ハロウィンちっくな魔界遠征
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「あ、そうだ。ここは絶賛ハロウィン中なんだったら……ねえダンテ」
「うん?なんだ?」
「トリックオアトリート。
お菓子くれなきゃ悪戯しちゃうよ?」
いつもよりも妖しさと艶やかさが増してみえるその容姿で、ディーヴァの唇がにんまりとした弧を描く。
その口から出たのは、ハロウィンの合言葉。
「……オレが持ってるわけねぇだろ」
だが、菓子作りも菓子を食べるのも大好きなディーヴァと違って、欲しくなったら現地調達が主なダンテがそれらを持っているわけもなく。
やれやれと肩をすくめるのみだ。
「だいたい菓子ならお前のバッグパックん中にあるじゃねぇか。どんだけ食いたいんだ。
それに周りのちびっこ見てみろ。ハロウィンはあるみてぇだが、トリックオアトリートの文化はなさそうだぜ」
周りを見ても、菓子を強請ったり、悪戯したりの一連のやりとりは見受けられない。窓の外に見える行列の方もだ。
人間界のお菓子しかもっていないし、ここで強請られないだけ良かったといえば良かった?……のかもしれない。
「そこまでして食べたいとかじゃないんだけどなぁ。ふむ、……お菓子持ってないダンテは悪戯決定だねっ」
「悪戯……。
お、キスか?キスなんだな?キスするなら帰ってから濃厚なのでもいいんだぞー?」
「ふふふ!今、させてもらうね。目ー閉じてー」
「しょうがねぇやつだな……」
なんだかんだ嬉しそうなダンテは、おとなしく目を閉じる。
だが、いくら周りにいるのが悪魔とはいえ、よそ様がいる場所でディーヴァがキスするなど、あるわけがなかった。
きゅっ!という音が響くとともに、頬に唇とは明らかに違う冷たい感触。
「なぁ、もしかしてなんだが、今のキスと違くないか?」
「ふっふー。悪戯がキスだと誰が言った?
んふふーヒゲ描いといたよ。……油性マジックで」
ディーヴァがバックパックからさっと取り出した手鏡で、その出来栄えを見せてくる。
そこには、ネコ耳が生えても超かっこいい美丈夫ダンテ(笑)の頬に、三本ずつネコのヒゲと思しき線が描かれている姿が映っていた。
「ネコには髭生えてるもんねー」
「オイコラなんてことしてんだディーヴァ」
手でゴシとぬぐってみるも、油性だから簡単には落ちてくれない。そこはせめて水性だろ。
……相手は愛しい人ながら、なんと許しがたい所業か。
「あとで覚えてろよディーヴァ」
「ヒェッ!」
ゴゴゴゴゴという恐ろしい効果音を背負い、ディーヴァをみてくるダンテの表情は、とても夢主に向けるものではなかった。
「とはいえ、これでさらにネコの悪魔らしくなったわけか。
報復はあとにして、そろそろ移動するか」
「感謝はしてもいいけど報復はしなくていいでしょ」
「やなこった」
ディーヴァにばかり、やりたい放題はさせん。
そう呟き、ダンテはディーヴァを立ち上がらせて、エレベーターの前に引っ張っていった。
エレベーターが到着するまでの間、壁にかかる案内板をちらと見る。
なんと書いてあるかは相変わらずわからないが、ショッピングフロアとオフィスフロアでの色分け。アラビア数字での表記階数から読める通り、階によって色々な仕事場がありそうである。
「マジに上の階がオフィス群になってんだなー」
「うん。シティビルにはよくあることだけど、魔界もそうだとは知らなかったよ。ホントびっくり~」
エレベーターに乗り込んで指定された階のボタンを押すこと数分。
ゆっくりゆっくりと動く箱の中で、ディーヴァは再び喉まで上ってきた疑問を口にする。
「そういえば、なんで魔界に来ることにしたんだっけ?
チケット貰ったからって言うけど、その先が魔界なんて危ないところだとわかってるなら無視すればよかったんじゃないかな」
「聞くの今更すぎねぇか。来たのは害虫駆除のためだよ。香水は前依頼の報酬で、今回は駆除の依頼なんだ」
「わざわざ魔界に?どっちも悪魔なら自分でなんとかすればいいのにねぇ……」
「ディーヴァ、世の中の悪魔は善悪だけで分けられるわけじゃないのはもう言ったしわかってるよな」
ディーヴァのもっともな意見が出たところで、改めてダンテが悪魔の性質についての弁を振るい、ディーヴァは静かに頷く。
「いい悪魔の中には、その善さ、そして弱さゆえに強くて悪い悪魔の被害を受ける者も多い。あと単純に相性の問題とかな。
そういう善い悪魔が困ってたらディーヴァはどうする?」
「少しくらいは助けてあげたいって思う……かも」
「だろ?それだよ。
ちなみに今回の報酬も多いぞ」
「実は報酬の多さで決めたんじゃなくて?」
「……それも70%くらいある」
「70%……」
報酬で決めたなこの人。
ディーヴァはそう思い、ダンテを見る目を細めた。
「それとあたしが一緒に来る意味は?……今更だけど気になっちゃって」
「あ?ただ単にディーヴァの悪魔としての姿が見たかっただけだが?」
「なにそれ危なすぎる!」
ハハハ!と笑うダンテ。
ただの興味本位か。その程度で自分はこんな危ない場所へと来ることになったのか。
たしかにダンテに危険な目にあっては欲しくないし、手伝える依頼なら喜んで手伝う。しかし、自身がいることで助けとなるどころか余計な危険を招きそうな今回の依頼はアウトだ。
「……ってのはただの本音で、天使の力を借りようと思っただけだ。
奴らは神聖な生き物の手を嫌うらしいからな」
「本音が不穏な気が。
……ん?神聖な生き物の手を嫌うらしいってどういうこと?」
「行けばわかる。ディーヴァが天使や人間と思われなきゃ超安全ってこった。
そこだけな。そこ、だけっ!気をつけろよー」
「……なんかテキトー……」
わしゃわしゃ、と頭を豪快に撫でられた。頭の中が揺れて気持ち悪い。
今はお互い悪魔の体だからって、言葉や扱いがちょっぴり……ちょっぴりだけ、雑な気がした。
その後すぐに目的の階に到着した。
ダンテが依頼主に会いに行き、ディーヴァはその間しばしエレベーター前で待つことにした。
ダンテの消えた先、大きなパーテーションで区切られたフロア外からでも中の会話はよく聞こえ、この会社はそこそこ儲かっているのだとわかる。
少しして、依頼主である社長の悪魔と話し終えたのであろう、ダンテが足取り軽く戻ってきた。
これから仕事現場へ向かい、ササッと終わらせてそのまま帰るらしい。その手にはすでに報酬たる札束が抱えられていた。
「うわ多い」
「だろ?
これでクリスマスプレゼントは安泰だぜ」
ん?今なんか聞こえた。
なるほど、ダンテはクリスマスプレゼントの準備でお金が入り用だったのか。毎年律儀だなあ。
あたしはダンテと一緒にいられればそれでいいしプレゼントなんか気にしなくていいのに。……嬉しいけどね。
「ねぇ、今回の依頼主である相手の悪魔さんはダンテがスパーダさんの血族って知ってるの?」
「依頼主だけは、な。
ヤツは根っからの商人で、露天商の店主って身分からコツコツと努力して大会社の社長にまでのし上がったって大物よ。
オレが裏切り者の息子だとかデビルハンターだとかどうでもいいんだと」
「変わってるね。ほんとに悪魔なのその人」
「オレの目を疑うのか、弱っちいが悪魔だぞ?
……おお、そうだった。オレがちゃんと純度100%の悪魔に見えるか聞いたが、完璧に悪魔にしか見えないそうだ」
「ネコの仮装にしか見えないのにねー」
「なー?かわいい飼い猫だろ?」
にゃーん。
ネコらしく鳴いてみせ、ダンテがディーヴァに擦り寄る。……押しつぶす勢いで。
「もう少し従順なら、かわいい飼い猫かもね」
ダンテの顎に指を伸ばし、こしょこしょと掻いてみる。
ネコの習性がその身に現れているのか、小さくゴロゴロいう声が聞こえて、ダンテのもふもふ尻尾がふんわりと揺れ動いた。
「まっ!オレが悪魔に見えるなら、お前も悪魔に見えるだろ。心配せずともディーヴァは天使とも人間とも思われねぇはずさ」
来るとき、ダンテとディーヴァは同じタイミングであの香水をつけた。
ダンテが及第点をもらったのなら、安心だ。
「つまりディーヴァもちゃんと悪魔臭いってことだぜ!」
「……そりゃあどうも」
悪魔に見えるのはよかったが悪魔臭いって言われるのはちょっぴり嫌な、ディーヴァでした。
とあるフロア前につき、ダンテがそばにあったロッカーから次々になにやら取り出して、ディーヴァに渡していく。
「ほら、箒とちりとり、それとカビ取り剤……掃除用具一式な」
「えっ。掃除用具?掃除婦でもするの!?」
「ディーヴァはそうだぞ。
そしてディーヴァの相手は……ここだ」
たくさん渡された掃除用具を手にしたディーヴァの目の前、ダンテが扉を開け放つ。
がちゃ、開けられたそこに広がるのは。
「うん?なんだ?」
「トリックオアトリート。
お菓子くれなきゃ悪戯しちゃうよ?」
いつもよりも妖しさと艶やかさが増してみえるその容姿で、ディーヴァの唇がにんまりとした弧を描く。
その口から出たのは、ハロウィンの合言葉。
「……オレが持ってるわけねぇだろ」
だが、菓子作りも菓子を食べるのも大好きなディーヴァと違って、欲しくなったら現地調達が主なダンテがそれらを持っているわけもなく。
やれやれと肩をすくめるのみだ。
「だいたい菓子ならお前のバッグパックん中にあるじゃねぇか。どんだけ食いたいんだ。
それに周りのちびっこ見てみろ。ハロウィンはあるみてぇだが、トリックオアトリートの文化はなさそうだぜ」
周りを見ても、菓子を強請ったり、悪戯したりの一連のやりとりは見受けられない。窓の外に見える行列の方もだ。
人間界のお菓子しかもっていないし、ここで強請られないだけ良かったといえば良かった?……のかもしれない。
「そこまでして食べたいとかじゃないんだけどなぁ。ふむ、……お菓子持ってないダンテは悪戯決定だねっ」
「悪戯……。
お、キスか?キスなんだな?キスするなら帰ってから濃厚なのでもいいんだぞー?」
「ふふふ!今、させてもらうね。目ー閉じてー」
「しょうがねぇやつだな……」
なんだかんだ嬉しそうなダンテは、おとなしく目を閉じる。
だが、いくら周りにいるのが悪魔とはいえ、よそ様がいる場所でディーヴァがキスするなど、あるわけがなかった。
きゅっ!という音が響くとともに、頬に唇とは明らかに違う冷たい感触。
「なぁ、もしかしてなんだが、今のキスと違くないか?」
「ふっふー。悪戯がキスだと誰が言った?
んふふーヒゲ描いといたよ。……油性マジックで」
ディーヴァがバックパックからさっと取り出した手鏡で、その出来栄えを見せてくる。
そこには、ネコ耳が生えても超かっこいい美丈夫ダンテ(笑)の頬に、三本ずつネコのヒゲと思しき線が描かれている姿が映っていた。
「ネコには髭生えてるもんねー」
「オイコラなんてことしてんだディーヴァ」
手でゴシとぬぐってみるも、油性だから簡単には落ちてくれない。そこはせめて水性だろ。
……相手は愛しい人ながら、なんと許しがたい所業か。
「あとで覚えてろよディーヴァ」
「ヒェッ!」
ゴゴゴゴゴという恐ろしい効果音を背負い、ディーヴァをみてくるダンテの表情は、とても夢主に向けるものではなかった。
「とはいえ、これでさらにネコの悪魔らしくなったわけか。
報復はあとにして、そろそろ移動するか」
「感謝はしてもいいけど報復はしなくていいでしょ」
「やなこった」
ディーヴァにばかり、やりたい放題はさせん。
そう呟き、ダンテはディーヴァを立ち上がらせて、エレベーターの前に引っ張っていった。
エレベーターが到着するまでの間、壁にかかる案内板をちらと見る。
なんと書いてあるかは相変わらずわからないが、ショッピングフロアとオフィスフロアでの色分け。アラビア数字での表記階数から読める通り、階によって色々な仕事場がありそうである。
「マジに上の階がオフィス群になってんだなー」
「うん。シティビルにはよくあることだけど、魔界もそうだとは知らなかったよ。ホントびっくり~」
エレベーターに乗り込んで指定された階のボタンを押すこと数分。
ゆっくりゆっくりと動く箱の中で、ディーヴァは再び喉まで上ってきた疑問を口にする。
「そういえば、なんで魔界に来ることにしたんだっけ?
チケット貰ったからって言うけど、その先が魔界なんて危ないところだとわかってるなら無視すればよかったんじゃないかな」
「聞くの今更すぎねぇか。来たのは害虫駆除のためだよ。香水は前依頼の報酬で、今回は駆除の依頼なんだ」
「わざわざ魔界に?どっちも悪魔なら自分でなんとかすればいいのにねぇ……」
「ディーヴァ、世の中の悪魔は善悪だけで分けられるわけじゃないのはもう言ったしわかってるよな」
ディーヴァのもっともな意見が出たところで、改めてダンテが悪魔の性質についての弁を振るい、ディーヴァは静かに頷く。
「いい悪魔の中には、その善さ、そして弱さゆえに強くて悪い悪魔の被害を受ける者も多い。あと単純に相性の問題とかな。
そういう善い悪魔が困ってたらディーヴァはどうする?」
「少しくらいは助けてあげたいって思う……かも」
「だろ?それだよ。
ちなみに今回の報酬も多いぞ」
「実は報酬の多さで決めたんじゃなくて?」
「……それも70%くらいある」
「70%……」
報酬で決めたなこの人。
ディーヴァはそう思い、ダンテを見る目を細めた。
「それとあたしが一緒に来る意味は?……今更だけど気になっちゃって」
「あ?ただ単にディーヴァの悪魔としての姿が見たかっただけだが?」
「なにそれ危なすぎる!」
ハハハ!と笑うダンテ。
ただの興味本位か。その程度で自分はこんな危ない場所へと来ることになったのか。
たしかにダンテに危険な目にあっては欲しくないし、手伝える依頼なら喜んで手伝う。しかし、自身がいることで助けとなるどころか余計な危険を招きそうな今回の依頼はアウトだ。
「……ってのはただの本音で、天使の力を借りようと思っただけだ。
奴らは神聖な生き物の手を嫌うらしいからな」
「本音が不穏な気が。
……ん?神聖な生き物の手を嫌うらしいってどういうこと?」
「行けばわかる。ディーヴァが天使や人間と思われなきゃ超安全ってこった。
そこだけな。そこ、だけっ!気をつけろよー」
「……なんかテキトー……」
わしゃわしゃ、と頭を豪快に撫でられた。頭の中が揺れて気持ち悪い。
今はお互い悪魔の体だからって、言葉や扱いがちょっぴり……ちょっぴりだけ、雑な気がした。
その後すぐに目的の階に到着した。
ダンテが依頼主に会いに行き、ディーヴァはその間しばしエレベーター前で待つことにした。
ダンテの消えた先、大きなパーテーションで区切られたフロア外からでも中の会話はよく聞こえ、この会社はそこそこ儲かっているのだとわかる。
少しして、依頼主である社長の悪魔と話し終えたのであろう、ダンテが足取り軽く戻ってきた。
これから仕事現場へ向かい、ササッと終わらせてそのまま帰るらしい。その手にはすでに報酬たる札束が抱えられていた。
「うわ多い」
「だろ?
これでクリスマスプレゼントは安泰だぜ」
ん?今なんか聞こえた。
なるほど、ダンテはクリスマスプレゼントの準備でお金が入り用だったのか。毎年律儀だなあ。
あたしはダンテと一緒にいられればそれでいいしプレゼントなんか気にしなくていいのに。……嬉しいけどね。
「ねぇ、今回の依頼主である相手の悪魔さんはダンテがスパーダさんの血族って知ってるの?」
「依頼主だけは、な。
ヤツは根っからの商人で、露天商の店主って身分からコツコツと努力して大会社の社長にまでのし上がったって大物よ。
オレが裏切り者の息子だとかデビルハンターだとかどうでもいいんだと」
「変わってるね。ほんとに悪魔なのその人」
「オレの目を疑うのか、弱っちいが悪魔だぞ?
……おお、そうだった。オレがちゃんと純度100%の悪魔に見えるか聞いたが、完璧に悪魔にしか見えないそうだ」
「ネコの仮装にしか見えないのにねー」
「なー?かわいい飼い猫だろ?」
にゃーん。
ネコらしく鳴いてみせ、ダンテがディーヴァに擦り寄る。……押しつぶす勢いで。
「もう少し従順なら、かわいい飼い猫かもね」
ダンテの顎に指を伸ばし、こしょこしょと掻いてみる。
ネコの習性がその身に現れているのか、小さくゴロゴロいう声が聞こえて、ダンテのもふもふ尻尾がふんわりと揺れ動いた。
「まっ!オレが悪魔に見えるなら、お前も悪魔に見えるだろ。心配せずともディーヴァは天使とも人間とも思われねぇはずさ」
来るとき、ダンテとディーヴァは同じタイミングであの香水をつけた。
ダンテが及第点をもらったのなら、安心だ。
「つまりディーヴァもちゃんと悪魔臭いってことだぜ!」
「……そりゃあどうも」
悪魔に見えるのはよかったが悪魔臭いって言われるのはちょっぴり嫌な、ディーヴァでした。
とあるフロア前につき、ダンテがそばにあったロッカーから次々になにやら取り出して、ディーヴァに渡していく。
「ほら、箒とちりとり、それとカビ取り剤……掃除用具一式な」
「えっ。掃除用具?掃除婦でもするの!?」
「ディーヴァはそうだぞ。
そしてディーヴァの相手は……ここだ」
たくさん渡された掃除用具を手にしたディーヴァの目の前、ダンテが扉を開け放つ。
がちゃ、開けられたそこに広がるのは。