とうらぶの短いお話
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「ぶふえっ……!」
深見を抱えたまま、離れの扉を器用に開け、私室兼寝室に敷いてある布団へと、まるで荷物か何かのように落とすと、鼻でも打ったか、くぐもった声が布団の下から聞こえた。
扱いが酷いって?
ここまで運んでやっただけ、ありがたいと思え。
うつらうつらしていた深見も、その小さな痛みでここがどこだかわかったのか、のそりと顔を上げて兼定を見上げた。
「兼定……まだ飲んでたのにー……もっと飲みたい……」
「はあ……ほらよ、」
私室なので冷蔵庫も常備された審神者部屋。
勝手に冷蔵庫を開ければ、ひんやりした冷気が出て来たのち、透明な容器に入った冷えた水が入っているのが目に入る。
昔はこんな水筒も、冷蔵庫なんてものもなかったのに、便利になったものだ。
ペットボトルと呼ばれたその水筒から、近くにあったグラスを勝手に拝借し注ぎ渡せば、酒と勘違いしていたか一口飲んだ深見の表情は苦々しく変化した。
「これお水じゃんか……」
口を尖らせて文句を言っているとはいえ冷たい水が喉を通るのは気持ちいいのか、深見は喉をぐびりと鳴らしてグラスの中身を飲み干した。
「ちっとは酔いがさめたかよ」
「ん……ちっとは~……」
「……まだ半分酔ってるようだな」
酔っ払いめ。
グラスを受け取ると「そのまま寝ちまえ」と言って深見を布団にぐいぐい押しやり、無理やり寝かせる。
布団の中に肩まですっぽり潜り込んだ深見を満足げに見届けると、自身は審神者部屋をあとにすべく踵を返し……。
ぐい。
「ん?」
袴の裾を小さく引っ張る深見の白く小さな手が目に入る。
まだ眠くない、ここにいろと、目が訴えかけてくる。
兼定はため息を吐き出すと、どっかと胡座をかいて深見の脇へ座り込み、一言。
「早く寝ろ」
そう告げた。
「えぇー……」
「あのなぁ、明日もこっちは出陣、それも今までと違う合戦場だ。練度的には問題はないだろうが、普段行かない合戦場だけに苦戦するかもしれねぇ。
アンタがくよくよして采配間違えてもしたら、それこそアンタの嫌う、『しなくていい怪我』するかもしれねぇんだぞ?」
出陣は毎日のこと。
時間遡行軍の殲滅のためにヒトの姿に身をやつしているのだからそれは仕方ない。
だが、本日敵の大将を討ち取ったことで、明日は違う合戦場への出陣となったのだ。
慣れた場所ならば地の利が働くが、慣れぬ場所では敵だけでなく味方の動きすら上手く読み取れない。
それをまとめる審神者の力が物を言うだろう。
「審神者はしっかり導いてくれないと困る。わかってるだろ?」
「……っ」
そう告げれば、起き上がり黙って兼定の言葉を聞いていた深見の表情が固まり、そして曇っていった。
図星でもぐさりと刺さる言葉だったか。
嗚呼、そんな表情をさせるために言ったわけじゃないというに。
年下の妹に言い聞かせるかのように、深見の頭に手をポンと置く。
「けど……負けねぇよ。アンタが導いてくれるならな。俺も頑張る。だから主殿も頑張れ」
「……うん……!そうね、頑張る……!」
そのまま髪をぐしゃぐしゃに撫でても、深見は嫌がらず、兼定の手をそっと両手で包み込んで嬉しそうだった。
深見を抱えたまま、離れの扉を器用に開け、私室兼寝室に敷いてある布団へと、まるで荷物か何かのように落とすと、鼻でも打ったか、くぐもった声が布団の下から聞こえた。
扱いが酷いって?
ここまで運んでやっただけ、ありがたいと思え。
うつらうつらしていた深見も、その小さな痛みでここがどこだかわかったのか、のそりと顔を上げて兼定を見上げた。
「兼定……まだ飲んでたのにー……もっと飲みたい……」
「はあ……ほらよ、」
私室なので冷蔵庫も常備された審神者部屋。
勝手に冷蔵庫を開ければ、ひんやりした冷気が出て来たのち、透明な容器に入った冷えた水が入っているのが目に入る。
昔はこんな水筒も、冷蔵庫なんてものもなかったのに、便利になったものだ。
ペットボトルと呼ばれたその水筒から、近くにあったグラスを勝手に拝借し注ぎ渡せば、酒と勘違いしていたか一口飲んだ深見の表情は苦々しく変化した。
「これお水じゃんか……」
口を尖らせて文句を言っているとはいえ冷たい水が喉を通るのは気持ちいいのか、深見は喉をぐびりと鳴らしてグラスの中身を飲み干した。
「ちっとは酔いがさめたかよ」
「ん……ちっとは~……」
「……まだ半分酔ってるようだな」
酔っ払いめ。
グラスを受け取ると「そのまま寝ちまえ」と言って深見を布団にぐいぐい押しやり、無理やり寝かせる。
布団の中に肩まですっぽり潜り込んだ深見を満足げに見届けると、自身は審神者部屋をあとにすべく踵を返し……。
ぐい。
「ん?」
袴の裾を小さく引っ張る深見の白く小さな手が目に入る。
まだ眠くない、ここにいろと、目が訴えかけてくる。
兼定はため息を吐き出すと、どっかと胡座をかいて深見の脇へ座り込み、一言。
「早く寝ろ」
そう告げた。
「えぇー……」
「あのなぁ、明日もこっちは出陣、それも今までと違う合戦場だ。練度的には問題はないだろうが、普段行かない合戦場だけに苦戦するかもしれねぇ。
アンタがくよくよして采配間違えてもしたら、それこそアンタの嫌う、『しなくていい怪我』するかもしれねぇんだぞ?」
出陣は毎日のこと。
時間遡行軍の殲滅のためにヒトの姿に身をやつしているのだからそれは仕方ない。
だが、本日敵の大将を討ち取ったことで、明日は違う合戦場への出陣となったのだ。
慣れた場所ならば地の利が働くが、慣れぬ場所では敵だけでなく味方の動きすら上手く読み取れない。
それをまとめる審神者の力が物を言うだろう。
「審神者はしっかり導いてくれないと困る。わかってるだろ?」
「……っ」
そう告げれば、起き上がり黙って兼定の言葉を聞いていた深見の表情が固まり、そして曇っていった。
図星でもぐさりと刺さる言葉だったか。
嗚呼、そんな表情をさせるために言ったわけじゃないというに。
年下の妹に言い聞かせるかのように、深見の頭に手をポンと置く。
「けど……負けねぇよ。アンタが導いてくれるならな。俺も頑張る。だから主殿も頑張れ」
「……うん……!そうね、頑張る……!」
そのまま髪をぐしゃぐしゃに撫でても、深見は嫌がらず、兼定の手をそっと両手で包み込んで嬉しそうだった。