とうらぶの短いお話
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ゆっくりとした歩調でしばらく歩くと、見えてくるのは梅林が素晴らしい偕楽園。
偕楽園の中に佇む小さな建造物。
それが偕楽園のシンボルとも言われる好文亭という、昔、詩歌を読んだり茶を立てたりに使われた建物だ。
どこか本丸を彷彿とさせる、古き良き日本の奥ゆかしい内装が見るものを感動させる。
「各部屋いろんな襖絵があって面白かったよね」
「うん。私の部屋も桜模様の襖にしたいな……歌仙に言ってみようかしら?」
竹、もみじ、梅、桜と部屋毎の襖絵は素晴らしく、自身が使っている執務室もあのように綺麗だったらいいのに、なんて思ってしまう。
まあ、半分冗談だけれども。
「言うなら、長谷部くんと博多くんあたりに相談するといいと思うよ」
「なんで?」
「歌仙くんは、ふたつ返事でオーケーを出してしまうだろう?資金のことを考えずにね」
「ああ、確かに」
雅担当の歌仙兼定ならば、桜模様の襖絵は喜びそうだ。
蜂須賀虎徹も同様。
逆にへし切長谷部は執務上の近侍を務めることが多く、博多藤四郎は本丸の経理担当だ。
光忠、わかっている。
そしてその最上階はまるで、天守閣。
三階建ての上階に行くと、周りの景色を360度見渡すことができる展望台のようになっており、眼下に広がる四季折々を堪能できた。
今の時期で素晴らしいのは、何と言っても梅林。
そしていつも見える千波湖との組み合わせはとても綺麗だ。
「すご……キレー……」
「ね?すごいよね……。周りの梅林を一望できるし。
そっちには千波湖、あっちには筑波山。春には桜、桜が終わったらツツジが見られるんだってさ」
光忠は笑って教えてくれた。
まるで来たことがあるかのように。
「来た事あるの?」
「さすがにここに来たことはないかなぁ?……多分」
「ふーん」
千波湖や梅林を見ていると、ふわりと風が吹いた。
風に乗って梅の花びら、それに梅の花の甘い香りが漂ってくる。
本丸に咲く四季折々の花や、桜も綺麗だが、ここの梅は本当に素晴らしい。
濃桃色に、薄紅色、真っ白なもの、色だけでもたくさんある。
その花弁の形も様々で、香りだって違う。
風が運んでくる匂いもよく嗅げば、少しずつ違う香りで胸がいっぱいになる。
「んー……風も気持ちいい!光忠と来れてよかったー」
深呼吸して、ぐーっと伸びを一つ。
その際にまた一陣、風が吹いた。
さらさらと風に揺れる、深見の長い髪。
風に遊ばれ、乱れてしまったそれを、光忠は手櫛でそっと梳いた。
「絡まっちゃうよ。ゴム貸して」
「ありがとう」
そのまま抱きしめて、腕の中に閉じ込めたい。
そんな目で光忠は審神者を見つめ、受け取った髪ゴムで軽く束ねてやった。
「ね、他の刀剣達が今日みたいに公開されたら行くの?」
「うん。みんなのこともっと知りたい。だからその刀剣男士とその刀剣を見る、それは前から決めてたことだから……」
「……やっぱり審神者だねえ」
「たまに塞ぎ込んじゃうような、だめだめな審神者ですけど、ね」
「そんな事ない。でももし、そうなっても僕が支えるよ」
「それは心強いことで」
軽口を叩きあったと思ったら、また光忠が少し真剣な面持ちになった。
刀の『燭台切光忠』を見ていた時と同じだ。
「ただ……今だけは『行かないよ』なんて言って欲しかったかな。僕、みんなにまで嫉妬しちゃうから」
「み、光忠……?」
今日の光忠はなんか変だ。
みんなに嫉妬してみたりするところとか、たまに言動がおかしい気がする。
まるで親を独り占めしておきたい、子供に似ている。
「あ、ごめん。今の僕、カッコ悪かったね。忘れて」
「……ん……わかった」
聞かなかったことには出来ないが、本人が忘れろというのであれば、忘れるようにしよう。
神様との約束は絶対だ。
偕楽園の中に佇む小さな建造物。
それが偕楽園のシンボルとも言われる好文亭という、昔、詩歌を読んだり茶を立てたりに使われた建物だ。
どこか本丸を彷彿とさせる、古き良き日本の奥ゆかしい内装が見るものを感動させる。
「各部屋いろんな襖絵があって面白かったよね」
「うん。私の部屋も桜模様の襖にしたいな……歌仙に言ってみようかしら?」
竹、もみじ、梅、桜と部屋毎の襖絵は素晴らしく、自身が使っている執務室もあのように綺麗だったらいいのに、なんて思ってしまう。
まあ、半分冗談だけれども。
「言うなら、長谷部くんと博多くんあたりに相談するといいと思うよ」
「なんで?」
「歌仙くんは、ふたつ返事でオーケーを出してしまうだろう?資金のことを考えずにね」
「ああ、確かに」
雅担当の歌仙兼定ならば、桜模様の襖絵は喜びそうだ。
蜂須賀虎徹も同様。
逆にへし切長谷部は執務上の近侍を務めることが多く、博多藤四郎は本丸の経理担当だ。
光忠、わかっている。
そしてその最上階はまるで、天守閣。
三階建ての上階に行くと、周りの景色を360度見渡すことができる展望台のようになっており、眼下に広がる四季折々を堪能できた。
今の時期で素晴らしいのは、何と言っても梅林。
そしていつも見える千波湖との組み合わせはとても綺麗だ。
「すご……キレー……」
「ね?すごいよね……。周りの梅林を一望できるし。
そっちには千波湖、あっちには筑波山。春には桜、桜が終わったらツツジが見られるんだってさ」
光忠は笑って教えてくれた。
まるで来たことがあるかのように。
「来た事あるの?」
「さすがにここに来たことはないかなぁ?……多分」
「ふーん」
千波湖や梅林を見ていると、ふわりと風が吹いた。
風に乗って梅の花びら、それに梅の花の甘い香りが漂ってくる。
本丸に咲く四季折々の花や、桜も綺麗だが、ここの梅は本当に素晴らしい。
濃桃色に、薄紅色、真っ白なもの、色だけでもたくさんある。
その花弁の形も様々で、香りだって違う。
風が運んでくる匂いもよく嗅げば、少しずつ違う香りで胸がいっぱいになる。
「んー……風も気持ちいい!光忠と来れてよかったー」
深呼吸して、ぐーっと伸びを一つ。
その際にまた一陣、風が吹いた。
さらさらと風に揺れる、深見の長い髪。
風に遊ばれ、乱れてしまったそれを、光忠は手櫛でそっと梳いた。
「絡まっちゃうよ。ゴム貸して」
「ありがとう」
そのまま抱きしめて、腕の中に閉じ込めたい。
そんな目で光忠は審神者を見つめ、受け取った髪ゴムで軽く束ねてやった。
「ね、他の刀剣達が今日みたいに公開されたら行くの?」
「うん。みんなのこともっと知りたい。だからその刀剣男士とその刀剣を見る、それは前から決めてたことだから……」
「……やっぱり審神者だねえ」
「たまに塞ぎ込んじゃうような、だめだめな審神者ですけど、ね」
「そんな事ない。でももし、そうなっても僕が支えるよ」
「それは心強いことで」
軽口を叩きあったと思ったら、また光忠が少し真剣な面持ちになった。
刀の『燭台切光忠』を見ていた時と同じだ。
「ただ……今だけは『行かないよ』なんて言って欲しかったかな。僕、みんなにまで嫉妬しちゃうから」
「み、光忠……?」
今日の光忠はなんか変だ。
みんなに嫉妬してみたりするところとか、たまに言動がおかしい気がする。
まるで親を独り占めしておきたい、子供に似ている。
「あ、ごめん。今の僕、カッコ悪かったね。忘れて」
「……ん……わかった」
聞かなかったことには出来ないが、本人が忘れろというのであれば、忘れるようにしよう。
神様との約束は絶対だ。