日という日の思いを深見に吐露しようとした瞬間。
「ぴぃっ!」
ユキが妨害するように甲高く鳴いた。
「おやおや、ユキ君は嫉妬してるみたいだ。別にそこまでいい雰囲気というわけじゃなかったのにね」
「歌仙もさっき清光に嫉妬してたでしょ、おあいこよ」
「……わかっていたのかい」
「あの怖い顔の中に、嫉妬の気持ちが含まれてたのはバレバレ」
クスクス笑っていると、自分は無視されていると感じたのだろう、ユキが歌仙の腕から指へ移動、ブチッ!と音が響く。
歌仙の指にあった小さなささくれをつついて、話を中断させたのだ。
ささくれは下手に取ろうとすると、下の表皮ごと引っ張られる。
血こそあまり出なくとも、地味に痛い。
「な、なんて乱暴なんだ!貴様……万死に値するぞ!」
「鳥なんだから仕方ないでしょ。歌仙、そう怒らないで。
ごめんねユキ。焼きもち焼かないで。除け者にしたわけじゃないのよ?」
遡行軍を相手取った時と同じように毛を逆立てて怒る歌仙だったが、深見の言葉に渋々従い、いかりを沈めた。
こんなちいさな動物に手を出そうものなら、それは弱いものいじめに他ならない。
何より深見の大事な家族の一員に、そんなことは出来ない。
「やれやれ、仕方ないね。
ところで主、自分の用事はいいのかい?」
いかりを鎮めると、ユキにもその空気が伝わったのか、また元気よくぱたぱた移動して、今度は深見の頭の上に乗ってしまった。
ほんと、せわしない小鳥だ。
「はいはい、まだ遊びたいってさ。
まだ時間はたっぷりあるし、もう少し遊んでから、用事は済まそうかな」
「まったく、遊びに帰ったわけじゃないんだろうが……」
ツンツン、頭の上を突かれた深見が言えば、歌仙は深くため息をついた。
「もう少しだけ。ね?」
「歌仙も一緒に遊びましょう。ほら、ユキも一緒に遊びたがってるし」
深見の願いだ。時間が許すならばダメなはずはない。
懇願して歌仙を見上げて来る深見の視線と、ユキが歌仙の顔を覗き込む視線は同じもの。
ペットは飼い主に似るというが、なるほど。この瞬間の深見と文鳥の表情は瓜二つだった。
了承がわりにユキに手を差し出せば、指ではなく、手のひらに乗りたがった。
ちいさな丸い頭でぐいぐいとあまりにも必死に押し付けるので、根負けした歌仙は手のひらを開く。
ちょこん。
そこに座るのが当然だというようにすっぽりおさまり、ユキは歌仙の手のひらにぴったりくっついた。
手のひらが深見で、ユキが近侍かと思うほどの寄り添い具合。
「せっかく遊ぼうと思ったのに歌仙に随分と懐いちゃった!」
深見が口元を隠してくすくす笑っている。
歌仙、そして文鳥。好きな者同士が仲良くしているのが嬉しいようだ。
「審神者就任から僕とずっと一緒だから、雰囲気でも移ったのかもしれないよ。ほら、動物は敏感だからね」
「雰囲気?匂いとかかしら。……同衾なんてしてないのに」
スンスン、体の匂いを嗅ぐ真似をしながら、とんでもないことを言い出す深見に、ちょうど逆手で茶を飲んでいた歌仙は吹き出しそうになった。
「ど、同衾……!きみは何を言っているんだい!?匂いとは言ってないだろう!!」
短刀じゃああるまいし、そんな事考えたこともなかった。
歌仙がドギマギしているのを知ってか知らずか、深見が歌仙の手の中のユキを撫でる。
そのゆっくりとした動きとぬくもりがユキを通し、歌仙にも伝わった。
「匂いで思い出したんだけど、ユキの羽毛の匂い、嗅いでみて」
「匂い?
………甘くていい匂いがする。まるで楓の蜜のような感じだ」
「そう。甘い匂いするでしょ。おひさまの匂いって呼んでるのよ」
ふんわりと優しく香るそれに、心が穏やかな気持ちになる。
小鳥一匹で、深見とこんなに至近距離で触れ合えるようになるなんて、ユキさまさまだ。
やれやれ。本当に懐いたのはユキか、それともこの歌仙兼定か。
顔を見合わせると、どちらからともなく卓を囲んで座りなおす。
ユキは未だ歌仙の腕だ。軸足をブレさせることなく、腕にしっかと立っている。
「はあ、やっとふたりになれたようだ」
「え?歌仙はふたりになりたかったの?」
不思議に思いながら、茶のおかわりを歌仙の茶碗に注ぎいれたためか、溢れそうになった。
ふう、危ない危ない。
「仲間が増えた今、きみとふたりっきりになれる機会なんてそうそうないからね。乱が来るまでの一刻くらいだっただろう?」
「そういえばそうね……」
「僕は主とゆっくりした刻を過ごしてみたかったんだよ」
「歌仙……」
伸ばした手で、深見の手をぎゅうと包む歌仙。
歌仙が思いを、この大事な記念日でもある今日という日の思いを深見に吐露しようとした瞬間。
「ぴぃっ!」
ユキが妨害するように甲高く鳴いた。
「おやおや、ユキ君は嫉妬してるみたいだ。別にそこまでいい雰囲気というわけじゃなかったのにね」
「歌仙もさっき清光に嫉妬してたでしょ、おあいこよ」
「……わかっていたのかい」
「あの怖い顔の中に、嫉妬の気持ちが含まれてたのはバレバレ」
クスクス笑っていると、自分は無視されていると感じたのだろう、ユキが歌仙の腕から指へ移動、ブチッ!と音が響く。
歌仙の指にあった小さなささくれをつついて、話を中断させたのだ。
ささくれは下手に取ろうとすると、下の表皮ごと引っ張られる。
血こそあまり出なくとも、地味に痛い。
「な、なんて乱暴なんだ!貴様……万死に値するぞ!」
「鳥なんだから仕方ないでしょ。歌仙、そう怒らないで。
ごめんねユキ。焼きもち焼かないで。除け者にしたわけじゃないのよ?」
遡行軍を相手取った時と同じように毛を逆立てて怒る歌仙だったが、深見の言葉に渋々従い、いかりを沈めた。
こんなちいさな動物に手を出そうものなら、それは弱いものいじめに他ならない。
何より深見の大事な家族の一員に、そんなことは出来ない。
「やれやれ、仕方ないね。
ところで主、自分の用事はいいのかい?」
いかりを鎮めると、ユキにもその空気が伝わったのか、また元気よくぱたぱた移動して、今度は深見の頭の上に乗ってしまった。
ほんと、せわしない小鳥だ。
「はいはい、まだ遊びたいってさ。
まだ時間はたっぷりあるし、もう少し遊んでから、用事は済まそうかな」
「まったく、遊びに帰ったわけじゃないんだろうが……」
ツンツン、頭の上を突かれた深見が言えば、歌仙は深くため息をついた。
「もう少しだけ。ね?」
「歌仙も一緒に遊びましょう。ほら、ユキも一緒に遊びたがってるし」
深見の願いだ。時間が許すならばダメなはずはない。
懇願して歌仙を見上げて来る深見の視線と、ユキが歌仙の顔を覗き込む視線は同じもの。
ペットは飼い主に似るというが、なるほど。この瞬間の深見と文鳥の表情は瓜二つだった。
了承がわりにユキに手を差し出せば、指ではなく、手のひらに乗りたがった。
ちいさな丸い頭でぐいぐいとあまりにも必死に押し付けるので、根負けした歌仙は手のひらを開く。
ちょこん。
そこに座るのが当然だというようにすっぽりおさまり、ユキは歌仙の手のひらにぴったりくっついた。
手のひらが深見で、ユキが近侍かと思うほどの寄り添い具合。
「せっかく遊ぼうと思ったのに歌仙に随分と懐いちゃった!」
深見が口元を隠してくすくす笑っている。
歌仙、そして文鳥。好きな者同士が仲良くしているのが嬉しいようだ。
「審神者就任から僕とずっと一緒だから、雰囲気でも移ったのかもしれないよ。ほら、動物は敏感だからね」
「雰囲気?匂いとかかしら。……同衾なんてしてないのに」
スンスン、体の匂いを嗅ぐ真似をしながら、とんでもないことを言い出す深見に、ちょうど逆手で茶を飲んでいた歌仙は吹き出しそうになった。
「ど、同衾……!きみは何を言っているんだい!?匂いとは言ってないだろう!!」
短刀じゃああるまいし、そんな事考えたこともなかった。
歌仙がドギマギしているのを知ってか知らずか、深見が歌仙の手の中のユキを撫でる。
そのゆっくりとした動きとぬくもりがユキを通し、歌仙にも伝わった。
「匂いで思い出したんだけど、ユキの羽毛の匂い、嗅いでみて」
「匂い?
………甘くていい匂いがする。まるで楓の蜜のような感じだ」
「そう。甘い匂いするでしょ。おひさまの匂いって呼んでるのよ」
ふんわりと優しく香るそれに、心が穏やかな気持ちになる。
小鳥一匹で、深見とこんなに至近距離で触れ合えるようになるなんて、ユキさまさまだ。
やれやれ。本当に懐いたのはユキか、それともこの歌仙兼定か。