元拍手連載『which?』
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ザァーーー……。
激しく雨が降っては、スラム街の薄汚れたアスファルトを黒く濡らす。
こんな雨を見ているとあの日を思い出す。
双子の兄、バージルとの激しい戦い、そして決別を……。
その兄はオレが魔界に行った末、敵として現れ、最終的に自分の手にかけることとなってしまった。
それからは何をしていてもどこか張り合いのない、つまらない世界になった気がする。
まわりの世界が、この雨の日の空のように灰色に、モノクロになってしまった。
「はぁ……」
疲れたようにため息を漏らす。
雨雲を見上げていても虚しくなるだけだし、いつまでもこんなところにいてはコートが雨を吸ってどんどん重くなる。
あまり雨にいい思い出はないのだから早く事務所に戻ろう。
「ん?」
踵を返すダンテの目の端、裏路地の陰に薄汚れた黒い毛玉が目に入る。
弱ってはいるが生きているのだろう、動きは見られないがかろうじて細く息をしているであろう生き物。
小さな黒猫だ。
スラム街は弱肉強食。
強き者が弱き者を制し、敗者は去るか強者の下につくかどちらか。
それは動物にも当てはまる、否、動物ならなおさらか。
しかし見つけてしまった以上、こんな雨の中に打たれたまま放置するというのは鬼や悪魔の所業だろう。
や、半分悪魔だがそういう意味じゃなくて。
せめて雨の当たらないところに軽く移動させてやろうと、抱き上げて屋根のある路地へ連れて行く。
小さく軽くそして温かい、生き物のぬくもり。
そこへおろそうとしたところで小さなぬくもりの瞳がパチリと開いた。
悪魔の物とは異なる、例えるならそう、舐めたら甘そうなストロベリーキャンディのような朱色の、透明感のある瞳だ。
拾って欲しいと言いたいのか、何が言いたいのか、こちらをジッと見つめている。
かわいそうだが、ペットは飼えない。
……拾うわけにいかない。
こんな仕事をしていなければ、まだ飼うこともできたろうが。
「ごめんな、ウチじゃ飼えないんだ」
壊れ物を扱うようにそっとひと撫でし、下におろしてあとにする。
ネコを振り返らないように。
振り返ったネコがこちらを見ていたら、連れて帰りたくなるのをわかっているから。
その場をあとにしたところで、雨の中あの嫌な気配を感じる。
よく知った掃き溜め気配、悪魔だ。
その気配があるのは先ほどネコを置いてきた場所で……。
悪魔を放っておくという選択肢は存在しない。
まさかな、と思いながらも悪魔を討つべく来た道を足早に戻るダンテ。
バシャン……。
ザァザァと雨の降りしきる中、倒れる音が大きく響いた。
悪魔はこの人間界の生きとし生けるものすべてに刃を向ける。
小さなネコ1匹にすら。
そこにいた悪魔は布袋型の、ダンテからすれば所謂雑魚、しかしネコにはどう考えても脅威にしかなり得ない其奴ら。
その諸悪の根源たる悪魔が、倒れ伏したネコに鋭い鎌状の腕を一閃しようと迫っていた。
「ふっ……!」
その鎌がネコに届く前に、ダンテが自身の体を滑り込ませ、素手で相手の得物を掴んで防いだ。
これは相手が雑魚悪魔であり、なおかつ最強のデビルハンター・ダンテだからこそできる芸当。
「目の前で悪魔の餌食……ってのは流石に目覚めが悪いぜ?」
チラッとだけネコの容態を確認後、掴んだ鎌ごと悪魔を引き寄せヨロけた悪魔の胴に必殺の蹴りを入れる。
悪魔の体たる丸い布袋が簡単にへしゃげ、背中側からダンテの足の形がくっきりと分かるほどの威力。
中に詰まった魔界の蟲が布と布の継ぎ目から数匹漏れた。
……汚らわしい。
悪魔の体に容赦なく叩きつけられるダンテの蹴りからのアッパーカット、そしてトドメのネリチャギ。
ボッコボコに伸された悪魔は、蟲の死骸を霧散させて消えていった。
「っと、大丈夫か?……おいおい、マジかよ」
悪魔を倒したダンテがネコを確認すると、その体が熱い。
ネコの体温がどのくらいなのかは見当もつかないが、人間より高かろうともさすがにこれはまずいんではなかろうか?
やけに熱く、そして呼吸音もおかしい。
口をはくはくと開けたまま、浅く速い呼吸が繰り返されている。
倒した悪魔には毒はない、が、悪魔の持っていた細菌でも知らずのうちに食らったのか?と思うほどに、ネコは憔悴しきっていた。
このまま置いておけば、この雨と寒さで体力を奪われ、悪魔が殺さなくとも死んでしまう。
命は簡単に奪われる。
あの時の母のように。
あの時、救えなかった家族のように。
たとえネコでもこれ以上死にゆく者を見るのは嫌だ、と今度こそダンテは事務所へと連れて帰ろうと、ネコを優しく抱き上げた。
連れ帰る途中でネコが目を覚ました中、事務所へとたどり着いた。
建物内へ入り床におろされたネコは、外とは違う空間、温度、そして匂いに包まれ興味がわくのか、キョロキョロとまんまるな赤い目を動かしては同時に覚束ない足取りで動く。
「さて、と。まずはシャワーだ」
そんなネコの頭上からダンテが声をかける。
ネコは自分への声と理解しているのか、「にゃ?」と声を出してダンテを見上げた。
それから数十分後、ダンテ愛用の赤いソファーにはほかほかと湯気のあがるネコとダンテがいた。
洗われるのは得意ではないようで引っ掻かれたりはしたが、そこは半魔のダンテ。
引っ掻き傷もソファーに座る頃には治っている。
先ほどまで毛を逆立てて「フーッ」と威嚇しては尾をブンブンと振り怒っていたネコだが、今は少し落ち着いているようだ。
ダンテから離れた位置にちょこんと座っていた。
「お前の毛並み、真っ黒じゃあないんだな」
ミネラルウォーター片手に、触らせてくれなくなったネコに話しかける。
触れないのがちょっとサミシイぞ?
薄汚れていた時は埃のせいか暗い灰色に見えた。
だから、綺麗になれば闇のような漆黒になるだろうと踏んでいたのだが、現れた毛並みは黒に近い、だが決して黒と言えぬ濃紺だ。
……ついでにネコの性別はオスであることも判明した。
そろそろ触れるか?
風呂で疲弊し、さらには気が立ったネコは、ダンテがおずおずと伸ばした指をパシンと弾き飛ばした。
アッハイまだダメなんだなすみません。
「もしや……」
その時『気が立っている=空腹』などという方程式がダンテの頭によぎった。
というよりもダンテ本人が空腹なのかもしれない。
そういえばまだ昼食をとっていない。
オーケー、とりあえずはこいつのメシが先だ。
まさかネコのご機嫌取りをする日が来るとは思わなかったが、そこは便利屋としての表の仕事で培った知識。
ネコの扱いなぞ簡単だ!……多分。
コーヒーに入れるための牛乳の買い置き、それをレンジで軽くあたため、ネコの前に置いた平たい皿へと注ぎいれる。
注いだ瞬間に香る温かなミルクの甘い芳香が、ネコの嗅覚を刺激した。
やはり空腹だったかぺロと舌をつけて温度と味を確認したネコは、その後から一心不乱にホットミルクを舐め始めた。
ホットミルクを口にしている間は、その体を撫でることができた。
激しく雨が降っては、スラム街の薄汚れたアスファルトを黒く濡らす。
こんな雨を見ているとあの日を思い出す。
双子の兄、バージルとの激しい戦い、そして決別を……。
その兄はオレが魔界に行った末、敵として現れ、最終的に自分の手にかけることとなってしまった。
それからは何をしていてもどこか張り合いのない、つまらない世界になった気がする。
まわりの世界が、この雨の日の空のように灰色に、モノクロになってしまった。
「はぁ……」
疲れたようにため息を漏らす。
雨雲を見上げていても虚しくなるだけだし、いつまでもこんなところにいてはコートが雨を吸ってどんどん重くなる。
あまり雨にいい思い出はないのだから早く事務所に戻ろう。
「ん?」
踵を返すダンテの目の端、裏路地の陰に薄汚れた黒い毛玉が目に入る。
弱ってはいるが生きているのだろう、動きは見られないがかろうじて細く息をしているであろう生き物。
小さな黒猫だ。
スラム街は弱肉強食。
強き者が弱き者を制し、敗者は去るか強者の下につくかどちらか。
それは動物にも当てはまる、否、動物ならなおさらか。
しかし見つけてしまった以上、こんな雨の中に打たれたまま放置するというのは鬼や悪魔の所業だろう。
や、半分悪魔だがそういう意味じゃなくて。
せめて雨の当たらないところに軽く移動させてやろうと、抱き上げて屋根のある路地へ連れて行く。
小さく軽くそして温かい、生き物のぬくもり。
そこへおろそうとしたところで小さなぬくもりの瞳がパチリと開いた。
悪魔の物とは異なる、例えるならそう、舐めたら甘そうなストロベリーキャンディのような朱色の、透明感のある瞳だ。
拾って欲しいと言いたいのか、何が言いたいのか、こちらをジッと見つめている。
かわいそうだが、ペットは飼えない。
……拾うわけにいかない。
こんな仕事をしていなければ、まだ飼うこともできたろうが。
「ごめんな、ウチじゃ飼えないんだ」
壊れ物を扱うようにそっとひと撫でし、下におろしてあとにする。
ネコを振り返らないように。
振り返ったネコがこちらを見ていたら、連れて帰りたくなるのをわかっているから。
その場をあとにしたところで、雨の中あの嫌な気配を感じる。
よく知った掃き溜め気配、悪魔だ。
その気配があるのは先ほどネコを置いてきた場所で……。
悪魔を放っておくという選択肢は存在しない。
まさかな、と思いながらも悪魔を討つべく来た道を足早に戻るダンテ。
バシャン……。
ザァザァと雨の降りしきる中、倒れる音が大きく響いた。
悪魔はこの人間界の生きとし生けるものすべてに刃を向ける。
小さなネコ1匹にすら。
そこにいた悪魔は布袋型の、ダンテからすれば所謂雑魚、しかしネコにはどう考えても脅威にしかなり得ない其奴ら。
その諸悪の根源たる悪魔が、倒れ伏したネコに鋭い鎌状の腕を一閃しようと迫っていた。
「ふっ……!」
その鎌がネコに届く前に、ダンテが自身の体を滑り込ませ、素手で相手の得物を掴んで防いだ。
これは相手が雑魚悪魔であり、なおかつ最強のデビルハンター・ダンテだからこそできる芸当。
「目の前で悪魔の餌食……ってのは流石に目覚めが悪いぜ?」
チラッとだけネコの容態を確認後、掴んだ鎌ごと悪魔を引き寄せヨロけた悪魔の胴に必殺の蹴りを入れる。
悪魔の体たる丸い布袋が簡単にへしゃげ、背中側からダンテの足の形がくっきりと分かるほどの威力。
中に詰まった魔界の蟲が布と布の継ぎ目から数匹漏れた。
……汚らわしい。
悪魔の体に容赦なく叩きつけられるダンテの蹴りからのアッパーカット、そしてトドメのネリチャギ。
ボッコボコに伸された悪魔は、蟲の死骸を霧散させて消えていった。
「っと、大丈夫か?……おいおい、マジかよ」
悪魔を倒したダンテがネコを確認すると、その体が熱い。
ネコの体温がどのくらいなのかは見当もつかないが、人間より高かろうともさすがにこれはまずいんではなかろうか?
やけに熱く、そして呼吸音もおかしい。
口をはくはくと開けたまま、浅く速い呼吸が繰り返されている。
倒した悪魔には毒はない、が、悪魔の持っていた細菌でも知らずのうちに食らったのか?と思うほどに、ネコは憔悴しきっていた。
このまま置いておけば、この雨と寒さで体力を奪われ、悪魔が殺さなくとも死んでしまう。
命は簡単に奪われる。
あの時の母のように。
あの時、救えなかった家族のように。
たとえネコでもこれ以上死にゆく者を見るのは嫌だ、と今度こそダンテは事務所へと連れて帰ろうと、ネコを優しく抱き上げた。
連れ帰る途中でネコが目を覚ました中、事務所へとたどり着いた。
建物内へ入り床におろされたネコは、外とは違う空間、温度、そして匂いに包まれ興味がわくのか、キョロキョロとまんまるな赤い目を動かしては同時に覚束ない足取りで動く。
「さて、と。まずはシャワーだ」
そんなネコの頭上からダンテが声をかける。
ネコは自分への声と理解しているのか、「にゃ?」と声を出してダンテを見上げた。
それから数十分後、ダンテ愛用の赤いソファーにはほかほかと湯気のあがるネコとダンテがいた。
洗われるのは得意ではないようで引っ掻かれたりはしたが、そこは半魔のダンテ。
引っ掻き傷もソファーに座る頃には治っている。
先ほどまで毛を逆立てて「フーッ」と威嚇しては尾をブンブンと振り怒っていたネコだが、今は少し落ち着いているようだ。
ダンテから離れた位置にちょこんと座っていた。
「お前の毛並み、真っ黒じゃあないんだな」
ミネラルウォーター片手に、触らせてくれなくなったネコに話しかける。
触れないのがちょっとサミシイぞ?
薄汚れていた時は埃のせいか暗い灰色に見えた。
だから、綺麗になれば闇のような漆黒になるだろうと踏んでいたのだが、現れた毛並みは黒に近い、だが決して黒と言えぬ濃紺だ。
……ついでにネコの性別はオスであることも判明した。
そろそろ触れるか?
風呂で疲弊し、さらには気が立ったネコは、ダンテがおずおずと伸ばした指をパシンと弾き飛ばした。
アッハイまだダメなんだなすみません。
「もしや……」
その時『気が立っている=空腹』などという方程式がダンテの頭によぎった。
というよりもダンテ本人が空腹なのかもしれない。
そういえばまだ昼食をとっていない。
オーケー、とりあえずはこいつのメシが先だ。
まさかネコのご機嫌取りをする日が来るとは思わなかったが、そこは便利屋としての表の仕事で培った知識。
ネコの扱いなぞ簡単だ!……多分。
コーヒーに入れるための牛乳の買い置き、それをレンジで軽くあたため、ネコの前に置いた平たい皿へと注ぎいれる。
注いだ瞬間に香る温かなミルクの甘い芳香が、ネコの嗅覚を刺激した。
やはり空腹だったかぺロと舌をつけて温度と味を確認したネコは、その後から一心不乱にホットミルクを舐め始めた。
ホットミルクを口にしている間は、その体を撫でることができた。
