色々な短編的なお話
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『何もしないをしよう』
今日は仕事がない。
ダンテも仕事がないし依頼の電話もなる気配はひとつもない。
それは世の中が平和な証。いいことなんだけど。
沈黙の時間はどきどきする。
もこもこのルームウェアを着て、年末お決まりのコメディ映画……おうちで一人お留守番した子供が、侵入してきた泥棒をあのてこの手でやっつける内容の映画を見たところ。
でもそれもエンディングを迎えて、特に見るものがなかったテレビを消して。
終わっちゃった。どうしよう。
何か話さなくちゃ。会話しなくちゃ。
そう思って会話を探して慌てちゃう。
長い間一緒に暮らしていても、未だに慣れない時がある。
それがこんなにかっこいい、ダンテみたいな彼氏相手ならなおさらだよね。
ソファに二人で座って過ごす、なんでもない時間。
こちこち、と時計の秒針の音だけがひびく空間。ううん、あとあたしの心臓の音も聞こえてきそう。時計の音よりも速そうだね。
何か良い話題がどこかに落ちていればいいのに。ああ違う、話題という名の悪魔をダンテが倒しちゃったのかもしれないよね。
ちらりと、隣のダンテを盗み見る。
ダンテはリモコンを片手で弄りながら、あたしのことを凝視していた。
「落ち着かないみたいだがどうした?」
大きめの毛布でお互いを包みあっているから、あたしの視線もどこか挙動不審な動きもダンテにはすべて伝わっていた。
「別になんでもないよ。あっお夕飯の支度しなくちゃね」
ソファから立とうと腰を浮かせたところ、手を掴まれた。
「何言ってる?メシの支度終わってからテレビ見てたんだろ」
「そうでした……。
なら、おかわりのはちみつレモン淹れてくるね」
映画のお供にしていたホットのはちみつレモン。最近寒くなってきたから、少しだけジンジャーを利かせたこの飲み物は体がぽかぽかして重宝している。
これを飲むと、ハニーディッパーからとろとろゆっくり落ちるはちみつのような時間が過ごせるけど、でもその時間は終わったばかり。
飲み終えちゃったからっていうのもあるだろうし、これはもう一杯必要かな。
「なら、って。そんなにたくさん飲む必要ないだろうが。トイレ近くなるぞ」
グッと引き寄せられ、腰は再びソファに沈み込む。ああ逃げられない。
「こうやって二人きりでゆっくり過ごすの久しぶりだから、緊張してんのか?
わかる。一緒に住んでて一緒に寝ててメシだって一緒に取ってるけど、ソファでゆっくりなんて時間、なかったもんな。
お前の心臓がドキドキしてるように、オレの心臓だってドキドキしてるぞ」
あたしの手を取ったかと思うと、ダンテの胸の上に誘導される。
わ、ダンテの胸筋相変わらず硬い……ってそこじゃない。
ほんとだ、あたしほどじゃないけどドキドキしてる。
「でもだからってそんなに固くならなくてもいいだろ?セック「わー!!」……の時だって、お前こんな緊張してないじゃねぇか」
そういう時はもっと違う感じにドキドキしてる。アレと比べないでほしいし、あけすけな言葉を出さないでほしい。
ぴとり、頬に優しく触れてくる手のひら温かく。
そのボディータッチはいつもより繊細で、静かだった。
腰に回された手が、ゆるゆると抱き寄せてくる。気がついたらもっと至近距離にダンテの顔があった。
「無理に話題探して話さなくたっていい。オレ達は気を遣う関係か?違うだろ。
恋人と過ごす沈黙は愛しくて、オレにとって居心地のいい最高の時間だ。
たまには何もしないをしようぜ」
何もしないを、する?
ダンテの言葉通りに、目を見つめたまま沈黙を過ごしてみる。静かだ。
いつもならちゅーしてしまう、そんな雰囲気と距離だけど、ダンテもただただとろりとした目で見つめてくるだけ。
男らしい分厚い唇が弧をえがき、浮き上がったえくぼがかわいい。
おはなのすじも、高くてぴんと通ってる。
まつげ長いなあ。切長の目があたしをふんわりと見つめていて、その目尻がいつもよりもだいぶ下がってるのが見て取れる。
透き通るようにきらきらの澄んだ青い目には、あたしがダンテをじっと見つめる姿がはっきり映ってた。
ダンテの顔をこんな間近で観察した事、今まであったかしら。
いつもちゅーして、流されてベッドに行っちゃって……もしくはねぼすけダンテの寝顔くらいしか見てないかもしれない。狸寝入りも多いけど。
あたしの彼は、こんなにかっこよくて、でもこんなにかわいい顔してるんだね。愛しい。
思わず笑みが浮かんだ。
「どした?」
「ううん。ただ見てただけー」
「そ」
ぽすん。そのまま寄りかかる。
見つめたまま、ただただ時を過ごす。
あ……なんだかとっても落ち着いた。
あんなに早かった鼓動も、秒針の音よりゆったりとしてきている気がする。
ダンテの鼓動もまた、あたしの鼓動に合わせて落ち着いてきていた。
居心地がいい。沈黙が愛しいってこういうことなのかな。
肩肘張らず何も言わず笑い合い、そして見つめ合うだけの、会話のないこの時間もとても大切なんだね。
幸いまだ時間はある。
しばらくこのまま何もしないをしていようかな。ダンテと一緒にね。
●あとがき
DMC1ゲーム沿いの殺伐とした雰囲気ばかり書いていたので、久しぶりに日記でのSS書いた。
たまにはいいね!
今日は仕事がない。
ダンテも仕事がないし依頼の電話もなる気配はひとつもない。
それは世の中が平和な証。いいことなんだけど。
沈黙の時間はどきどきする。
もこもこのルームウェアを着て、年末お決まりのコメディ映画……おうちで一人お留守番した子供が、侵入してきた泥棒をあのてこの手でやっつける内容の映画を見たところ。
でもそれもエンディングを迎えて、特に見るものがなかったテレビを消して。
終わっちゃった。どうしよう。
何か話さなくちゃ。会話しなくちゃ。
そう思って会話を探して慌てちゃう。
長い間一緒に暮らしていても、未だに慣れない時がある。
それがこんなにかっこいい、ダンテみたいな彼氏相手ならなおさらだよね。
ソファに二人で座って過ごす、なんでもない時間。
こちこち、と時計の秒針の音だけがひびく空間。ううん、あとあたしの心臓の音も聞こえてきそう。時計の音よりも速そうだね。
何か良い話題がどこかに落ちていればいいのに。ああ違う、話題という名の悪魔をダンテが倒しちゃったのかもしれないよね。
ちらりと、隣のダンテを盗み見る。
ダンテはリモコンを片手で弄りながら、あたしのことを凝視していた。
「落ち着かないみたいだがどうした?」
大きめの毛布でお互いを包みあっているから、あたしの視線もどこか挙動不審な動きもダンテにはすべて伝わっていた。
「別になんでもないよ。あっお夕飯の支度しなくちゃね」
ソファから立とうと腰を浮かせたところ、手を掴まれた。
「何言ってる?メシの支度終わってからテレビ見てたんだろ」
「そうでした……。
なら、おかわりのはちみつレモン淹れてくるね」
映画のお供にしていたホットのはちみつレモン。最近寒くなってきたから、少しだけジンジャーを利かせたこの飲み物は体がぽかぽかして重宝している。
これを飲むと、ハニーディッパーからとろとろゆっくり落ちるはちみつのような時間が過ごせるけど、でもその時間は終わったばかり。
飲み終えちゃったからっていうのもあるだろうし、これはもう一杯必要かな。
「なら、って。そんなにたくさん飲む必要ないだろうが。トイレ近くなるぞ」
グッと引き寄せられ、腰は再びソファに沈み込む。ああ逃げられない。
「こうやって二人きりでゆっくり過ごすの久しぶりだから、緊張してんのか?
わかる。一緒に住んでて一緒に寝ててメシだって一緒に取ってるけど、ソファでゆっくりなんて時間、なかったもんな。
お前の心臓がドキドキしてるように、オレの心臓だってドキドキしてるぞ」
あたしの手を取ったかと思うと、ダンテの胸の上に誘導される。
わ、ダンテの胸筋相変わらず硬い……ってそこじゃない。
ほんとだ、あたしほどじゃないけどドキドキしてる。
「でもだからってそんなに固くならなくてもいいだろ?セック「わー!!」……の時だって、お前こんな緊張してないじゃねぇか」
そういう時はもっと違う感じにドキドキしてる。アレと比べないでほしいし、あけすけな言葉を出さないでほしい。
ぴとり、頬に優しく触れてくる手のひら温かく。
そのボディータッチはいつもより繊細で、静かだった。
腰に回された手が、ゆるゆると抱き寄せてくる。気がついたらもっと至近距離にダンテの顔があった。
「無理に話題探して話さなくたっていい。オレ達は気を遣う関係か?違うだろ。
恋人と過ごす沈黙は愛しくて、オレにとって居心地のいい最高の時間だ。
たまには何もしないをしようぜ」
何もしないを、する?
ダンテの言葉通りに、目を見つめたまま沈黙を過ごしてみる。静かだ。
いつもならちゅーしてしまう、そんな雰囲気と距離だけど、ダンテもただただとろりとした目で見つめてくるだけ。
男らしい分厚い唇が弧をえがき、浮き上がったえくぼがかわいい。
おはなのすじも、高くてぴんと通ってる。
まつげ長いなあ。切長の目があたしをふんわりと見つめていて、その目尻がいつもよりもだいぶ下がってるのが見て取れる。
透き通るようにきらきらの澄んだ青い目には、あたしがダンテをじっと見つめる姿がはっきり映ってた。
ダンテの顔をこんな間近で観察した事、今まであったかしら。
いつもちゅーして、流されてベッドに行っちゃって……もしくはねぼすけダンテの寝顔くらいしか見てないかもしれない。狸寝入りも多いけど。
あたしの彼は、こんなにかっこよくて、でもこんなにかわいい顔してるんだね。愛しい。
思わず笑みが浮かんだ。
「どした?」
「ううん。ただ見てただけー」
「そ」
ぽすん。そのまま寄りかかる。
見つめたまま、ただただ時を過ごす。
あ……なんだかとっても落ち着いた。
あんなに早かった鼓動も、秒針の音よりゆったりとしてきている気がする。
ダンテの鼓動もまた、あたしの鼓動に合わせて落ち着いてきていた。
居心地がいい。沈黙が愛しいってこういうことなのかな。
肩肘張らず何も言わず笑い合い、そして見つめ合うだけの、会話のないこの時間もとても大切なんだね。
幸いまだ時間はある。
しばらくこのまま何もしないをしていようかな。ダンテと一緒にね。
●あとがき
DMC1ゲーム沿いの殺伐とした雰囲気ばかり書いていたので、久しぶりに日記でのSS書いた。
たまにはいいね!