ハロウィンちっくな魔界遠征
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買うわけにもいかないため衣服を取り扱うショップから出たディーヴァは、いつの間にか変わった色合いのビーズのような玉が連なったネックレスやブレスレットの類いを扱う店を覗いている。
ほんといつの間に。
人間界では絶対呪いの首飾りに分類されそうなそれなのに、ここで見ると不思議だなぁ……全部がそういう風な品だからか、なんでもないただの綺麗なアクセサリーに見える。
ダンテでさえそうなのだから、ディーヴァなんか顕著だろう。
「おい。あんまりはぐれるようなことすんなって」
「だってキラキラして可愛かったんだもん」
ディーヴァの目もキラキラ輝いてたぞ。
「おいおい魔界の品だぞ?呪われちまうぜ。そもそもこっちで使える金持ってねーだろ」
「ウッ!そうでした……」
悪魔の世界での売買は人間界のお金も通用するところもあるようだが、今ディーヴァが見ている店はちがう。
魔界専用通貨があるのだろう、見たことのない硬貨でやり取りされているのが確認できた。
だが、どんなに人間世界に似ていてもやっぱりここは悪魔の世界。
ここが魔界だと思い出させる物はそこかしこに散りばめられていて、呪術にしか使わなさそうな薬草や乾物、店先で謎の液体が鍋の中グツグツと煮え滾っている。魔女か。
そして何より獣やダンテのいう掃き溜めくささはずっとついてまわった。
人間と変わらない生活様式と悪魔らしい営み模様。不思議な雰囲気に呑み込まれそうで、頭が混乱する。
「はー………………」
ダンテが長い、長ーい溜息を吐いて、ディーヴァの猫みたいに狭い額を弱く小突いた。
「とりあえず……ディーヴァは警戒心が足りなさすぎだ」
「あてっ!ごめんなさーい」
「ここは危ない世界なんだからな?だいたいお前は悪魔とは正反対の種族の、」
ここはひとつ、たまには年上の恋人らしく、お説教ターイム。
くどくどと言い始めたところで。
「あ!」
「天使……って、言ってるそばから!」
クンクンと鼻を動かしたディーヴァがまたもや目をキランとさせ、そこから駆け出してしまった。
今度はいったいなんだというのだ。
「ねえ!食べ物もあるよダンテ」
悪魔のとはいえショッピングモールのような場所だから、そりゃあ食い物もあるだろう。
やけにワクワクしている食いしん坊バンザイなディーヴァが見つけたものは、屋台に近い店構えでケバブのような食物を売っている所だ。
ナンによく似た生地で、香辛料で味付けされた肉を包んだもののよう。
掃き溜めくさい魔界の香りをかき消すように、食欲をそそるスパイシーな香りが辺りに漂っている。ディーヴァはこの匂いにつられたのだろう。
「試食くれるって言ってるよ。ちょっときになるなぁ……いい匂いするなぁ……鶏肉のスパイス焼きか何かを包んでるのかな?ケバブかな??」
若干興奮気味にグイグイとダンテの腕を引っ張るディーヴァ。
来る前にしっかりと食事を取ってきたはずだが、食いしん坊で燃費悪すぎィ!なディーヴァの胃袋はもうすっからかんで次を求めているのか。試食と言われて飛びつこうとしている。
「ダンテも気に」
「ならない。やめとけよ。
お前は今見た目は悪魔になってるがな、元は天使の血が通った人間だろう。ここに売ってるメシは毒にはなっても薬や栄養には絶対ならねぇぞ。確実に腹壊す。
買い物独特の妙な雰囲気に呑まれて、ここが魔界だってことを忘れるな」
「でも試食ゥ……」
受け取ろうとしたディーヴァの手を、ピシッと二本指で些か強くしっぺしてはたき落とすダンテは不服そうに赤くなった手をさするディーヴァの耳元、声の大きさを落として釘をさすかのように伝える。
そしてトドメにチーズという単語ひとこと。
「腹っぺらしめ。あっちに帰ったらチーズフォンデュたんまり食べていいから我慢しろ」
「じゃあフォンデュ終わった後にお鍋に残ったチーズ飲んでいい?」
「…………別にいいが、チーズの食い過ぎで偏頭痛起こすなよ」
「だ、だいじょぶだもん……」
チーズ好きなら気持ちがわかるだろう。チーズフォンデュのあとに鍋に残るチーズ液。
これを綺麗さっぱり食べ尽くしたい!という気持ちが。
やり過ぎれば健康被害はあるかもしれないが、チーズを引き合いに出せばあら不思議、借りてきた猫のように大人しくなるディーヴァなのでした。
しかしダンテは、ディーヴァを完全に諦めさせるためのダメ押しがわりにと、一応、店主にも聞いてみる。
「おい、それはなんの肉を使ってる」
「何ってお客さん、リザードマンの肉に決まってるでしょうが。看板にリザードマン焼きって書いてあるでしょ」
「リザードマン焼き!?」
ほらやっぱり。
魔界文字が読めないからわからなかったしロクな肉使ってないと思っていたが、リザードマン……つまり魔族のトカゲ肉ときたか。
ディーヴァがリザードマンを理解していないので、たまに退治するアサルトに似たトカゲ型の悪魔だと説明してようやく、小さく悲鳴を上げる事で理解した。
ちなみに、世界にはカエルの肉を好き好んで食う国がある。しかもカエルの肉は淡白なササミと同等の味で低カロリー高タンパクらしい。
それと似ているが、どちらにせよディーヴァは食べないだろう。オレだってカエルの肉なんか好き好んで食べたくない。おえっ!
リザードマンの肉なんて言うまでもない。
「さすがに諦めついただろディーヴァ」
「う、うん……」
「んじゃ行くぞ。あと、さっきからいきなり離れてフラフラするの禁止な」
「はぁーい」
ガシ、どころではなくガッチリと拘束する勢いでディーヴァと手を繋ぐ。
ちょっとやそっとじゃ逃げられないほど強く。強く……!
そしてそのまま、ディーヴァをずるずると引っ張ってその場を離れる。買う意思がない以上長居は無用だ。
「ダンテの目の前でならちょっとくらいフラフラしてもいいかと思ったんだけど、ダメだったかー……」
ずるずる引っ張られながら、ディーヴァがぼそりと呟く。頭の角も心なしか垂れて落ち込んで見えるが、ここはしっかり言い聞かす大人なダンテの出番である。
「ダーメ。大人しく手を繋いどきなさい。ほんと、頼むから」
「いつにも増して子ども扱いひど過ぎるぅ……ぐぬぬ」
「いつにも増して大人しく出来ないディーヴァを子ども扱いするのは当然だろうが。
……ったく、もしかして首輪とリードつけたほうがいいのか?ん?」
「首輪とリードなら、今のダンテの方が似合うと思う」
「なんか言ったか」
「ひっ!なんでもないよ!?」
いつもよりも尖った牙をずらりと口から覗かせて、黒い空気を背負ったダンテが笑みを投げかけてきた。
こわいのでそろそろディーヴァ黙るぅん。
相変わらずディーヴァの頭にくっついた角をちょっぴり邪魔そうにしているダンテだが、そのダンテはディーヴァを連れてエレベーターだろう移動先を目指しつつ、ある意味もっとこわいことを言い聞かせてきた。
「それに、ここで何か食ったら黄泉竈食ひとやらになるかもしれないぞ。もしそうなら帰れなくなる」
「ん?ヨモツヘグイ?」
「生者があの世の食いモンを体に入れると、あの世の住人になるって話。ギリシャ神話のペルセポネの冥界下りってやつだ」
「よく知ってたね……」
神話に登場する怪物の性格や特性を知っておくと、実際の悪魔と対峙する時に便利だったのだ。
だからこそ、そういった方面に詳しくなっていったのである。
「まあ、ある意味ではすでにディーヴァは黄泉竈食ひ、してっけどな……」
「え゛。すでにあたしはあの世の住人!?」
「違うけど。
オレがハデスでディーヴァがペルセポネ、あの世の食いモンであるザクロの代わりがオレからの愛……みたいなもんだ」
「美味しくなさそう」
「ばか。オレからの愛は美味いに決まってんだろうが」
エレベーターが到着し誰も乗っていないそこにスッと乗り込むふたり。
このような狭い箱の中でも、体をぴったりくっつかせていたディーヴァに向き直ったダンテは、その顎に指をかけて顔を上向かせ、光瞬く瞳を愛しげに見つめる。
悪魔と化した体でも、そこにはいつもと同じエメラルドが嵌っている。
反射したダンテ自身の目も、魔に魅入られた赤ではなくいつもと同じ青い瞳。
お互いの目を安心したように確認すると、ダンテはそれがさも当然かのように自然と、ディーヴァの唇に自らのそれを重ね合わせた。
逃れられない愛で雁字搦めになるほど愛されては、前の生活にはもう戻れない。
「ん……。でも、それでいくともうあたしは手遅れってことになるみたいだね」
「そうだな、手遅れだ。オレの世界の住人だ……ずっとな」
ちゅっとリップ音を響かせて触れるだけのキスを贈ると、ディーヴァの髪をするりと撫であげる。髪を撫でられて嬉しそうなディーヴァの表情も、いつもと同じ柔らかな笑顔でダンテは安心することができた。
だがやはり、角は邪魔だった。
ほんといつの間に。
人間界では絶対呪いの首飾りに分類されそうなそれなのに、ここで見ると不思議だなぁ……全部がそういう風な品だからか、なんでもないただの綺麗なアクセサリーに見える。
ダンテでさえそうなのだから、ディーヴァなんか顕著だろう。
「おい。あんまりはぐれるようなことすんなって」
「だってキラキラして可愛かったんだもん」
ディーヴァの目もキラキラ輝いてたぞ。
「おいおい魔界の品だぞ?呪われちまうぜ。そもそもこっちで使える金持ってねーだろ」
「ウッ!そうでした……」
悪魔の世界での売買は人間界のお金も通用するところもあるようだが、今ディーヴァが見ている店はちがう。
魔界専用通貨があるのだろう、見たことのない硬貨でやり取りされているのが確認できた。
だが、どんなに人間世界に似ていてもやっぱりここは悪魔の世界。
ここが魔界だと思い出させる物はそこかしこに散りばめられていて、呪術にしか使わなさそうな薬草や乾物、店先で謎の液体が鍋の中グツグツと煮え滾っている。魔女か。
そして何より獣やダンテのいう掃き溜めくささはずっとついてまわった。
人間と変わらない生活様式と悪魔らしい営み模様。不思議な雰囲気に呑み込まれそうで、頭が混乱する。
「はー………………」
ダンテが長い、長ーい溜息を吐いて、ディーヴァの猫みたいに狭い額を弱く小突いた。
「とりあえず……ディーヴァは警戒心が足りなさすぎだ」
「あてっ!ごめんなさーい」
「ここは危ない世界なんだからな?だいたいお前は悪魔とは正反対の種族の、」
ここはひとつ、たまには年上の恋人らしく、お説教ターイム。
くどくどと言い始めたところで。
「あ!」
「天使……って、言ってるそばから!」
クンクンと鼻を動かしたディーヴァがまたもや目をキランとさせ、そこから駆け出してしまった。
今度はいったいなんだというのだ。
「ねえ!食べ物もあるよダンテ」
悪魔のとはいえショッピングモールのような場所だから、そりゃあ食い物もあるだろう。
やけにワクワクしている食いしん坊バンザイなディーヴァが見つけたものは、屋台に近い店構えでケバブのような食物を売っている所だ。
ナンによく似た生地で、香辛料で味付けされた肉を包んだもののよう。
掃き溜めくさい魔界の香りをかき消すように、食欲をそそるスパイシーな香りが辺りに漂っている。ディーヴァはこの匂いにつられたのだろう。
「試食くれるって言ってるよ。ちょっときになるなぁ……いい匂いするなぁ……鶏肉のスパイス焼きか何かを包んでるのかな?ケバブかな??」
若干興奮気味にグイグイとダンテの腕を引っ張るディーヴァ。
来る前にしっかりと食事を取ってきたはずだが、食いしん坊で燃費悪すぎィ!なディーヴァの胃袋はもうすっからかんで次を求めているのか。試食と言われて飛びつこうとしている。
「ダンテも気に」
「ならない。やめとけよ。
お前は今見た目は悪魔になってるがな、元は天使の血が通った人間だろう。ここに売ってるメシは毒にはなっても薬や栄養には絶対ならねぇぞ。確実に腹壊す。
買い物独特の妙な雰囲気に呑まれて、ここが魔界だってことを忘れるな」
「でも試食ゥ……」
受け取ろうとしたディーヴァの手を、ピシッと二本指で些か強くしっぺしてはたき落とすダンテは不服そうに赤くなった手をさするディーヴァの耳元、声の大きさを落として釘をさすかのように伝える。
そしてトドメにチーズという単語ひとこと。
「腹っぺらしめ。あっちに帰ったらチーズフォンデュたんまり食べていいから我慢しろ」
「じゃあフォンデュ終わった後にお鍋に残ったチーズ飲んでいい?」
「…………別にいいが、チーズの食い過ぎで偏頭痛起こすなよ」
「だ、だいじょぶだもん……」
チーズ好きなら気持ちがわかるだろう。チーズフォンデュのあとに鍋に残るチーズ液。
これを綺麗さっぱり食べ尽くしたい!という気持ちが。
やり過ぎれば健康被害はあるかもしれないが、チーズを引き合いに出せばあら不思議、借りてきた猫のように大人しくなるディーヴァなのでした。
しかしダンテは、ディーヴァを完全に諦めさせるためのダメ押しがわりにと、一応、店主にも聞いてみる。
「おい、それはなんの肉を使ってる」
「何ってお客さん、リザードマンの肉に決まってるでしょうが。看板にリザードマン焼きって書いてあるでしょ」
「リザードマン焼き!?」
ほらやっぱり。
魔界文字が読めないからわからなかったしロクな肉使ってないと思っていたが、リザードマン……つまり魔族のトカゲ肉ときたか。
ディーヴァがリザードマンを理解していないので、たまに退治するアサルトに似たトカゲ型の悪魔だと説明してようやく、小さく悲鳴を上げる事で理解した。
ちなみに、世界にはカエルの肉を好き好んで食う国がある。しかもカエルの肉は淡白なササミと同等の味で低カロリー高タンパクらしい。
それと似ているが、どちらにせよディーヴァは食べないだろう。オレだってカエルの肉なんか好き好んで食べたくない。おえっ!
リザードマンの肉なんて言うまでもない。
「さすがに諦めついただろディーヴァ」
「う、うん……」
「んじゃ行くぞ。あと、さっきからいきなり離れてフラフラするの禁止な」
「はぁーい」
ガシ、どころではなくガッチリと拘束する勢いでディーヴァと手を繋ぐ。
ちょっとやそっとじゃ逃げられないほど強く。強く……!
そしてそのまま、ディーヴァをずるずると引っ張ってその場を離れる。買う意思がない以上長居は無用だ。
「ダンテの目の前でならちょっとくらいフラフラしてもいいかと思ったんだけど、ダメだったかー……」
ずるずる引っ張られながら、ディーヴァがぼそりと呟く。頭の角も心なしか垂れて落ち込んで見えるが、ここはしっかり言い聞かす大人なダンテの出番である。
「ダーメ。大人しく手を繋いどきなさい。ほんと、頼むから」
「いつにも増して子ども扱いひど過ぎるぅ……ぐぬぬ」
「いつにも増して大人しく出来ないディーヴァを子ども扱いするのは当然だろうが。
……ったく、もしかして首輪とリードつけたほうがいいのか?ん?」
「首輪とリードなら、今のダンテの方が似合うと思う」
「なんか言ったか」
「ひっ!なんでもないよ!?」
いつもよりも尖った牙をずらりと口から覗かせて、黒い空気を背負ったダンテが笑みを投げかけてきた。
こわいのでそろそろディーヴァ黙るぅん。
相変わらずディーヴァの頭にくっついた角をちょっぴり邪魔そうにしているダンテだが、そのダンテはディーヴァを連れてエレベーターだろう移動先を目指しつつ、ある意味もっとこわいことを言い聞かせてきた。
「それに、ここで何か食ったら黄泉竈食ひとやらになるかもしれないぞ。もしそうなら帰れなくなる」
「ん?ヨモツヘグイ?」
「生者があの世の食いモンを体に入れると、あの世の住人になるって話。ギリシャ神話のペルセポネの冥界下りってやつだ」
「よく知ってたね……」
神話に登場する怪物の性格や特性を知っておくと、実際の悪魔と対峙する時に便利だったのだ。
だからこそ、そういった方面に詳しくなっていったのである。
「まあ、ある意味ではすでにディーヴァは黄泉竈食ひ、してっけどな……」
「え゛。すでにあたしはあの世の住人!?」
「違うけど。
オレがハデスでディーヴァがペルセポネ、あの世の食いモンであるザクロの代わりがオレからの愛……みたいなもんだ」
「美味しくなさそう」
「ばか。オレからの愛は美味いに決まってんだろうが」
エレベーターが到着し誰も乗っていないそこにスッと乗り込むふたり。
このような狭い箱の中でも、体をぴったりくっつかせていたディーヴァに向き直ったダンテは、その顎に指をかけて顔を上向かせ、光瞬く瞳を愛しげに見つめる。
悪魔と化した体でも、そこにはいつもと同じエメラルドが嵌っている。
反射したダンテ自身の目も、魔に魅入られた赤ではなくいつもと同じ青い瞳。
お互いの目を安心したように確認すると、ダンテはそれがさも当然かのように自然と、ディーヴァの唇に自らのそれを重ね合わせた。
逃れられない愛で雁字搦めになるほど愛されては、前の生活にはもう戻れない。
「ん……。でも、それでいくともうあたしは手遅れってことになるみたいだね」
「そうだな、手遅れだ。オレの世界の住人だ……ずっとな」
ちゅっとリップ音を響かせて触れるだけのキスを贈ると、ディーヴァの髪をするりと撫であげる。髪を撫でられて嬉しそうなディーヴァの表情も、いつもと同じ柔らかな笑顔でダンテは安心することができた。
だがやはり、角は邪魔だった。