パッと見怖がっておらず、何も対策をしてこないディーヴァに業を煮やしたか、犯人の行動は次第にエスカレートしていった。

郵便受けに届く盗撮写真も毎日のようにかかってくる無言電話も相変わらず多いが、何より多いのは家に帰る度に移動している家具。
今やクッションや本だけでは飽きたらず、歯ブラシの位置や冷蔵庫に冷やしてあるドリンクの位置まで、大きいものでは鏡台の位置がわずかながらズレていた。

そして今日。
帰ると寝室のベッドシーツがグチャグチャによれ、しかもその表面が暖かいという事態に陥っていた。
まるで、ついさっきまで誰かが寝転んでいたかのように。

ドッドッドッドッ、胸が心臓を早鐘のように早め、耳鳴りがキンキンとうるさく警鐘を発する。

「誰かが……ホントにいたんだわ……さっきまでここに……」

何、……何なの！？

こわい……こわいよ。
あたし、最後は誰かに殺されるの！？

誰か、誰か助けて！！

「いやぁぁっ！！」

ディーヴァは恐怖の渦に飲み込まれ、帰ってきた姿のまま靴も履かずに玄関から飛び出した。