ダンテが去ってしまうと、その場は静寂に包まれた。
バージルの差し出した手をとってようやく立ち上がったのだが、ディーヴァはまだ腰が抜けて足がガクガクしたままだった。

生まれたての小鹿のような自分の足に、お互い苦笑を漏らす。

「大丈夫か？なんとか間に合ったようでよかった」
「うん、バージル……ありがとう。でも、なんでわかったの？」

結果、助かったからよかったが、タイミングがよすぎた感が否めない。

「俺はずっとお前の恋人、ダンテが怪しいと睨んでいた」
「そうだったんだ……」

しかし、それはおかしいとディーヴァは気がついた。

「あれ……？ダンテが恋人だってこと、バージルに言ったっけ？
ダンテが会社やめてからバージルと連絡とってたなんて、あたし聞いたことないよ」
「…………」

バージルは何かを示唆するように無言、その顔は翳りを帯びていた。